Gian-Luca Waldschmidt, GermanyBongarts

フライブルクで開花した22歳の才能。なぜシュトライヒ監督は選手から信頼されるのか?/インタビュー

ジャン・ルカ・ヴァルトシュミットのプロとしてのキャリアはアイントラハト・フランクフルトで始まった。だが、そこでは頭角を現すに至らずハンブルガーSV(HSV)へ移籍。ブンデスリーガ残留がかかった試合で逆転ゴールを決め、HSVを降格の危機から救った。しかし、そのわずか1年後にHSVは2部降格という憂き目に遭っている。

そして22歳のヴァルトシュミットは昨夏からSCフライブルクへ活躍の場を移した。フライブルクのクラブ史上2番目に高額の移籍金、500万ユーロ(約6億5000万円)で獲得されている。

ヴァルトシュミットは『Goal』のインタビューに応え、トップデビューを飾ったフランクフルトに対して信頼を失った経緯や攻撃的なハンブルクメディアの姿勢、自信を失う原因になったマルクス・ギスドルの言葉、そしてフライブルクでの好調な理由について語った。

■「新しい何かが必要だった」

Luca Waldschmidt SC Freiburg 24052018

――ジャン・ルカ、フランクフルトの育成センターへ移った時のあなたは14歳でしたね。そんな若さにもかかわらず、SSVオラニエン・フローンハウゼン、SSCユノ・ブルク、TSGヴィーゼックに次いで、フランクフルトはあなたにとってすでに4つ目のクラブでした。どうしてそういうことになったんですか?

何度も引っ越しをしたからとか、そういうわけじゃないんだ。クラブを転々としていた間中、僕はずっと同じちっぽけな村で暮らしてたんだからね(笑)。 フローンハウゼンは僕の地元のクラブで、そこが出発点だった。ユノ・ブルクは僕の家から10分ほどの距離にある3つの村が合同で運営するクラブで、フローンハウゼンよりひとつ上のD-ユース(12~13歳のユース)のグループリーグでプレーしていた。そのD-ユースのリーグでヴィーゼックと対戦した時に、僕は注目されるようになったんだ。ヘッセン州ではヴィーゼックが育成に力を入れているのは有名だったから、ヴィーゼックへ移ったのは当たり前のことだったんだよ。

――さらにその1年後、2010年の7月にあなたはフランクフルトへ歩みを進め、それから4年を待たずに、2014年の4月にはフランクフルトでプロとして初めて契約を結びました。その後丸々3年間フランクフルトでプレーしていたわけですが、トーマス・シャーフ、アルミン・フェー、ニコ・コバチという3人の監督のいずれの下でも頭角を現すことができませんでした。どこに原因があったんでしょう?

まず、シャーフが監督だった間、僕はずっとケガをしていた。明らかにそのせいで僕は力を出せなかったんだ。フェーの時は、確かにプロチームのメンバーだったけどまだ学校に行っていたから、週に2回しか練習に参加できなかったんだ。いつも何とか練習には出ていたけど、最後にもうちょっとというところで僕には何かが欠けていたってことも確かだね。「絶対に今こいつを使うべきだ」って監督に思わせる、何かがね。それにもうセカンドチームにいたわけじゃないから、常に練習している必要があったんだ。言ってみれば、ほんの何回かしか試合に出られなくても仕方がなかったんだよ。

――そのわずかな出場機会も、数分間の交代出場に限られていましたね。

そのせいで、経験の浅い僕が力を見せることがさらに難しくなったのはもちろんだ。何か結果を出せるように、1試合か2試合でも最初から最後までずっと試合に出してもらえればいいのにって、あの頃の僕は思っていた。結局、いろんな原因が絡んでいたんだよ。僕自身にしても、監督が他の選択肢を考えられないくらい、もっといいところを見せる必要があったのは間違いないだろうからね。

――同じクラブ内でユースからプロチームへ進んだ場合、プロの練習に参加するようになった途端に難しい立場を経験するという例が数多く見られます。あなたもそうだったと思いますか?

監督の立場として、若い選手だったらどんな扱いをしてもほとんど抵抗を受けないからね。若手にベンチを温めさせても、文句を言うやつはいないよ。けれど、僕の場合はもう少し納得しやすかった。当時の僕たちは降格争いの最中だったんだから。フェーが指揮した最後の試合ではハーフタイムになってやっと試合に出て、それでまあまあの結果に終わらせることができた。あれは僕にとって簡単なことじゃなかったよ。だけどそれからまた監督の交代があって、また適応しなければならなかったんだ。

――コバチに代わってからの数週間で、あなたが試合に出られたのはたったの1度でした。にもかかわらずフランクフルトは、契約満了を待たずにあなたとの契約を3年延長しようとしましたね。「それで十分だろう?」とフレディ・ボビッチに訊かれて、あなたは何と答えたんですか?

