ヴィニシウス・ジュニオールがフットボールの王国ブラジルから彗星のごとく現れたことは、何ら驚きではない。リオ・デ・ジャネイロ近郊の街、サン・ゴンサロで生まれ育ったヴィニシウスは、友人らと同じように母国の次世代を担うスターになることを常に夢見ていた。
幼少の頃からその類まれな才能は認知され、10歳のときにはブラジルでも屈指の人気クラブ、フラメンゴに加入した。ここでも彼はすぐに頭角を現す。才能に恵まれた恐るべき若者のプレーは観るものを楽しませ、ユースの各カテゴリで注目の的となった。
2017年のことだ。この年の3か月で、彼の人生は大きく変わる。
コパ・サン・パウロはブラジルのフットボール史において重要な役割を担う大会であることは広く知られる。カゼミーロやネイマール、ルーカス・モウラ、そしてガブリエウ・ジェズスといったセレソンに名を連ねるスター選手たちが、最も権威あるユース選手権でその名をあげてきた。ヴィニシウス・ジュニオールは16歳のときにこの大会に出場し、偉大な先輩たちと並ぶ、いや超えるかのように3歳年上もいる相手チームを翻弄した。
その数週間後、今度はブラジル代表のU-17代表を南米U-17選手権優勝に導く。彼はこの大会で得点王と最優秀選手に輝いた。
そんな絶好調の彼のもとに、レアル・マドリーから連絡が来る。まだプロとしてトップチームデビューを果たしてもいない彼は、4500万ユーロ(約60億円)という金額で世界最高のクラブと契約を結んだのであった。
Wagner Meyer / Goalそして、ヴィニシウスは『Goal』が選出する若手個人賞、2018年の『NxGn(ネクストジェネレーション)』3位に入賞。若きクラックは驚きとともに過ぎ去った日々を『Goal』へと語ってくれた。
「まったくこんなこと予想もしてなかったよ。僕はもちろん、家族もさ。ただいつかこういうことが起きるはずだと信じていたよ」
「この3か月で多くのことがあっという間に決まったんだ。ユースチームのベンチに座っていた僕が、コパ・サン・パウロと南米選手権で最高の大会を過ごすことができた。そしたらすぐにシニア・チームから招集されたんだ」
トップチームでの経験がないにもかかわらず移籍金額は巨額で、歴史に残るもの。だが彼のキャリアはこれまでも早送りのようなスピードで進んできた。

まず言うべきは、彼は13歳にしてブラジルU-15代表に選出された。そして出場した6試合で6ゴール5アシストを決めてチームのタイトル獲得に貢献している。
16歳のときには南米大陸王者に2度輝いた。彼が歩んできたスターダムは到底実現不可能と思われるような次元のものだ。フラメンゴは彼を守るためにデビューを遅らせていたが、それも困難だった。
2017年5月13日、彼はアトレチコ・ミネイロ戦でトップチームデビュー。舞台は歴史あるマラカナンスタジアム、相手チームには幼いころからのヒーロー、ロビーニョがいた。

そのときのことをヴィニシウスは「僕の、そして家族の夢が叶った瞬間だった」と振り返る。
「誰もが同じような夢を抱くけど、僕はそれを16歳で叶えることができたんだ。とても特別な、最高の瞬間だったよ。僕がサン・ゴンサロでプレーを始めたとき、周りの人は僕に“アイドルは誰?”って聞いてきて、僕はロビーニョだって答えていたんだ。もちろんネイマールやロナウジーニョといった選手も僕のサッカー人生に大きく影響しているけどね」
ヴィニシウスは現代サッカーに必要なものを全て兼ね備える、完璧なプレーヤーだ。スピードとテクニック、そしてドリブルを武器に、ユース時代から対峙するディフェンダーをことごとく置き去りにしてきた。両足を遜色なく使いこなし、シュートレンジも申し分ない。そして広い視野も持ち合わせており、同僚に数えきれないほどのチャンスを提供する利他的な姿勢も持つ。
2018年7月にマドリーにやってくるとき、彼は18歳になる。この若者に寄せられる期待は並大抵のものではない。人々は彼を若き日のネイマールを比較するが、実際ネイマールは10代の終盤になってその名を轟かせた。その点で彼を“Newネイマール”と呼ぶのはフェアではないし、驚くべきことでもないのだ。
「それについては気にしていないんだ。ただ僕自身はネイマールをいつも見習っているよ。今では前よりも連絡を取り合うようになったし、彼のプレーを観て、自分のサッカーの見本にしてるんだ。でももう一人のネイマールになる気は無いよ。僕は僕自身のキャリアを築き上げたいんだ。それによってブラジルに喜びを届けられたらと思うよ」
Nikeマドリーへの移籍は幕開けに過ぎないわけだが、巨額の移籍金額を正当化させるためにヴィニシウスにかかるプレッシャーは相当なものになる。しかし彼自身はそうした大仰な話も意に介していない。「プレッシャーはない」として、ブラジルン人らしくフットボールをただ楽しむ姿勢を見せる
「フットボールをやるうえで最高のことだよ。僕はピッチ上で楽しみたいんだ、そこに大きな責任なんてないよ。ピッチの内外どちらでもね。ただこのフラメンゴでハッピーでいたいだけ、チームの役に立ちたいだけさ」
すでにレアル・マドリーのスター選手たちとは対面済み。昨年末、彼は初めてサンティアゴ・ベルナベウを訪れた。温かい出迎えを受けたようだ。
「クリスティアーノ・ロナウドとちょっと話したんだ。あとはレアル・マドリーの組織について教えてもらったよ。全員と話ができたんだ。一番はマルセロとカセミーロだね。ロナウドはとってもクールだった。彼は僕を応援してくれて、それに歓迎してくれたよ」
ヴィニシウスにはすでに多くの著名人と知り合いだ。そしてスクラップブック何冊分にもなる数々の出来事を経験し、彼を取り巻く状況は一変した。それでも彼は元来の謙虚さを失わずこう話す。
「こういう写真を見るたびに“これまでテレビやゲームの中でしか見たこともなかった人たちが、いまでは僕にピッチ内外で成長するためのアドバイスをくれるようになった”と感じるんだ。でもこれは全部、僕自身のハードワークの結果であって、僕のそばに偉大な人々がいてくれるように神様が祝福してくれたことなんだよ」

謙虚な態度と地に足のついた姿勢から、彼はフラメンゴのファンに愛されている。ヴィニシウス以前にもワンダーキッズと呼ばれる選手はいたわけだが、彼らをのちに破綻させた傲慢さが彼には一切見られないからだ。
これは彼が成功をつかむための正しい姿勢だ。すでに53試合で12ゴールを挙げているが、そのほとんどが途中出場で決めたもの。彼の次なるタスクはファーストチームでの居場所の確保である。その次により大きな目標、つまりフル代表としてセレソンのユニフォーム着ることを見据える。
まるでファンである普通の若者のように、ヴィニシウスはブラジル代表について興奮を抑えられないように語る。
「(ブラジル代表監督)チッチは良い仕事をしているよ、それに最高のプレーヤーが揃っているよね。ネイマール、ガブリエル・ジェズス、それにコウチーニョだ。世界最高の選手たちだよ。きっとワールドカップでもうまくやれる。チャンピオンになってブラジルに帰ってくるよ」
また、ブラジル代表だけが目標ではない。彼はヨーロッパチャンピオンの一員になることも望んでいる。
彼に今シーズンのチャンピオンズリーグはどこが優勝するか尋ねてみた。ヴィニシウスはトレードマークの笑顔と共にこう答えた。「もちろんレアルだよ!」
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