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欧州王者の“誤算”は? 今季のチェルシー、期待以上&期待外れの選手トップ5

昨季に9年ぶり2度目のチャンピオンズリーグ(CL)制覇を成し遂げたチェルシー。トーマス・トゥヘル体制2年目でさらなる飛躍が期待された中、クラブ・ワールドカップを制した一方でプレミアリーグではマンチェスター・シティとリヴァプールに引き離される結果に。そして、ベスト8入りしたCLではレアル・マドリーにホームで1-3と敗れたことで窮地に立っている。

直近のサウサンプトン戦を6-0で大勝して迎えるレアル・マドリーとの勝負のセカンドレグを前に、『GOAL』ではイングランドサッカーに精通する田島大氏に、今季のチェルシーの期待以上の選手と期待外れの選手を選出してもらった。今季のチームを牽引、また輝きを放てていない選手は誰なのか。

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  • 期待以上トップ5

    プレミアリーグでは2強の後塵を拝しているが、クラブ・ワールドカップを制してCLでも8強入り。そして、カラバオカップで決勝進出、FAカップでも準決勝まで勝ち残っている。チームを牽引し、「期待以上」のパフォーマンスを発揮してきた5名をランキング形式で紹介する。

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    5.ハキム・シイェシュ

    加入1年目の昨シーズンは怪我の影響もあって期待されたほどのインパクトを残せず、本人も「3バックのシステムでプレーするのは初めてだったので順応に少し時間がかかった」と振り返った。だが2年目の今季は、得意の左足から何度も魔法を繰り出している。1月のトッテナムとのリーグ戦では、右サイドでボールを受けると、左足に持ち替えて巻くようにシュート。ピッチ上は一瞬時間が止まり、全22選手が行方を見守ったシュートは、見事にトップコーナーに吸い込まれた。

    さらに“期待以上”だったのは1~2月に開催されたアフリカネーションズカップに参加しなかったこと。モロッコ代表監督との確執で招集されなかったシイェシュは「いつもベストを尽くすことしか頭にない。正直、他のことはどうでもいい」とクラブチームのプレーに専念した。

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    4.マテオ・コヴァチッチ

    2018年から所属するクロアチア代表MFは、2年前にクラブの年間最優秀選手に選ばれるなど、これまでも高いレベルを維持していたが、頂点に登り詰めた昨シーズンのCL決勝ではスタメンから外されていた。

    そのため今シーズンが“勝負の年”と見られたが、見事に期待に応えて自己最多となるリーグ戦5アシストを記録。簡単に倒れないボディバランスで敵のプレスを回避するボールの運び出しが秀逸で、今年1月のプレミアリーグ第21節のリヴァプール戦では縦横無尽に動き回ってゲームを支配すると、ボックスの外からノーステップのボレーシュートまで叩き込んで見せた。個のパフォーマンスとしては今季プレミアリーグで随一の内容だった。今ではトゥヘル監督も「彼はチームにとってピッチ内外で非常に重要な存在」と信頼を寄せている。

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    3.リース・ジェイムズ

    22歳の有望な右サイドバック/ウィングバックの成長は「予想通り」と言えばそうなのだが、直接ゴールに関与する貢献度については「期待以上」だ。今季は怪我で2カ月ほど離脱する時期もあったが、ここまでリーグ戦で5ゴール6アシスト。欧州5大リーグで得点とアシストがそれぞれ5本を超えているDFは彼しかいないのだ。そしてチーム最多の6度もリーグ公式「マン・オブ・ザ・マッチ」に選出される活躍ぶり。

    強靭なフィジカルに加えて右足のキック精度、とりわけシュート精度の高さが魅力で、イングランドの右サイドバックといえばリヴァプールのトレント・アレクサンダー=アーノルドが話題を集めることが多いが、元イングランド代表DFリオ・ファーディナンドは「どちらが上か分からない」と前置きした上で「得点力ならばリースだ」とチェルシーのサイドバックを称えている。

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    2.トレヴォ・チャロバー

    今季の最大のサプライズは22歳の生え抜きの台頭だろう。シーズン開幕前の欧州スーパーカップでチェルシーでのデビューを果たすと、プレミアリーグデビューとなった3日後の開幕戦でいきなり初ゴール。しかも単なる得点ではなく、ボックスの外から低い弾道の完璧なロングシュート。ゴールが決まった瞬間に熱いものが込み上げたチャロバーは「8歳で入団してからの記憶が脳裏をよぎった」と振り返った。

    チェルシーは夏の移籍市場でセビージャのCBジュール・クンデを獲り逃したが、それを悔やむ者が誰もいないほどチャロバーの活躍は鮮烈だった。その後もCLグループステージのユヴェントス戦でコーナーキックの流れからゴールを決めるなど、シーズン前半戦は“ラッキーボーイ”のような存在でチームの躍進を支えた。

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    1.チアゴ・シウヴァ

    最終ラインではCBアントニオ・リュディガーの活躍も目立つが、そんな周りの選手の能力を引き出しているのが37歳の頼れるベテランだ。3バックでも4バックでも常に最終ラインに君臨すると、冷静なフィードでチームに落ち着きをもたらす。MFジョルジーニョの展開力に依存する必要がなくなったのは彼のフィード力のおかげだ。

