※第1回はこちらから
・日本陸上界のエース・山縣亮太選手「武藤嘉紀くんに刺激をもらっています」/独占インタビューVol.1
インタビュー=松岡宗一郎
■日本代表を見て「何やってるんだ、自分は」
(C)Getty Images——少し前の話になりますが、ロシア・ワールドカップは結構ご覧になっていましたよね?
はい、見ていました。
――大会前、日本代表の評価はあまり高くありませんでしたが、グループリーグを突破してベスト8にあと一歩まで迫りましたよね。山縣選手はどう見ていましたか?
一人のファンとしては「正直、結構厳しいんじゃないかな」って思っていました。だから初戦のコロンビア戦を見たときは「まさか!」でした(笑)。
――誰も開始わずか3分で相手が退場してPKで先制するなんて思いませんよね(笑)。
その後、セネガルに引き分けてポーランドとベルギーには負けてしまいましたけど、全部惜しかったですよね。特に最後のベルギー戦は「勝った!」と思えるところまでいきましたし。
でもそういうところがスポーツの魅力だと思うんです。言い方は良くないかもしれませんが、最初に「ダメかもしれない」って思いながら見ていても、気迫のこもったプレーを見せられると期待値を大きく上回ってすごく感動できる。僕はすごく感動しましたし、自分も頑張らなきゃって感じさせてくれました。
特に陸上のスプリントの世界って海外の選手がすごく強いんです。正直、「無理かな」って思いたくなることもあるんですけど、あれを見て「日本代表も頑張っているし、自分も頑張らなきゃ」って思いになりました。
——試合を見てモチベーションが上がったり、心理的な影響を受けたりすることもあるんですね?
ありますね。逆にアスリートとしては「何やってるんだ、自分は」みたいな悔しい気持ちを感じつつ、すごく刺激を受けました。
■スプリンターが見るサッカー選手の走り方

――日本代表以外の試合もご覧になっていましたよね。
はい、フラットな気持ちで見ていました。「ヤバイ!」と思ったのがウルグアイでしたね。特にエディンソン・カバーニ選手の弾丸ミドルを見て、「これは日本人だとなかなか打てないんじゃないかな」と思ったのを覚えています。
――アスリート的な視点ですね。やはり身体能力の部分に目がいくんでしょうか?
いきますね。例えばフランスの(キリアン)ムバッペ選手のスプリントはすごかったです。前提としてスピードがすごいのはもちろん、スプリントの技術的な視点から見てもいい走りをしているんです。ただ速いだけじゃなくて体の動かし方がうまいなって。あれを見たら「そりゃ速いわ」ってなります!
――サッカーを見ていて「この選手、走り方うまいな」って気になったり、気にしてみたりするんですね。面白い!
しますね。あとは速いように見える選手でも体の使い方が上手じゃなくて、「これは肉離れするな」って思うこともあります。そう思いながら見ていたら、本当に肉離れで交代してしまったこともありました。
――さすが専門家ですね。肉離れしそうな走り方って、あるんですね。
あります。体が反り上がって足が後ろに流れるんです。限界までスピードを出すとそうなるんですよ。
――なるほど。ちなみに足が速いサッカー選手は陸上選手と比較されて「30メートル走なら勝てる」と言われることが稀にあるんですが、実際のところどう思いますか?
あると思います。30メートルだけシャッと速く走る走り方と、100メートルをトータルで速く走る体の使い方って結構違うんです。だから30メートルまでならサッカー選手が陸上選手の前にバッと出ることはあると思いますよ!
