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レアル・マドリー戦へ。「“いじり過ぎ”厳禁」ペップのマン・C、初のチャンピオンズリーグ制覇へ必要なこと
(C)Getty Images1宿敵との鬼門の準決勝
まずは準決勝のレアル・マドリー戦だ。バルセロナのサッカーで育ったペップ・グアルディオラにとっては宿敵であり、監督キャリアで4番目に対戦回数の多い相手だ。過去19戦の成績は「11勝4分4敗」とペップにとっては相性の良い相手と言える。シティに来てからも2019-20シーズンのCLラウンド16で対戦し、ホームとアウェイの2試合とも危なげなく勝利した。
CLの準決勝に限ると、ペップがレアルと対戦するのは3度目だ。2010-11シーズンにはペップのバルセロナが、ジョゼ・モウリーニョ率いるレアルを下してそのまま頂点に登り詰めた。しかし、バイエルンを率いていた頃の2013-14シーズンの準決勝は思い出したくないだろう。バイエルンは2戦合計0-5という大敗を喫することに。とりわけホームでの0-4の屈辱は、ペップにとって監督キャリア最大の敗戦の1つとなっている。ちなみに、その時のレアルの指揮官は、今季から再び“白い巨人”を率いているカルロ・アンチェロッティだ。
ちなみにグアルディオラはCLで史上最多の9度目の準決勝進出を果たしているが、過去8回で決勝に進めたのは3回しかない。ペップにとって準決勝は鬼門らしい…。
(C)Getty Images2デ・ブライネを失わないこと
今月13日に行われたCL準々決勝セカンドレグのアトレティコ・マドリー戦でMFケヴィン・デ・ブライネが負傷交代したとき、様々なメディアが彼の怪我を大々的に報じた。それほどデ・ブライネはシティにとって欠かせない存在なのだ。結局、ふくらはぎの怪我は深刻なものではなく、1週間後のプレミアリーグのブライトン戦で復帰すると2ゴールに絡む活躍を見せた。
だが、その間に行われたFAカップ準決勝のリヴァプール戦ではベンチを温め、チームも前半だけで3失点して敗れることに。敗因は他にもあるが、デ・ブライネの穴が響いたのは言うまでもない。1本のパスで局面を打開できる彼の創造性は唯一無二だし、何より今の彼にはチームを落ち着かせる“リーダーシップ”がある。苦しい状況下で檄を飛ばしてチームを牽引するというよりも、彼はプレーで仲間に自信を与える。プレスをかけられても足元でパスを貰い、ボールを運んでチームに推進力をもたらすのだ。
グアルディオラ監督いわくデ・ブライネは「足首に軽い問題を抱えている」そうだが、うまく誤魔化しながらシーズン残り“8試合”を戦い切ってもらうしかない。
(C)Getty Images3いじり過ぎないこと…
これまでシティは、CLで敗退する度にペップの“いじり過ぎ”を批判されてきた。対戦相手を分析して最善策を講ずるのがペップだが、そのせいで普段の力を発揮できないことがあるのも事実だ。とりわけCLの大一番ではそれが目立つ。4年前の準々決勝のリヴァプール戦でセンターバックのアイメリク・ラポルトを左SBで起用して敗れて以降、勝負所での“悪手”を指摘されてきた。
昨シーズンのファイナルでも、それまで60試合のうち59試合でMFロドリかMFフェルナンジーニョを中盤の底に先発起用しながら、決勝のチェルシー戦ではMFイルカイ・ギュンドアンの1ボランチを選択して苦汁をなめた。それが直接的な敗因とは言い切れないが、それでも「監督が決勝の数日前に妙案を思いついたのだろうね」とギュンドアンに皮肉を言われてしまった。
だから今シーズンこそは、選手たちを信じて普段通りの布陣で頂点を目指してもらいたい。それで負けた場合には「なぜ変えなかった」と批判を浴びるかもしれないが、少なくとも選手たちは納得するはずだ。
(C)Getty Images4右サイドバックの穴埋め
いじり過ぎないことが重要なのだが、レアル・マドリーとの準決勝ファーストレグは“いじる”必要がある。シティは「右サイドバックの不在」という今季最大の悩みを抱えて白い巨人とのホームゲームを迎えるのだ。
右SBカイル・ウォーカーは、準々決勝のアトレティコ・マドリー戦で足首を負傷してから直近3試合を欠場しており、レアル戦も欠場へ。さらに両サイドバックをこなせるジョアン・カンセロも累積警告によりレアルとの初戦は出場停止。そして緊急時に右SBの穴を埋めてきたCBジョン・ストーンズも怪我を抱えているのだ。
