改めて考える本田圭佑の存在意義。平行線をたどるハリルとの皮肉な関係

コメント()
©Getty Images
約半年ぶりに代表に帰ってきた本田圭佑。「融合」というフレーズを口にした日本のエースは、今回の欧州遠征でハリルに何を示すことができたのか?

■ハリルジャパンにおける本田の可能性

その瞬間、微かな悲哀を見た。

時に強く激しく、時に優しく丁寧に。それが、これまでの彼の語り口だった。名古屋グランパスで過ごしていた若かりし頃から右肩上がりのキャリアを歩み、日本を背負って立つ選手になった。ただ、この日の本田圭佑は、これまで一度も見たことも感じたこともなかった空気感を漂わせていた。

「やはり試合を支配することが、僕は大事かなと思っています。ただ、それがチームが大事にしていることかというと、明らかに違うと思う。少なくとも、融合みたいなものがもう少し見つけられないかなとは思っていますけど」

本田がハリルジャパンに存在する価値は、果たしてあるのだろうか。3月のベルギー遠征は、その答えが見つかるかもしれない――。約半年ぶりに代表に帰ってきた彼が、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督に何を示すことができるのか。注目が集中していた。

本田が語った「融合」というフレーズ。そこにはヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表が現在見せるフィジカルサッカーと、本田が理想とするテクニックやボールポゼッションを中心にしたスタイルの着地点を見いだせないかという意味が込められていた。

実際、久しぶりに日の丸を付けてプレーした彼の実感、そして我々が外側から見たハリルジャパンにおける本田の可能性。正直、どちらにしても現状は「融合」の可能性は難しいのでは、という答えが浮かび上がってきた。

頑なに日本人のポゼッションサッカー信奉を嫌う指揮官がいる限り、もはや歩み寄りすらもできないのか――。本田が一瞬見せた哀しさ、虚しさは、そんな空気を察したからに他ならない。

先のウクライナ戦は右FWで先発出場した。開始1分から自陣ペナルティエリア内まで帰陣して守備でカバーリング。その後も何度もサイドを上下動し、泥臭くプレーした。ハリルホジッチ監督が求める守備での貢献を本田はしっかり果たしていた。

■ウクライナ戦で見せた本田の立ち居振る舞い

思えば、彼は自らが主役になることだけでなく、脇役にもなれることをイタリア時代に証明している。ミランでは目まぐるしく監督が交代する中、サイドハーフの位置で守備的なタスクを遂行する姿が印象的だった。

ある時、ミランのホームスタジアム、サンシーロを後にする際に冗談交じりで放った言葉が思い出される。

「今の自分の役割は守備をやることがチームにとって生きると思っている。今後は試合に勝てば『僕が勝たせた』と書いてくれれば。『本田、不発』と書くんじゃなくて、勝った時は『本田が機能させた』と書いてくれればいいかなと思います。まあ、ミランで得点をあまり求めないでください(笑)」

もちろん、代表では駒となる仕事だけにとどまろうとはしない。閉塞感が漂う今のチーム状況を、自分の存在で変えようともする。ウクライナ戦では右サイドで攻撃の起点を作るべく、自らのキープ力やパスさばきを軸に縦に急ぐ“だけ”の単調な攻めからの脱却を試みた。

自分自身にスピードがないことは百も承知だ。その中、本田は昨夏のメキシコ移籍後、細かいステップやアジリティ促進に注力し、以前よりも軽快な仕掛けをするようになった。縦に、前に向かっていくプレーは、ハリルジャパンのサイドアタッカーには必須な要素。本田は自分の理想を追うだけなく、組織に適合する考えを強く持っている。

honda02.jpg

それでもなぜ本田は、この試合で監督が要求する愚直に縦を狙う攻撃だけをしなかったのか。それは、彼は間違いなく今の日本の攻撃には緩急や強弱が不可欠であると信じているからである。そして、指揮官のサッカーを体現できずに困惑する味方の選手たちに、リスクや勇気を持ってプレーすることが突破口になる可能性があることを伝えたかったからだった。

「結果が出なかった時に、(チームの)ビジョンと違うことをやれば何かを言われる。ただ今はそのリスクを選手が背負えるかどうか、背負える選手が今の代表にいるかどうか、ですね」

ウクライナ戦前に本田が語った一言。そのとおりのプレーを、実践しただけだった。

本田の立ち居振る舞いに関わる、選手たちの反応が興味深かった。

最終ラインの槙野智章は今回の遠征の2試合を振り返り、こう語る。

「自分たちがボールを持つ時間をもう少し増やしていかないといけないと思っています。例えば杉本(健勇)選手も彼の仕事は守備ではなくて攻撃。ただ間違いなく守備に力を注ぎ込んでしまった。もう少し後ろの選手も含めて、ボールを奪った後のポゼッション率を高める。勇気を持ってボールを動かす、攻撃に幅と深みを持ってしっかりやらないといけない」

