Sergio Agüero Manchester City Arsenal 03202019getty Images

底知れぬ名将ペップ。アーセナル戦完勝の裏にあった奇策…アグエロの陰に隠れたMVPとは?

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■負けられない試合でペップが打った大胆な一手

Pep Guardiola, Manchester City

ペップ・グアルディオラという監督は本当に底が知れない。それをまざまざと感じさせられたゲームだった。前節、敵地でのニューカッスル戦(1-2)でまさかの逆転負けを喫したマンチェスター・シティにとって、その5日後の第25節アーセナル戦は、絶対に負けられないゲームだった。首位リヴァプールを追う立場としてはドローすら許されない状況だったと言っていい。そんな切迫したシチュエーションで、ペップは大胆な一手を打ってきた。

これまでずっと中盤でアンカーを担ってきたフェルナンジーニョを、なんとセンターバックで先発起用したのである。この試合、ペップはカイル・ウォーカーを右に、アイメリク・ラポルテを左に配し、中央はニコラス・オタメンディの隣にフェルナンジーニョを置いた。ヴァンサン・コンパニやバンジャマン・メンディを負傷で欠いたとはいえ、ベンチには本職DFのジョン・ストーンズやダニーロがいたのだから、ペップが“意図的に”コンバートを行なったことは明白だった。

そして、結果的にそのフェルナンジーニョの起用法と彼のピッチ上での振る舞いが、ウナイ・エメリ監督とアーセナルを混乱に陥れた。3-1でシティが勝ったこの試合のマン・オブ・ザ・マッチは、開始直後、前半終了間際、後半開始16分にいずれも大事なゴールを決めてハットトリックを達成したセルヒオ・アグエロで間違いない。だが、彼が3度ネットを揺らすまでの過程には、そしてシティが前半の一部の時間帯を除いて試合をほぼ優勢に進められた背景には、背番号25を背負ったいぶし銀のブラジル人がいた。

■「偽センターバック」を置いた変則4-3-3

2019-02-04-manchestercity(C)Getty Images

この試合のフェルナンジーニョは、いわば「偽CB」とでも言えるような役割を担っていた。構えて守備をする場面こそ4-3-3のCBの位置にいたが、シティがボールを保持する場面では完全にMFとしてプレーしていた。ポゼッション時は彼が一列前にスライドし、イルカイ・ギュンドアンとダブルボランチになってシティは3-2-4-1に可変した。

これによって何が起こったかというと、ピエール・エメリク・オーバメヤン、アレクサンドル・ラカゼットというアーセナルの2トップにしてハイプレッシングの急先鋒が、最終ラインの選手ではなくフェルナンジーニョとギュンドアンを見なければいけなくなった。シティはさらに両SBのウォーカー、ラポルトも中央に寄ってビルドアップをサポートする。よってオーバメヤンとラカゼットは、ボランチ(フェルナンジーニョ、ギュンドアン)とSB(ウォーカー、ラポルト)の両方に注意を払いながらフォアチェックをかける必要が生じ、プレスの的をまったく絞れなかったのだ。

2トップがプレッシングの“道筋”を定められなければ、アーセナルは前からはめることができなくなる。かといってフェルナンジーニョとギュンドアンを中盤のマッテオ・ゲンドゥージとルーカス・トレイラに任せようとすれば、今後はDFとMFのライン間をダビド・シルバ、ケヴィン・デ・ブライネに使われてしまう。ペップの策を前に、アーセナルはボールの奪いどころを設定できず、いつものプレーをさせてもらえなかった。

■エメリとガナーズは攻め手を見出せず

2019-02-04-arsenal

それでも、アーセナルの知将エメリは前半のうちにチームを落ち着かせることには成功している。開始わずか47秒でアグエロのダイビングヘッドが決まり、11分にアーセナルがセットプレーからローラン・コシールニーのゴールで追いついた後、スコアが1-1のタイだったおよそ30分間は、試合は膠着していた。それはアーセナルが“前プレス”からブロック守備にシフトし、ライン間をコンパクトにして中央を締めて我慢強く守ることを選択したためだ。

