Liam Rosenior GFXGOAL

若手育成の手腕への信頼と戦術への確信:チェルシーが新監督リアム・ロシニアー『教授』に期待すべきこと

ロマン・アブラモヴィッチがチェルシーを率いていた時代、彼らは圧倒的な存在だった。欲しいものを手に入れるためなら、どんな大金も惜しまなかった。現在もクラブには富裕なオーナーが存在するが、プレミアリーグのPSR(『収益性と持続可能性に関する規則』)やUEFAのFFP(『ファイナンシャル・フェア・プレー規則』)による制約があるため、彼らの野心はやや異なるものとなっている。

チェルシーのあらゆる動きは、今この瞬間ではなく長期的な構築を目指していることを示唆している。結果はある程度までしか重要視されず、方針を決定づけるものではない。重要なのは、彼らの資産である選手たちの育成と成長である。

だからこそBlueCoは、傘下に収めたリーグ・アンのストラスブールの監督を、最愛のクラブの指揮官に据える決断を下した。イングランド出身の41歳、リアム・ロシニアーが、スタンフォード・ブリッジでエンツォ・マレスカの後任となった。

ロシニアーを覚えているイングランドのサッカーファンの大半は、彼をプレミアリーグとチャンピオンシップを行き来したDFとして記憶しているだろう。その後解説者となり、2部リーグで指導者としてのキャリアを歩んだ。そんな彼が新監督になり、チェルシーに何をもたらすのだろうか。

  • Huddersfield Town v Derby County - Sky Bet ChampionshipGetty Images Sport

    ルーニーの太鼓判

    2018年、『スカイスポーツ』の解説陣に加わった時のロシニアーは、ブライトンのU-23チームのアシスタント・マネージャーでもあった(2026年にチェルシーから招聘されるのに、経歴にシーガルズでの経験がないのはありえないだろう…)。その1年後、彼はダービーのフィリップ・コクー監督(当時)の下で「トップチーム専門コーチ」に任命された。ダービーに加入する際の記者会見では、ロシニアーの強みが詳細に説明された。

    「トップチームのスタッフとして、ロシニアーは、練習場で選手と共に動き、特に台頭する若手選手の個人的な成長に重点を置くだけでなく、スカウティング部門や分析部門と連携した試合前の対戦相手の分析において重要な役割を担うことになる。また、大半をプレミアリーグとチャンピオンシップで過ごした彼の現役時代の経験から、シーズンを通じて直面する膨大な試合数とスケジュール上の課題に対処するための助言と指導を提供するのに最適な人物である」

    コクーは2020年にダービーを去り、その後ロシニアーは、現役引退後初めて監督職に就いたウェイン・ルーニー新監督のアシスタントを務めた。ルーニーがゆったりとしたアプローチを取る一方、ロシニアーはテクニカル・エリアをせわしなく行き来しながら戦術的な指示を出し、2人は見事な連携を見せた。

    「彼はチャンスを掴んだ。それが報われることを願っている。リアムは私がこれまで共に働いた中で最高のコーチだと思う」と、ルーニーは月曜のBBCの『ウェイン・ルーニー・ショー』で語った。「彼の細部へのこだわり、日々の取り組み方は、私が共に働いた中で最高レベルだ」。

    「リアムは私にとって非常に重要な存在だった。彼の指導能力は驚異的だった。私は監督として選手たちやあらゆる事柄に対応する立場だった。その点で彼から多くを学び、彼は全体的に素晴らしい仕事をしていたと思っている」

  • 広告
  • Liam Delap Liam RoseniorGetty Images

    若手選手の育成

    ロシニアーが初めてフルタイムの監督に就任したのはチャンピオンシップのハル・シティで、2023-24シーズンにチームを7位に導き、実力以上の成果を上げたと広く評価された。当時のロシニアーは、今やチェルシーのストライカーであるリアム・デラップや、元リヴァプールのMFタイラー・モートンとファビオ・カルヴァーリョ、そのシーズン終了後にイプスウィッチ・タウンに1,500万ポンド(約31億円)で売却されたDFジェイコブ・グリーブスなどの若手選手を多用した。

    2024年の夏からはリーグ・アンのストラスブールの監督を務めているが、今シーズンのストラスブールはフランスの1部リーグで最も若いチームであり、平均年齢は22.6歳で、このランキングで2位のオセール(23.5歳)よりも1歳近くも若い。これはBlueCoの広範なサッカー・プロジェクトの一環であり、フランスでは何よりもチェルシーを支援するための策だと見なされているが、若手の育成はロシニアー自身の哲学の一部でもあることは明らかだ。ピッチ上で深刻な規律上の問題を抱えるチームに、ロシニアーが更衣室で成熟度をもたらすことが期待されている。

