■熊本地震の際のお礼を伝えたかった
――今回の現役引退を受けて、Jリーグの村井満チェアマン、原博実副理事長を表敬訪問されました。そこにはどんな思いがあったのでしょうか。
巻 長年にわたってJリーグでプレーさせていただいたお礼をお伝えしたかったんです。特に2016年の熊本地震の際には、日程変更を含めて本当に全面的にサポートしていただきました。原さんには震災発生直後に現地へお越しいただき、サッカー教室も開いてもらいましたから。
――村井さん、原さんからはどんな声を掛けられたのでしょう。
巻 まずは「お疲れさま」と言っていただきましたが、やはり地震の時の話がたくさん出ましたね。サッカーをはじめとするスポーツ選手、特にJリーグという立場からの社会還元は「非常に素晴らしい」ともおっしゃっていただきました。もちろん震災は起こらないことが一番ですが、そういった有事の際を含めて、Jリーグとして発信できることがあるという話から、僕も何かお手伝いをさせていただけたらと話をさせていだきました。
■発表当日まで続けたトレーニング
©J.LEAGUE――1月15日に現役引退を発表されましたが、今あらためてどんなお気持ちなのでしょうか。これまでなら開幕に向けてトレーニングを積まれているタイミングだと思うのですが。
巻 実は引退を決める前日まで、現役を続けるかどうか分からなかったんですよ。正直、消化不良というか、まだサッカー選手としてやりたいこともありましたし、引退を決める前日まで「もっとサッカーがしたい」と思っていて、発表当日まで現役を続けられるようなトレーニングをしていましたから。
――そういう状況で「いいオファーが届けば……」と思っていたわけですか?
巻 いや、チームからは契約更新のオファーをいただいていたんですよ。でも、自分の中でモヤモヤしたものがあって……。チームに還元できるものが少なくなっていることを自分で感じたので、現役引退を発表することにしました。家族にも二日前くらいに「引退しようかな」と言ったくらいで、チームメートにも話していなかったんです。スタッフの皆さんもプレスリリースが出るときに知ったらしくて。そこまでは本当に自主トレしていたんですけどね。ちょうど発表から一週間くらいが経つんですけど、それからは全く体を動かさなくなってしまいました(苦笑)。
――引退を決めたら動かさなくなるものなんですね(笑)。
巻 そうですね(笑)。あいさつ回りとかで忙しいこともありますけど、やっぱり寂しさや消化不良な部分がたくさんあるのは確かです。でも、いろいろなことは思い返しながら考えたのは、僕は辞めるのが40歳でも50歳になったとしても「まだできる」って思いながら引退したんだろうなってことですね。
――自分の意志で現役引退を決められるのは、ある意味、すごく幸せなことだと思います。
巻 それはそうだと思います。まだ自分としてはやれると思っていたんですけど、チームの中で自分が果たす役割が少なくなったら辞めると決めていたので。それに故郷でもあるロアッソ熊本へ移籍してきたときに、自分の中では「最後のクラブにしよう」と心の中で決めていたんです。他のチームで現役を続ける選択肢がない状況だったので、自分の中でロアッソでどうするかという二択でした。だからすごくシンプルだったし、幸せな状況だったと思います。
■僕のすべてはサッカーで出来上がっている
©Getty Images――改めて引退後はどんなセカンドキャリアをお考えなのでしょうか。
巻 具体的にやりたいことがあって引退を決めたわけではないんですよ。ただ、今回Jリーグさんにお邪魔させていただいた理由もそうですけど、僕のすべてはサッカーで出来上がっていると思っているので、今度は何かしらサッカー界に還元したいとは思っています。
僕は日本サッカー界にいろいろな部分で成長させてもらいました。サッカーやJリーグを通して社会性を学ばせていただきましたし、たくさんの仲間もできました。コミュニケーション能力も身につきましたし、本当にサッカーがすべてでした。なので、まずはサッカー界の発展に貢献したいという恩返しの気持ちがあります。そしてずっと続けてきた熊本の復興支援への思いが胸の中にあります。そこは子どもたちを中心に、熊本のためにできることを構築していきたいと思っています。
――まず2019年に考えていることはありますか?
巻 まずはサッカーに携わりたいですね。今はJFA公認A級ライセンスまで取得しているので、将来的にはS級を取ってJリーグで指導者の道も歩みたいと思っています。これまではJリーグやJクラブの中で一人の選手としてサッカーを見ることばかりだったので、戦術的な部分だけじゃなく、ピッチ外を含めてもっと多角的、総合的にサッカーを見てみたいという気持ちもありますね。
――現役生活は長かったですか?
巻 実は僕、自分の現役生活が何年だったのかを分かっていなかったですよ。ずっと15年間だと思っていたら、クラブ広報に「巻さん、16年間やってますよ」って言われて(笑)。ロシアへ行ったり、中国でプレーしたり、いろいろな経験をさせてもらいましたけど、年数を間違えるくらい長くなっていたってことなんでしょうね。
もともと自分としてはジェフ千葉で引退すると思ってやっていましたけど、海外でのプレーも含めて、ジェフ以外の部分を見ることですごく刺激を受けました。熊本では震災を経験して、人間的にすごく成長させてもらったと思うんです。そういった経験を積むことによって物ごとを多角的に見られるようになったようにも思います。ピッチ内はもちろん、クラブを取り巻くピッチ外もそう。それはすごく今後の自分のためになると思っています。
――最後にファン・サポーターの皆さんにメッセージをお願いします。
僕はJリーグと全国のファン・サポーターの皆さんに成長させていただいたと思っています。その感謝を胸に秘めつつ、今後は微力ながらも日本のサッカー界に様々な経験を還元していきたいと考えています。皆さんの声援はサッカー選手として大きな活力と励みになりました。16年間、多大なるご声援、本当にありがとうございました。
取材・構成=Goal.com編集部
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