2019_02_01_qatar_Almoez Ali_Goal©Getty Images

修正の遅れは「あえて」だったのか?カタールに完敗した森保ジャパン、指揮官の意図

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■欧州のチームのようだったカタール

今大会のカタールの戦いは何試合か確認したから、分かっているつもりだった。それでも改めて驚かざるを得なかった。カタールの変貌ぶりに――。

決勝を終えて明らかになったのは、これでもう、日本はアジアで最も組織的なチームとは言えなくなった、ということだ。

たしかに、大会得点王のアルモエズ・アリとアクラム・ハッサン・アフィフの2トップは強烈だった。だが、それ以上にインパクトがあったのが、戦い方だ。日本対策を施したうえで、組織的に、論理的にゲームを進めてきた。それは、いわゆる中東のチームではなく、まるでヨーロッパのチームのようだった。

従来の4−3−3ではなく5−3−2で臨んできたカタールに対して日本は、前半30分くらいまで守備も攻撃もまるでハマらなかった。

大迫勇也と南野拓実がプレスを掛けようにもカタールは、最終ライン中央の3枚でいとも簡単にボールを回す。一方、日本の守備陣は、裏を狙うアリと、中盤に下がったり、サイドに流れたりするアフィフを捕まえられない。

マイボールになっても、相手は5バックでスペースを埋め、ハーフスペースでクサビを受けようとする大迫の背後にぴったり付くから、イラン戦のように起点ができない。

「プレスの掛け方がハマらなかったことと、ボランチの脇で11番を誰が掴むのか、19番と入れ替わりながら来るのを誰が掴むのか、そこを臨機応変にできなかった」

結果、3失点に絡むことになる吉田麻也はそう語り、唇を噛んだ。

12分のバイシクルキックによる先制点は、サイドに流れたアフィフのクロスがアリに渡って生まれた。

アブデル・アジズ・ハティムに叩き込まれた2点目も、アフィフにプレッシャーを掛けられず、バイタルエリアに潜り込んだハティムに縦パスを入れられた。このとき、アリが裏に抜け、吉田を釣ったことも見逃せない。

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■「想定」はしていたのだが…

日本がプレスの掛け方をようやく修正したのは、2失点目のあとである。

「最低でも1失点したあとに、自分たちで(ピッチの)中で守り方を、サイドハーフをもうちょっと上げて、僕がアンカーのところにマンマークで付くくらいの戦い方を、自分たちでもっと気付いてやれればよかったと思います」

そう嘆いたのは、南野拓実である。だが、ちょっと待ってほしい。

自分たちで?

中で?

なぜ、それを試合開始からできなかったのか。なぜ、スタートしてすぐベンチから修正の指示が出ないのか。カタールは、サウジアラビア戦、韓国戦、UAE戦で5−3−2を披露している。5−3−2は奇襲でもなんでもないのだ。

「カタールは4−4−2で来るのか、4−3−3か、3−5−2(5−3−2)かという情報があるなかで、しっかり前からプレスを掛けるといういつも通りのゲームプランがあった」という南野の言葉を聞くと、5バックも想定していたということが分かる。

だが、「自分たちで」「中で」というからには、チームの戦術として落とし込まれていないのだろう。前半、ベンチで戦況を見つめていた乾貴士も「2トップで3バックを見ちゃっていた。あれでは絶対にハマらない。見ていて分かったのに、外から指示を出せなかった。もっと言うべきだった」と悔やんでいる。

この点について森保一監督に訊ねると、こんな答えが返ってきた。

「最初から選手がトップギアでアグレッシブにプレーできるだけの働きかけを、準備段階で監督としてやれなかったところがあると思っています」

もっとも、問題はプレスの掛け方だけでなく、この試合に限った話でもないのだ。例えば、ディフェンスラインからのビルドアップを取っても、相手が1トップならこう、2トップならこう、プレスを掛けてきたらこう、ボランチへのパスコースを消されたらこう、というオートマチックな約束事が整理されていないようだった。

だから、持ち運べるときに持ち運ばなかったり、相手の1トップに対して3人いるのに、中盤のエリアに入れられなかったりすることがあった。ハーフスペースに落ちた大迫に縦パスを入れるというのがチームとして共有された数少ないパターン。戦い方における再現性の低さは、カタールと対峙したことで、より鮮明になった。

森保監督の率いたサンフレッチェ広島は、Jリーグで最も戦術が整備され、論理的にゲームを進められるチームだった。ところが、今の日本代表は明らかに性格が異なっている。選手の自主性や柔軟性を高めるために、あえて任せているのだろうか。ロシア・ワールドカップで西野朗監督がそうして、成功したように……。

現時点では真相は分からない。だが、新体制が発足してまだ半年、今大会だって決して十分な準備期間があったわけではないのだ。ロシア・ワールドカップにコーチとして帯同した森保監督が、戦術うんぬんの前に選手にピッチ内での対応力を身につけさせる必要があることを感じたのもたしかだろう。

果たして意図的に選手に任せているのかどうか――。指揮官のチーム作りの真実は、コパ・アメリカやワールドカップ予選に入ってより明らかになっていくはずだ。

文=飯尾篤史

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