AFC女子アジアカップインド大会が20日開幕する。アジアの頂点を決めるこの大会は、23年FIFA女子ワールドカップオーストラリア・ニュージーランド大会の予選も兼ねており、開催地枠であるオーストラリアを除いた上位5チームが本大会出場権を獲得し、次ぐ2チームは大陸間プレーオフに進出する。
アジア3連覇を目指すなでしこジャパンは、昨年11月に行われた欧州遠征メンバーから2名が変更され、FW遠藤純(エンジェルシティFC・アメリカ)、GK山下杏也加加(INAC神戸レオネッサ)が新たに招集された。
今回GOAL Japanでは、GK・池田咲紀子(三菱重工浦和レッズレディース)に大会直前独占インタビューを実施。代表歴7年目の自身、そしてチームが目指すものを聞いた。
■目指すのはアグレッシブなサッカー
昨年夏の東京五輪終了後の8月31日をもって高倉麻子監督が退任し、10月に池田太監督が就任したなでしこジャパン。新監督のもと初の活動として、昨年11月に欧州遠征を行っている。アイスランドに0-2、オランダに0-0のスコアレスという結果に終わったこの遠征で1試合の出場となった池田は、「チームとして細く合わせる時間がない中で、前向きにチャレンジすることをベースに戦った」と振り返る。
無得点で2失点という結果から課題も見えた。
「ゴールを奪うためには、チャンスを逃さない嗅覚や判断力を上げていかなくてはいけない。守備面では、組織で守るのが日本の良さ。その精度を上げていかないと。もっともっと細かなところで全員で声をかけていく必要があると思います」
池田新監督が就任当初から伝えているのは、「ボール奪取を意識したアグレッシブなサッカー」だ。選手たちもそのサッカーに可能性を感じている。池田は言う。
「日本は今までフィジカルで劣る相手に対して、失点しないようにといった受けの守備が多かった。でも、池田監督は守ってカウンター1本、ワンチャンスで決めて勝つというよりも、自分たちからアグレッシブに行くと話しています。そのサッカーに選手たちも前向きに取り組めています。一人ひとりが良い立ち位置を取り、しっかりボールを動かすサッカーが自分たちの強み。監督も目指しているところなので、もっともっとクオリティーを上げていきたい」
(C) Masahiro Ura
■プロとして迎える国際大会
新生・なでしこジャパンはスタッフも一新された。GKコーチには、年代別の女子代表でも豊富な指導経験を持つ西入俊浩(にしいり としひろ)氏が就任。池田は浦和レッズレディースのジュニアユース時代にフィールドプレーヤーからGKへとコンバートされているが、西入コーチは池田がGKとして初めて指導を受けた恩師でもある。
「GKを始めた時からお世話になっていて、『こうして久しぶりに一緒に戦えるのは嬉しいね』と西入さんと話していました。あと私の昔を知っているので『成長したなぁ!』なんて言われることもあります」と笑顔を見せる。「これからも自分の成長する姿を見せながら、代表チームにとってプラスになるプレーでお返ししていきたい」と話すように、恩師との再会が池田のさらなるモチベーションとなっている。
またこの大会は、昨年9月にWEリーグが発足し、女子サッカー選手の環境が大きく変化してから迎える初めての国際大会でもある。池田自身も29歳でプロとなった。
「1日をサッカーに使える時間が本当に増えました。(練習だけではなく)サッカーについて考えたり、頭の整理に使ったりする時間もとても増えたんです。プロ化によってリーグ全体が底上げされたと感じます。選手のクオリティーもこうしてさらに上がってくれば、なでしこジャパンにとってもすごくプラスになると思います」
加えて、「自分自身、プロになったことでさらに勝敗を意識するようになったし、勝利を求められるようになったと感じています」とも話す。プロであるがゆえに周囲からの期待も、プロとしての責任も大きくなる。だからこそ、意識することがある。
「チームでも意識している部分ではあるのですが、うまくいかないことがあってもチームメートを前向きに、ポジティブにプレーさせてあげようとしています。90分で勝ち切るためには、最後までしっかり選手がチャレンジして思い切りプレーすることが大事。ミスをしたとしても、前向きなトライであれば『良かったよー!』と声をかけます。本人も分かっている部分はあると思うので、言い過ぎず前向きに捉えてもらえるように心がけています」
GKは最後尾から常に試合を俯瞰し、後ろからの声かけを誰よりも意識するポジションだ。池田は言う。「攻撃の後押しをする守備を、そのための声掛けを」。
2021年、女子サッカーは変化の連続だった。女子トップリーグのプロ化、JFAの女子サッカー体制と代表監督・スタッフの刷新。そんな変化の中で、女子サッカー選手たちは前向きな思考でチャレンジを繰り返し、目標を持ち進んでいる。その成果が試される女子アジアカップ。グループステージ第1戦となるミャンマー戦は、21日・日本時間17時にキックオフを迎える。
(写真・Masahiro Ura)