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【NXGN】ヤン・ディオマンデ:ハーランド以来のレッドブルで最高の有望株がクロップの下で成長中。リヴァプールとマンチェスター・シティの争奪戦となるか

レッドブルのサッカー界への関与には多くの論争が付きまとうが、若手を即戦力のスターへと育成する実績は否定できない。レッドブル・ザルツブルクとRBライプツィヒが、将来のスター選手を輩出する温床であることはほぼ間違いない。

その育成ラインから次に登場するのが、コートジボワール出身のウイング、ヤン・ディオマンデだ。彼は今夏にスペインのレガネスからライプツィヒに加入したばかりで、つい最近19歳になったばかりであるにもかかわらず、すでにブンデスリーガで輝きを放ち、巨額の移籍金での移籍が噂されている。

では、ディオマンデとは何者か? その卓越した才能の正体とは? GOALが徹底解説しよう…

  • すべての始まり

    ディオマンデはなかなか変わった経歴の持ち主だ。2006年11月14日、コートジボワールのアビジャンで生まれ、思春期にアメリカへ移住した。フロリダ州のユーリー高校でサッカーをした後、14歳でデイトナ・ビーチのDMEアカデミーに加入。メインチームと提携チームであるASフレンジーで交互にプレーし、すぐに注目を集めるようになった。

    DMEアカデミーのシーズン無敗達成に貢献し、ASフレンジーではプログラム史上初のユナイテッド・プレミア・サッカーリーグのプレミア・ディビジョンで優勝を果たして、ディオマンデは2023年STARI年間最優秀選手に選ばれた。

    DMEアカデミーはディオマンデの功績を称える声明で「彼の驚異的なサッカー人生を見てきたものなら、この栄誉は当然の結果だと思う」と、述べた。「ピッチ上での活躍はまさに圧巻で、チームを勝利へ導く決定的なゴールを数多く記録した。卓越した技術のみならず、リーダーシップと不屈の精神をもつ彼は、所属するあらゆるチームにとってかけがえのない存在である」。

    ディオマンデの米国での活躍はスコットランドのレンジャーズの注目を集め、2023年末にはトライアルに参加したものの、正式契約には至らなかった。しかし1年後、当時ラ・リーガに所属し、国際的に活躍できそうだが過小評価されている才能の獲得に注力していたレガネスと2028年までの契約を結んだ。

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  • Yan Diomande Leganes 2024-25Getty Images

    大躍進

    手続きに時間がかかり、ディオマンデがレガネスのトップチームでの出場許可を得たのは2025年3月末のことだった。その直後、彼は大舞台に抜擢される。2-3で敗れたアウェイのレアル・マドリー戦に途中出場してデビューを果たしたのだ。

    その後、ディオマンデはシーズン終了までの残り9試合に出場。3-2で勝利したエスパニョール戦で決勝点を決め、ラ・リーガで得点したクラブ史上最年少選手となった。左サイドから突破し、相手選手をかわしてシュートをGKの足元に流し込んで、歴史的瞬間を作ったのである。得点に喜んだ後に涙を流した理由を、彼は最近になって『シュポルト・ビルト』誌のインタビューで明かした。

    「スペインで契約を結ぶ直前に妹が亡くなったんだ」と、ディオマンデは胸が張り裂けるような告白をした。「母に、次のゴールは妹に捧げると約束した。普段は感情を表に出さない方だけど、得点した瞬間、感情が溢れ出てしまった。今でも妹のことを思い続けている。妹のためにプレーしている」。

    ディオマンデは最終節のバリャドリー戦でも1得点1アシストを記録したが、レガネスはスペイン2部へ降格した。今夏、クラブはライプツィヒが提示した2,000万ユーロ(約36億円)のオファーを承諾し、ディオマンデの売却を決定。DMEアカデミーから獲得した際の移籍金はゼロだったため、この金額は完全な利益となった。

    現在レッドブルのグローバル・サッカー部門の責任者であるユルゲン・クロップからもアプローチを受けていたが、実は、この元リヴァプール監督からの最初の電話には出そこなったのだという。「最初は信じられなかった!」と、ディオマンデは認めている。「リヴァプール時代のクロップ監督をずっと尊敬していた。彼は素晴らしい人物だ。そんな彼が、私がここに来た初日に突然、電話をくれたんだ。最初に出られなかったことを怒っていなかったらいいけど! でも幸い、その後はうまくいった。彼は『君はまだ若い、忍耐強くあるべきだ。君の時代は必ず来る』と言ってくれた」。

  • その後

    ディオマンデは驚異的な急成長を遂げている。レガネスで先発出場したのは6試合だけだったが、数カ月後の今、RBライプツィヒの先発メンバーに名を連ねている。2025年3月までプロとしてはまったくプレーしていなかったというのに。

