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森保ジャパンの進化ーーサッカー⽇本代表映画『ONE CREATURE』が映す日本代表という“生き物”/インタビュー

カタール・ワールドカップでの激闘から3年半の時を経てこの夏、北中米へと向かうサッカー日本代表。その激動の3年半の軌跡を、積み重ねられた映像と深い洞察で捉えたドキュメンタリー作品、サッカー⽇本代表 映画『ONE CREATURE』が6月5日より、全国公開中だ。

今回、GOALでは本作の監督・岸枢宇己氏、企画・プロデュース・矢花宏太氏にインタビューを実施。大学や社会人リーグまで本気でボールを追いかけた「元プレーヤー」でもある二人の「それぞれの視点」から、この映画を通して表現したかったこと、そして、取材を通じて見えてきたいまの日本代表に迫る。(聞き手:吉村美千代/GOAL編集部)

■ 膨大な素材を検証して見つけた仮説

20260614-onecreature-photo2-team©JFA ©2026「ONE CREATURE」製作委員会

――今回のプロジェクトが立ち上がった経緯を教えてください。

矢花:カタール・ワールドカップが終わり、2024年3月に宮本(恒靖)さんがJFA(日本サッカー協会)会長に就任されました際に宮本会長は「サッカーをもっと大きな存在に」というお話をされていて、JFAさんには日本全体でサッカーが文化として深く根付き、その上で応援していく景色を作りたいという思いがありました。

そして、その過程で、「プレーのすごさを見せるだけでなく、サッカーを知らない人も楽しめるもの」「何度も観たくなるサッカーカルチャーを作るもの」の一環として映画も一つのアイデアとしてあがり、2025年2月に正式に企画決定しました。そんな経緯で、岸監督に白羽の矢が立ちました。

――最初から「ワン・クリーチャー(一つの生き物)」というテーマは決まっていたのですか?

矢花:いえ、実は最初は違うテーマで「コミュニケーション」でした。日本のコミュニケーションの質がチームを強くしているのではないか、と。そういう部分を切り取ろうと議論していたんです。それが、岸監督に入っていただいたことでガラリと変わりました。

:2025年の3月末、まだアジア最終予選の途中に最初のミーティングがあったのですが、そこに向けてテレビで俯瞰(ふかん)の試合映像を観ていたら「最近の日本代表って、まるで一つの生き物のように連動して動いているな」と感じたんです。

その正体を突き止めるために、JFAのYouTubeに上がっている「日本代表Team Cam(チームカム)」を何本も観ました。そこで、選手や監督が驚くほど濃密なコミュニケーションを取っていることに気づき、「だからまるで個々の細胞が自然とつながった生き物のように仕上がっているのではないか」という仮説を立てました。

矢花:岸監督からその「生き物に見える」「俯瞰する視点」というキーワードを提示された時、ハッとさせられましたね。私たちは会話のシーンだけを切り取ろうとしていましたが、俯瞰で観るからこそ、その連動性が生き物のように見えるのだと気づかされました。この映画の軸が決まった瞬間です。

――そこからの岸監督の映像検証の熱量が凄まじかったと伺いました。

矢花:そうなんです。本格的な撮影が始まるまでの数ヶ月間、岸監督はJFAのチームカメラが撮影してきた、表に出ていない膨大な未編集素材(ローデータ)を文字通り「全部」観たんです。おそらく協会内でも関係者でも、あの素材をすべて検証した人は他にいないと思います。

大きなハードディスクを何台も抱えて雨の日も移動して、連日に渡り映像をご覧になって言いました。この執念があったからこそ、誰も気づかなかった代表の真実の姿が切り取れたのだと思います。

■ 印象を覆す、選手たちの葛藤と変化

20260614-onecreature-photo3-ayase-ueda©JFA ©2026「ONE CREATURE」製作委員会

――実際に選手たちにインタビューを重ねて、印象は変わりましたか?

:良い意味で本当に裏切られました。例えば遠藤(航)キャプテンは、ガツガツしていなくてどちらかと言うと控えめに見えますが、1対1で向き合うと、世界最高峰のリヴァプールで戦っているという確固たる「自信」とそこから生まれる自負」が伝わってきました。「こういう人でなければ代表のキャプテンは務まらない」と感服しましたね。

鎌田大地選手は一見クールに見えますが、めちゃくちゃ思いがあって、つねにチームへの貢献方法を考えている。上田綺世選手も、動物的ではなく、ものすごくロジカルに頭を使ってプレーしていることが話してすぐに分かりました。

矢花:上田選手がここまで戦術的に深く葛藤を語る姿はこれまでメディアでもあまり見られなかったので、協会内や彼をよく知る人間ほど「ここまで綺世が話すのか」と驚いていました。岸監督が元プレーヤーとして戦術的質問を投げかけたからこそ、上田選手も「良いパスが来た」とスイッチが入ったのでしょうね。

――劇中では、ある質問に選手たちが口を揃えて「全員」と答えるシーンが印象的です。

:あの質問は想定外の結果でした(笑)。最初に鎌田(大地)選手にインタビューした際、彼が「全員じゃないですか」と言ったんです。鎌田選手が言うならみんな言うかもな、と思っていたら本当にその通りになった。

三笘(薫)選手に取材した後は、駐車場まで送りに行く道すがら「これ皆に聞いてるんですか? 全員って言わない選手いました?」って逆にニヤニヤしながら聞かれました。「言うとしたら(堂安)くらいでしょう」なんて言っていましたが(笑)、その後に堂安選手に聞いたら彼も同じ答えで。意外だったと伝えると、「4年前だったら『俺』って言ってましたね」と話してくれました。

