Newcastle transfer woes GFXGetty/GOAL

イサクの騒動がニューカッスルの移籍市場での苦境に追い打ちをかける。夏の移籍市場最大の敗者となってしまうのか?

ニューカッスルの夏は、期待外れ全部盛りのバカンスかというほど計画どおりに進んでいない。プレミアリーグを5位で終え、チャンピオンズリーグ出場権を獲得したニューカッスルは、『収益性と持続可能性に関する規則』(PSR)の懸念が解消されたことで、移籍市場での大幅な戦力強化が期待されていたが、現時点では拒否と「不満」の連続となっている。

サウジアラビアの公共投資ファンドPIFがほぼ無制限に資金援助をしているにもかかわらず、多くの重要なターゲットが他のクラブへの移籍を選択し、これまでのところ、大きな移籍は1件のみとなっている。さらに悪いことに、チームのスターであるFWアレクサンデル・イサクの去就をめぐる憶測が深刻化し、クラブは、明らかに疑心暗鬼になっている彼の不安を解消するための措置を講じることを余儀なくされている。

希望する選手を獲得できず、移籍期間が終了する前にチームの象徴が去るかもしれないという不愉快な現実に直面するニューカッスルの不満に満ちた夏は、悪化する一方だ。

  • Bryan Mbeumo Manchester United 2025Getty Images

    ターゲットに逃げられる

    今夏のニューカッスルは、注目度の高い移籍の失敗の連続である。現時点での最大の補強は、プレミアリーグのライバルであるノッティンガム・フォレストから5,200万ポンド(約103億円)という高額で獲得したアンソニー・エランガの加入だけだ。それ以外は拒否されることの繰り返しが続いている。

    というのも、ニューカッスルはリアム・デラップとジョアン・ペドロ(ともにチェルシーに移籍)、マテウス・クーニャとブライアン・エンベウモ(ともマンチェスター・ユナイテッドに移籍)に加え、早々にレアル・マドリーへ移籍してしまったディーン・ハウセンの獲得を目指していたのである。

    それでもニューカッスルはアイントラハト・フランクフルトのウーゴ・エキティケ獲得に巨額オファーを提示し、ようやく拒否の連鎖を断ち切るかと思われた矢先、リヴァプールに残酷な形で横取りされてしまった。エキティケはセント・ジェームズ・パークではなくアンフィールドに行くことになったのである。一方、重要なGK候補であったジェームズ・トラフォードは、移籍市場が開く前からバーンリーからの獲得に躍起になっていたにもかかわらず、マンチェスター・シティ行きの噂が強くなる一方だ。

  • 広告
  • Arsenal FC v Newcastle United FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    獲得競争に苦戦

    ニューカッスルは現在の「ビッグ6」荒らしという地位から脱却するため、必死に努力を重ねている。より高いレベルの選手の獲得のために世界トップクラスのクラブと移籍市場で直接対決し、トップ4の常連チームという地位を手に入れて、将来のタイトル争いの基盤を築こうとしているのだ。

    しかし、ニューカッスルは2年連続で厳しい現実に直面している。莫大な資金力とチャンピオンズリーグ出場というおまけがありながら、既存の序列に抵抗するのは難しく、プレミアリーグの財務に関する制約のため、問題を単純にカネで解決することができないのだ。

    マンチェスター・ユナイテッドは、昨シーズンは15位で終わったものの、世界有数のクラブとしての魅力は相変わらず強いし、チェルシーはもちろん、金持ちの遊び場たるロンドンを本拠地としている上に、チャンピオンズリーグ復帰と予想外のクラブワールドカップ優勝で、トップスターたちに「チェルシーは再び上昇気流に乗っている」と思われていると見られている。マンチェスター・シティにはペップ・グアルディオラ監督がいて、ニューカッスルが直面している移行期——金持ちの新興勢力から地に足のついた連続優勝チームへの変革——を完了済みだ。アーセナルにはミケル・アルテタ監督というとてつもない魅力があり、長く遠ざかっているプレミアリーグ優勝をついに果たす可能性が高いため、このチームの一員となることは有意義なことである。