    「私は監督かコーチか? 両方だ」と、ロシニアーは『ITV』で語った。「コーチングとは教育であり、技術的・戦術的に選手を向上させようとするものだ。マネジメントとは、強い文化を築き、選手に規則と規律を身に着けさせ、正しい方法で管理することだ。英語の『マネージ』を分解すれば『男(man)』と『年齢(age)』、つまり、男たちを成長させることなのだ」。

  • FBL-FRA-LIGUE1-STRASBOURG-ANGERSAFP

    ロシニアーの戦術とフォーメーション

    チェルシーのファンのマレスカ監督に対する主な批判のひとつは、戦術に柔軟性が欠けていることだった。彼のチームは常に4-2-3-1のフォーメーションを採用し、少なくとも1人のサイドバックを逆サイドに配置して中盤で数的優位を創出していた。時折見られる細かな変化を除けば、マレスカ監督のブルーズは予測可能で、低いブロックに対して精彩を欠くプレーになりがちだった。チャンスを作り、自由に得点を重ねるためには、前方に広大なスペースが必要だったのだ。

    ロシニアーはマレスカ監督同様、相手や状況に関わらず、ピッチ全体で常に選択肢を確保しつつ、バックラインからのビルドアップを重視する。ボールを保持している際の「勇気」を頻繁に説き、選手に「すべてを賭ける」姿勢を求める。これはスタンフォード・ブリッジの観客にとって煩わしいかもしれない。彼らは、たとえポゼッションが減り、時には守備的になることになっても、より速いペースのサッカーを好む。特にチェルシーのDFがボールを保持している際に明らかなミスを続けるなら、ホームゲームでの観客の忍耐は大きくはないだろう。

    「教授」の異名を持つロシニアーは、2025-26シーズンの大半で、流動的な3-4-3システムでストラスブールを指揮してきた。身長195cmの俊足ストライカー、エマニュエル・エメガは今夏にチェルシーへ移籍予定だが、ケガがなければ主将として最前線を牽引している。リーグ・アンで7番目に高い52.9%の平均ポゼッション数を誇り、支配的な局面でもカウンターの局面でも相手を崩す能力を持つ。ストラスブールはよりオーソドックスな4バックのフォーメーションも採用することで知られており、不運なルベン・アモリムがマンチェスター・ユナイテッドでそうだったように、ロシニアーが唯一のシステムに固執することはないだろう。

    ストラスブールは若いチームながら、ロシニアーは主力選手の多くを成長させてきた。昨シーズン、チェルシーからレンタル移籍してきてリーグ・アンの有望株として名を轟かせたアンドレイ・サントスは、今シーズン、マレスカ監督のトップチームに復帰した。ファンがチェルシーの育成機関として機能していることを抗議しても、ストラスブールの選手と監督は騒動を乗り越え、今シーズンのヨーロッパの大会への復帰を果たした。クリスタル・パレスを破り、カンファレンスリーグのグループステージを首位で突破したのである。

  • FBL-FRA-LIGUE1-PSG-STRASBOURGAFP

    ルイス・エンリケを感動させる

    ロシニアー監督の下でストラスブールが成し遂げた大きな成果のひとつは、10月にパルク・デ・プランスでヨーロッパ王者のパリ・サンジェルマンと3-3で引き分けたことだった。驚くべきことに、ストラスブールは途中まで3-1でリードしていたのである。

    フランスの首都で1時間以上、ストラスブールはPSGより優れたチームだった。彼らは自分たちの原則を貫き、可能ならばどのエリアでも相手のアグレッシブなプレスを打ち破り、自らのやり方で試合を支配しようと、ホームチームを凌ぐプレーを試みた。勝ち点3を獲得するまであともう少しだったが、勝ち点1に留まった。

    「リアムの仕事ぶりに感動した」と、PSGのルイス・エンリケ監督は試合後にロシニアーについて語った。

    「この試合は厳しいものになると予想していた。ボールの有無にかかわらず、我々は優位に試合をスタートさせたが、前半は不本意だった。後半は改善し、終盤は非常に好調だった。私の第一印象では、あのプレーができるストラスブールはリーグ・アンで最高のチームのひとつだと思う」

  • FBL-FRA-LIGUE1-STRASBOURG-LE HAVREAFP

    欠点とリスク

    どの監督にも言えることだが、ロシニアーにも欠点はあり完璧ではない。今シーズンのストラスブールに対する主な批判は試合終盤に勢いを失うことであり、リーグがウィンターブレイクを迎える頃にはチームはかなり疲弊していた。