この4年での選手たちの精神的な成熟が、そのまま今の日本の強さになっていると感じたエピソードです。

矢花:個の強いタイプである堂安選手にそう言わせたのは、やはりカタール・ワールドカップで「あと一歩届かなかった悔しさ」があったからだと。個のレベルアップだけでは世界トップには立てない、日本代表はピッチの11人だけでなく、ベンチも含めた26人で戦うからこと世界のトップと渡りあえる。森保監督がよく使う「代表活動」という言葉通り、日々の濃密な活動の積み重ねが、この強い個と組織のバランスを生んでいるのだと感じます。

■ 「理想の上司」の裏にある、冷徹な戦略家としての森保一

20260614-onecreature-photo4-daichi-kamada©JFA ©2026「ONE CREATURE」製作委員会

――森保監督のリーダーシップについては?

:世間一般では「選手とのバランスを重視する温和なリーダー」というイメージが強いですし、実際に選手にストレスを与えない環境作りは徹底されています。ただ、1対1で向き合うと、本当に眼光が鋭くて「見られている感」がすごい。取材をしていても「お前はどんな意図でその質問をしているんだ?」という緊張感が常にあります。

選手を見る時も、あえてリラックスしている部屋の瞬間を狙って監督自ら訪ねていく。監督室に呼び出すと身構えてしまうから、素の状態が出る瞬間を狙って言葉を当てにいくんです。すごく人を見て、空気を見て動いている。

矢花:意志の強い戦略家というイメージです。海外の著名な監督の交代策や戦術を常にインプットし、どん欲に参考にしている。“日本人の気質が世界で最も活きるチーム作り”を四六時中考えている、非常に深く思考をしている戦略家の監督です。「ポイチ」という愛称の裏にある、本物の指揮官としての凄みがこの映画にはしっかりと映っています。

――このチームが「強い」と確信したポイントを教えてください。

:とにかく日常の「会話の量」が圧倒的です。そして、どんな組織にもありがちな人間関係のしがらみや派閥が全く見当たらない。誰とでもみんなが喋っているんです。

宮本会長が「今のチームはノッキングしない」と仰っていたのですが、まさにその通りで。ピッチの上で、ある選手がポジションを変えた時、他の選手と動きが重なって詰まってしまうことがない。お互いの特徴位置やキャラクターを普段のコミュニケーションから完全に把握できているから、流動的かつ適切にポジショニングが取れる。これが強さの根源だと思います。

矢花:メンタルの強度も素晴らしいですね。良い意味での余裕がある。負けている状況でも「ここはしょうがない、その代わりに今できることをやろう」と切り替えられる。引くべきところでしっかりと引けるからこそ、行くべきところで強く行ける。組織としてのたくましさを強く感じました。

■ 「広報映像」にはしない。クリエイターとしての確固たる誓い

20260614-onecreature-kantoku©GOAL

▲企画・プロデュース・矢花氏(向かって左)、岸監督

――JFAの公認映画ですが、「広報映像にはしたくない」という意識はありましたか?

矢花:それは企画の最初から、私と岸監督の中で確固たるものとしてありました。広報映像にしてしまったら、映画として作る意味がありません。映画とは、受け取り方によって色々な視点や解釈ができるものであるべきです。JFAの全面協力のなかで作られた作品ですが、そこは妥協なく「サッカー文化全体に資するものを作るんだ」という強い意志を持って臨みました。

:何かを誇張して持ち上げるようなことは絶対にしない、と決めていました。これは偶然ですが、JFAに昔からの古いサッカー仲間がいるんです。

一緒に飲みながら何かと熱いサッカー談義を重ねてきた間柄で、その人が単なる広報的な目線で映画を求めてくるはずがないという信頼もあり、お互いに「日本サッカーの未来のために何を作るべきか」という地平で握り合って進めることができました。

――最後に、この映画を楽しみにしている方たちへメッセージをお願いします。

矢花:とにかく、W杯が始まる前にこの映画を観ていただきたいです。そうすれば、ただ楽しむだけでなく、チームを心から「信じられる」ようになると思います。自分の思いや気持ちを乗せて応援できるようになる。それは結果として、一生に残る大切な記憶になるはずです。サッカーを普段観ない方にとっても、一編の濃密なヒューマンドラマとして絶対に楽しめる作品になっています。

:4年前だったら、テレビの前でただ、「なんでいま出さないんだ!」とか言っていたと思うんです(笑)。でも、この映画を観た後だったら、「いや、そのタイミングだと無理はない……」「ここは耐える時間だ」ってなるはず。サッカーの難しさもそうだし、選手たちの背景や葛藤を知っているからこそ、寄り添うような言葉を言いたくなるはず。自分がピッチに立つことはなくても、どこか「自分もチームの仲間である」という気持ちで、今まで以上に温かく日本代表を応援できると思うんです。サッカーが好きな人もそうでない人も、彼らを身近に感じて楽しめる映画になっていますので、ぜひご覧ください。

【作品情報】

SAMURAI BLUE Project for FIFA World Cup 2026™️
『ONE CREATURE』
無数の個性、ひとつの生きもの。

(サッカー日本代表(SAMURAI BLUE)映画『ONE CREATURE』)

全国公開中!

配給:東映
コピーライト:©2026 「ONE CREATURE」製作委員会

公式サイト



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