とりわけカンセロの不在は痛すぎる。同選手は“カンセロ・ロール”と呼ばれる偽サイドバックとしてゲームメイクもできるし、クロスの質も一級品で今季公式戦9アシストを記録しているのだ。デ・ブライネの次にチームに欠かせない存在と言っても過言ではないはずだ。
では、どうすべきか。センターバックを右に置くのか、経験乏しい19歳のコンラッド・イーガン=ライリーを抜擢するのか、ギュンドアンやフェルナンジーニョを急造SBとして起用するのか…そこはペップの腕の見せどころだ。
(C)Getty Images5ストップ・ザ・ベンゼマ
そのレアル・マドリー戦では、キャリア最高潮にある34歳のFWカリム・ベンゼマを止めることが至上命令となる。今季CLでパリ・サンジェルマンとチェルシーがレアルに敗れた理由は、実力差などではなく、単純にベンゼマを止められずにハットトリックを許したからである。ペップの率いるチームがハットトリックを献上したのは過去に3回(リオネル・メッシ1回、ジェイミー・ヴァーディ2回)しかないので、一人に3点も奪われる可能性は低いとはいえ要注意だ。
では、CLの最年長ハットトリックを更新している偉大なストライカーをどうやって止めるのか? まずはパスの出どころを断つことだ。ベンゼマは味方のパスに合わせて絶妙なタイミングで動き出してワンタッチでゴールにつなげてしまう。だから製造ラインを断つことが重要になる。一番の供給源であるMFルカ・モドリッチを完璧に封じるのは難しくても、左サイドのヴィニシウスだけは抑え込みたい。そうなると、やはりシティの右SBが鍵を握りそうだ。
万が一、クロスを入れられた場合にはCBルベン・ディアスの対人能力に期待しよう。ハムストリングの怪我から7週間ぶりに復帰した同選手は、プレミア屈指、いや世界屈指の対人守備を誇るため、必ず何とかしてくれるはずだ。それでも危ないときは、思い切ってPK覚悟で止めても良いはずだ。レアルの9番は直近のリーグ戦で2本もPKを失敗しているのだ…。
(C)Getty Images6確率
ベンゼマを封じて決勝に進めば、シティにとって2年連続2度目のファイナルとなる。チャンピオンズカップ時代を含め、これまでCLで2回以上ファイナルに進出したクラブは21チームあるが、そのうち一度も優勝できていないのは3チームだけだ(アトレティコ・マドリー、バレンシア、スタッド・ランス)。
だから決勝まで勝ち上がれば、確率的に考えて優勝できる気がする。ただし、複数回の優勝を誇るクラブの中にも、最初の2回のファイルで涙をのみ、3度目の正直で戴冠したチームもある。その1つが、グアルディオラの良く知るバルセロナである。彼らは1961年と1986年の決勝で敗れるも、1992年にウェンブリー・スタジアムでの決勝でサンプドリアを下し、三度目の正直で初めてヨーロッパの頂点に立った。もちろん、当時のチームの中心にいたのがペップなのだ!
(C)Getty Images7運命の決戦
ビジャレアルには申し訳ないが、決勝の相手はリヴァプールが濃厚だろう。というわけで、シティが無事にレアルを下して2年連続ファイナルに進出すれば、今回も“イングランド対決”となる可能性は十分。仮にリヴァプールが決勝行きを決めれば、今季リーグ戦で鍔迫り合いを演じているユルゲン・クロップのチームを倒さない限り、クラブ史上初の欧州制覇は実現しない。
これまでの監督キャリアで圧倒的な勝率を誇るペップだが、4回以上対戦しながら負け越している相手が2名おり、それがアントニオ・コンテとクロップなのだ。クロップとはこれまで24回対戦して「9勝5分10敗」。直近の対戦は、前述のFAカップ準決勝での敗戦(2-3)だが、あの試合は参考にしなくてよいだろう。デ・ブライネが不在だったこともあるが、勝敗を分けた一番の要因は守護神エデルソンに代わって出場したGKザック・ステッフェンのミスなのだ。彼がFWサディオ・マネにゴールをプレゼントしなければ勝負は分からなかったはずだ。そしてステッフェンがCL決勝でピッチに立つこともない。
本当にこの2チームの決勝となれば、それまでの選手のコンディションやリーグ優勝の行方など、色々な要素が影響を及ぼすことだろう。いずれにせよ、5月28日にフランスのサンドニで開かれる今季のファイナルは、現時点で世界最高の2チームによる至極の名勝負、となりそうだが…。
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