Underdog Leicester GFXGetty/Goal

弱者の奇跡:残留を争うクラブがなぜプレミアリーグを制したのか?/レスター・シティ編

【特別企画:弱者の奇跡】

第1回: レスター・シティ編
第2回: ギリシャ編
第3回: モンペリエ編

第4回: ウィガン編
第5回: ナポリ編
第6回: アバディーン編

プレミアリーグで奇跡の優勝が起きる13か月前、レスター・シティはプレミアリーグの最下位に沈んでいた。

フォクシーズことレスター・シティはナイジェル・ピアソン監督の下で、残留圏まで7ポイントまで広がっていた。

リーグ終盤戦の4月に、ホームで行われたウェスト・ハム戦では、1-1のまま終盤を迎え、ジェイミー・ヴァーディのシュートがアンディ・キングに当たり、ゴールへと吸い込まれた。これがレスターにとって9月以来、シーズン3勝目となったのだ。

2004年に16歳でレスターへと加入したキングが、チームの台頭のきっかけを作ったのは詩的なことだった。キングはリーグ1(3部)時代を知る数少ない選手としてプレーしてきたのだから。

ハマーズに勝利した後、レスターはリーグ戦最後の9試合で7勝を奪取。結果的には降格を楽々と回避し、14位でシーズンを終えたのだった。

Claudio Ranieri Leicester City Premier League 2015-16Getty Images

しかし、成功にも関わらず、ピッチ外の問題によってピアソン監督は解任。後任に就いたのが経験豊富なクラウディオ・ラニエリだった。ラニエリはチェルシーを始め様々なクラブを指揮してきたが、過去19年間で1部リーグのタイトルはなし。レスターへ来る前はギリシャ代表を率いていたが、フェロー諸島に2度の敗北を喫するなどひどい結果で、EURO2016予選途中で更迭されていたのだった。

当然誰もラニエリには期待していなかった。元イングランド代表FWゲイリー・リネカー氏もその一人で、最高レベルで指揮する器ではないと一刀両断。発表当時は「クラウディオ・ラニエリ?驚くべきことに昔からの名前がメリーゴーランドのように、経営陣の間でぐるぐる回り続けている」とツイートしたほどだった。

引き継いだチームは、前年の終盤で好調であったが、後のスター選手たちが大器の片鱗を見せていたわけではない。リーグ戦のトップスコアラーは11ゴールを挙げたレオナルド・ウジョア。ヴァーディは34試合に出場してわずか5ゴールに終わっていた。

現在はマンチェスター・シティでプレーするリヤド・マフレズは4ゴール3アシストにとどまり、中盤のプレーメーカーであるダニー・ドリンクウォーターはトップチームに定着していなかった。

■補強で方針転換

HD N'Golo Kante Leicester City

そこで、レスターは残留争いを回避するため、夏に動く。計3000万ポンド(約40億円)を費やし、フランス2部でプレーしていたエンゴロ・カンテや、ストライカーの岡崎慎司など10選手を迎え入れたのだった。

この新加入選手たちが老将ラニエリにインスピレーションをもたらした。残留のみを目標としていたチームに息吹を吹き込む。

まず、プレミアリーグでは珍しい4-4-2を採用。守備を第一とし、ウェズ・モーガンとロベルト・フートをCBコンビに選んだ。そして、アタッカーで左ウィングとしてボーンマス戦でデビューしたカンテは、守備的MFにコンバート。優れたボール奪取能力を持っていることがすぐに英国中に知れ渡った。

一方で、ドリンクウォーターは懸命に“エンジンルーム”で働く。相手守備陣の裏のスペースに定期的にボールを送り込み、プレーメーカーの役割を担った。マフレズは謎の存在から、卓越したドリブル、フィニッシュ、創造的なプレーを持つ、ワールドクラスのウィンガーに変貌した。

また、ヴァーディは岡崎もしくはウジョアとコンビを込み、エースとして起用されるように。前年からは予想さえできなかったゴールラッシュを記録することになる。

■伝説の逆転劇に

HD Riyad Mahrez Leicester CityGetty Images

最初は残留争いをするように見えた選手たちは、リーグの歴史の中、いやスポーツの歴史において最大の逆転劇を呼び起こすこととなる。

フォクシーズは優勝を果たした2015-16シーズン、全体で3試合しか負けていない。さらに、この3試合の敗戦がそれぞれチームにとって乗り越えるべきハードルとなったのだ。

最初の黒星はシーズン序盤の9月。アーセナルに2-5と逆転負けを喫し、無敗記録は6試合で終わった。ボクシングデーには0-1とリヴァプールに敗れ、2016年に入って早々レスターは首位をアーセナルに譲ることに。その後、再び首位へと躍り出ていたフォクシーズだが、2月には再びアーセナルに敗戦。40分以上を10人で耐えながら戦っていたが、敗れたことで2位アーセナルとの勝ち点差は「2」となっていた。

シーズン終盤となり、不安定さを見せ始めたレスターの躍進は終わったと思われた。強豪に対抗するにはやはり規模が小さすぎた、と。

だが、ここからレスターの選手たちは懸命に戦い抜く。11人の選手がリーグ戦28試合以上に先発していたことからわかるように、資金とリソースに限りはあったが、チームの合言葉となっていた「ハードワーク」で乗り切るのだった。

HD Jamie Vardy Leicester City 07082016Getty Images

ヴァーディは単なるスピードある働き者から、ヨーロッパ屈指のストライカーに。24ゴールを記録し、プレミアリーグのシーズン最優秀選手に輝いた。また、マフレズは17ゴール10アシストという驚異的な成績を記録。カンテは世界最高の守備的MFの一人として知られるようになり、翌シーズンにはチェルシーへとステップアップを果たした。

ラニエリ監督はシーズン中から選手たちにずっと謙虚に戦うことを求めた。決して上を見すぎず、まずは残留を目指し、次第に目標を欧州カップ戦圏内、トップ4、そして優勝争いへと目を向けた。こうした指揮官の姿勢がもたらした影響は小さくないはずだが、5月2日にレスターの優勝が決まった時、ラニエリは父のように“息子たち”の快挙を誇ったのだった。

「誇りに思うよ。選手たちは素晴らしい。彼らの集中力、決断力、そしてメンタリティがこれを可能にした。私は現実的な人間だし、ただ次の試合を勝ちたいとだけ毎回思っていた。こんなことになるなんて思ってもみなかった」

彼らの偉業は決して忘れられることはない。スポーツ界に残る伝説として、今も、そしてこれからも燦然と輝き続けるだろう。

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