リヴァプールファンにとっては、二日酔いも厭わない夜だっただろう。
金曜日に目を覚ましたとき、彼らの頭は重かっただろうが、その顔には笑みが浮かんでいたはずだ。彼らは30年ぶりに、イングランドのチャンピオンになったのだ。タイトル獲得が決まった直後、ユルゲン・クロップ監督は感情をあらわにしていた。
「本当に胸がいっぱいだ。こんな経験ができるなんて夢にも思わなかった。信じられないよ!」
優勝が決まった瞬間、クロップは選手たちと一緒にいた。自宅近くのフォームビイホール・ゴルフリゾートのテラスに腰掛け、彼はスタンフォードブリッジでチェルシーに惜敗したマンチェスター・シティの姿を見届けた。
ペップ・グアルディオラ率いるチームの敗戦は、リヴァプールのプレミアリーグタイトルを正式に決めた。7試合を残しての決着。リヴァプールの独走を印象づけたシーズンだった。
■レッズ挑戦の歴史
Getty今シーズンのレッズが最高の状態だったことは、誰一人として疑うことはできないだろう。彼らこそ、チャンピオンに値するチームだった。
この後の彼らの戦いにも見どころがある。残り5試合で勝ち点12を獲得できれば、彼らはイングランド・トップリーグでの歴代記録を塗り替えることができる。彼らは成功をつかんだだけでなく、長い歴史に名を残すチャンスをも手にしているのだ。
その瞬間の喜びはひとしおだろう。30年間にわたって再びタイトルを手にする瞬間を望み、失望も味わってきた彼らにとっては当然の感情だ。
しかしアンフィールドの中で、彼らはすでに次なるチャレンジに向けて動き出している。トップの座を手にした彼らは、次にその座を守り続ける挑戦に挑むこととなる。
1970年代から80年代の黄金期に渡っても、リヴァプールは同様の挑戦に臨んでいた。当時のレッズは毎シーズンのようにリーグタイトルを獲得していたが、チームを引き締めていたのはロニー・モランであった。
クラブのレジェンドであり、後に厳しい監督ともなった彼は各シーズンの終わりに選手たちにメダルを手渡していた。仲間たちを労うためだけだったかと思われるかもしれないが、そんなことはない。彼はロッカールームに入り、段ボールに入ったメダルをおもむろに選手に投げつけ、シンプルなメッセージを送っていただけだ。
「来シーズンにまた会おう」
これは極端な例かもしれないが、当時のリヴァプールはそのようなメンタリティを持っていた。楽しみながらも、大きな目標を追うことを忘れてはいなかったのだ。彼らにとって最も重要な成功とは、常に次なる目標を達成することだった。
クロップはよく、自らのチームについて述べる際に「貪欲」という言葉を用いる。それはチームのハングリー精神や目標、態度について述べているものであり、勝者のメンタリティにつながるものだ。これが彼らのスキルやフィジカル、そしてコーチング能力を向上させ、今シーズンの独走が実現したのだ。
そして彼らは今、新たなチャレンジに直面している。彼らはすでに山を登りきった。昨シーズンのヨーロッパチャンピオン、そして今シーズンのプレミア覇者である彼らは、その間に世界一の称号も手にした。
www.gettyimages.comだが、彼らの旅が終わることはない。歴史上の最重要人物であるビル・シャンクリーの言葉を借りるのであれば、アンフィールドは「無敵の要塞」であり、レッズは「血みどろの世界を征服」しなければならないのだ。
「ナポレオンも同じ考えを持っていた」シャンクリーはそう語る。
「リヴァプールには誰の手も届かない場所へと行ってほしい。リヴァプールの力を押し上げ続け、誰もが屈服し、白旗を上げざるを得ないような状況を作りたかったんだ」
過去3シーズンのリヴァプールの調子を見れば、今回の勝利がただの偶然ではないことがよく分かる。クロップのチームはこの栄光に向けて、彼がアンフィールドの門を叩いた瞬間から準備を続けてきた。少しずつ、少しずつ、彼らは約束の地に向かってその牙を研ぎ続けていたのだ。
だが、クロップがクリスタル・パレス戦後に語ったとおり、リヴァプールは「まだ成長できる」のだ。
■来季のスカッドにも不安はない
