■攻めに攻められ続けた中で
苦戦のサウジアラビア戦。息絶え絶えになりながら、日本はベスト8に歩みを進めた。
ボール支配率は日本の約23%。パスを繋いで攻めるスタイルがお決まりのチームが、2割しか保持できなかった。自ずと、守勢の展開となった。
体を張る守備陣。最後の最後まで集中力を切らさずに守り抜いた組織は素晴らしかった。ただ、ここまで攻めに攻められる流れでは、選手もいっぱいいっぱいの対応を強いられる。W杯経験者の吉田麻也や長友佑都、酒井宏樹でさえも、ミスをする場面があったほどだ。
一人、最後まで冷静に、したたかに闘い続けていた。冨安健洋。チーム最年少の20歳のセンターバック。この試合、誰よりも安定し、敵を制していたのは、若きDFだった。
昨年10月にA代表デビューしたばかり。一昨年に行われたU-20ワールドカップ韓国大会で世界デビューを果たしたものの、ベスト16の舞台でベネズエラに敗れ、高い壁を知る。唯一の失点を喫した場面、競り負けたのは冨安。それまで完璧な守備をしながら1回のロスに泣いた。「自分が負けなければ、この結果にはなっていなかった」。センターバックの切ない役回りを、まざまざと痛感した。
昨年の1月に、活躍の場をアビスパ福岡からベルギーのシント=トロイデンに移した。U-20W杯で感じた、世界との差。一刻も早く埋め、そしてライバルを超えていくために。負傷を抱えながらも海外挑戦を選んだ。苦労を覚悟の選択だった。
移籍直後、現地を訪れたことがあった。極東からやってきた名も知らぬDFは、まだチームに馴染んでいなかった。ケガにより別メニューの日々。ロッカールームのホワイトボードには、すでに冨安の名前が書かれた戦術プレートは用意されていたが、控え組の最下部に貼られていた。
■ベルギーで主力に定着した理由

それが昨年夏、新シーズンがはじまると、立場は一転する。開幕当初から、レギュラーに定着。そのプレーは日に日にたくましさを増し、完全な主力へと定着していく。
「ミスを恐れなくなった。ひきずらなくなったことが、大きいと思う」
そう語るのは、シント=トロイデンの立石敬之CEO。元FC東京のGMで、現在欧州クラブの要職に就く目利きは、冨安の将来性を見込み獲得した。
「想像以上に、トミは成長の速度を上げてきている。元々、コツコツタイプで、ポテンシャルはあるけど急には良くなることはないと思っていた。最初はケガもあって、苦しんでいた。周りも失点したりすると、トミに責任を押し付けるような空気もあったりした。でも、そこで怯まずに、コンディションが良くなると能力を発揮していった。今は英語も上達して、ポジティブに試合中も声を出している。監督も誰よりもトミを信頼している」
アジアカップが行われているUAEでも、連日取材では冨安は謙虚な受け答えをしている。
「本当に先輩たちにサポートしながらやれている。試合だけでなく練習中から気になったことがあれば言ってもらっている。その中で、自分の良さも出しながらやれればいい」
その自分の良さが存分に出たのが、サウジアラビア戦だった。日本にとって最初のチャンスとなった20分のコーナーキック。柴崎岳のボールに完璧なヘディングでゴールネットを揺らしてみせた。
攻め手が少なく、敵の攻勢に押し込まれる中、冨安は自らが挙げた渾身の1点を守り続ける。印象的だったのは、出足の速さ。縦パスに対して、敵よりも一歩早く動き、ボールに触る。そこに戸惑いや躊躇はない。「ミスを恐れない。ひきずらない」と立石氏が語っていたとおり、リスクを恐れることなく勇気を持ってボールにアプローチする冨安の守備が見られた。
ドリブルや細かい連係にも、地に足をつけて対応する。前述の立石氏が再び明かす。
「一番は、1対1の対応がすごく良くなった。ベルギーのリーグはやっぱり局面での1対1が多い。そこで短期間ながら鍛えられたこともあってか、地上戦で仕掛けられても今は慌てずに守れている」
■毎試合、自分に求めていること

手練のテクニックでどんどん向かってくるサウジアラビアのアタッカーたち。1点を競い合う緊張感の中で、冨安は浮足立つことなくボールと敵を凝視し、安定した立ち回りを見せた。
「先に、先に、対応することは常に意識した。予測して動き出す。それができている試合は、余裕を持ってやれているし、できていない試合は落ち着かない。毎試合、そこは求めています。今日もボールは持たれましたが、ヤバいという感覚はなかったです」
自分の立ち位置をしっかり見つめる。若く、経験はまだまだ。そんな謙る態度ながらも、自信のある部分も忘れない。この年にして、成長に不可欠なバランス感覚に長けている。
代表初ゴールが決勝弾。喜びひとしおな結果だが、本人はDFとしての本分を理解している。
「今日のような苦しいゲームを勝ち切ることができた、しっかりみんなで失点ゼロに守ることができたことに大きな意味がある。でも、まだ優勝したわけじゃないですし、何も勝ち得たわけでもない。また反省もして、いい準備をしたいです」。
若年寄なところがある。「アイツ、いくつかわからないぐらい落ちているでしょ」と立石氏も笑う。
それぐらいで、いいのかもしれない。同世代には、攻撃陣でプレーも言動も勢いの良い堂安律がいる。その後方で、冷静に、淡々と自分の役割を遂行する。
ただ、自分の成長過程は、誰よりも見えているのかもしれない。アジアカップは次戦、ベスト8を迎える。日本には一戦、一戦、確実に成長する若きDFが存在している。
文=西川結城
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