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馬渡和彰という人間。苦い経験を糧に、J3からJ1王者へ這い上がった男の新たな挑戦

新シーズンの幕開けを告げるFUJI XEROX SUPER CUP 2019が16日に埼玉スタジアムで行われ、2018年明治安田生命J1リーグ王者の川崎フロンターレが、天皇杯王者の浦和レッズを1-0で破り、今季初タイトルを獲得した。

この試合で新加入の馬渡和彰が、70分にマギーニョと代わって出場。サンフレッチェ広島から完全移籍で加入したレフティが、新天地で公式戦デビューを飾った。左右のサイドバックをこなす27歳DFのプロキャリアの原点は、J3のガイナーレ鳥取だった。

■今でも忘れない“苦い経験”

「めちゃくちゃ緊張しました。監督の言葉も耳に入らないぐらい」

27歳にして自身初のタイトルを獲得。「初めてのタイトルなので非常にうれしく思っています」と喜ぶ反面、苦笑を交えながらそう話した。緊張の理由は、「今でも忘れない」という広島在籍時に経験した苦い思い出だ。やっとたどり着いたJ1の舞台での初出場は、昨季の第4節。ジュビロ磐田との一戦で80分からの出場だった。

「初めて出たときに緊張し過ぎて相手のフォワード(小川航基)にバックパスしてしまって…。ラスト10分ぐらいで出て、そこから当分出番なかったですから」

2014年に東洋大を卒業後、プロとしてのキャリアをスタートしたのはJ3のガイナーレ鳥取だった。その後、ツエーゲン金沢(J2)、徳島ヴォルティス(J2)、広島(J1)と、J3からJ1まで這い上がってきた。その苦労が結実したと思えた瞬間、緊張してしまうのも当然だ。

広島に移籍し、やっと掴んだJ1の舞台でのリーグ戦出場はわずか4試合。だが、そんな苦しい状況も「歯を食いしばって、どうすればいいかを自分自身に聞きながら」ひたすら己に向き合うことで、愚直に突き進んだ。そして、シーズン終盤に出場機会を得る。広島でもっとやれる、という手ごたえはあったが 、「僕の人生はチャレンジ」と、Jリーグ王者からのオファーを受け入れ、新天地でのプレーを選択した。

■プロのあるべき姿を再考させられた徳島時代

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着実にステップを積み重ねてきた馬渡だが、徳島時代にはネガティブな形でその名を知らしめることになった。

2017年4月のJ2第10節の千葉戦で自身の焦りからボールパーソン(ボールボーイ)を小突いてしまい、一発退場するという愚行を犯している。この行為は問題視され、大きな議論の的となった。馬渡自身も2試合の出場停止処分を受け、クラブへの抗議の電話も相次いだ。試合後には真っ赤に目を腫らし、謝罪の声を絞り出していた姿を筆者も覚えている。

当時のことについて問われると、「悪いことは悪いと受け止めながら、それで終わってしまったら何もない。次にどうするか、人間性のところも含めて改善し、人間力を高めたい。そうすることで人として、サッカー選手としても成長できると思う」と、自戒の念を込めていた。そして、徳島時代は「本当に自分にとってかけがえのない1年だったし、そこで悔しい思いもした」と、プロとしてのあるべき姿を再度考える時間であった。

「失敗からどう学んで自分が行動を起こしていくか。まだまだですけど。どんなところでも人間力を含めて、普段からいろんな面で向上心を常に持って、プレーしていきたい」

■右サイドバックはチーム屈指の激戦区

サイドバックを主戦場とする馬渡は、右も左もこなせるユーティリティプレーヤーだが、ゼロックス杯では右サイドバックとしてプレーした。「Jリーグで一番良い右サイドバック」と馬渡自身も認める、絶対的な右SBだったエウシーニョは清水エスパルスに移籍したものの、サイドバックは依然としてチーム屈指の激戦区である。そのエウシーニョが空けたレギュラーの座を、この試合で先発したマギーニョと争うことになる。

鬼木達監督は、川崎Fのサッカーにとって右SBは重要なポジションであることを明言している。マギーニョ、馬渡の両者に対して「まだまだここから」と成長を求め、「二人だけではない」とさらなる競争を匂わせている。

だが、馬渡は「マギーニョはマギーニョ」とあくまでも自分のペースを崩すことはない。

「自分に矢印を向けて、自分に何ができるのか、なぜこのチームに呼ばれたというのをしっかり考えて、後は成長するところは成長して、自分は自分らしく、新しい川崎の右サイドバックとしてしっかり認めてもらえるように頑張りたい」

そして、「オーバーラップ、推進力。エウシーニョみたいに、足元はあまり得意じゃないので、うまい選手に預けて走る、ポジションを取るというところはやっていきたい。右も左もできるし、得点感覚は他のSBよりも優れていると思う」と自信の特徴をアピールした。

そのうえで、「(徳島と比べ)選手個人のクオリティはかなり川崎のほうが高いです。広島と比べてもかなり高い。そこに入って順応して、自分のストロングを出したい」と力を込めた。

失敗もしてきた。大勢の観客の前に緊張もする。試合後に自身のインスタグラムで「#普段はうぇーいって感じだよ」と呟く“チャラさ”も、繊細さも持ち合わせる今どきの若者かもしれない。J1王者でのプレーもまだスタートラインに立っただけ。

だが、徳島で発揮していた本来の持ち味である躍動感のあるプレーを存分に見せることができたとき、川崎Fの右サイドは、これまでとは違った新たな武器を手にすることになるはずだ。

取材・文=大川佑

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