Gettyコロナウイルスによる危機が、レッズのプランにどのような影響を与えるのかはまだ分からない。ここまでは、コロナが財政に与えた影響により、RBライプツィヒのストライカー、ティモ・ヴェルナーの獲得を保留に。結果として、彼はチェルシーへの移籍を決めてしまった。
リヴァプールのスカッドをこれ以上改善するのは難しいかもしれないが、チームとしてアップグレードすべき箇所は明確に存在している。たとえばモハメド・サラーやサディオ・マネが負傷した場合のダメージは大きく、高いレベルの交代要員が存在していることが望ましい。たとえその適任を見つけることが難しいとしてもだ。
左サイドバックにも同じことがいえる。その点ジェームス・ミルナーは見事にフィットしているが、彼も来年1月には35歳となる。そのため、アンディ・ロバートソンを欠いてしまった場合の不安は大きい。
右サイドバックでは、ネコ・ウィリアムズがトレント・アレクサンダー=アーノルドの代役となってくれそうだが、噂どおりデヤン・ロブレンが出場機会を求めての退団を選べば、経験豊富なセンターバックも必要となるだろう。
中盤に関しては層が厚い。特にナビ・ケイタが調子を維持し、好不調の波を減らしてくれれば言うことはないだろう。
また、才能豊かなヤングスターたちの台頭も楽しみだ。ウィリアムズだけでなく、攻撃的ミッドフィルダーのカーティス・ジョーンズやハーヴェイ・エリオット、そしてストライカーのリアン・ブリュースターの活躍も期待される。
しかし、チームを離れる者もいる。ナサニエル・クラインが去り、6年間在籍したアダム・ララーナも彼に続くとされている。ララーナは過去3シーズンで思うような出場機会に恵まれなかったが、そのパーソナリティとクラブへの献身性で、チーム力の底上げに貢献してきた選手だ。
さらに、ジェルダン・シャキリにも移籍の可能性がある。そして今シーズンをレンタル移籍先で過ごしたハリー・ウィルソンや、マルコ・グルイッチについても決断が迫られるだろう。
だが、リヴァプールの心配は少ないし、クロップ監督も自信を示している。選手の多くは長期的な契約を結んでおり、ピークを過ぎた選手も少ない。
ヴィルヒル・ファン・ダイク、ロベルト・フィルミーノ、マネはそれぞれ28歳であり、ロバートソンとファビーニョは26歳だ。クラブ生え抜きのアレクサンダー=アーノルドはまだ21歳だが、すでに世界最高峰の選手であり、さらに成長を続けていくだろう。23歳のジョー・ゴメスもケガさえしなければ、数年のうちにイングランド代表のセンターバックのファーストチョイスとなるだろう。
ピッチ内にとどまらない影響力を持つキャプテン、ジョーダン・ヘンダーソンは6月に30歳の誕生日を迎えたが、そのパフォーマンスは衰えを知らない。彼はクロップにとって掛け替えのない存在であり続けるだろうが、それぞれ25歳と26歳のケイタとアレックス・オックスレイド=チェンバレンも存在感を強めており、それはクロップが多くのオプションを持つことを意味する。
■ライバルの挑戦を受けて立つ
Getty Imagesライバルたちは警戒を強めてくるだろう。当然マンチェスター・シティは王座奪還を狙ってくるし、マンチェスター・ユナイテッドは大きな野望を持ち続けており、チェルシーも若手中心の素晴らしスカッドができあがっている。リヴァプールは、彼らからの挑戦を受けて立たなければならない立場にいる。
挑戦は内部にもある。さらなる栄光のために、彼らが「貪欲」でい続けられるかが問われるだろう。彼らはこうした多くの挑戦にうまく対処できるだろうか?彼らがよろめき、つまずく姿を世界中が望む中で、素晴らしいパフォーマンスを維持し続けられるだろうか?主力をケガが襲ったらどうなってしまうのだろう?
そんな疑問が浮かぶのももっともだが、今のリヴァプールに怖いものはない。彼らは最高の監督、最高のプレーヤー、そしてハングリー精神を持ち合わせているのだから。
そして彼らは、多くのトロフィーも手にした。
無敵の要塞を築くこと、それこそが彼らの目標だ。リヴァプールよ、幸運を祈る。
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