これでシティはブロックを簡単には崩せなくなったが、一方でアーセナルは攻撃面で牙を失うことになる。どうしてもボール奪取位置=攻撃のスタートポジションが通常よりも低くなり、しかもオーバメヤンとラカゼットは敵の最終ラインではなく中盤エリアをケアしているから奪った後の攻撃にスピード感が生まれず、カウンターに手数もかけられず、ゴールが遠くなった。

そして44分、我慢強く守っていたアーセナルもとうとう崩される。フェルナンジーニョを起点にパスワークを展開したシティは、ラヒーム・スターリングがギュンドアンとのワンツーで左サイドを攻略すると、折り返しに最後はアグエロ。エースの2点目でシティが勝ち越しに成功したのだった。

後半に入ると、試合はより一方的なシティペースになっていく。シティは試合後のペップいわく「メンタリティ、インテンシティ、そしてリズムの面で非常にいい」パフォーマンスを見せ、「後半はより試合をうまく読みながら」、コンパクトに中央を締めて守るアーセナルをスターリングとベルナルド・シルバが開いた外側のスペースから脅かしつつ、ボールを完全に握って試合を掌握した。後半の得点こそ61分にアグエロがハットトリックを完成させた(そして本人が試合後に「ハンドだったかもしれない」と認めた)1ゴールのみだったが、対するアーセナルが後半のシュート数ゼロだったことを考えれば、シティの完勝だったと言っていい。

これまでは劣勢の状況から思い切りのいい交代やシステムチェンジによってしばしば戦況をひっくり返してきたエメリ監督だったが、この日ばかりは前半に守備を修正した以上に劇的な変化は起こせず、66分に同時投入したアーロン・ラムジー、そして新加入のデニス・スアレスも目立った働きはさせてもらえなかった。負けたニューカッスル戦とは打って変わって劇的にスピード感が戻り、ミスも少なくプレッシングの質も高かったシティを前に、後半のアーセナルは残念ながら「何もさせてもらえなかった」というのが妥当な評価だろう。

■首位リヴァプールにプレッシャーをかけるシティ

Sergio Aguero Raheem Sterling Manchester City vs Arsenal Premier League 2018-19Getty Images

シティはミッドウィークにはリーグカップ決勝進出によって前倒しになったエヴァートン戦が控え、週末にはチェルシー戦と、強豪との連戦が続く。

「今週は大変な1週間になる」とはペップのセリフだが、ここを“3タテ”できれば、首位を行くリヴァプールに大きくプレッシャーをかけることができる。シティは2019年に入ってから公式戦9試合で8勝、34得点4失点と抜群の数字を残しており、ニューカッスル戦の黒星を“不運な事故”と割り切ればその強さに決して陰りは見られない。「追われる者」の立場に慣れていないリヴァプールにとっては、この上なく恐ろしい存在だろう。

一方でアーセナルは、前日にチェルシーがゴンサロ・イグアインの2発を含む5発快勝でハダーズフィールドを、好調マンチェスター・ユナイテッドが1-0でレスターを破ったことによって6位に転落。公式戦ここ12試合で5勝1分け6敗とここ最近は黒星が先行しており、故障者の多さも気になるところだが、2月の今後3試合(対ハダーズフィールド、対サウサンプトン、対ボーンマス)でなんとか立て直し、3月に待っているトッテナム、マンUとの“勝負の連戦”につなげたい。ここまでチャンピオンズリーグ出場圏との差が開かないように踏ん張れれば、終盤戦はビッグクラブとの対戦がないだけに、トップ4フィニッシュの可能性は十分に残されている。

プレミアリーグは優勝争い、CL出場権争いのいずれも、まだまだひと波乱、ふた波乱ありそうだ。

文=寺沢 薫

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