2月9日、レアル・マドリーは昨季にこけら落としを迎えたアトレティコ・デ・マドリーの本拠地ワンダ・メトロポリターノを初めて征服した(リーガ第23節、3-1)。アトレティコにとっては、ワンダでの今季初敗戦。ディエゴ・シメオネを絶対的に信奉する観客が、試合終了のホイッスルを待たずにぞろぞろと帰路につく光景など、滅多に見れるものではない。今季、そうした光景をここまで目にしてきたのは、アトレティコのサポーターと違い、苦しいときにチームに寄り添うことをせず、不満があれば耳をつんざく指笛を吹くレアル・マドリーの本拠地サンティアゴ・ベルナベウだった。
しかしこのダービーで、歓喜と失望は入れ代わった。
もし試合の舞台がベルナベウであったなら、観客は万全の勝利を手にした我がチームをどれほど誇ったのだろうか。ワンダの芝生に立っていたレアル・マドリーの面々は、マドリディスタス(レアル・マドリーのサポーター)が愛し、大きく胸を張る巨人たちだった。スペインのスポーツ紙『マルカ』と『アス』は、ダービー翌日の1面でそれぞれ「マドリーが帰ってきた」「マドリーが空を飛ぶ」との見出しを打っていた。
■デル・ボスケ&ジダンの後を追うソラーリ
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レアル・マドリーの顔つきを変えたのは、解任されたジュレン・ロペテギに代わり、Bチーム指揮官から内部昇格でトップチームを率いたサンティアゴ・ソラーリである。彼はリーガ1部を率いた経験もなく、Bチーム昇格からチャンピオンズリーグ(CL)優勝などを達成したビセンテ・デル・ボスケ、ジネディーヌ・ジダンの系譜に名を連ねる存在なのかもしれない。ただし、このアルゼンチン人の振る舞いは、スペイン人ともアルジェリアにルーツを持つフランス人ともまた違う。
デル・ボスケ、ジダンはその柔和で素朴な性格が記者会見にも表れていた。選手たちとフットボールの才能を分かち合えるジダンであれば「あのサイドでの切り崩しだよ。2人でパッ、パッ、パッて……やばかったね」などと、試合における好プレーを嬉々として振り返ったものだ。
ソラーリから受ける印象は彼らとはまた違う。会見場には「ブエナス・タルデス(こんにちは)」「ブエナス・ノーチェス(こんばんは)」という挨拶とともに現れ、その言動はスポークスマンのようにスマートだ。ジダンが受け身のはにかんだ笑顔を浮かべていたのに対して、彼は口を横に広げて紳士的な笑顔をつくる。その言葉も気持ちを吐露するようなものではなく、監督の常套句を口にすることが多い。ただ、最初の会見で「キン○マを持って戦わなければならない」と語ったり、過去10年のベストチームにレアル・マドリーを含めなかったジョゼップ・グアルディオラに反論したりと、言うべきときにははっきり言う。
■ソラーリが進める改革
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チームのまとめ方も、公の場での振る舞いにある程度は通じているのだろう。そこには洗練されながらも大胆で、(きっと)大きな睾丸を併せ持ったレアル・マドリーがいる。ソラーリはヴィニシウス・ジュニオール、アルバロ・オドリオソラ、レギロン・ロドリゲス、ダニ・セバジョス、マルコス・ジョレンテら若手選手や、守備のために汗をかけるルーカス・バスケスを積極的に登用。反対にイスコ、マルコ・アセンシオ、マルセロら調子が上がらなかったりチーム全体のパフォーマンスとっては効果的ではなかったりする有名選手たちを容赦なくベンチに座らせた。
今、ピッチに立つレアル・マドリーは攻守のバランスが取れており、またその才能をスムーズに使っている。ロペテギが率いていた頃にはボールを持ち過ぎるきらいがあったが、現在はゴールにたどり着くまでの道程で右往左往することがなくなり、効果的にそこまでたどり着いてネットを揺らす。その主役は怖いもの知らずの、しかし確実に相手を動揺させるドリブルを仕掛ける18歳ヴィニシウス、ここに来てゲームメイク&決定力のどちらも欠くことがなくなったキャリア最高レベルのベンゼマ、ワールドカップの精神的&肉体的な消耗から復活を果たしペナルティーエリア内外で仕事(相手DF陣を引き付けるなどのスペースメイク、ラストパス&フィニッシュ)をするモドリッチだ。またヴィニシウスのいる左サイドではレギロン、ダニ・カルバハルかオドリオソラが敵陣深くまで侵入する右サイドではL・バスケスがリスク管理を行い、守備に目を光らせている。
