なぜシティはチェルシーを粉砕できたのか…圧倒的だったアグエロと“サッリ・ボール”にこだわったサッリ

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(C)Getty Images

■まさかの大差、チェルシーに何が起こった?

暫定2位のマンチェスター・シティと、暫定5位のチェルシー。それぞれ優勝、トップ4という目標に対して1つ下の順位に位置する状況で行われたプレミアリーグ第26節は、シティが6-0で大勝という予想外の結果に終わった。試合後、ジョゼップ・グアルディオラとの握手も忘れるくらい当惑していた様子のマウリツィオ・サッリは、ややうつむき加減でこう話した。

「我々のパフォーマンスを説明するのは難しいし、理解するのも難しい。うまく試合に入れたと思ったが、4分後には愚かな方法でゴールを許していた。入りは良かったのだが、反応が良くなかった。最初の失点から20分、向こうは素晴らしいサッカーをしていたので、してはいけない相手に多くのミスをしてしまった」

たしかに、前半25分までに次々と喫した4失点は多くがケアレスミスからだった。最初の失点は、リスタートの場面でシティに虚を突かれ、ケヴィン・デ・ブライネからベルナルド・シルヴァへとスルーパスを通されたところからラヒーム・スターリングに決められた。3失点目も、味方のクリアボールをロス・バークリーがヘッドで不用意に自陣ボックス内へと戻してしまったところをセルヒオ・アグエロに拾われている。だが、こうした集中力の欠如やミス以前に、シティを相手にするにあたって大きな問題を露呈していたチェルシーの敗戦は、不可避だったと言えるだろう。

■12月とは違う“サッリ・ボール”。しかしそれが裏目に

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今シーズンここまで、ペップ・グアルディオラのシティに対して最も有効な策を講じ、最も完璧に近い形で勝利を収めた最初のチームのが、昨年12月8日のチェルシー(プレミアリーグ第16節:2-0で勝利)だった。その前回対戦でチェルシーは、前半こそ押し込まれたものの後半で得意のポゼッションをあえて封印し、「偽9番」にアザールを置いた4-5-1の撤退守備からカウンターでシティを文字通り“刺した”のだった。

ところが、今回の対戦前、マウリツィオ・サッリ監督は会見でこんなことを言っていた。「(12月に)彼らは我々のハーフでプレスをかけることができていたが、それは(我々の)チョイスではなく必然だった」。つまり、「技術的には現時点でヨーロッパ最高の中盤」を擁するシティに対し、低い位置で構えて迎撃した前回対戦は「やむなし」の判断だったという意味だ。

サッリは元々、勝つために策を講じるよりも自分のやり方で勝つことを目指すタイプだ。だから、勝ちはしたが忸怩たる思いがあったのだろう。12月の勝利をなぞることもできたが、サッリは今回の試合では「自分のやり方」、つまりポゼッションとハイプレスを基本とする“サッリ・ボール”でシティに挑むことを選んだ。

しかし、それが大いに裏目に出てしまった。この試合、シティはチェルシーのアンカーであるジョルジーニョの「脇」のスペースの使い方が際立っていた。正攻法で挑んだチェルシーは試合開始からハイプレッシングでシティに圧をかけようとしたが、ジョン・ストーンズやアイメリク・ラポルテ、フェルナンジーニョらにうまくいなされ、逆襲を受けた。その際にシティが常に狙っていたのがアンカー脇のスペースだった。ハイプレスに参加するヌゴロ・カンテとバークリーの裏をしたたかに、執拗に狙ったシティは、インサイドハーフのイルカイ・ギュンドアンとデ・ブライネ、さらにはトップから下りてくるアグエロ、右ウイングの位置から中央にずれてくるB・シルヴァのいずれかに必ずそのスペースを使わせ、攻撃を展開していった。

