Chucky Lozano

メキシコ代表ロサノはサッカー界の次なる主役?PSVで急成長を遂げる23歳の素顔とは

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イルビング・ロサノは大きな可能性を秘めている。もしかすると現代最高……いや、サッカー史上最も偉大なメキシコ人選手になるかもしれない。

1995年生まれの現在23歳、笑うとすきっ歯が見える若者は、すでに母国メキシコで英雄として愛されている。「エル・トリ」ことメキシコ代表の試合に出るたびに、ファンは「エル・チャッキー・ロサノ」というチャントを歌って称える。彼は現在、エールディヴィジのPSVでプレーする。だがビッグクラブへステップアップするのではないかとうわさされ、実際にプレミアリーグやリーガ・エスパニョーラ、セリエAなどの有力クラブが関心を示しているという。

ウーゴ・サンチェスや“チチャリート”(小さなエンドウ豆の意)ことハビエル・エルナンデス、ラファエル・マルケスといった母国の先輩たちよりも偉大なフットボーラーになるのではないかと、メキシコのサッカーファンは考えているようだ。そんなロサノはどのような選手なのか?

■前回王者ドイツを打ち破る一撃

2019-02-07 2018 Hirving Lozano

未来の仮説はともかく、現実に起こった話をしよう。ロシア・ワールドカップという大舞台で、メキシコは初戦で前回王者ドイツを破るという偉業をやってのけた。

最高の舞台でロサノは35分に得点を決め、この先制弾はそのままメキシコに勝利をもたらす決勝点となった。以前からロサノは有望株として注目を集めていたが、このゴールはスターとしての資質、天性の度胸を示すものとして、世界中のフットボールファンに大きなインパクトを与えた。このワンプレーでロサノへの注目度は爆発的に拡大していった。

その後もロサノの評価は高まる一方だが、2019年1月の移籍は実現しなかった。だが、再び移籍市場が開くときには、エールディヴィジから異なるリーグへと主戦場を移す可能性が高いものと見られる。

ロサノへの期待が集まる一方、彼はあくまでメキシコからやってきた素朴な若者だという事実を忘れてはいけない。

メキシコ最大の都市メキシコシティ出身ではあるが、ロサノは10代前半の頃からイダルゴ州をホームとするパチューカで研鑽を磨いてきた。そんなロサノだったが、2017年夏にメキシコを飛び出し、異なる文化圏オランダに身を投じた。新天地アイントホーフェンで順応できるかどうかは未知数と思われていた。

だがそれも昔の話。そもそもピッチに立てるかわからないとすら言われていた若手だったが、いまやヨーロッパ屈指のウイングとして知られるまでに至っている。

そしてビッグクラブへのステップアップも間近と評されるロサノだが、本人はあくまでトレーニングの積み重ねを重視しており、移籍のうわさはどこ吹く風だ。彼は『Goal』に対して、次のように述べている。

「ここに来て以来、僕は多くのことを学び、フットボールについて多くのことを身につけてきた。練習ごと、試合ごとに、まだまだ学んでいるところだ。ここに来て、本当に良かったと思っている」

■「PSVは最高の環境だと思っている」

2019-02-07 Hirving Lozano Erick Gutierrez

ロサノはアイントホーフェンにいながら、故郷メキシコを恋しく思うこともあったかもしれない。だが2018年の夏には、その環境に若干の変化があった。ユース時代からともにプレーしてきた親友、エリック・グティエレスが1年遅れでPSVに加わったことで、ロサノのオランダでの生活はずっと快適になったようだ。

「エリックの移籍については、実はチームに僕が進言した部分もあるんだ。だからちょっとだけ関係しているんだよ」

「PSVがエリックと契約するかどうかは注目していたよ。だから僕はPSVに“エリックと契約したほうがいい”と言ったし、エリックには“ここに来たほうがいい”と言ったよ。だからエリックはオランダに来る決断をしたんだと思う」

ロサノはまだ23歳だがアイントホーフェンで2人の子どもを育てている。彼の妻はオランダに居心地の良さを感じているようで、ロサノ本人も一人のフットボールプレーヤーとして順調な成長曲線を描いている。

PSVはフットボールの後進地というわけではない。それはむしろ逆と言えるだろう。このクラブはかつてロマーリオ、ロナウド、ルート・ファン・ニステルローイといったビッグネームが、若手時代に在籍したクラブなのである。彼らがその後、どのようなFWへと成長を遂げたかは、言うまでもないだろう。