    無論、それだけではない。1月にはチェルシーにおけるプレミアでの最年長ゴール記録を更新すると、2月のリーグカップ決勝のリヴァプール戦では、PK戦の末に敗れたとはいえ、延長を含めて120分間、一度もドリブル突破を許さなかった。さらにCLベスト16のリールとのファーストレグでは同大会94戦目の出場にして、自己最多となる12回のボール奪取。トゥヘル監督が「フットボール界のベンジャミン・バトン」と感嘆するのも頷ける。

  • 期待外れワースト5

    昨夏の移籍市場で目玉補強となったのが推定1億1300万ユーロ(約154億円)で復帰したロメル・ルカク。さらにアトレティコ・マドリーからはサウール・ニゲスをレンタルで引き入れたが、いずれも期待外れランキングに入る誤算に。ここまで、欧州王者を昇華させることができていないパフォーマンスに終わっている選手を含め、このランキングに入っているプレーヤーたちが調子を上げれば、さらなるタイトル獲得を近づける要因になるはずだ。

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    5.エドゥアール・メンディ

    レアル・マドリーとのCL準々決勝の第1戦でカリム・ベンゼマに3点目をプレゼントする失態を演じたが、決してそれだけがランクインした理由ではない。今シーズンは“らしくない”ミスが目立ち始めているのだ。12月のウェスト・ハム戦では簡単にボールをクリアせず、失ったボールを奪い返そうとして敵を倒してPKを献上してしまい、トゥヘル監督も「理由は分からないが少し自信を失っているようだ」と同選手の不調を認めた。

    それでもリーグ3位のクリーンシート数を誇る守護神を「期待外れ」と呼ぶのはあまりにも酷だが、加入1年目の昨シーズンのパフォーマンスがあまりにも衝撃的だったため、今季はどうしても物足りなく感じてしまう。

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    4.サウール

    アトレティコ・マドリーからローン契約で加入したスペイン人MFは、チェルシーでのデビューとなった9月のアストン・ヴィラ戦で先発出場するも、ハーフタイムに交代させられて「パスミスやボールロストなど彼らしくないプレーが目立った。彼はこのインテンシティに苦しんでいた」と監督から“失敗”の烙印を押されてしまった。

    本人も「道路の反対車線を運転するなど生活面が全て変わった」と、初めてスペインの首都を離れた生活に悪戦苦闘中だと認めた。年明けから徐々にパフォーマンスは向上しているが、よっぽどのことがない限り推定3500万ユーロ(約48億円)の移籍金を支払って完全移籍に移行することはないはず。“よっぽどのこと”とは、例えばオーナー問題で移籍の取引が制限され、既に約束が交わされている選手しか獲得できない事態に陥ったりする場合だ……。

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    3.アンドレアス・クリステンセン

    10代で母国デンマークを離れてチェルシーの下部組織に入団したクリステンセンは、クラブの英雄であるジョン・テリー以来、初めてトップチームで定期的に試合に出場した生え抜き選手として知られる。昨季は、トゥヘル政権になってから出場時間も増えてCL決勝でも途中出場し、夏のEURO 2020ではデンマークの4強進出に貢献。今シーズンはさらなる飛躍が期待されていた。

    10月のCLグループステージのマルメ戦でチェルシーでのキャリア初ゴールを決めて、本当の意味でテリーの“後継者”へと成長するかに思われたが、今季いっぱいで満了する契約の延長を拒否しておりチームも困惑。アカデミー出身者がクラブの意向に背いてフリーで退団しようとしているのだから、サポーターからすれば、ある意味で「最も期待外れ」の選手かもしれない。

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    2.ティモ・ヴェルナー

    2年前にRBライプツィヒから鳴り物入りしたドイツ代表のストライカーは、加入1年目となった昨季は好機を外し続けてプレミアリーグで「最もゴール期待値を下回った選手」となってしまった(7.43ゴールも下回った!)。2年目こそはブンデスリーガ時代の得点力を見せてくれると期待したファンも多かったはずだが、今季ここまでリーグ戦では一度もゴール期待値を上回る試合がなく、本人も「ゴールを決められないことがあるのに、なぜここまで応援してくれるのか分からない」とファンの声援に首を傾げる。

    だから、彼のことはもう諦めるべきかもしれないが、ドイツ代表では今季も7試合で6ゴールを叩き出しているため、どうしても期待を寄せてしまう。爆発の予感はあるのだが、このまま燻り続ける可能性も高いため、放出候補の一人と見られている。

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    1.ロメル・ルカク

    チェルシーの5シーズンぶりのリーグ制覇に期待した多くの人が、その理由にルカクの加入を挙げたはず。夏にクラブ記録の1億1300万ユーロ(約154億円)でインテルから古巣に戻ってきたベルギー代表ストライカーは、“2度目”のデビューとなった8月のアーセナル戦でいきなりゴールを決めてマン・オブ・ザ・マッチに選ばれる輝きを放った。

    今度こそチェルシーでゴールを量産するかに思われたが、その後は窮屈そうなプレーが続いて、年末にはインタビューで「チェルシーでの現状に満足していない。監督が違うフォーメーションを選択したが仕方ない」と監督批判ともとれる発言を残してメンバーから外されることに。

    極め付きは2月のクリスタルパレス戦だ。「7回」しかボールに触ることができず、ボールタッチの集計が始まった2003-04シーズン以降のプレミアリーグで、フル出場した選手としては過去ワーストという不名誉な記録を樹立してしまった……。

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