さらに、長友佑都もこんな感想を漏らした。

「圭佑が入ってリズムが出てきたし、前半はあそこでタメを作って、タメができるからサイドバックも上がれる。中盤もDFも押し上げられる。そういう効果は地味に見えるかもしれないですけど、絶大だなと思う。全部が全部縦に速いサッカーだけじゃなくて、降りてきてボールを保持して、時間を作って、いいポジションを取って。それで他の選手が少し休むこともできる。そういう戦い方も90分間の中ではオプションで持っておかないとやっぱりしんどい。その意味では、圭佑のサイドでは起点を作れていた。別に、本田圭佑だからとか、ずっと戦ってきた戦友だからとか、僕はそれで皆さんの前でしゃべっているわけではない」

本田のトライを指示することを示唆するような仲間の発言。しかし、やはりこの指揮官は違った。

■ハリルと選手たちの思考に明らかな溝?

ハリルホジッチ監督は、敗れたウクライナ戦後、悔しさがこもり少々興奮気味になっていた。そして行われた会見では、こんな言葉を列挙していった。

「ボールを持ったら瞬発力、スピード、リズムの変化、速いボール回し、前への姿勢などが必要だが、今日は引いてもらうプレー、相手ゴールに背を向けるプレーが多すぎた。そういったところを変えないとW杯本大会では厳しい。引いたプレーが多かった。我々の特徴にあったプレーを実行しないといけない」

「どのようなプレーをしないといけないかは私の頭の中にある。観ている人はボールを持って仕掛け続けることを期待するかもしれないが、そのような贅沢なことはできない。幻想を抱くとワナに陥る」

サッカーにおいて、どんな戦い方のスタイルを実行するか、どんな選手を起用するかの裁量は、すべて監督にある。その意味では、ハリルホジッチ監督が語ったことが今の日本のすべてであり、そこに何かを挟み込む余地もない。

ただ一つ、この指揮官の考え方や、やり方があまりにも頑なすぎて、偏りが強いところに様々な問題が生じている。

「我々の特徴を生かして」というフレーズがあったが、選手を含めた日本人自身が考えるものと、ハリルホジッチ監督が見るそれは、正直焦点が異なっている。これは正解、不正解の話ではなく、ここに大きなズレが存在することが問題であり、それこそが本田の存在可否につながるところなのである。

honda03.jpg

本田自身は、この2試合で何より目に見える結果を出すことが不可欠だった。その意味では正直物足りなかった。

「負けた試合なので、言っても響かないんですけど。個って言ってしまうのは簡単で、実際に良いチームの形でもっといいプレーができる選手がここにはいることも事実なんで。日本人は明らかに個を伸ばしていかないのは大前提。ただ、個以外のものが、個を引き立たせる、ということもある。それが(今の日本は)できていないというのはある。誰が、本来のパフォーマンスを出せていたのか。個々で見れば反省をしないといけないところですけど」

改めて考えると、現状では冒頭で触れた「融合」には程遠い。指揮官と選手たちの思考に、明らかな溝が見られた今回のベルギー遠征。そして本田のトライとハリルホジッチ監督の考えも、依然平行線を辿ったままとなった。

2014年のブラジルワールドカップまで本田は攻撃サッカーへの思いが強く、その針を振り切った結果が、あの敗北だった。その後、イタリアでの経験や代表でのスタンスの変化で、今はサッカーに対して柔軟な考えで臨むようになってきている。

そんな彼が、頑なに自分の考えを曲げず、針を振り切る指揮官に直面している。何とも皮肉な話である。

ロシアへ渡る23人の選手たち。ハリルホジッチ監督のリストに「HONDA」の名が刻まれることがあるのか――。その答えは、5月下旬に明らかになる。

文=西川結城

【DAZN関連記事】
DAZN(ダゾーン)を使うなら必ず知っておきたい9つのポイント
DAZN(ダゾーン)に登録・視聴する方法とは?加入・契約の仕方をまとめてみた
DAZNの番組表は?サッカーの放送予定やスケジュールを紹介
DAZNでJリーグの放送を視聴する5つのメリットとは?
野球、F1、バスケも楽しみたい!DAZN×他スポーツ視聴の“トリセツ”はこちら ※提携サイト:Sporting Newsへ

次の記事:
“王様”ペレ氏がネイマールに再び苦言「ゴールではなく別の方法でアピールするようになった…」
次の記事:
ニューカッスルが“先行発表”も…JFAが武藤嘉紀のアジア杯追加招集を発表!浅野拓磨はケガで2度目の離脱
次の記事:
MVPの家長昭博、支えとなった家族に感謝「頑張って良い背中を見せたい」
次の記事:
PSG生え抜きラビオ、契約更新拒否…SDは怒り「無期限のベンチ行きになる」
次の記事:
CL優勝候補を回避した2位通過のローマ、トッティ氏が期待「昨季と同じ場所へ…」
閉じる