2015-16シーズンのウィンターブレイクに2部リーグのクラブからレンタルの問い合わせがあって、実を言うと僕はすごく気を引かれていたんだ。僕にとってもクラブにとっても、とてもいい解決策だったろうからね。僕は試合に出て実戦経験を積む必要があったし、2部リーグでコンスタントに試合に出られれば、ブンデスリーガのクラブで練習にだけ出ているより得られるものが大きいだろうと思ったんだ。だけどその点について、僕とフランクフルトは意見が一致しなかった。つまり、フランクフルトにいてもチャンスは手に入るだろうし、試合にも出られるだろうって思われていたんだ。

――次の夏にあなたはハンブルガーSVへ移籍しましたが、その前にフランクフルトからはどういう見通しを提示されていたんですか?

レンタル移籍の話が駄目になってから自分の将来についてさらに考えてみたら、僕はもう契約を延長したくないと思ったんだ。僕はフランクフルトを信頼できなくなっていた。たった1回チャンスをもらって最後の15分間試合に出るというのでは、僕には全然足りなかったんだ。とにかく僕はフランクフルトを出るしかなかったし、僕には新しい何かが必要だったんだ。

■「マスコミと付き合うのは簡単じゃない」

Waldschmidt HSV 17032018Getty Images

――そしてあなたが移っていった先はよりにもよってHSV、ブンデスリーガの中でも残留争いの常連になっているクラブでした。

でも、僕はそんなことでひるんだりしなかったよ。ハンブルクは今でも力強いクラブだ。ディートマー・バイヤースドルファーやブルーノ・ラッバディアと話し合って、彼らがわりと長期的な計画でチームに落ち着きを与えたいと思っていること、1年単位じゃなく長い間に渡って機能するチームを作ろうとしていることがわかったんだ。彼らはすでにある骨組みを中心にしてアレン・ハリロヴィッチ、ドウグラス・サントス、そして僕みたいな比較的若い選手を何人か使いたいと思っていた。その全部が僕にはとてもいい考えに思えたし、信頼できると感じられたんだ。

――ですが、その前の何年間か、ハンブルクでは混乱と動揺、それにほとんど継続性というものが見られない点が目立っていましたよね。そういう状況は、なぜあなたの決断に影響しなかったんですか?

フットボーラーはそんなふうには考えないんだ。何より大事なのは、チームの雰囲気とピッチの上で何をしているかってことだ。もちろん、それまでに何度も幹部が交代していたことは知っている。だけど、そんなことはそれほど重要じゃないんだよ。そこへ行けばどんなフットボールができそうなのかということ、それに、今までよりもっと試合に出られそうだっていう見込みに比べればね。

――ハンブルクでは成績不振だからというだけでなく、他の点でもメディアからの逆風が吹いていました。そのことについて、あなたの現在の監督であるクリスティアン・シュトライヒは「5つもの新聞が発行されているような大都市では、すべてがそう簡単にはいかない。絶え間なく外から何か言われ、内輪の問題にも頻繁に口を挟まれる」と言っていました。その通りだと思いますか?

まったくその通りだね。マスコミとつき合うのは簡単なんてものじゃないし、決まったやり方なんか全然ないんだ。メディアが褒めてくれるのはほんのちょっぴりで、それよりも批判しようと待ち構えているだけだと気づくのはチームにとって辛いことだよ。僕が何試合か続けて試合に出られなかったというので、「ヴァルトシュミットはキャリアのどん底にいる」って書かれたことがあるんだ。だけど僕自身は体調が良くて練習もきちんとやっていたから、ちっともそんな感じはしてなかったんだ。あの頃の僕は、まだ自分のキャリアはちゃんと始まってさえいないって感じていたんだからね(笑)。

■「僕はちょっと気にしてしまうタイプだ」

Gian-Luca Waldschmidt, GermanyGetty

――あなたがHSVにいた頃に監督の一人だったマルクス・ギスドルは、あなたが「チャンスを活かさないのが非常に腹が立つ」と発言しました。そんなふうに言われてどうでしたか? もう失敗は許されないと感じましたか?

そうだね。もちろんどんな監督も、自分のチームの選手についてそういう厳しい発言をするかどうか自分で決めなければならない。確かに僕はちょっと気にしてしまうタイプなんだ。必要以上にくよくよ考えこんでしまうんだよ。それなのに監督のああいう発言が報道されると、何も考えずにピッチに立つことができなくて、できるだけ失敗しなくて済むように危険を冒さないプレーをしようとしてしまうんだ。だけど、それは僕のプレースタイルじゃないんだよ。攻撃の時にリスクを取るのが僕の好みなんだ。

――あなたは2016-17シーズン最終節のヴォルフスブルク戦に途中から投入されて、そのわずか110秒後にブンデスリーガ初ゴールを決め、このゴールのおかげでギスドル率いるHSVは降格を免れました。そして次のシーズンのウィンターブレイクには、あなたはすでにSCフライブルクとの間で移籍について合意に達していましたが、最後の最後になってHSVが拒否したことで話が流れてしまいましたね。あの時は驚きましたか?

