2018-11-20-lotina(C)J.LEAGUE

厳しい上下関係、綿密な予定づくり…東京Vロティーナ監督が語る日本とスペインの文化の違い

東京ヴェルディを率いるスペイン人指揮官ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が、スペインメディアとのインタビューで日本のフットボールや文化などについて語っている。

オサスナ、エスパニョール、レアル・ソシエダ、デポルティボ、ビジャレアルなどスペインの数々の名門チームを率い、2017年から東京ヴェルディで指揮を執るロティーナ監督。スペイン『リベルター・ディヒタル』とのインタビューに応じた同監督は、日本で驚いたこととして、その治安の良さを挙げている。

「日本での日々はどうか? 様々な観点から、とても素晴らしく過ごせている。まず、ここの治安は信じられない。どこにいても安全で、携帯電話やポータブルなものをどこかに置いていっても、絶対にそこに置かれたままなんだ。それと人々が持つ敬意も素晴らしい。いつも笑顔で接してくれるんだよ。良い気分でいられるし、本当に好ましく感じている」

また日本のフットボールと、自身がそれに寄与できることについても語った。

「日本はブラジルと関係が深い。あそこから多くの選手、監督がやって来たからね。ただ日本人はとても伝統を大事にする人々で、変化に対して抵抗がある。少しずつ説得していかないとね」私たちは(変化させようと)試みてはいる。大きな変化をもたらすのではなく、新しいことを見せることでね。ここのフットボールの良い部分や、彼らの見方を失わせることはしない。実際の行いでもって説得していけたらと思う」

仕事的には、現在が最も充実しているようだ。

「監督として、今ほど楽しめていることはただの一度もなかった。スペインで指導すれば名声を高められることは間違いない。だが家族の苦しみを伴うなど、難しいことだって多々ある。スペインで指導できるというのは素晴らしいが、しかしその代償だって支払わなければならない」

日本以外のアジアの国で指揮を執る可能性があるかとの質問には、こう返している。

「中国にも友人たちはいる。あそこでは日本よりも大金を手にすることができる。ただ私にとっては日本の方がいい。リーグのオーガーニゼーションやファンの存在によってね」

「一つ例を示そうか。ここのリーグは春秋制を採用している。初年度、私は1月12日にここに到着したのだが、同月の25日にはリーグ戦の予定が日付もキックオフ時間もすべて決定していた。マネージャーは私に『監督、次の2カ月間の練習の予定をください』と言ってきたが、『何の冗談なんだ』と思ってしまったよ(笑)」

その一方で、日本のその整然としたスケジューリングは、柔軟な決定には不向きとの見解も示す。

「スペインでは各週毎に練習の予定を立て、感触によって練習をしたり取り止めたりする。しかし、ここでそれを理解してもらうのは難しい。少し真っ青になったし、どう解決すればいいのか考えたよ。ここではすべてが決まっていなくてはならない。だから練習を予定するよりも、それを取り消す方が簡単だ。ここでは午前と午後に練習があるからね」

また「スペインでは午前の練習を取り止めれば、ロッカールームはお祭り騒ぎです。日本ではどうなりますか?」と問われると、次のように返答している。

「彼らを不愉快にしてしまうね。なぜ変えたのかと質問してくるよ。彼らは仕事にすべてのベースを置いている。私は練習の1時間半前か2時間前に(練習場に)到着するのだが、すでに7~8選手がロッカールームにいるんだ。練習が終わって2時間後にロッカールームに入っても、チームの半分以上が残っている。マッサージなどをしていてね」

「彼らにとって練習は10時から11時半までのものじゃなく、8時から始まっているんだ。彼らに初めて2日間の休みを与えたとき、日本人のアシスタントたちは私のことを見て、『なぜです?』と質問してきたんだ。もちろん、ときには休まなくてはならないさ。休むことだって重要なのだが、彼らにとっては理解し難い事なんだよ」

ロティーナ監督はさらに、日本の上下関係の厳しさにも言及。「それは凄まじいよ。いつもベテランたちが言うことを行うんだ」と語り、こう続けた。

「日本の社会ではベテランたちに対する多くの援助がある。しかし選手起用の上では問題ない。例えば、私は19、20、21歳のレギュラーを擁している。彼らは次の五輪でプレーする選手たちだ。ただ、このリーグでは三浦知良という50歳の選手が存在していたりもするんだ。もちろん、ほとんどプレーしてはいないが、しかし彼は本当に敬意を集めている。ほかにも37とか38歳の選手もいるね。伝説となった選手たちは、スペインよりも尊敬されているんだよ」

「先述した五輪代表の若手たちは、練習の1時間半前にやってきてボールに空気を入れている。もしベテランがスパイクを磨けと言うならば、そうするんだろうね。加えて練習が終われば、ボールが痛まないように空気を抜いているんだ。若手はベテランに対して、本当に敬意を払っている。また驚くべきは、若手があまり話さないことだ。そうしたベテランへの敬意によって、若手はロッカールームでほとんど口を開かない。代表選手であろうが、チーム内での出場時間が(ベテランよりも)多かろうがね」

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