※第1、2回はこちらから
日本陸上界のエース・山縣亮太選手「武藤嘉紀くんに刺激をもらっています」/独占インタビューVol.1
陸上・山縣亮太選手お墨付き!あの快速FWは「走り方がうまい!」/独占インタビューVol.2
インタビュー=松岡宗一郎
■最高のパフォーマンスを発揮するためのコツは?
――ここからは世界で戦うアスリートという観点でお話をうかがいます。海外の大会になると、国内で出しているパフォーマンスを発揮できない選手も多い中で山縣選手は国内外で変わらない走りをされてらっしゃいますよね? その秘訣はどこにあるのでしょう?
抽象的な表現になって申し訳ないんですが、「どれだけ自分の走りを理解できるか」という点をすごく大事にしています。その理解が深ければ深いほど、フィールドに出たときに自分がベストパフォーマンスを発揮するために必要なことが見えてくるんです。
具体的な話をすると、僕は走りを3つのパートに分けているんです。体調面、技術面、そして試合前のメンタル面といった具合に。いわゆる「心技体」というやつですね。
海外に行ったときはまず体のフィーリングが合っているか、状態を確認します。疲れは抜けているか、パワーはちゃんと上がっているか、といった部分ですね。
技術に関しては1試合1試合の積み上げになります。「前の試合でこう意識してこういう結果だったから、今回はいいところを残しながらこの部分を修正してみよう」といった具合にやっています。
そしてメンタル面は試合前日までに必ず走りのイメージを作るようにしています。あとは走っている最中にどれだけ周りを気にせずに自分の走りをするか、技術的な部分に集中していけるか、といったところを意識していますね。“相手を意識的に気にしない”という部分を調整するんです。
それができれば場所が変わっても相手が変わっても自分の走りは崩れないはずですからね。もちろんうまくいかないときもあるんですけど、すごく意識してやっています。
――例えば海外に行くと環境が普段と違って心を乱される要因がたくさんありますよね。その中でどうやって集中力を高めて緊張と向き合っているのでしょうか?
緊張は僕もするんです。大体の人は緊張していますよね。緊張した中で最高のパフォーマンスを発揮するために自分にフォーカスしていくことを考えます。過度の緊張は硬さにつながるので良くないんですけど、ある程度の緊張は必要なことなんです。
その上で副交感神経とどう付き合っていくか。神経が高まりすぎていたら深呼吸を意識的に取り入れるとか、アロマの香りをかぐとか。とにかくメンタルのバランスを意識して「あ、今ちょっと緊張しすぎているな」って自分で冷静に判断して対処するようにしていますね。
■弱みを自覚したことで見えてきた自分の強み

――フィジカル面はどうでしょう? 日本人の体で戦っていく上で活かしたいところや強みは何だと感じていますか?
正直、「日本人だから」という強みはあまりないと思います。ただ海外の選手と大きな差があるかと言われると、あまりないのかなとも思いますね。
身体が大きい海外の選手が、走ってみると意外と遅いこともあるんです。だからといって僕たちが勝っているとは言えないですけど、意外と差はないんじゃないかと最近走っていて感じますね。
アジア系の選手の強みはフィジカルが劣っていることを受け止めつつ、技術的に緻密な走りができる点だと思います。どう走りに取り組むか、体をどう使うか、どうレースを組み立てるか。このあたりがすごく緻密で、技術も高いんです。
――山縣選手も技術が高い選手の一人ですよね。
おそらく「フィジカル面で劣っている」という自覚があるんです。でもその中で勝たなきゃいけない。「どうしよう?」と考え続けて行き着いた答えがそれなんだと思います。まだ発展途上ですけど、技術の面ではあまり負けている感じはしません。技術的な部分に落ち着いてしまうのもどうかというところなんですが、やっぱり日本人はどのスポーツでもそこが強みなんじゃないかと思いますね。
■スポーツの本質を楽しんでほしい
――2020年には東京五輪が待っています。一人でも多くの人にスポーツの魅力を肌で感じてほしい機会ですよね。一方で今の時代、スポーツは様々なエンターテインメントに勝って人々の支持を得る必要がある、という側面もあると思います。山縣選手はどう感じてらっしゃいますか?
たくさんの人にスポーツを見てもらって、それが素晴らしいと思ってもらえたらいいと思います。それがスポーツの本来の形での成功と言えるのではないかと。プレーの本質的な部分……スプリンターであれば世界陸上の決勝に残るとか、そういう魅せ方で感動してもらいたいですね。
――来年は世界陸上が開催され、その翌年に東京五輪が行われます。最後に、今後の展望と意気込みを聞かせてください
今、本当にスポーツが盛り上がってきていると肌で感じています。ワールドカップもそうですし、アジア大会に野球……テニスもそうですね。この盛り上がりが2020年に向けてなのかは分からないですけど、自分もその流れにしっかり乗っていきたいです。たくさんの人が見ている中で期待以上の結果を出す。そんな選手になりたいです。
そのためにも、まずはしっかり9秒台を出したい。今はそう思っています。