うん、驚いたね。すでに何もかもずっと先まで話が進んでいたんだ。僕の代理人は、もうまもなく新しいスタートだって言ってたんだからね。

――あなたは何度も思ったのではありませんか? 「僕はハンブルクと一緒に降格するのに、フライブルクはあんまり大騒ぎにもなっていない」って。

いや、そんなことを思っても誰にも何の意味もなかっただろうからね。その問題はすぐに簡単に片づいたよ。確かにあの時、できれば僕は冬の間にフライブルクへ移りたいと思ってたろうけど、自分の力で状況を変えられるわけじゃなかったからね。クリスティアン・ティッツが監督になってからは、実際にあともう何試合か出場できたしね。だから、僕としては不満はなかったよ。もちろん、降格しなくて済むならすごくうれしかっただろうけどね。

――今シーズンの前半戦、あなたはフライブルクで力強い働きを見せましたし、U-21代表でも華々しい活躍を飾っています。あなたにとって、フライブルクはHSVとはまったく違っているように感じられますか?

そうなんだ。練習場の様子を見ただけでわかると思うよ。何もかもHSVよりずっとのんびりしているし、ここにいると本当に落ち着くんだ。こっちへ来た最初の週の間にもう、クラブで働いている人みんなと知り合いになったよ。2試合続けて負けても監督は全然慌てないし、これは僕たち選手にとってすごく重要なことなんだ。HSVの時より期待も少ないから、外野からうるさく言われることもない。僕たちのファンは、リーグに残り続けるのが何より大事なことだとわかっているんだ。フライブルクでは、みんなが力を合わせて真面目な仕事をしてるってことがすぐに伝わってくるんだよ。

――今シーズンのあなたのプレーは、何もかもこれまでよりうまくいっていると感じますか?

何と言っても、いつも最初から試合に出られているのは間違いないからね。そうするとすぐに自信が出てきて、落ち着くことができるんだ。僕は今それを経験しているところだよ。それに、フライブルクのプレースタイルも僕にすごく合ってるんだ。僕たちはボールを走らせて、変幻自在の攻撃をする。ボールをどうするか、僕が自分で自由に決めることができるんだ。自分が成長しているのを感じるよ。

■「気持ちがすごく重要だ」

Freiburg Waldschmidt Frantz Haberer 16092018Getty Images

――自信がついたおかげで大きな結果を生み出せているとも感じますか?

うん、信じられないくらいだ。気持ちってものもすごく重要なんだよ。ハンブルクでも試合に出るのは楽しかったけれど、フライブルクでは2~3回失敗しても問題ないと思えるし、「これでまた次の試合に出してもらうのは難しくなりそうだ」なんて考えずによくなる。

――フランクフルトではシャーフ、フェー、コバチ、HSVではラッバディア、ベルント・ホラーバッハ、ギスドル、ティッツというふうに、まだキャリアの浅い中であなたはすでに様々な監督を経験しています。それらの監督たちとフライブルクのシュトライヒ監督とではどこが違っているのでしょうか?

どの監督にもそれぞれのやり方があるけれど、シュトライヒはとにかくいつでも信頼できるんだ。彼はとてもよくコミュニケーションを取ってくれるし、いろいろ間違っているところを指摘してたくさんのアドバイスをくれる。すごく情熱的で、フットボールが好きでたまらないんだよ。彼はいろんな細かいことについていろいろな可能性を考えるんだけど、その細かいことというのが、他の監督だったら気づかないかもしれないような、僕のこれまでの経験では指摘されたこともないようなことなんだ。

Christian Streich freiburg 31032018Getty Images

――世間ではこれまでずっとシュトライヒは非常に信頼に足る人として知られてきましたが、チームの中でもそうなんですね?

そうなんだよ。だから僕たち選手にとって、彼は他の監督より付き合いやすいんだ。彼は完全に僕たちと同じ目線に立って相手をしてくれるからね。彼は、何か気に入らないことがあればはっきり口にする。けれど、誰かが何かをちゃんとやったなら、やっぱりいつもすぐに気づいてくれるんだ。以前僕がスターティングメンバーに入れなかったことがあったんだけど、その時彼は、トレーニングの間に何が彼の眼鏡に適わなかったのか詳しく説明してくれたよ。「お前はよく練習した、だが他の誰それは今ももっと熱心に練習している」って言われれば、選手としてはどうしようもないからね。だから、何でも話し合う彼の姿勢はとてもいいと思っているよ。

――同僚のパスカル・シュテンツェルがインタビューで言っていましたが、フットボールとは関係のない話題でも監督と話し合うことがあるそうですね。それについてはどう思いますか?

以前のクラブでは、ロッカールームでフットボールと関係のないことが頻繁に話題に上るなんてことはなかったね。たとえば今年の夏、メスト・エジルと代表チームの問題が政治的事件に発展した時、そのことについて監督は僕らと話し合ったんだ。いいことだと思ったよ。ホットな話題だったし、本当に起こっていることだったからね。大体において監督が特に話題にするのは、とにかく人生に関することだ。残念ながら僕たちフットボーラーはそういう大きな問題を考える習慣があるわけでもないから、監督と話し合うのは本当に役に立つよ。

インタビュー・文=ヨヘン・ティットマール/Jochen Tittmar

構成=Goal編集部

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