    ニューカッスルは、仕方のないこととは言え、その歴史、地理的立地、真のタイトル争いに参加する可能性において、これらのチームと争うことはできないし、このことは短期的に変わるものではない――たとえ絶対的な支配を可能にするだけの資金力が実際にあったとしても。

  • Celtic v Newcastle United - Pre-Season FriendlyGetty Images Sport

    「本当にイライラする夏」

    こうした状況について、エディ・ハウ監督は不満を隠そうとしていない。おそらく、ニューカッスルの上層部に移籍市場で何らかの行動を起こさせようと意図があってのことだろう。プレシーズンの親善試合でセルティックに0-4の大敗を喫した後の会見で、監督は遠慮のない発言を続けた。

    「本当にイライラする夏だ」と、彼は認めた。「複数の選手と契約寸前までいったが、様々な理由から契約に至らなかった。契約できない理由はひとつではない。契約できなかった選手たちは、チームに違いをもたらす存在だった」。

    47歳の監督は、クラブが移籍市場で最高の選手たちを引き付けるのに苦労していることも強く示唆した。「移籍において最も重要なことは、選手に、ニューカッスルに来たいと望まれることだ。私たちは非常に誇り高いクラブであり、自分たちの仕事に誇りを持っている。選手たちもそのことを感じなければならない。もしそう思えないなら、理由は何であれ、それは健全な移籍ではないと思う。これまで私たちが獲得し、私たちと共に大成功を収めた選手たちはみな、自ら望んで移籍してきた選手たちだ」。

    最後に、やや暗いトーンで監督はこう言った。「私は自信があるというより希望を抱いている。なぜなら、私たちは移籍市場やエージェント、選手、他のクラブに支配されているのではないからだ。皆さんに保証できるのは、私たちが100%全力で取り組んでおり、迅速に行動しようとしているということだ」。

  • Alexander Isak Liverpool Newcastle 2025Getty Images Sport

    悪化する一方

    ニューカッスルにとって、この移籍市場における持続的なメリットは、チャンピオンズリーグ復帰とそれに伴う収益を確保したことで、『収益性と持続可能性に関する規則』(PSR)に準拠するための売却を迫られる状況にないことだと考えられていた。だから、昨シーズン27得点を記録し、契約が3年残っている、カリスマFWイサクは売却の対象外と見られていたのだ。ところが、クラブがこのスウェーデン代表選手は売却対象ではないと主張しているにもかかわらず、状況は急速に変化した。

    まず、リヴァプールがイサクを獲得するためにプレミアリーグ記録となる1億3,000万ポンド(約258億円)を支払う用意があることが明らかになり、大きな波紋を呼んだ。ニューカッスルのサウジアラビアのオーナーたちは、このオファーをクラブに拒否させるべく介入したと伝えられているが、それで話は終わらなかった。

    その日遅く、サウジアラビアの巨人アル・ヒラル(ニューカッスル同様、同国の公共投資ファンドPIFが所有するクラブ)が、25歳のイサク獲得のため、巨額のオファーを検討しているとの報道があった。興味深いことに、そのニュースはリヴァプールの件ほど軽視されず、ハウ監督はこのスター選手を巡る激しい憶測を受けて、セルティックとの親善試合前にイサクを帰国させる措置を余儀なくされたのだった。

  • Newcastle United FC v Nottingham Forest FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    「100%はっきりとしたことを言うのは難しい」

    この決定は、全体として、イサクやクラブへの注目度をさらに強める結果となったが、監督は「自信を持っている」と述べ、イサクは9月2日の移籍期限が過ぎてもニューカッスルにい続けると主張している。

