【特別企画:弱者の奇跡】
第1回: レスター・シティ編
第2回: ギリシャ編
第3回: モンペリエ編
第4回: ウィガン編
第5回: ナポリ編
第6回: アバディーン編
サー・アレックス・ファーガソンといえば、マンチェスター・ユナイテッド時代に数多くのタイトルを手にした名将だ。13回のプレミアリーグ優勝、5回のFAカップ制覇、2度のビッグイヤー獲得など、イングランドでのキャリアは常にトロフィーとともに語られる。だが、それ以前にスコットランドのアバディーンで成功を収めたことは、同じくらい印象的な功績であった。
1977年にセント・ミレンを率いて2部リーグのタイトルを獲得すると、1年後にはアバディーンの監督に就任。1979-80シーズンには、25年ぶりのリーグタイトルをクラブにもたらした。
当時のファーガソンはユナイテッド時代のような厳格さはなく、多くの選手たちよりも数歳だけ年上だったに過ぎない。だが、野心的な若き指揮官は成長を止めることはなかった。リーグ優勝を果たしたことで、ファーガソンは「団結した結果。ようやく選手たちが私を信じるようになった」と話し、次のタイトル、つまり欧州のタイトルを目指すことを決意したのだ。
1982年には、国内のスコティッシュ・カップを制すると、予選でスイスのシオンを退け、翌シーズンのカップ・ウィナーズカップの出場権を手にした。
■カップ・ウィナーズカップで快進撃
Gettyスコットランド王者ではあったが、当時のアバディーンは欧州ではアウトサイダーに過ぎなかった。だが、ファーガソンのチームは守備力を活かして勝ち進んでいくこととなる。
1回戦ではアルバニアのディナモ・ティラナ、2回戦ではポーランドのレフ・ポズナンと対戦するが、合計4試合で一度もゴールを許すことはなく、準々決勝ではドイツの雄、バイエルン・ミュンヘンとの一戦を迎えることとなる。
ドイツでのファーストレグはスコアレスドローで終了。多くのチャンスがあっただけに、アウェーゴールを奪えなかったことにファーガソンは失望した。それでも、セカンドレグでアバディーンは底力を見せる。
今大会初の失点で先制を許し、一度は追いつくも再びリードを奪われる厳しい展開に。しかし、再度追いつくと、78分にはジョン・ヒューイットのゴールが決まり、劇的な形で準決勝進出が決定したのだった。今でもこの試合はアバディーンサポーターの脳裏に焼き付いている伝説の試合だ。
ドイツの巨人を倒し、自信をつけたアバディーンは、準決勝ではベルギーのKワーテルシェイSVトール・ヘンクを合計スコア5-2と圧倒。レアル・マドリーとの決勝に臨むこととなる。
■決戦へ向けて徹底した準備

当時のロス・ブランコスは欧州では苦戦していた。70年代に主要タイトルを獲得できず、スウェーデンの都市ヨーテボリの決戦には、大きな期待が寄せられていた。それでも、この一戦においてアバディーンはチャレンジャー。6度のチャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)優勝経験を持つマドリーを相手に挑むという構図だった。
当時のスタジアムには推定1万4000人の観衆が集まり、アバディーンファンの中には2日間のフェリーの旅をして、スウェーデンにたどり着いたという猛者もいたという。
そんな中、若かりしファーガソンは、準備に抜かりなかった。気が散るのを避けるため、選手たちに家族とのコミュニケーションを禁止し、MFのドギー・ベルには妊娠中の妻がいたが、ファーガソンの厳しいルールにおいて例外はなかった。当時の状況について、主将のウィリー・ミラーは「ドギーの奥さんが陣痛を迎えたら、夫ではなくファギーに電話することになっていた」と明かす。
だが実際、選手たちはこうした監督の決意に落胆することなく、ヨーロッパでの成功を勝ち取るために決死の思いを抱えていた。後に監督ともなったゴードン・ストラカンはこのように回顧する。
「ロッカールームでの“生のエネルギー”は恐ろしいほどだった。もしあれを電気に変えることができたとしたら、スコットランド北部全体に電力を供給できただろう」
■雨の中の一戦は皆の記憶に
SNS Group決勝のピッチに上がったドンズ(アバディーンの愛称)は豪雨に見舞われた。だが煩わしい雨にも負けず、7分にアレックス・マクリーシュからのパスをエリック・ブラックがヘディングで叩き込み、先制に成功する。
しかし先制点から7分後、浸水したピッチがアバディーンにアクシデントをもたらす。GKジム・レイトンへのバックパスが泥の中にハマってしまい、相手選手にカットされたところを倒してしまい、PKを献上。これをフアニートに決められ、1-1に持ち込まれる。
前半に勢いを失っていたアバディーンは、ハーフタイムにファーガソンが“ヘアドライヤー”を浴びせることとなるが、90分の間に効果は表れず。延長戦へと突入する。
すると、ファーガソンは守備的MFのピーター・ウィアーにピッチ上での指示を託す。そして、攻撃的MFのヒューイットを入れたことが唯一の変更点だった。
そして112分、マーク・マクギーのクロスにヒューイットが頭で合わせ、アバディーンが奇跡の優勝を果たした。クラブにとって欧州でタイトルを勝ち取った初の経験だった。
当時、レアル・マドリーの指揮官を務めていたアルフレド・ディ・ステファノは「アバディーンにはお金では買えないもの、魂、チームスピリットがあった」と勝者を称えた。
その後、アバディーンはセルティックとレンジャースの二重支配が始まるまで、3度のリーグ優勝、4回のスコットランドカップ制覇などありとあらゆるタイトルを獲得。だが、その始まりとなったのはスウェーデンでの雨の夜であり、皆の記憶に強く残っているのだ。
【特別企画:弱者の奇跡】
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第3回: モンペリエ編
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第5回: ナポリ編
第6回: アバディーン編
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「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です
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