ダービーマッチの勝利は格別だ。J1の舞台でつかんだ2008年以来18年ぶりとなるFC東京戦での白星に、先発フル出場したDF井上竜太は感情を抑え切れなかった。
「もちろん他の試合の勝利もうれしいですけど、やっぱり全然違いますね」
立ち上がりからFC東京にボールを保持される展開が続くなど、決して楽な試合ではなかった。それでも東京Vはコンパクトな守備で、相手に決定的な場面は作らせず。拮抗した展開のまま時計の針は進んだ。
スリーバックの中央を任された井上は「変につないでボールを取られて、相手の速い攻撃を受けるのは嫌でした。大きくやるところと、つなぐところはハッキリさせられたので良かったと思います」と振り返るようにシンプルなプレーを心がけ、ディフェンスラインに安定感をもたらしていた。
昨季途中にブラウブリッツ秋田から東京Vに加入したが、リーグ戦1試合の出場でシーズンを終えた井上。自身初となるJ1挑戦で悔しい想いをしたが、再起を図る今季はここまで7試合に出場中。「試合に出て、いろいろな経験をさせてもらっているので、全体的に徐々にレベルアップできていると実感しています」とこの試合でも存在感を放った。
打点の高いヘディングやボール奪取はもちろん、後方からチームメイトたちを鼓舞する声かけを続けるなど、リーダーシップでもチームを引っ張る。
また、シャドーで出場したMF齋藤功佑とは試合後にタブレットでビルドアップについての意見交換を重ねているらしく、「それがきょうの試合でも出ていた」と背番号5は確かな成長を実感。「勝っていても負けていても、僕がチームをまとめられたら。自分らしく新しい5番になりたい」と責任感も芽生え始めた。
試合は0-0でPK戦に突入。東京Vは4人目のキッカーを務めたDF吉田泰授がネットを揺らして、4-2で勝利した。
スタジアムが歓声に包まれるなか、センターサークル付近でPK戦を見守った井上はその場で仰向けに。「タイトルを取ったかのような喜び方をしてしまいました(笑)」と笑みを浮かべながらも、すぐさま「まだまだ3連戦が終わっただけなので、次に向かって準備をしたい」と気を引き締めた。
取材・文=浅野凜太郎