    「私がそう決めたのだ」と、ハウ監督はグラスゴーでの敗北の後、認めた。「彼を取り巻く噂を考慮し、彼を自宅に帰すことにした。本人がスタンドで試合を観戦するのをまったく望んでいなかった。それでは彼に悪いと判断した。しかし、移籍市場が終わっても彼がニューカッスルの選手であることは確信している」。

    「確かに、彼と話し合いをしたが、それは特別なことではない。選手のキャリアを尊重しているし、選手生命は短いことを知っている。アレックスは本当に良い選手で、練習もよく頑張っている。彼を取り巻く騒動があることは知っている。このチームにはかけがえのない選手が何人かいる。トップ選手は、見つけるのも、獲得するのも、育てるのも非常に難しい。だから、そういう選手を手に入れたら、大切にしなければならない。彼をチームの一員として残したいと切望するのは当然だ」

    「どの選手についても、100%はっきりとしたことを言うのは難しいと思う。サッカーは予測不能なスポーツであり、今ここで明言することはできない。しかし、アレックスはニューカッスルで幸せにやっている。彼は一緒にプレーする選手たち、スタッフ、チームを愛しており、私と彼の間には何の問題もない」

  • Newcastle United FC v Everton FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    不透明な状況

    ニューカッスルの苦境は、リヴァプールが迅速に焦点を移し、主要なターゲットであるエキティケに注力したことでさらに深刻化した。エキティケは、ニューカッスルが提示した6,700万ポンド(約132億円)のオファーをフランクフルトが拒否し、7,900万ポンド(約156億円)の移籍金で移籍が決まった。これにより、ニューカッスルはチームの要である選手を失うだけでなく、もうひとり、主要な移籍ターゲットも失いつつあるのだ。

    さらに事態を悪化させたのは、イサクについての新たな報道である。今夏の退団希望をクラブに通達したとされ、セント・ジェームズ・パークの雰囲気はさらに悪化した。

    さらに、イサクの代理人も「イサクが移籍するか、ニューカッスルに残るかについて、詳細は明かせない」と述べている。

    もちろん、代理人の言葉は、現在のクラブからより良い条件を引き出すための明らかな策略である可能性もある。翌日、イサクがニューカッスルに残るために週給30万ポンド(約60万円)の契約を要求していると報じられた。

  • إيلانجاGetty Images Sport

    溝は埋まるか

    ニューカッスルは現在、移籍市場での補強争いに加え、スター選手の引き留めという困難な状況に陥っている。彼らのジレンマは、この2つの問題が密接に絡み合っており、前者(補強)が後者(スター選手の残留)に大きな影響を与える点にある。

    そのことはハウ監督も認めている。「もちろん金銭問題は大きな要因である。そう思わない人は現実を見失っていると思う」と、彼は述べた。「私たちはリーグで最も高額な報酬を支払うクラブではない。なぜなら、最も多くの収入を稼いでいないからだ。だから、『収益性と持続可能性に関する規則』に従わなければならないし、慎重に行動しなければならない。現在所属する選手の給与を管理する必要があり、こうしたことすべてが、誰がこのクラブに来る気になってくれるかに影響する」

    忘れられがちだが、昨夏のニューカッスルは、チェルシーからのレンタル移籍後に買い取り義務を果たしたルイス・ホールの獲得を除けば、ほぼ大きな補強を行わなかった。それにもかかわらずチャンピオンズリーグ出場権を獲得し、カラバオ・カップで優勝して70年ぶりに国内タイトルを手に入れた。

    ニューカッスルにはその快挙を再現したり、さらに一歩進めたりする能力を持つ監督と選手たちを擁しているが、夏の移籍市場でターゲットとした選手からの拒否と「イライラ」を経て、ハウ監督がクラブに「賢明」な移籍戦略を求めるのは当然である。それは、イサクやブルーノ・ギマランイスに続く才能を発掘することかもしれないが、その中心はチームのスターFWを保持することである。今こそ、手遅れになる前に目標と希望を再調整する時だ。