    ディオマンデはたった1試合で、自分の存在をドイツ中に知らせることになった。ライプツィヒでのデビュー戦となった、DFBポカール1回戦のザントハウゼン戦で先制点を決め、4ー2での勝利に貢献したのだ。初めのうちはブンデスリーガで得点できずにおり、最初の7試合では得点もアシストもなしに終わったが、その壁を破ってからは、ディオマンデの勢いは増すばかりだ。

    10月末、6-0で勝利したアウクスブルク戦で1得点2アシストを記録したことが、この若き選手の得点ラッシュの口火を切った。翌週のシュトゥットガルト戦でも1得点1アシストを挙げ、ブンデスリーガ史上5番目に若い、2試合連続得点選手となった。さらに数日後にはホッフェンハイム戦でも得点を決めている。

    ディオマンデがこれまでに達成した最も注目すべき記録は、ライプツィヒがまたしても6-0で勝利したアイントラハト・フランクフルト戦でハットトリックを決めたことだ。これにより彼はブンデスリーガ史上2番目に若いハットトリック達成者となった。皮肉なことに、彼を上回る史上第1位の選手は、1965年に記録したフランクフルトの元スター選手、ヴァルター・ベクトールドである。

    「自分を誇りに思う。右利きだが左足で決めた。これは成長の証であり、これからも成長し続けないといけないと思う。努力を続け、さらに上達し、より多くの得点を決めなければならない」と、ディオマンデはブンデスリーガの公式サイトで、このハットトリックについて謙虚に語った。

    一方、代表レベルでは、母国コートジボワールでほぼ無名だったディオマンデが瞬く間に国民的英雄となった。ワールドカップ予選の最終2試合で得点を挙げ、2026年北米大会への出場権を勝ち取ったのだ。

    「そんな風に言われても、ただただ信じられない」と、ディオマンデは代表での活躍について語った。「でも一方で、これは決して偶然じゃない。すべてはチームの努力の結果だと思う。この上なく幸せで、誇らしい。代表でプレーするのが最大の夢だった。今、私は祖国でそれを成し遂げた選手のひとりとなった。お手本にしてきたヤヤ・トゥーレのように。そう思うと素晴らしい気分だ」。

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  • RB Leipzig v Eintracht Frankfurt - BundesligaGetty Images Sport

    最大の強み

    ディオマンデはウイングであり、当然、優れたドリブラーになるべき選手であるが、その点において彼はすでに傑出している。今シーズン、ドリブル成功42回はブンデスリーガでトップであり、ヨーロッパの5大リーグで見ても、彼を上回るのはラミン・ヤマル(66回)、モハメド・クドゥス(47回)、キリアン・エンバペ(45回)だけだ。

    「路上でサッカーをしていた。今でも、故郷に帰ると、時には友人と一緒に、路上でサッカーをする。僕はこう言いたい。路上から離れてスタジアムでサッカーするようになっても、路上でのサッカーを忘れたことはない。僕の一部であり続けている」と、ディオマンデは自身のスタイルについて語った。

    ディオマンデは、靴にチョークの跡をつけながら相手選手を抜き去るという昔ながらのスタイルと、得点をとるために内側に切り込むという現代的なスタイルを融合させた、時代を超えた選手である。どちらのサイドでも非常に巧みにプレーするが、本来の右サイドからスタートすることが多い。

    ライプツィヒでの16試合で、ディオマンデは7得点4アシストを記録している。すでに、プロ初年度ながら得点もアシストも2桁を達成する可能性は十分にある。彼のプレーは見た目にも美しく、驚くほど効果的で効率的だ。

    ライプツィヒのオレ・ヴェルナー監督は今シーズン新戦力となったディオマンデに非常に感銘を受けており、こう言った。「彼はトリックを使わずとも、そのダイナミズムだけで相手を抜き去ることが多い。だが私にとってさらに重要なのは、彼がチームのために働き、カウンタープレスに非常に長けている点だ。それは彼の姿勢の問題であり、彼はそれを実際にやってみせている」。

    2025年は出場機会が少なかったにもかかわらず、ディオマンデは統計上の寵児ともなっている。『FBRef』によると、すでに彼はウイングの中で、PK以外での得点で98パーセンタイル(90分あたり0.5得点)、シュートを創出する動きで92パーセンタイル(90分あたり5.21回)、プログレッシブキャリーで97パーセンタイル(90分あたり6.22回)、ドリブル突破の成功で99パーセンタイル(90分あたり4.08回)、相手ペナルティエリア内でのタッチ数で94パーセンタイル(90分あたり6.91回)を記録している。

    さらに、タックル数(90分あたり1.7回)とブロック数(90分あたり1.26回)で88パーセンタイル、インターセプト数で97パーセンタイル(90分あたり0.94回)にランクインしている。簡単に言えば、ディオマンデはピッチの両端で統計的に卓越した能力を発揮しているということだ。彼がアーリング・ハーランド以来のレッドブル育成システムの最高の産物と称される理由は数多くある。