「このユニフォームを身にまとうことは、とても素晴らしいことだ。アイントホーフェンの町も大好きだよ。ここに来てからずっと最高の環境だと思っている。正直なところ、僕はチームのために100%の力を注いでいるし、あらゆる面で選手として成長できる環境だと実感しているよ。本当に素晴らしい毎日を過ごしている」

■飛躍のシーズンに

2019-02-07 Hirving LozanoGetty Images

ロサノの急成長ぶりはピッチの上にも表れている。ロサノは今シーズンここまでエールディヴィジで19試合13ゴール8アシストを記録。このゴールペースは29試合17ゴールだった昨シーズンを大きく上回るものだ。

欧州カップ戦のコンペティションでは、UEFAチャンピオンズリーグ予選と本戦のグループリーグ合計8試合で4ゴールをマークしている。

「チャンピオンズリーグはやっぱりすごい大会だよ。これはとても素晴らしいコンペティションだ」

「ワールドカップに出て、最高の舞台を経験して、すごいチームやすごい選手たちと対戦して、得るものが本当に大きかったんだ。たくさんのことを学べて、最高に楽しめた」

その結果、ロサノは何を得たのか。チャンピオンズリーグのアンセムを耳にして、フットボールを目いっぱい楽しんだ。ロサノは大舞台でそのスピードと決定力を披露し、多くのファンを喜ばせた。

2018年、北中米カリブ出身選手が得られる最高の栄誉、CONCACAF年間最優秀選手賞に輝いたロサノの勇姿は、我々の脳裏に多く刻まれている。

■「ピッチでは何かしらの素晴らしい教えがある」

Chucky Lozano

ロシア・ワールドカップを終えた今シーズンは、チャンピオンズリーグの3次予選であるBATEボリソフ戦で2試合2得点。そしてグループリーグではトッテナム戦、インテル戦でもゴールを決めた。とりわけトッテナムやインテル相手に決めたゴールは、ヨーロッパだけにとどまらず、世界中のサッカーファンの間で長く記憶されることだろう。

こうした活躍を見せているにもかかわらず、ロサノは自分がまだまだ成長過程であると言い続けている。PSVではフィリップ・コクー元監督、そしてマルク・ファン・ボメル監督から指導を受け、代表ではフアン・カルロス・オソリオの下でプレーした。ロサノは彼らから学んだことが大いに役に立っていると強調する。

「自分にはまだ成長の余地がたくさんあると考えている。フットボールは試合をするたび、たくさんのことを教えてくれるのさ。常に新しいことを学ぶことができるんだ」

「何かにチャレンジしたとき、その勇気を持った人にしか体験できない新しい光景を見せてくれる。それは一瞬のことなんだ。何かをしなければならない瞬間があれば、一方で何もしてはいけない瞬間だってある。そのすべてから得られる要素があると思っているよ。ピッチに立つことは、何かしらの素晴らしい教えがあるんだ」

一見、ロサノは自信家のように見えるかもしれないが、その一方で「正直に言うとね、僕は左足が少し弱いんだ。そこは、もう少し練習する必要があると思う。両足どちらも遜色なく扱うことができたらね……」と自身の改善点についても正面から向き合っている。

■「バロンドールにノミネートされるような選手に」

2019-02-07 Hirving LozanoGetty Images

ロサノの成長ぶりは著しく、エールディヴィジに留めておくのはもはや難しいとの声も。ビッググラブへのステップアップは時間の問題と目される。

UEFAチャンピオンズリーグ、そして代表の親善試合でロサノと対峙したウルグアイ代表FWルイス・スアレスもメキシコの俊英を手放しで称賛した。他の選手たちから評価も、ロサノ本人は大切にしているようだ。

「正直言うと、L・スアレスのような世界的なFWが自分のことを話題に出してくれるだけで、感謝と興奮の気持ちを覚えるよ。僕にとっては夢のような気分さ」

だが、ロサノが憧れるアイドルはL・スアレスではない。子どものころ、ロサノの寝室に貼っていたのはバルセロナのポスターだった。そしてその当時、バルサにL・スアレスはまだいなかった。ロサノが一緒にプレーしたいと夢見る憧れの存在はリオネル・メッシなのだ。

