カタール・ワールドカップ(W杯)の日本代表メンバーである守田英正。川崎フロンターレ、サンタ・クララを経て現在はポルトガルビッグ3の一つ、スポルティングでプレーする。リーグ戦はもちろん欧州CLといったレベルの高い環境での経験は、明らかに日本代表においても守田を進化させている。GOALでは、川崎F時代から守田を追ってきた記者によるインタビューを実施。代表への思いや日本代表ドイツ遠征での手応えに続く最終回は、来るカタール大会について話を聞いた。(聞き手:林遼平)
■すべてはドイツ戦に懸かっている
ドイツ遠征で一定の収穫…特に守備面での収穫を得た日本代表だが、すべてはW杯本戦でいかにその手応えを生かすかに懸かっている。元ポルトガル代表MFである、ルベン・アモリン監督による緻密な戦術を駆使するスポルティングでの経験により、プレーヤーとしての戦術眼の幅を広げる守田。その目線は至ってシンプルだ。「自分が出た試合で勝つ」。それはW杯でも変わらない。
――W杯に向けてより突き詰めるところとは?
やはり突き詰めるところは守備だと思います。例えばドイツがUEFAネーションズリーグでハンガリーとやった試合は、ハンガリーがガチガチの5-4-1のブロックを作ってカウンターを狙っていました。実際にハンガリーはずっとそのやり方をやってきているので、ある程度の情報をドイツは前もって持っていたわけです。それなのに、完全にそれがハマっていた(1-0でハンガリー勝利)。
とすると、ドイツはあの戦いを嫌がっているし、対ドイツを考えたときの最適解だと言っていい。だから、5-4-1のブロックを敷く戦い方を初戦までに持っていくのもありだと思います。これまでも何度か試した布陣ですし、最終ラインにはどのポジションにも身体能力が高くて足が速い選手がいるので、そういう形もあり得るかもしれません。
――本大会ではどんなアクシデントが起こるか分からないですし、いろんな準備をする必要がありそうですね。
それはやはりあると思います。例えば、本番でいきなり(自分が)アンカーで起用される可能性もあるかもしれません。だから、「その時になって慌てないように」と言うのは常に考えています。W杯は「うまく対応できなくて負けました」で受け入れられるような大会ではない。自分自身に関してもケガに対して本当に集中しないといけないと思いますし、どんなことが起きても対応できるように準備していきたいと思っています。
――グループステージではドイツの他にコスタリカ、スペインと戦います。
もちろん他のチームの強さは分かっていますが、それでも初戦がすべてだと思います。チームとしてもドイツが一番難しいと話していますし、ただでさえ難しい相手が初戦なので、そこの入りをどういった結果で終えるかは非常に重要だと思います。
――代表とクラブでは試合に向かう姿勢のところでも違いがあると思います。どのようにバランスを取っていますか?
プレーに関しては、心のどこかで自分が良ければではないですけど、物事をあまり深く考え過ぎないようにしています。だから、逆に落ち着けると思うんです。言ってしまえば、自分が活躍してチームを勝たせられるならそれでいいんです。むしろ、それ以上のことで、自分にできることはないと思っています。代表では自分が出た試合で勝つということを常に考えています。
■日本代表の価値を上げるために
(C)Ryohei Hayashi▲ポルトガルで称賛を浴びる。
今回のカタール大会は冬開催となったこともあって、欧州リーグはシーズン真っ最中、Jリーグはイレギュラー日程で11月中にすべての公式戦が終了。日常から世界最高峰の「祭典」への切り替えがなかなか難しいのも事実ではある。
日本代表はすでに現地・ドーハに移動しトレーニングを重ねており、11月17日に本大会前最後の国際親善試合をカナダと戦う。そして同23日にドイツ、同27日にコスタリカ、そして12月2日にスペイン代表とグループステージで対戦。このW杯で「結果」を出さないと、日本代表の価値が上がらないと守田は断言する。
――W杯が目前に迫っています。どういう大会にしたいと考えていますか?
いま、日本のサッカー界全体が盛り上がりに欠けていると感じています。だから、このW杯を通してもっとサッカーに対しての興味だったり、サッカーそのものを知らない人がサッカーを知ったり、もっと好きになったり、そういうきっかけとなる大会にしたいと思っています。そのためには結果を残して、「サッカーの日本代表はすごいんだ」ということを知ってもらいたい。
日本代表の価値というか凄さというか、それは結果を出さないとついてこない。子どもたちは日本代表と聞けばすごいと思ってくれますし、自分が代表を見ていた時とあまり変わらないと感じていて。でも、大人の一般の人たちがもっと盛り上がってくれれば、より興味を持っていただけるかなと思っています。正直、今はスポルティングの選手の時のほうが周りに良い顔ができるんです。それはおかしいと思いますし悔しいので、結果を残したいです。
――チームとしてはベスト8以上を目標に掲げています。
みんなベスト8に行きたいと言いますが、それはそこまで行ったことがないからそういう言葉が出てくると思うんですけど、僕はやはり普通に優勝したいです。そもそもベスト8に入るためにW杯に出るわけではない。結果的に優勝を目指した上で、ベスト8以上の成績を残せたら良かったという話ですが、前提としては優勝しに行きたいんです。
グループステージはこれだけ強い相手になってしまいましたけど、優勝を目指すなら最終的に戦わないといけない相手ばかり。それがグループステージの段階で対戦しなければいけなくなっただけだと思っています。結局のところグループステージを突破してベスト16で負けた場合と、グループステージを突破できないのは、僕からしたらもはや一緒。そこに大きな違いはなくて、もっと上を目指して戦っていきたいんです。
それにすごく今の代表チームは良いメンバーが揃っています。僕も色々と言うほうですけど、全然聞く耳を持たないとかではなく、しっかりと受け入れてくれます。そういう日々のコミュニケーションの一つをとっても良いメンバーだなと。みんな各々やってきたことや経験がありますし、欧州でプレーする選手も多くて自分の意見を持っている。だから、レベルも高いですし、全然奇跡ではなく計算して、実力で上に上がっていけるチームだと思います。
Profile
1995年5月10日生まれ。大阪府高槻市出身。ポジションはMF。177cm/74kgの右利き。高槻清水FC-9FC高槻-金光大阪高-クラブ・ドラゴンズ-流通経済大を経て、2018年に川崎Fでプロデビュー。初年度からレギュラーを確保して18年、20年のJ1リーグ制覇に貢献した。21年1月よりサンタ・クララ、22年7月にスポルティングへと完全移籍。日本代表としては18年9月11日、森保一監督初陣のコスタリカ戦でデビュー。21年3月のW杯アジア2次予選から本格的に定着し、カタールW杯でも中心としての期待を背負う存在。