とりわけ徹底して活用されたのが、チェルシーの右インサイドハーフを務めたカンテの裏だった。『Opta』のデータによれば、この試合のシティは攻撃の「51.6%」が左サイドから。つまりチェルシーの右を狙ったもの(中央が「22.6%」、右サイドが「25.8%」)で、プレッシングに精力的なカンテの特性を逆手に取り、さらに自チームの強みである左ウイングのスターリングを生かすべくデザインされた形だった。中でも特筆すべきは、アグエロがジョルジーニョの右側スペースに下りてきてパスを受け、はたいて再びゴール前に侵入するパターン。13分にアグエロがスーパーミドルで2点目を、25分にギュンドアンが4点目を決めた場面はいずれも、アグエロがこのハーフスペースに移動してパスを受けたところから始まっている。これは間違いなくペップが狙っていた形であり、同時にチェルシーにとっては警戒しなければいけない形だった。

12月の対戦では、チェルシーはこの問題を撤退守備によってケアしていた。ジョルジーニョの両脇スペースを使うプロフェッショナルであるダビド・シルバやB・シルヴァの脅威をしっかり認識した上で、カンテとマテオ・コヴァチッチを低めに残し、両ウイングも引かせて相手サイドバックを見させるいわば“中盤混雑型”の4-5-1でシティの中盤に対抗していたわけだが、高い位置からのプレッシングを選択した今回の試合では、そこにぽっかりと空いたスペースをシティが見逃すはずはなかった。

■ハットトリックだけじゃないアグエロの貢献度

Sergio Aguero Manchester City

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3-1で勝利したアーセナル戦に続いて、1週間で2度目となるハットトリックを決め、アラン・シアラーが持つプレミアのハットトリック記録(通算11回)に並ぶ偉業を成し遂げたアグエロだったが、彼は上記のようにゴール以外の仕事でもシティのキーマンだった。オフ・ザ・ボールのシチュエーションでも非常にエネルギッシュで、シティはいわゆる「ジョルジーニョ番」のマンマーカーを付けたわけではなかったが、アグエロが強烈なプレスバックでジョルジーニョを襲う場面が何度も見られた。さらに、チェルシーの武器の1つである高精度フィードを持つダヴィド・ルイスへのフォアチェックもスピーディーで、後続の味方にプレスの道筋をつけるようなコースの切り方も絶妙だった。

これに対し、チェルシーのプレッシングはどこか場当たり的で精彩を欠いた感が否めない。最前線に入ったゴンサロ・イグアインはボールを収め、周囲を生かす能力やシュート技術は非凡なものを随所に見せたが、プレスの先鋒役としてはアグエロと比較にならない出来だった。またカンテやバークリーが前に出てプレッシャーをかけても、二の矢、三の矢が続かず、連動性や継続性に乏しい。それゆえ、技術の高いシティのビルドアップ隊にひとつ外されると陣形が崩れてしまう。チームの構築にかけてきた年月や成熟度の差と言ってしまえばそれまでだが、同システムと似通ったフィロソフィーでシティに挑むには明らかに実力不足だったと言わざるをえないだろう。

■「“サッリ・ボール”は弾けてしまった」のか?

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2019-02-10 Maurizio Sarri

これでアーセナル、エヴァートン、チェルシーと連戦を戦った“勝負の1週間”を完璧な3連勝で飾ったシティ。リヴァプールとの首位争い、そしてチャンピオンズリーグ再開に向けて弾みをつけた。

それに対し、チェルシーに問われるのは我慢だ。この大敗を受けて現地メディアは「Sarri-ball has burst(サッリ・ボールは弾けてしまった)」と見出しを打ち、「戦術のバリエーションがない」としてサッリの解任論を書き立て、攻守に一長一短のジョルジーニョをアンカーに置くシステムの限界を叫び始めている。だが、アントニオ・コンテ前監督の方針から、そしてクラブの伝統から考えてもスタイルを一新して臨んでいる1年目だと考えれば、これくらいの産みの苦しみは予想の範疇とも言える。

「ナポリではジョルジーニョにマンマークが付いても大きな問題にはならなかった。ここでもゆくゆくはそうなることを願っているよ」とはサッリのコメントだが、サッリは基本スタイルを確固たるものにしてから戦術にバリエーションを付けるプランを以前から表明している。その時が来れば、今の戦い方こそ他クラブに攻略されつつあるが、さらにその対抗策を見せてくれる可能性もある。それまで、移り気なオーナーのロマン・アブラモヴィッチにはなんとか耐えてほしいところだ。

文=寺沢薫

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