浦和レッズが9日に行われた第98回天皇杯全日本サッカー選手権大会決勝でベガルタ仙台に1-0で勝利を収め、2006年以来12大会ぶりとなる優勝を決めた。今季最大の目標であったAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権を見事に獲得した。しかし、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。
■開幕5試合未勝利も、監督交代で取り戻した自信
昨季途中、5年半に渡るミハイロ・ペトロヴィッチ体制の終焉を迎えた浦和。堀孝史監督の下、10年ぶりのACL制覇を達成したものの、リーグ戦を見てみればラスト3連敗、7位で終了。慣れ親しんだ3バックから4バックに変えるなどミシャ体制からのスタイルの変更にも苦慮した。
堀体制のまま迎えた今季は、開幕5試合で未勝利が続き、クラブは第5節のジュビロ磐田の敗戦後に堀監督との契約解除を決断。新指揮官就任までの間は、大槻毅育成ダイレクターが暫定的に指揮を執ることになった。
すると、チームは第6節・ベガルタ仙台戦で今季初白星を挙げるとその後3連勝をマーク。大槻暫定監督は、失いかけていたレッズへの期待と選手の自信を取り戻すことに成功し、最高の形でオズワルド・オリヴェイラ監督にバトンタッチした。
■一時リーグ3位も射程圏に捉えたが…
©J.LEAGUEオリヴェイラ監督は、鹿島アントラーズ時代に前人未到のリーグ3連覇を達成しただけではなく、カップ戦のタイトルを総なめにした輝かしい経歴を持つ。しかし、「短期間で水をワインに変えるようなことはできない」と、チーム作りにはあくまでも「時間が必要である」ことを説いた。
就任当初は「選手たちの練習に対する姿勢なども、少し意欲が低下していた。少し無気力な姿もあった」からこそ「モチベーションを与えることがまずは必要」と、選手へ自信を植え付けることを率先した。連戦続きで、戦術的な浸透に時間をかけることはできなかったが、W杯中断期間に静岡で夏合宿を開き、フィジカルの向上と戦術的な擦り合わせを行った。この効果もあって中断以降は徐々に勝ち星を増やしていく。
戦術の浸透は結果に表れる。オリヴェイラ監督がイニエスタ対策として採用した青木拓矢、長澤和輝、柏木陽介を並べる3ボランチの形は、分厚い攻撃と堅い守備を実現させ、シャドーから1列前に上がった武藤は前半戦、リーグで1点にとどまっていたが、9月以降に一挙6ゴールをマーク。フィニッシャーとしてチームを助けた。
9月末から10月下旬にかけて、一時は5試合無敗でACL出場圏内の3位浮上も射程圏に捉えた浦和だったが、青木拓矢の負傷やU-19日本代表選出での橋岡の離脱もあって勝ち切れず、1試合を残してACL出場権獲得となる3位以内の可能性が消滅してしまった。
■勝つためなら、サポーターの力も借りる
だからこそ、天皇杯に懸ける思いは強かった。最終節から中3日で臨んだ準決勝・鹿島戦は、負傷者で交代枠3枚を使うアクシデントに見舞われながらも、セットプレーから奪取したマウリシオのゴールを守り切り、最大のライバルを退けて決勝進出を決めた。
ここまで来れば“勝つ術を知る”オリヴェイラ監督の独壇場だ。
「サポーターほど選手たちに情熱を伝えられる存在はいない」とサポーターの魂を揺さぶる熱い言葉を発し、通常試合2日前からの非公開練習を今回はいずれも公開した。タイトルが懸かる大一番を前に特別なゲームという位置づけにするのは、前体制では見られなかったことである。「朝の6時から(練習場に)横断幕を掲げて、歌を歌ってくれて、この試合の重みを伝えてくれた」と槙野智章が語るように、これは大一番へ臨む選手にとっても大きな後押しとなった。
そして迎えた仙台との決勝。シュミット・ダニエルから始まるビルドアップでもパスコースを限定し、サイドに押し出すプレスによって高い位置で奪取。仙台にボールを握られながらも、自由は与えなかった。宇賀神のスーパーボレーで幸先良く先制したものの、時間の経過とともに押し込まれる展開となるや、62分に柏木陽介を下げて柴戸海を投入したのを皮切りに5バックに変更。結果的に倍以上のシュート16本を浴びるも、最後まで仙台に得点を許さなかった。試合後にオリヴェイラ監督は「ケガ人が6人いた」と、厳しいチーム事情で決勝に臨んでいたことを明かしつつ、それぞれが犠牲心を持って戦ってくれたと選手を称えた。

「制限されている中でのプレーだったので、守備的な流れになるのは予想していた。だからこそ、チームの規律を称えたいと思う。指示をしっかりと守ってくれた。それぞれが犠牲心を持って試合の最後まで戦ってくれた」
そして指揮官は、練習から最高の雰囲気を作ったファン・サポーターへ感謝の気持ちを述べた。
「ファン・サポーターの存在が決定的だった。彼らの応援する意欲が、選手たちの限界を超えさせる力になったと思う。ファン・サポーターからの、自分たちに対する期待の話を選手たちにもした。それがパフォーマンスにつながり、タイトルを獲ることにつながったと思う」
何としてでも再びアジアの舞台へ行く。その覚悟は、例えば長澤和輝が後半アディショナルタイムに激走してボールを追う姿であったり、阿部勇樹が体を投げ出して球際でバトルする姿であったり、ファン・サポーターが『We are Reds!』の大声援で最高の雰囲気を作り出すことに表れていた。
それぞれが覚悟を持って臨んだ最後の戦いで、内容が伴わなくとも、勝つことだけにこだわる。その意識が優勝を引き寄せたと柏木陽介は語る。
「正直、内容自体が良かったと言えるような試合は、(リーグ戦)終盤に関してはほとんどなかった。だけど、勝ち切る強さというのはすごく身に付いた。何よりも今、必要だったのはタイトルを獲ること。ACLに出場したい。それだけだったので」

主軸であったラファエル・シルバの移籍を経ての監督交代、ファブリシオやアンドリュー・ナバウトの長期離脱という苦難を乗り越え、今季最大の目標であるACL出場権を自らの手でつかみ獲った浦和。オリヴェイラ監督がもたらした「勝ち」へのこだわりと姿勢を身に着け、天皇杯優勝という最高の形で2018シーズンを締めくくった。
水は本当にワインに変わったか――。体制2年目を迎えるオリヴェイラ・レッズにとって、来季は真価を問われるシーズンとなる。
文=大西勇輝(Goal編集部)
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