再び鹿島の時代がやってくるのか。半年間の短期決戦で行われる百年構想リーグが早くも後半戦に突入したなか、鹿島の勝負強さが際立っている。
■難しい試合でも“最後に勝つ”
昨季J1王者の鹿島はここまで10試合を戦って8勝で首位をキープ。90分での敗戦はゼロ(PK負け2試合)となっており、難しい試合でも“最後に勝つ”スタイルを定着させている。
この日が、まさにそうだった。
前半はホームの川崎Fにボールを握られ、シュート数でも7対2と上回られた。何とか無失点で前半を終えたが、『ついに90分でも負けてしまうのか?』と思わされる内容だった。
ハーフタイムの報道控え室では、「このままだと鹿島やばいですよ」という声が聞かれたし、私もそう思った。だが、ピッチ上の感覚は違った。「ゼロで耐えたら後半でいけるなと誰もが思っていた」と鹿島MF三竿健斗が明かしたように、むしろプラン通りの戦いだった。
鹿島の鬼木達監督も峠は越えたという認識でいた。
「特に、前半を(失点)ゼロで終えて帰ってきたのが勝負を決めたといっても過言ではなかった。後半には自信がありました」
そして実際に勝ち切ってしまうのだから恐れ入る。
三竿が相手ボックス内で倒されてペナルティキックのチャンスを得ると、53分にFW鈴木優磨がきっちりと沈めた。64分には、左サイドでボールを受けた鈴木が相手の虚を突くような形でクロスボールを供給し、大外で待っていたFWレオ・セアラが追加点を決めた。
「うまくいかなかったときに、どう頭を切り替えるかが統一できていました。前半を割り切って耐えて、最後まで体を張ったり、FWも自陣まで戻って守備ができていた。いま何をしなければいけないかを、みんなが分かっているんです」(三竿)
後半も決して鹿島のワンサイドゲームというわけではなかった。川崎Fも左サイドの仕掛けなどからチャンスを演出し、ゴール前に迫るシーンもあった。だが、得点は入らない。
この試合で川崎Fが放った全シュートシーンを試合後に確認したという川崎FのFW宮城天は、このもどかしさを一言で表した。
「やっぱり、鬼さんのチーム」
2017年から2024年まで川崎Fで指揮を執り、4度のリーグ制覇をもたらした鬼木監督のイズムが鹿島に浸透している。そのことを、指揮官の下で戦った背番号24は敏感に感じ取っていた。
「相手は押し込まれていても失点する感じがしない。試合を見ている人は、フロンターレにすごくチャンスがあって、あと一歩だと思ったかもしれないけど、ピッチ上ではその一歩が遠いと感じさせるチームを、鬼さんは作っている。そういうチームはやっぱり強い」
「しかも相手はプラン通りというか、ある程度割り切っていた。自分たちのペースではなくても、勝ち切るスタンスのチーム。僕たちは相手の思い通りに転がってしまったのかなと思います」
■“あのとき”の川崎Fと似ている
両者の間に決定的な力の差はなかったし、真逆の試合結果になってもおかしくなかった。それでも、最後に笑ったのは鹿島だった。
この勝負強さ、“あのとき”と似ている。宮城がしばらく考え込んでから口を開いた。少しだけ嫌そうな顔をしながら。
「うーん、優勝した2021年のフロンターレと似ていますよね。なんというか、こういう試合をくぐってきた回数が違うと思いました」
鹿島の強さは、鬼木監督とともに2連覇を成し遂げた2021年の川崎Fに酷似しているという。思えば、あのときの川崎Fも負けそうなゲームを自分たちのものにしていた。宮城は、当時の川崎Fの手ごわさを人一倍理解しているからこそ、危機感をつのらせる。
「付け入る隙はあるけど、まだまだ(自分たちの)質が足りないのかなと。本当は自分たちが台頭して、優勝争いをしなければいけない。だけど鬼さんのチームは勝ちながら修正するのが得意。だからまた修正してくると思うので、次に戦うときはもっと強くなってくる」
宮城の予想通り、鹿島の選手たちは早くも次を見据えていた。勝利の喜びすらも置き去りにしてーー。三竿が淡々と口にする。
「勝ってもあまり喜べないというか、もっとよくできたんじゃないか、次はどうしたらもっとうまくいくのかを全員で考えています。勝つのが当たり前になっている。勝つ内容や、どれだけ自分たちがやりたいことを出せるかを求めていて、基準が高くなっています」
若手育成やスタイルの定着にあてられる時間があると語られることの多い百年構想リーグだが、史上最多9回のJ1制覇を誇る鹿島は自らのアイデンティティ“勝つ”ことを最低限の大前提にして、さらなるアップグレードを図っている。
とはいえ、優勝争いはまだまだ予断を許さないし、鹿島にとっても敵陣でのボール回しやビルドアップの部分での課題もある。
だからこそ勝って反省のサイクルを繰り返していくことが、今季の優勝と来たる2026-2027シーズンへの地盤を固めていくことにつながる。
「どの大会でも優勝するのが鹿島アントラーズ」(三竿)
2009年に成し遂げた史上初となる3連覇の偉業は、自分たちの手で塗り替えてみせる。時代の足音が、少しずつ大きくなっている。
取材・文=浅野凜太郎
