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配信者・加藤純一の心意気。キングス・ワールドカップ「やるからには一つでも勝つ。エンタメの部分は僕が頑張る!」

 ネイマール、マリオ・ゲッツェ、リオ・ファーディナンド、エデン・アザール、そしてズラタン・イブラヒモヴィッチ。錚々たる世界のスターが参加する大会「キングス・ワールドカップ」の日本代表として、配信者の加藤純一氏が選ばれた。

 加藤氏は自身「サッカーに詳しくないし、やったこともない」と語るが、ソーシャルメディアのフォロワーは120万人を超え、ライブ配信の同時接続視聴者数46万人以上という国内記録を保持するなど、配信者としての影響力はとてつもない。5月26日からメキシコで開催される「キングス・ワールドカップ」には、前述のサッカー界のスターとともに、世界各国の著名な配信者も参加する。

 ピケ氏がキングスリーグを立ち上げた目的の一つに、「サッカー」という競技の裾野を広げることがある。そういう点で、多くのファンを抱える加藤氏は最適な存在であるといえるだろう。4月に都内で実施されたMURASH FCのトライアウトの場で話を聞いた。

  • kingsleague-piqueGetty Images

    「なんで僕なんだろう?」

    ——「キングス・ワールドカップ」参加の依頼をお受けされた理由からお聞かせください。ご自身の配信で、ピケ氏から直接メッセージが来たと説明されていました。

     ピケさんなんて言ったら雲の上の存在ですから、最初は本物だと思わなかったんですよ。ニセモノから来たと思っちゃって、しばらく返信をしていなかったんです。でも、どうやら本物だと分かって。僕は主にゲーム実況とかしていて、 実際のサッカーはほとんどやったことがない。「なんで僕なんだろう?」って断ろうかと思ったんです。正直荷が重いなと。

     ただ、そういった中で、「僕の代わりに日本でオファーをかけるとしたら誰なんだい?」ってピケさんに聞いたら、僕以外は今のところ考えていないとおっしゃって。で、出ないのはもったいない。そういう舞台に日本のチームが出場することはすごく価値があると思ったんですよね。

     僕は普段Twitchで生配信していて、 幸いたくさんのかたに見ていただいています。「キングスリーグ」はスペインで大人気のコンテンツだと思うんですが、日本ではまだまだです。(この競技を)少しでも多くの人に伝えたいという考えから、ピケさんは多分僕にオファーをしてくれたんだと思います。

     あまり偉そうなことは言えないですけど、今後同様な大会があって、僕以外がオーナーになったとしても、そういう実績があったほうが今後のためになるかな、とも思って受けさせていただきました。

    ——サッカー以外の部分での影響力ですね。まさにその通りのことがありました。GOALのソーシャルメディアのフォロワーさんは、ほぼサッカーファンです。先日、加藤さんがキングス・ワールカップに参加される告知のティザー動画を投稿したら、ものすごいインプレッション(430万)が出たんです。

     それは嬉しい!

    ——普段とは違う層に届いたと感じました。

     本当ですか。一応それくらいしか僕できないので(笑)。

    ——今回のお話が来てから、サッカーに対する見方や思いは変わりましたか?

     やっぱり変わりましたね。僕が(プレーを)やるわけではないですけど、自然と目が向くようになって、試合を見たりしています。いま日本人選手もすごいじゃないですか。海外で活躍している選手がいっぱいいて、同じ日本人として誇りに思います。そういう選手たちは分け隔てなく、応援して見ていますね。

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  • 20240501-junichi-kato-kingsworldcup-2Yuki Nagao

    実はすごいプレッシャーがある

    ——現在、eスポーツチーム「MURASH GAMING」のオーナーをされています。サッカーチームのオーナーとは感覚が違いますか?

     全然違います。やっぱりインターネットはこの現実の世界に比べたらだいぶニッチで、小規模なコンテンツだと思っているからです。『VALORANT』(ヴァロラント)って知ってますか?

    ——ごめんなさい、あまり詳しくありません。

    『VALORANT』はゲームなんですが、「MURASH GAMING」の選手はその『VALORANT』『スマッシュブラザーズ』というゲームのプロゲーマーさんとか、ちょっと狭い世界で活躍されています。僕もそうなんですけど、インターネットの中だけで活動しているので。

     でもサッカーって、「サッカーって知ってますか?」って聞いて、「分からないです」って言う人は多分いないですよね。なので、そういったたくさんのかたに興味を持っていただけるようなジャンルでやることは、すごいプレッシャーがありますね。全然違うと思います。

    ——サッカー側の人間からすると、今日のトライアウトのTwitch生配信43,000人の同時視聴は驚異的でした。先日、味の素スタジアムで行われた東京ダービーの観客は31,746人でした。リアルで4万人は簡単に集められないです。

     お手軽はお手軽ですからね。認知さえしてくれれば、いっぱい配信を観てくれると思います。 だからピケさん、僕を選んだんだなと思いました。

     元プロサッカー選手や解説者のかた、テレビに出演されているかた、そういったかたがたが(サッカー界にも)多くいらっしゃいます。でも、(キングス・ワールドカップは)そことはまたちょっとジャンルが違うと感じているので、なかなか難しいところはあるのかなと思いました。そういう意味で、僕にオファーをいただいたんだと最近気づきましたね。

  • 20240501-kingsworldcup-japan-tryoutYuki Nagao

    eスポーツチームも「できない」と思われていた

    ——今日、間近でトライアウトをご覧になりましたが、感想を教えてください。

     サッカーって大変だなと思いました(笑)。僕、野球はすごいやっていて、現地に観に行ったりするんですけど、フットサルはありますが、サッカー、しかもこれだけ真剣にやっているサッカーは初めて近くで見ました。「走りながらこんなに声出してるんだ」とか、素人で申し訳ないですけど、「ボールを奪いに行くときはこんなに激しく行くんだ」とか、 素直にすごい。本当に格闘技だなと思いました。

    ——このトライアウトを経たメンバーとメキシコで世界と戦います。目標は?

     僕、eスポーツのゲームチームを持った時も、世間からは「いや、できるわけねえだろ」と言われて、 最初は全然強くなかったんですけど、先月行われた大会、日本で6位までいったんですよ。スター選手ばかり集めたわけじゃない。選手たちが1年間頑張って、そこまで行けたんです。

     だから、やるからにはもう可能な限り勝ちたい。日本で応援している僕の視聴者さんや、今回の記事やネットのニュースを見て応援してくださっているかたたちのために、一つでも多く勝ちを届けたいです。

     ただ、やっぱりエンタメの要素も大きいので、観ている皆さんが楽しめるような試合をしたいとは思っています。 エンタメと勝利とのうまいバランスは難しいと思うんですけど、エンタメの部分は僕が頑張るんで。 選手たちはプレーの部分を頑張っていただきたいなと思っています。

    ◎聞き手:吉村美千代 撮影:長尾優輝(GOAL編集部)/取材協力:キングス・ワールドカップ

    ▶キングス・ワールドカップとは?ピケ主催、イブラ、ネイマールらが出場