    ストラスブールの息詰まるような激しいプレースタイルが機能している時は見応えがある。しかし相手がそれに対する対策を見出すと、彼らは脆弱になる。若さゆえの熱意が災いし、未熟な精神が崩れる場面が度々見られた。主な戦術が滅多に変わらないため、フランスのメディアは、ロシニアーには流れが不利になった際の「プランB」が無いのではないかと疑っている。

    ロシニアー率いるストラスブールは、熱狂的なファンのいるホームのスタッド・ドゥ・ラ・メノの声援がないアウェイ戦では苦戦しがちだ。その反面、ホームのスタジアムを要塞化できる点は明らかな強みだが、チェルシーのようなクラブでは、それは当然の前提とされる。

    後方からのパス回しで屈辱的な失点シーンが発生するのはほぼ確実だろう。同時に、観る者を魅了するチームプレーによる得点も生まれるはずだ。これが、ロシニアーが命運を賭けるリスクとリターンのシステムである。世界有数のビッグクラブというプレッシャーのかかる環境で彼がどう振る舞うかは、まだ未知数だ。

  • FBL-FRA-LIGUE1-BREST-STRASBOURGAFP

    巨大なチャンス

    ロシニアーは、ロンドンのワンズワース出身であり、偉大なルート・フリットに続くチェルシー史上2人目の黒人監督となる。数多くの黒人監督、ましてやイングランド出身の黒人監督がサッカー界のエリート職に就く機会すら得られない時代にあって、ロシニアーがここまで到達したことは大きな勝利である。

    チェルシーはクラブとして、数10年にわたる複雑な人種差別問題を抱えてきた。近年では、かつての汚れたイメージを挽回しようと積極的に取り組んでいる。2023年には『ブルー・イズ・ザ・カラー』と題したドキュメンタリーを制作し、様々な背景を持つファンがこの問題をどう捉えているかを掘り下げた。

    チェルシーの現代史は数多くの黒人選手によって刻まれてきた。ドキュメンタリーの企画者ザイマカ・アウォユンボは『ジ・アスレチック』誌でこう語った。「(チェルシーでは)確かに歓迎されていると感じた。ドキュメンタリーに登場する人々の体験は真実だが、最後に語られるファンのひとりも言うように、(ディディエ・)ドログバ、(マイケル・)エッシェン、ミケルといった選手たちがチェルシーの様々なイメージを示してくれた。『自分はここに属しているのか?』と疑問に思ったことは一度もない。不安を感じたのは、むしろ歴史に関してだ。私個人としては、試合に出る際に(その意味での)問題を感じたことは一度もない」。

    ポール・カノヴィルは1980年代にチェルシー初の黒人選手としてプレーした。当時は人種差別的な暴言を受けたが、現在は自身の名前を冠した財団に人生の大半を捧げ、クラブの差別撤廃運動における重要な声として認識されている。カノヴィルは『デイリー・テレグラフ』紙でこう語った。

    「リアムについて特に印象深いのは、彼がここ(チェルシー)からそう遠くない場所で育ち、プレーしてきたことだ。彼はこのコミュニティを知っている。父親のレロイはスポーツ界の差別対策への貢献でMBE勲章を受章した。まさに我々がポール・カノヴィル財団で若者たちと共に日々行っていることだ。そこには真の共通点がある」

    「子どもたちが、自分たちと同じに見え、同じ地域の出身で、正義のために戦う家族を持つ人物がクラブを率いる姿を見れば…それは非常に力強いことだ。希望そのものだ。子どもたちに道を示すことになる」

  • Chelsea v Liverpool - Carabao Cup FinalGetty Images Sport

    監督就任の意味

    BlueCo時代において、チェルシーの監督という地位は、ますます不安定さを増している。トーマス・トゥヘルはチャンピオンズリーグ制覇からわずか12カ月余りで2022年9月に解任された。その後任として期待されたグレアム・ポッターは、そのシーズン終了すら待たずに去った。マウリシオ・ポチェッティーノが双方の合意の上に退任するまでには少なくとも1年の猶予があった。マレスカはメンタリティと戦術眼の融合が評価されて招聘されたが、外から見れば傲慢になりすぎたようだ。

    だからこそクラブはロシニアーに賭けたのだ。ストラスブールでの実績は評価されているが、これは明らかに飛躍的な昇格である。より現実的な選択は、現在マンチェスター・ユナイテッドが注目しているのと同じ人材を探ることだろう。

    ロシニアーが後任になれば、マレスカと同じリスクに直面するだろう。組織の一員として留まることが求められ、成長してより大きな権限を握ることは許されない。失敗すれば、クラブとスポーツディレクターたちの失策となる。今のオーナーの体制下でこれまでになくリスクの高い人事だ。自らが望むものは何か、慎重に考えるべきだろう。

0