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話題性抜群だったレアル・マドリー戦。しかしPSGを取り巻くのは「切羽詰まった感」

今シーズンのパリ・サンジェルマン(PSG)の真価が試される一戦として、15日のチャンピオンズリーグ、ラウンド16レアル・マドリー戦は、フランス国内でも注目を集めている。

一昨シーズンはファイナル、昨シーズンは準決勝と、PSGは連続でベスト4までたどり着いた。そこへリオネル・メッシという最強の戦力が加わり、おまけに初戦の相手がメッシにとって昔年のライバル、レアル・マドリー。話題性としてこれ以上の条件はない。

のはずだった。しかしいま現在、PSGを取り巻いている感情は、そうした「期待」寄りの空気ではなく、「ここで結果を出さねば後がない」といった「切羽詰まった感」だ。

1月31日、フランスカップのラウンド16でニースにPK戦の末に敗れて敗退した後、ウルトラス集団の怒りが爆発。「もう我慢の限界だ」とSNSに投稿し、マドリー戦の4日前に行われたレンヌ戦では、ゴール裏を定位置とする彼らが観戦を約30分ボイコット。途中から入場すると、「こんなやる気のない選手のために俺たちは歌っている。ナメるのもいい加減にしろ」といった辛辣な横断幕を掲げて猛アピールした。

「マウリシオ(ポチェッティーノ)が来てから、俺たちは後退し、停滞している」というのが彼らの声だ。

昨シーズンの冬に着任して以降、ポチェッティーノは2020-21シーズンのリーグタイトル、今季初めのスーパーカップ、そして今季のフランス杯と、 すでに3つのトロフィーをとり損ねている。

そうした実質的な成果に加えて、メンバーがコロコロ変わって定着しないラインナップ、おかげでいつまでたってもオートマチズムが生まれず面白みのない試合内容と、サポーターの不満は高まる一方。怒りの矛先は、ポチェッティーノだけでなく、「やる気がない選手」、「すぐに監督を変える一貫性のない経営陣」などなど、クラブ全体に及んでいる。

■魅力なき今季のPSG

Lionel Messi, Kylian Mbappe, Marco Verratti - PSGGetty

「やる気がない」のかどうかはともかく、たしかに、今シーズンのPSGの試合は見ていて非常につまらない。

リーグ戦ではまだ1敗で、2位のマルセイユに勝ち点13差をつけて単独首位、という成績がそれをカムフラージュしているが、毎試合、場当たり的なゲーム内容で、メッシの存在もまるでかすんでいる。

前述のレンヌ戦も、相手の周到な守備網に見事に封じられ、アディショナルタイムに相手のパスミスから得たチャンスで、キリアン・エンバペがカウンターから1点奪っての辛勝だった。エンバペのような選手がいればそうした勝ち方ができてしまうから現在の順位につけているが、93分までチーム全員で必死に応戦したレンヌ側のパフォーマンスのほうがよほど見応えがあったと誰もが感じる内容だった。

単純に、戦力的にはPSGにはマドリーに勝てるだけの力は十分にある。レンヌ戦のように相手が守備寄りではない、オープンな試合になれば彼らの真骨頂。グループリーグ第2節でマンチェスター・シティを2-0で破った試合でも、相手に勝てそうな気配を与えなかった。

この試合はエンバペ、ネイマール、メッシのトリオが揃って登場し、メッシがエンバペのアシストから加入後初ゴールを挙げている。

Kylian Mbappe Lionel Messi PSG Ligue 1Getty Images

メッシは、今シーズンこれまで先発出場した18試合で、PSGが得点した31得点の約半分の15点に絡み(7得点8アシスト)、チャンピオンズリーグでは、出場した5試合で計5得点と、より存在感を示している。

前半は小さなケガや代表戦での長期移動もあってパフォーマンスが安定しなかったが、コロナ感染から復帰後の直近の3試合では1得点3アシストと調子は上がっている。

当初は右サイド、その後はアンヘル・ディ・マリアと共存すべくエンバペの後ろでセカンドストライカー的な役割、3トップの真ん中で「偽9番」と、ポジションは定着していないが、エンバペとの相性も試合を重ねるごとに向上している。リーグ・アンでは、「作り手」になることが多く、周りのシュートチャンスを引き出しているが、チャンピオンズリーグでは血が騒ぐ、といった感じで自らガンガン攻めていくから、宿敵・マドリー戦では「PSGのメッシ」の本領発揮が見られるかもしれない。

攻撃の柱であるエンバペ、そしてメッシに加えて、この試合でPSGのキーマンとなるのはマルコ・ヴェッラッティだ。前監督の頃より高めの位置でプレーすることの多い彼は、PSGのシュートチャンスのほぼすべてに絡む「まわし役」だ。

11月28日のサンテティエンヌ戦で足首を負傷して以来、欠場しているネイマールは、ようやく全体練習に復帰し、メンバー入りはできる見込み。そして2月6日のリール戦で左ふくらはぎを痛めて退場したディ・マリアもすでに回復している。しかし頼みのセルヒオ・ラモスは、ふくらはぎのケガが長びき、古巣戦は欠場となる。

■指揮官の決断がどう転ぶか

Mauricio PochettinoGetty

残念なのはポチェッティーノが左サイドバックのフアン・ベルナトを、CL登録メンバーの25人から外したことだ。

昨シーズンのはじめに左膝の十字靭帯断絶の大ケガを負って約13か月間療養していたスペイン人DFは、昨年10月にようやく実戦復帰した。

今シーズンは、夏にスポルティングから期限付きで獲得した19歳のヌーノ・メンデスが先発の座を獲得しているが、元ウインガーで攻撃マインド旺盛な彼は、守備面でミスをやらかすことも少なくない。その点ベルナトは安定感がある上に、独特のポジショニングセンスを持ち攻守で地味に良い仕事をしてくれる。

自国で育成された選手以外は17人の枠しかないため、「単純に数の問題」で外したと指揮官は理由を語ったが、PSGファンの間では「外すならイカルディだろ!」という反論も上がっている。この決断がどう転ぶか。

ポチェッティーノはサポーターに、「いまこそひとつになるとき。とにかく結果を出すことが大事ないま、どうかひとつになろう」と呼びかけているが、それはパフォーマンスで示してほしい、と彼らは願っているはず。

2017-18シーズンに同じラウンド16でマドリーと対戦したときは、合計2-5というスコア以上に、クリスティアーノ・ロナウドを中心とした相手の決勝トーナメントでの経験値に圧倒されての完敗だった。

しかしCL決勝戦も経験するなど大きく成長したエンバペと、メッシが加わったPSGは、4年前とは別次元のチームになっている。それを証明するためにも、PSGにとって絶対に負けられない一戦となる。

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