Garnacho-Man-Utd-Rooney-Carroll-West-HamGetty/GOAL

【動画】プレミアリーグ史上最高のオーバーヘッド弾TOP10

プレミアリーグのファンは、1992年の創設以来、何百もの素晴らしいゴールを味わってきた。世界最高の選手たちが信じられないような魔法の瞬間を生みだしてきたのだ。だが、それをやり遂げるには高い技術やとてつもない度胸が必要であるがゆえに、他のどんなゴールよりも大きな喜びをもたらす、ある特定の種類のゴールが存在する。

完璧なオーバーヘッドを決めた選手には、たちまちヒーローとなる。それは特に、そのシュートをする際には、どうしても躊躇してしまうものであるため、通常の試合では滅多に見られないものだ。

だが、正確に行われたオーバーヘッドキックを防御する術はない。ゴールを背にしてゴールキーパーを打ち破るのに充分な強さを得るには、ポジショニングから集中して完全に冷静になるタイミングまで、すべてが完璧でなければならない。

イングランドのトップリーグは、他のヨーロッパのリーグと比べて、こうした見事なゴールをより多く見られるリーグかもしれない。その中からベスト10を選出するのは難しいことである。だが、時にはアーカイブに戻るのも必要なことだ。

これからも、プレミアリーグの伝説にその名を刻もうと空中に舞いあがる選手はいるだろう。GOALは今回、これまでのプレミアリーグの歴史における最高のオーバーヘッドキックを紹介する。

  • 10セバスティアン・ハラー(ウェストハム対クリスタル・パレス、2020年)

    ウェストハムのサポーターたちは、2019年7月にクラブ史上最高額の4,500万ポンド(約84億円)でアイントラハト・フランクフルトからロンドン・スタジアムにやってきたセバスティアン・ハラーの、本当に最高の姿を見ることはなかった。54試合で14得点という月並みな結果は、現在ボルシア・ドルトムントに在籍中のこのストライカーがイングランドに馴染めなかった事実を示すものであるが、そうした得点のひとつが今も彼の現役最高のゴールだと言われている。

    それは2020年12月、ウェストハムがクリスタル・パレスをホームに迎えた試合だった。デイヴィッド・モイーズ監督のチームは、前半にクリスティアン・ベンテケのヘディングで先制され、チームを鼓舞する選手が切実に必要となっていた。それをやってのけたのがハラーで、右サイドからのヴラディミール・ツォウファルのクロスに空中で回転して合わせると、力強いシュートをゴールの上隅に完璧に叩きこんだのである。

    パレスのGKビセンテ・グアイタはボールが頭上を越えていくのをなすすべなく見守るだけで、これによりウェストハムはヨーロッパリーグの出場資格を得るうえで貴重な勝ち点1を得たのであった。モイーズ監督はハラーのゴールを「素晴らしいゴール」だと評したが、単に素晴らしいだけでなく、ハラーがボックス内で並外れた天賦の才能をもっていることを思い起こさせるものであった。

  • 広告
  • 9ガリー・ケーヒル(アストンヴィラ対バーミンガム・シティ、2006年)

    ガリー・ケーヒルは俊足で信頼できるディフェンダーと評され、試合を読む能力がひときわ優れているためにトップチームに昇格した。だが、チェルシーとボルトンでスターだったケーヒルには得点力もあった。プレミアリーグでは合計で28得点をあげたが、その中にアストンヴィラに所属して最初の得点となった最高のバイシクル・キックがある。

    2006年4月、ヴィラはホームにバーミンガム・シティを迎えた。両チームは順位表の下位で苦しんでいたが、結果的にヴィラは3対1で勝利し、ケーヒルはチーム渇望の2点目を驚愕のジャンプから決めたのであった。

    ゴールマウスの前での両チーム入り乱れてのボールの取り合いの後、立ち上がったケーヒルは誰にも止められない初めてのボレーシュートを美しくゴールに叩きこんだ。それは、当時彼がしまい込んでいて誰も知らなかった優れた運動能力の産物だったが、彼はその後もゴールを決めつづけ、真に得点能力のあるセンターバックとなっていった。

  • 8ロリー・デラップ(サウサンプトン対トッテナム、2004年)

    ロリー・デラップという名を聞いてほとんどのサッカーファンが思いだすのは、ストーク・シティ時代のロングスローだろう。アーセナルの伝説の監督アーセン・ヴェンゲルを何度も苛立たせるのに成功したスペシャリストである。だが、このアイルランド代表MFはスペクタクルなことを魔法のようにやってのけることもできたのだった。

    デラップが現役最高のゴールを決めたのは、サウサンプトンに所属していた2004年3月、セント・メリーズでのトッテナム戦である。実に2年ぶりの得点だった。デラップがルーズボールに反応してボックス内に進入するなど、誰も予想していなかった。だが、彼はまさにそれをした。そして、あっという間に態勢を整えてバイシクル・キックを放つと、背後のゴールにボールを叩きこんだのだった。

    デラップのシュートはこれ以上見事な流れは望めないほど美しく、GKケーシー・ケラーの頭上を越えてスパーズのゴールに飛びこんだ。それは両チームの違いを証明し、デラップはセインツことサウサンプトンのサポーターたちの心の特別な場所にいつまでも居続けることだろう。

  • 7アンディ・キャロル(ウェストハム対クリスタル・パレス、2017年)