2018年度のバロンドール受賞者はルカ・モドリッチに決まったが、その話題になるとロサノは眉をひそめた。

「僕にとって、世界最高の選手はメッシなんだ。彼はプレーヤーとして突出しているのに、バロンドールに選ばれないなんておかしいよ」

その直後ロサノに“権威あるその賞をもらえるようになりたいかい?”と尋ねると、顔から笑みが消えた。メッシを話題に出したときは子どもっぽい笑みを見せていたのに、瞬時に真剣な表情へと変わった。

「世界には優秀な選手がたくさんいる。もし可能であれば、神のご加護があれば、いつかバロンドールにノミネートされるような選手になりたいと思っているよ」

「最も大事なことは、一生懸命やれば、いつかそこにたどり着けるということだ。毎日の積み重ねがあって、昨日より徐々に成長していく。そして常に学び続けることで、いつかその瞬間が実現することを望んでいるよ」

そんなロサノは、まだ世界最高の選手に程遠いかもしれないが、すでにメキシコ代表として不動の評価を手にしつつある。

チチャリートがウェスト・ハムでプライドを取り戻したように、また、エクトル・エレーラがポルトで躍進したように、現役メキシコ代表選手が欧州各リーグで存在感を示している。ロサノはまだPSVのユニフォームを身に着けている状態だが、すでに彼らを超えるスケール感を漂わせているのだ。

■「代表では自分ができることを精一杯やるだけ」

2019-02-07 Hirving Lozano

そんなロサノが今後すべきことは何だろうか? その疑問を考察すると、まずはメキシコ代表としてさらなる活躍をすることが必須となるだろう。

チチャリート、エレーラ、エクトル・モレノ、アンドレス・グアルダードなど、近年のメキシコ代表で主軸を務めた選手たちは、2022年のカタール・ワールドカップでは全盛期の過ぎた時期になっており、メンバー入りすることさえ難しいだろう。

むしろ、彼らのようなベテラン勢が2022年も代表に居座っていたら、メキシコ代表は世代交代に失敗したこととなり、大会での躍進も期待できないだろう。だからこそ、ロサノやグティエレスといった気鋭が、メキシコ代表の中軸としてチームをけん引する存在にならなくてはいけない。

2019年に入り、メキシコ代表の新監督として、タタ・マルティーノの就任が発表された。

ロサノがマルティーノ新体制で不動のエースになるためには、これまでのウイングとは少し違う役割が求められるかもしれない。チャンスメイクだけでなく、試合を決するだけの力が必須となるだろう。そう、憧れの存在であるメッシのように。

周知のとおり、マルティーノ監督はアルゼンチン出身で2010年にはパラグアイ代表を南アフリカW杯でベスト8に導き、その後13-14シーズンにはバルセロナを率いたことも。2014年から2016年にかけてはアルゼンチン代表指揮官を務めるなど、ロサノのアイドルであるメッシとともに戦ってきた指導者だ。

マルティーノ監督の印象をロサノに聞くと「正直なところ、まだわからないね。監督がどういうプランを立てているか。でも、僕にプレーするチャンスを与えてほしいと願っているし、もし起用されたら、自分ができることを精一杯やるだけだよ」答えている。

またロサノは「マルティーノ監督は、パラグアイやアルゼンチンを指導してきたし、代表チームを率いることの責任をよく理解していると思う。メキシコ代表にとって、彼はベストの選択だと思いたい」と続け、メキシコ代表の躍進に気概を示した。

PSVでは素晴らしい1年半を過ごし、メキシコ代表でも新たなエースとして期待を集めているロサノ。彼は遅かれ早かれ、ヨーロッパ最高峰のビッグクラブへと足を踏み入れることになるであろう。その瞬間は2019年夏に訪れることになるかもしれないし、世界的なビッグスターと肩を並べてプレーする光景は、近い将来目の当たりできるはずだ。

2022年カタールW杯まであと3年と迫った。ここまで7大会連続ベスト16のメキシコがその壁を破るとしたら、ロサノが新たな歴史の扉を開く原動力になるのかもしれない。加速度的に成長している彼の視線の先には、輝かしい未来が待っているのではないか――。そんな期待を感じさせてしまう魅力が、ロサノにはある。

取材・文=ジョン・アーノルド/Jon Arnold

構成=Goal編集部

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