型破りなモチベーター。浦和の危機を救った大槻監督の言葉の裏に隠された気概

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髪をオールバックで固め、ポケットに手を突っ込みながらピッチ内を睨みつける。エキセントリックな一面で注目を集める浦和の新指揮官、大槻毅とは果たしてどんな人物なのか?

4月7日の明治安田生命J1リーグ第6節、浦和レッズがベガルタ仙台相手に1点のリードで迎えた後半、両監督のハーフタイムコメントが記者席に配られると、周囲で苦笑が漏れた。そこには「いかにも」なコメントが記されていたからだ。

「シュートを撃て!ゴールに突き刺せ!」

髪をオールバックで固め、ポケットに手を突っ込みながらピッチ内を睨みつける。オーバーアクションで判定に不満を表し、サポーターのブーイングを煽ったかと思えば、倒れている自チームの選手に対して「やれよ!こけてんじゃねぇよ!おめえ!」と罵声を浴びせる。

こうしたエキセントリックな一面で注目を集める浦和の大槻毅新監督だが、暫定という立場で指揮を執る監督として、ここまでの仕事は、ほとんど完璧だと言っていい。

育成ダイレクター兼ユース監督だった大槻監督がトップチームを率いることになったのは、第5節・ジュビロ磐田戦翌日の4月2日。堀孝史前監督の契約解除による緊急就任だった。

その日のトレーニングで控え組の目の色の変化を確認すると、2日後のJリーグYBCルヴァンカップのサンフレッチェ広島戦で「フレッシュさ・野心・責任感」を重視し、磐田戦からスタメンを総入れ替え。大卒ルーキーの柴戸海をプロデビューさせ、西川周作の前に出場機会を得られていなかった福島春樹にも浦和での公式戦デビューのチャンスを与えた。

■混乱と疑心を取り除いた大槻流の起用法

こうして磐田戦のスタメン組に刺激を与えると、仙台戦ではMF菊池大介を除いて再びスタメンを総入れ替え。ここ3試合で採用されていた4-4-2ではなく、3-4-1-2という新布陣を授けて、選手たちを埼玉スタジアム2002のピッチに送り出した。

「仙台の戦い方と、僕らの戦力、今やれることを比べたときに、このやり方が一番いいのではないかと思って選択した」

大槻監督は3-4-1-2を採用した理由について、そう明かした。

同じく3バックを採用する仙台が前節、ミラーゲームとなったV・ファーレン長崎戦で苦戦したことを分析していたのかもしれないが、大槻監督が会見の終盤で語った次の言葉も聞き逃せない。

「選手の特性を考慮してポジションに着かした。気持ち良くできそうなポジションで起用した」

遠藤航、マウリシオ、槙野智章の3バック、阿部勇樹、青木拓矢の2ボランチで中央を締めたうえで、遠藤と槙野には攻撃の起点になることを要求。ウイングバックには上下動の動きを心得ている菊池と平川忠亮を配置。平川は今季公式戦初出場だった。

トップ下の柏木陽介には自由を与え、興梠慎三と武藤雄樹の2トップを採用することで、興梠の孤立という、これまでの問題を解消することに成功。今シーズンはここまで、毎試合のようにビルドアップの仕方やボールの奪いどころ、フォーメーションが変わり、ピッチ内には混乱と疑心が渦巻いていたが、各々の役割がはっきりする3-4-1-2が採用され、適材適所に選手が起用されたことで、迷いが取り除かれたのだ。

それは、キックオフ直後から証明された。

5分にいきなり、武藤雄樹のパスに抜け出した興梠慎三が先制ゴールを決めると、槙野、青木、阿部らが次々とシュートを見舞う。前半はほとんど浦和ペースで進んだ。

後半に入って運動量が落ちたため、仙台に押し込まれたが、そうした展開だったからこそ「球際で負けない」「身体を張る」「勝利への執念を見せる」といった気迫が伝わってきた。

劣勢だった後半、大槻監督もただピッチサイドで喚いていたわけではない。75分ごろには「ここでやられたら今までと変わらないぞ! 大人のサッカーをしろ」と檄を飛ばす一方で、3ボランチに変更して逃げ切るための策を施した。

こうして浦和は1-0で仙台を下し、6試合目にしてようやくリーグ戦初勝利。クラブワーストとなるリーグ戦開幕6試合未勝利を回避した。

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■型破りなモチベーター。大槻毅とはどんな人物なのか?

トップチームの危機的状況を救った大槻監督とは、果たしてどのような人物なのか。ユース時代に指導を受けたルーキーの荻原拓也は「怖いと思ったことはない。あの人の言葉には、いつも信頼や期待が込められている。ユース時代にはいつも『俺、お前に期待しすぎか』って声を掛けてくれたし、今回も『力を貸してくれ』と言ってくれた。あの人のために、と思わせてくれる監督」と語り、遠藤は「非常にユーモアがあって、話し方が上手く、話に引き込ませる力のある方」と証言する。

こうした言葉を聞くと、モチベーターとしての手腕に長けた指揮官のように映る。一方で、筑波大学時代や2006年から10年に浦和のトップチームで指導を受けた経験のある平川は、こんな風に語っている。

「ストレートに『あなたには、こういうことを求めている』『お前の素晴らしいところはこれだ』と言ってくれる。非常にシンプルにやるべきことを伝えてくれるので、分かりやすいですね」

以前の浦和や2011年の仙台ヘッドコーチ時代には分析担当を務めていただけに、チーム内やピッチ内で起きている事象を分析する目や、伝える言葉を兼ね備えているのだろう。

暫定監督に求められるのは、チームをできるだけフラットな状態に戻して、新監督に引き継ぐこと。その点で、戦術ベースをシンプルにしたうえで、負傷中の宇賀神友弥を除くフィールドプレーヤー全員を起用。試合勘やコンディションのバラツキを可能な限り少なくし、その情熱的なキャラクターで練習場に活気を取り戻させただけでなく、今シーズンのリーグ初勝利までもたらしたのだから、言うことはない。

ただし、大槻監督はあくまでも暫定監督だ。

7日に8年ぶりにクラブに復帰することが発表された中村修三新GMも「スピード感を持って新しい監督を招聘することが自分の仕事だと思っている」と宣言し、条件は「経験だけでなく実績もあって実力者。初めて日本に来る方では難しい」と語っている。また「遅くとも今月中には(決めたい)」とも。

その間、大槻監督が結果を残し続けるかもしれないが、そのままトップチームの指揮を任せることは、育成ダイレクター兼ユース監督を失う浦和のアカデミーにとって大きな損失となる。

あくまでも現状は、最悪の事態を回避しただけ。浦和にとって2018年シーズンの本当の戦いは、新監督が決まってから、ようやくスタートを切ることになる。

文=飯尾篤史

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