Arsenal pre-season winners losers 16:9GOAL

アーセナル、プレシーズンの勝者と敗者:“主役”は15歳の超新星!一方で左サイドの苦悩は続く…

3シーズン連続2位と、タイトルまであと一歩届かないもどかしい時期が続くアーセナル。そんな苦しい状況を終わらせるため、夏の移籍市場では1億9000万ポンド近くを投じる大型補強を敢行し、いよいよ始まる2025-26シーズンへ向けて準備を続けてきた。

そして今夏のプレシーズンでは、最初のシンガポール遠征でミランとニューカッスルに勝利。しかし、続く香港でのノースロンドンダービーではトッテナムに敗れ、さらに本拠地エミレーツ・スタジアムでのビジャレアル戦も落としたことで、若干の不安を感じさせた。それでもプレシーズン最終戦、アトレティック・クルブ相手には3-0と見事な快勝。特に期待の新加入FWヴィクトル・ギェケレシュが初ゴールを奪ったことで、17日の開幕に向けた士気は高まっていることだろう。

今回『GOAL』は、アーセナルのプレシーズンで輝いた選手、逆に苦しんでいた選手をピックアップする。

  • Max Dowman Arsenal 2025-26Getty Images

    勝者:マックス・ダウマン

    間違いなく、アーセナル夏のプレシーズンの“主役”はこの15歳の少年だ。ブカヨ・サカやマイルズ・ルイス=スケリーを輩出したかの有名なヘイル・エンドは、再びまばゆい輝きを放つ才能を生み出している。ミケル・アルテタはこの夏を通して継続的に出場機会を与えたが、初のトップチームの舞台でその期待以上のパフォーマンスを発揮した。

    特筆すべきはニューカッスル戦とビジャレアル戦。途中出場からチームに活力をもたらし、その類まれなスキルで相手を翻弄。右サイドから何度もドリブルを仕掛け、果敢なシュートやクロスを狙うだけでなく、切り込んで2度もPKを獲得している。決して臆することなく勇敢に仕掛けていく彼の姿は、明るい未来を感じさせるものだった。

    ビジャレアル戦後、アルテタは「間違いなくインパクトを残し続けているね。今日の試合での影響力、攻撃やプレーの効率性は驚異的だ。再びチャンスを与える価値があるよ。この調子で続ければ……何が起こるか見てみよう」とコメント。優勝を狙うクラブにおいて、15歳の選手が出場機会を得るのは前例のないことだ。だが、彼が見せた輝きはイングランド最高峰の舞台でも通用するかもしれない。

    なお、アルテタは今後の起用について「様子を見よう。彼はまったく休暇を取っていないので、少し休む必要があるね。この後の数日間は休暇を与えるよ。そしてそれが終われば、準備万端で戻ってくるだろう」と語っている。

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  • Gabriel Martinelli Leandro TrossardGetty Images

    敗者:ガブリエウ・マルティネッリ&レアンドロ・トロサール

    アーセナルの左ウイングは、未だはっきりしないポジションのままだ。確固たる地位を築く選手は、プレシーズンでも確認できなかった。エベレチ・エゼやロドリゴ、アデモラ・ルックマンといった選手の獲得が噂され続けるのは、この影響が大きいだろう。

    24歳になったマルティネッリは、そのスピードとワークレートで確かにチームに貢献しているが、「優勝を狙うチームの攻撃のキーマン」としては物足りないパフォーマンスが続いている。一方で30歳のトロサールは、ケガのためにプレシーズンの大部分を欠場。開幕時のコンディションにも不安が残る。

    その一方で、クラブワールドカップ参加のために合流が遅れていた新加入FWノニ・マドゥエケだが、休暇を切り上げて早期にチームへと参加すると、短い出場時間で確かな印象は残している。彼の得意サイドは右ではあるが、左サイドでも特にトランジションの局面でより縦への脅威を感じさせた。アルテタも「彼がボールを触るたびに、ファンの反応は本当にポジティブだったね。これはどの選手にもエネルギーを与えてくれる」としたうえで、「彼がボールを持つたびに、特に1対1の局面で、確実にチームメイトへボールを届けてくれる。これは素晴らしいクオリティだ。左でも右でもプレーできるし、大きな武器だね」と高く評価している。開幕時はベストコンディションではないかもしれないが、現チームではおそらく最もスタメンに近い存在だ。

