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中島翔哉が予感を確信に変えた30分間…世界標準のスタイルで日本代表のラストピースへ

たかが1点、されど1点である。低調な出来に終わった日本代表において、初キャップの中島翔哉が貴重なゴールを挙げた。ロシアワールドカップを約3カ月後に控えるハリルジャパン。そのラストピース候補に浮上した小柄のアタッカーが、憧れのピッチで期待に違わぬ活躍を見せた。

■欧州で開花した“強引さ”

ボールを持てば、ただただ前を目指す。スピードに乗ったドリブルで相手を抜き、抜けなくても臆することなく果敢に何度も突破を試みる。良く言えば積極的、悪く言えば強引とも取れるそのプレースタイルは、日本人には稀有なそれだ。

組織や連係プレーを過度に重視するJリーグでは、彼の個性的なスタイルは少々窮屈な印象だった。昨夏までプレーしていたFC東京でも毎試合好機を演出してゴールに迫ったが、目立った活躍ができていたわけではなかった。

それがポルトガルに移籍したことで、状況が一変する。水を得た魚のごとく、アタッカー豊産国で才能が開花。攻撃的なサッカーの中で自らの独力を思う存分発揮し、今回の代表合流前までに9得点7アシスト。所属するポルティモネンセで大車輪の活躍だ。

2018-02-18-nakajima(C)Getty Images

■訪れた歓喜の瞬間

ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が「爆発的な突破力がある。日本人には珍しい選手」と評価し、代表初招集となった今回のベルギー遠征。23日の初戦のマリ戦で、中島はさっそく出番を得る。

0-1のビハインドで迎えた60分。宇佐美貴史に代えて左サイドのアタッカーに投入されると、周りに遠慮することなく自分の武器を見せつけていく。

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アフリカ人特有の身体能力の高さを押し出した相手DFに対して、身長164センチの小兵が細かいステップを踏みながら仕掛けていく。止められてもすぐに守備へ意識を切り替え、ボールを奪いに行く。攻守両面において、非常に回転数の高いプレーを披露した。

多くの選手は相手に囲まれると味方を探してパスを選択する。しかし中島は、そこで敵の間隙を突こうと前に進む。その姿勢が相手のファウルを誘い、好位置でセットプレーを獲得した場面もあった。積極果敢な姿勢は、たとえチャレンジが失敗に終わったとしても副産物を残す。それはW杯本大会でも日本の絶好機になる可能性は十分にある。

そして、歓喜の瞬間が訪れる。後半アディショナルタイム、3人の相手選手に囲まれながら鋭くターンして前へドリブルで持ち出し、左サイドの小林悠へパス。そのままゴール前へ走り込むと、左クロスのこぼれ球を拾った三竿健斗のボールをワンタッチで押し込み、記念すべき代表デビュー戦で初ゴールをマークする。積極的に前を向く姿勢、そしてゴールに結びつくディープエリアに入り込んでいく判断があったからこその同点弾。まさに彼の良さが詰め込まれた一撃だった。

■「ここに来て、一つ成長できた」

試合後、中島は素直に活躍を喜んだ。

「ああいう位置に入れない時もあるので、今日のゴールは良かったと思います。あそこの位置に入っていくのは監督からも要求されているし、自分もポルトガルでやっている中でも意識していたところなので。ここに来て、一つ成長できた部分だと思います」

これまで中島のゴールと言えば、ドリブルから強振シュートを放つ形が多かった。2年前のリオデジャネイロ・オリンピックでも、コロンビア相手に左サイドから中央にカットインして右足を振り抜くファインゴールを挙げている。

だからこそ、この代表デビュー戦で決めた得点パターンは、本人も話すように彼の変化を示していた。そしてその変容をしっかり目に見える結果として残せたことにも大きな価値がある。

■「世界では当たり前」の意味

実は、中島には以前からある見立てがあった。

日本でプレーしている頃から、いつも代表戦をチェックしていた。日頃からサッカーを観ることも自分のルーティンワークにしていた彼にとって、縦にスピーディな攻撃や球際での激しさを求めるハリルホジッチ監督のサッカーは、世界基準からすれば至極当然のスタイルであると見ていた。

「攻撃も守備もとにかく前への意識が強い日本代表のサッカーは、世界では当たり前のことをやっているだけだと思う。自分もいつもその意識を持ってやっているし、観ていて不自然な感じがしないですね」

日本でのプレーが窮屈に映ったと前述したが、中島自身も日本の多くのチームの戦い方に対する違和感があった。

「日本のサッカーは、守備でも相手のミスを待っている。でも、それは世界では戦えない。前に守る意識、ボールを奪い取ることが必要になってくると思います」

“デュエル”という言葉に代表されるとおり、引いて相手の攻撃を受ける姿勢をハリルホジッチ監督は嫌う。どんな屈強な相手にも臆することなく向かっていく。攻撃では縦を突き、守備では体をぶつけてボールを奪いに行く。それはそのまま、中島のプレースタイルにも合致する。

今回、実際にハリルジャパンの一員として試合を戦い、また練習にも参加する中で、中島が何を感じているのか。彼はこう答えた。

「今の代表のサッカーは自分が考えていることと合っている部分が多い。ボールを奪い切るところだったり、速い攻撃だったり。(ハリルホジッチ監督は)自分の足りないところ、伸ばしたいところをすごく要求している監督だと思う。今回もすごくいいトレーニングになっているし、ここに来れたことはすごく良かったと思っています」

■予感から確信へ

自分は“ハリルスタイル”で十分戦える。以前から抱いていた予感は、今回確信に変わりつつある。

たかが1点、されど1点。これは中島の自分が挙げたゴールに対する思いを表す言葉である。

「まだまだ一試合出ただけ。これを続けないと意味がない」と本人はしっかり地に足をつける。ただ、W杯を直前にしたこのタイミングで初めて代表に選ばれたわけである。この1点が今後の自分にどれだけ重要になるのかも、彼は自覚している。

「こうして点を取れたことは、すごくうれしいです。日本代表は小さな頃から見ていたところなので」

2018-03-23-JAPAN-shoya nakajima.jpg©Getty Images

ずっと夢見ていた場所――。最近、日本代表にはこうした純粋な思いを語る選手も少ない。四六時中サッカーのことを考え、ボールを抱えて寝ることもある中島は、今でも無垢なサッカー小僧のような一面がある。こんなにも真っ直ぐなサッカー好きが、憧れの舞台で輝く。胸のすくような出来事である。

ハリルジャパンのラストピース探し。初陣でその可能性と存在感を存分に見せつけ、誰よりも思い切りの良い攻撃姿勢を持つ中島翔哉は、このチームがロシアW杯を戦う上で打って付けのタレントである。

文=西川結城

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