マドリディスタたちが抱く、1試合1得点以上を誇ったクリスティアーノ・ロナウドがいた頃への郷愁は、ここに来てようやくあふれることがなくなった。ソラーリのレアル・マドリー、いや、今季のレアル・マドリーが初めて心にかなう勝利を手にしたのは1月19日のリーガ第20節セビージャ戦(2-0)で、その試合からの成績は6勝1分けとコパ・デル・レイ準決勝ファーストレグのバルセロナ戦(1-1)以外は全勝。得点数は20得点と、平均2.8得点を記録している。
■結果とともに強度を増す常套句…王者復活のその先へ
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たとえネームのある選手たちの出場機会が減ろうとも、クラブ首脳陣もマドリディスタたちもソラーリを支持している。クリスティアーノ退団を契機に移行期に差し掛かったとされたレアル・マドリーにおいて、ここまでつなぎの監督と見られていたアルゼンチン人指揮官だが、その手で移行を成し遂げる可能性すら生じている。現在、彼が手にしている権威は疑うことができないものだ。もちろん、ことレアル・マドリーにおいて、それを持ち続けられるかどうかはタイトル獲得にかかるわけだが……。
もし彼がリーガの逆転優勝をあきらめず、クラシコの先にあるコパ・デル・レイ優勝を希求し、そしてチャンピオンズリーグ四連覇という新たなる伝説の達成を見据えるのなら、過密日程に立ち向かうためにもマルセロ、ベイル、イスコ、アセンシオ、マリアーノらの復活、または活躍も必要になってくるはずだ。それがチームを立ち直らせたソラーリの次なる挑戦であるのかもしれない。
チャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦ファーストレグ、アヤックス戦の前日会見でもソラーリはその口を横に広げる紳士的な笑みを絶やさなかった。
「今ある称賛についてどう思うか? この職業はそういうものだ。試合を戦い、次の試合があって、また次の試合に臨む……。明日の一戦はとても重要だし、そこだけに焦点を当てようじゃないか。私たちは外部のことにあまり気を取られていないようにしている。それでいいんだ」
その言葉は、会見に出席する監督がいつも口にする常套句の域を超えない。だがしかし、これまでのつなぎの監督とは思えない大胆な舵の切り方、そうして出した結果に支えられることで言葉の強度は増す。そして疑いようのない事実は、ソラーリにとってレアル・マドリーが特別な存在であるということ、だ。2000年代初頭のガラクティコス(銀河系軍団)の時代、このアルゼンチン人は非スターの外国人選手としてそのチームでプレーしていたが、ジダンらの影に隠れ続ける存在だった。それでも監督の道を志し始めた2012年、彼はフットボールで心に残しているものについて「ジダンのコントロール、ロナウドのドリブル、(ルイス)フィーゴの切り返し、グティのパス、ラウールのフィニッシュ、ロベルト・カルロスのシュート、(フェルナンド)イエロのフィード、(フェルナンド)モリエンテスのヘディングだ」と語り、あの日々に想いを馳せたのである。
今季序盤に泥にまみれたレアル・マドリーのイメージは、確かに払拭された。とはいえ、もし1シーズンを1試合で例えるならば、電光掲示板に映されるスコアはまだ同点といったところ。マドリディスモ(レアル・マドリー主義)の根幹である不撓不屈の精神は、何十年にわたって劇的な逆転勝利を呼び寄せてきたが、果たして今回は……。ソラーリは自らが指揮を執るチームで、マドリディスタたちの心に何を残すのだろうか。
文/江間慎一郎
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