  • Martin Zubimendi Declan RiceGetty Images

    勝者:シン・中盤トリオ

    アーセナルは昨季よりも、よりピッチの前方へ速くボールを動かしていくことを目指しているようだ。そのうえで、マルティン・スビメンディの補強は非常に大きい。ピッチを広範囲で動き回りながら精確なパスでリズムを作り、早くも中盤の絶対的選手になろうとしている。デクラン・ライスとの補完性は完璧であり、試合中にも柔軟に役割を変えていた。また彼らの存在により、マルティン・ウーデゴールがより高い位置での仕事に集中できることも大きなプラスである。

    アルテタはこの3人について、「彼らのクオリティと補完性により、さらなる進化が感じられたね。より予測不可能で、より脅威的なプレーが確認できた。ピッチ中央のこうした関係は大きなメリットになるよ」と満足げに語っている。またスビメンディも、「すぐにみんなが受け入れてくれたから(順応は)簡単だった。ピッチ内外でフレンドリーだね。ライスとウーデゴールは、それぞれのポジションでトップクラスだ。今は学び、適応し、そして何よりも楽しみたい」と手応えを語っている。

    おそらくこの3選手は、プレミアリーグ最高の中盤になる可能性がある。それほどクオリティの高いトリオだ。

  • Arsenal FC v AC Milan: Pre-Season FriendlyGetty Images Sport

    敗者:ヤクブ・キヴィオル

    昨季終盤にガブリエウが負傷したが、その穴を埋めたのがキヴィオルだ。レアル・マドリーとの2試合はそれ以降のシーズンも見事なパフォーマンスを披露し、サポーターの信頼を勝ち取っている。

    しかし、このプレシーズンではややミスも目立つことに。特にビジャレアル戦の最初の2失点の場面では、対応が遅れたことでGKダビド・ラヤからも注意を受けていた。またルイス=スケリーの存在により、リッカルド・カラフィオーリも左センターバックとして計算されている可能性は高い。キヴィオルはさらに激しいポジション争いを強いられそうだ。移籍の噂も絶えず聞こえているが、この夏の決断に注目だ。

  • Arsenal v Manchester United - Emirates FA Cup Third RoundGetty Images Sport

    敗者:ガブリエル・ジェズス

    長期離脱からの回復を目指す選手にあれこれ言うのはフェアではない。だが、アーセナルが新たに目指すスタイルにおいて、ジェズスがフィットする姿は正直に言って想像できないのが現状だ。

    2022年の加入直後の彼は本当に素晴らしかったし、長年追い求めた流動的なNo.9としてチームの中心だった。しかしその年のワールドカップで膝を痛めて以降、トップパフォーマンスは戻ってきていない。

    そしてこの夏、チームはより最前線で相手センターバックと勝負し続けるストライカー、ギェケレシュに多額の資金を投じた。彼の強靭なフィジカルとトップスピードを活かすため、アーセナルはよりダイレクトな攻撃にトライしている。昨季より早いタイミングでのロングパスが増えたことからも、それは明らかだろう。ジムで鍛え上げたカイ・ハヴァーツもそのスタイルに適応し、アトレティック・クルブ戦では見事なゴールを奪ったいた。

    しかし、ジェズスがこのスタイルの最前線で生きるかというと、疑問符は拭えない。契約が残り2年を切る今季、どのようにチームにフィットしていくのだろうか。

  • Andrea BertaGetty Images

    勝者:アンドレア・ベルタ

    ピッチ上の“主役”がダウマンなら、ピッチ外の“主役”はこの新SD(スポーツダイレクター)だろう。アーセナルは新シーズンを6人の新加入選手と、主力3選手と契約延長したうえで迎えることになる。指揮官としては最高の状態であるはずだ。

    まだ公式戦が始まっていないために評価が早いのは当然だが、すでに新戦力は期待を感じさせるプレーを見せている。また、早々にベンヤミン・シェシュコを断念し、ギェケレシュにシフトした判断は高く評価すべきだろう。結局マンチェスター・ユナイテッドは、ギェケレシュの移籍金よりも1000万ポンド以上も支払うことになっていた。

    彼は移籍市場閉幕まで慌ただしく動き続けるだろうし、エゼなどさらなるスター選手の獲得に動く可能性もある。また、ウィリアン・サリバとサカとの契約延長が重要な課題になりそうだ。それでも、エドゥの後任として完璧な方法でその手腕を発揮している。アーセナルは様々な新SD候補と接触していたようだが、ベルタ以上の存在はいなかっただろう。