  • Borussia Mönchengladbach v RB Leipzig - BundesligaGetty Images Sport

    伸びしろ

    現在のディオマンデのアシスト数は良好だが、彼のプレーで主に批判されるのは、パスがあまり鋭くなく、ペナルティエリア内でチームメイトを見つける努力が不足していることである。Opta Analystが示す彼のチャンス創出数のグラフを見ると、縦への突破力の欠如が如実に表れている。また、両足ともに強力な選手であるにもかかわらず、クロスにも改善の余地がある。

    得点感覚は優れているが、ディオマンデ自身もこの点を弱点と認めている。「スタイルは爆発的で、スピードがあり、フィジカルが強い。俊敏で機敏で、得点もする。完璧な点取り屋ではないことは承知しているが、まだ19歳だ。時間とともにそれを身につけて、ゴール前でキラーになりたい」と、最近、彼は語った。

    また、10月のボルシア・ドルトムントとの大一番で、ホテルでのチームミーティングに遅刻したディオマンデがメンバー外となった際には、ライプツィヒで騒動が起きた。この出来事は今でもこの若き選手を苛立たせている。「こんなことをしてしまって、今でも自分に腹が立つ。ミスについてはすぐに監督とチームに謝罪した。すべての選手がスケジュール表を受け取り、時間厳守を徹底しなければならない」と話した。

  • Athletic Club v Paris Saint-Germain - UEFA Champions League 2025/26 League Phase MD6Getty Images Sport

    次のニコ・ウィリアムズか

    ディオマンデは、ボールに触れた瞬間に相手を抜き去ろうとする本能を持つウイングの系譜に連なる最新世代だ。今シーズン、マンチェスター・シティで急成長を遂げる前のジェレミー・ドクを彷彿させる若者だとも評されるが、レアル・マドリーのロドリゴも同じような基礎能力を持つ。しかしこのタイプで最も刺激的な選手はニコ・ウィリアムズだろう。

    どちらのウイングも両足が使え、左右どちらのサイドでもプレーができる。相手をどう突破するかによって試合のテンポを遅くも速くもできる。ボールを保持し、攻撃の行方を左右する主役だ。最も注目すべきは、ディオマンデがすでにこれらの年上の選手たちよりもはるかに驚異的な得点力を持っていることである。ウィリアムズとドクの1シーズンのリーグでの最高得点数は6得点で、ロドリゴが2桁得点に到達したのは1度きりなのだ。

    ライプツィヒに加入する前、ディオマンデはレッドブルのもうひとりの若き天才カリム・アデイェミと同列に扱われていた。アデイェミは現在ドルトムントでブンデスリーガにおけるライバルとなっているが、両者とも並外れたスピードを持ち、その速さを活かして裏への抜け出しで直接的な脅威となる能力を備えている。

  • 今後への期待

    ディオマンデがライプツィヒから移籍することはほぼ確実視されており、ライプツィヒはこのウイングに1億ユーロ(約184億円)の移籍金を設定したと報じられている。クロップの助太刀を期待するリヴァプールをはじめ、バルセロナ、マンチェスター・シティ、トッテナム、レアル・マドリーなどがディオマンデ獲得に名乗りを上げている。

    一方、ディオマンデは2025年アフリカ・ネーションズカップに向け、モロッコでコートジボワール代表に合流。プロサッカー選手としての驚くべき初年度を、大陸王者となることで締めくくりたいと考えている。しかし、スターへの道を歩みながらも、彼は地に足をつけた姿勢を貫いている。

    「周囲に導いてくれる人々がいて、リラックスできている」と、ディオマンデは強調する。「僕ら自身が計画していたことだから、驚きはない。来るべき時を待ち望んでいた。物事が順調に進んでいることを神に感謝している」。

    「噂は気にしない。ピッチでの仕事に集中している。結果を出せば噂は必ず生まれる。集中力を保っているし、父やクラブのスタッフの支えがある。だからサッカーだけに集中している」。

    「(コートジボワール代表としてプレーすることは)夢だ。代表チームを見て育った。僕たちは代表選手たちを見て涙を流し、夢を見た。今や、僕たちの方が子どもたちを鼓舞する立場になったなんて、信じられない。祖国を代表できることを誇りに思う。野望は可能な限り勝ち進み、(アフリカ・ネーションズカップの)タイトルを防衛することだ。再び優勝し、トロフィーを守りたい」。

    「(ワールドカップでも)可能な限り先へ進みたい。これまでのコートジボワール代表は苦戦してきた。今回はさらに突き進み、大きな成果を挙げたい」。

    ディオマンデは、サッカーが人生を一変させることを示す生きた証人だ。彼は、まったくの無名から大舞台に立つことを夢見る若き選手たちに、こう助言する。「努力しろ。決して諦めるな。戦い、自らを追い込め。努力こそが君をスターにする。諦めてはならない。最後の最後まで戦い続けろ。それが僕のメッセージだ」。

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