    アンディ・キャロルはかつて、イングランドのサッカー界で最も輝かしい才能の持ち主だと思われていた。ニューカッスルのアカデミー出身のキャロルは、若いころ良いプレーが出来ないでいた。センターフォワードとして野性味あふれる大柄のキャロルは、空中戦でディフェンダーたちを悪夢に追いやっていたが、ケガで実力のすべてを出し切ることができなかったのだ。

    リヴァプールで失意の時代を過ごした後、2013年にキャロルはウェストハムに完全移籍し、クラブのために34得点という尊敬すべき記録を打ち立てた。中でも注目すべきは2017年1月、クリスタル・パレスにホームで3対0で勝利した試合のゴールで、おそらく今日でもロンドン・スタジアムで記録された中で最高のゴールとされている得点である。

    ミカイル・アントニオからのクロスをファーポストにいたキャロルが受け、見事に体を回転させると、アクロバティックなオーバーヘッドキックを放ったのだ。シュートは目にもとまらぬ速さでネットを揺らした。観客は驚嘆したが、当時ウェストハムの監督だったスラベン・ビリッチにとっては驚くべきことではなく、試合後にこう言っている。「練習でよくやっていたよ。たいていはポストに当たっていたがね。練習でやっている時は、いつかケガをするんじゃないかとハラハラしていたよ」

  • 6クリスティアン・ベンテケ(リヴァプール対マンチェスター・U、2015年)

    キャロルと同じく、クリスティアン・ベンテケもリヴァプールでは不運だったというべきだろう。ベルギー代表のベンテケは2015年7月にアストンヴィラから3,300万ポンド(約61億円)でアンフィールドにやってきた最初の年、10得点しかあげられず、早々にクリスタル・パレスへ売られていった。

    ベンテケがリヴァプールでプレミアリーグでの5得点目を決めた時、なぜリヴァプールが当初ベンテケを欲しがったのか、その理由が明らかになった。アウェイでマンチェスター・ユナイテッドに3対1で敗れた試合で、歴代最大の慰めとなるゴールのひとつを決めたのである。試合終了まであと6分という時、味方のクロスを相手がクリアしたボールがベンテケの頭上に届き、ベンテケのシュートがマンチェスター・Uの背番号1ダビド・デ・ヘアの脇を通りすぎた。ボールが足を離れた瞬間に決まったと思える素晴らしいシュートだった。

    ベンテケが年間最優秀ゴール賞をもらえなかったのは不運なことであったが、最終的なオールド・トラッフォードでの結果はパワフルな前線の選手としてはさえないもので、現在はMLSのD.C.ユナイテッドでサッカーを続けている。

  • 5ディミタール・ベルバトフ(マンチェスター・U対リヴァプール、2010年)

    サー・アレックス・ファーガソンの黄金時代、マンチェスター・ユナイテッドには優れたストライカーが何人もいたが、ディミタール・ベルバトフほど才能に恵まれた選手はいなかった。ファーストタッチが絶妙で、どんなゴールでも決めることができた。ブルガリア代表のベルバトフは、2010-11シーズン当初のリヴァプール戦で全力を発揮し、見事なハットトリックを決めてマンチェスター・Uに非常に貴重な3対2での勝利をもたらしたのである。

    2点目のゴールは時の試練に耐えた得点だった。ペナルティ・スポットのすぐ横でナニのクロスに反応し、大胆にも膝でコントロールしたのである。ボールは見事にベルバトフに収まり、後ろ向きにジャンプしたベルバトフは流れるような動きでシュートを放ち、クロスバーに軽く当たったボールがゴールネットを揺らしたのであった。オールド・トラッフォードに幸福があふれた輝かしい瞬間であった。

    ほとんどの選手は、あの場所でオーバーヘッドキックを試みようと決して思わないだろう。だがベルバトフはそうではなかった。マンチェスター・Uでの最初のシーズンは複雑で、そのプレーが批判されもしたが、彼は沈黙を守り、当時監督だったファーガソンは試合終了の笛が吹かれた後、あっさりとこう言った。「彼の才能を疑ったことは今まで一度もなかった」

  • 4エムレ・ジャン(リヴァプール対ワトフォード、2017年)

    エムレ・ジャンは2018年、契約延長をめぐって同意に達することができず、4年間いたリヴァプールに別れを告げ、イタリアの巨人ユヴェントスに加入した。ドイツ代表のジャンは、ブレンダン・ロジャーズ元監督の最後の数カ月からユルゲン・クロップ監督のジェットコースターのようなスタートまで、アンフィールドでコンスタントにプレーしていた。彼がいなくなってからリヴァプールが数多くのトロフィーを獲得したことを思うと、もう少しリヴァプールに残ればよかったと今ごろ後悔しているかもしれない。

    それでも、ジャンはほとんどのリヴァプールのファンに忘れられない記憶を残した。特に、2017年5月のワトフォードでのゴールは特別である。なんでもできるミッドフィルダーのジャンは、ヴィカレージ・ロードでクロップ監督のチームに1対0の勝利をもたらした。ルーカス・レイヴァのスルーパスに走りこむと、態勢を整え、GKエウレリョ・ゴメスの後ろのポストぎりぎりにバイシクルキックを叩きこんだのである。

    「今までで最高のゴールだった」と、メディアの前で自分のゴールを説明しながらジャンは言った。「スペースが見えたからDFの背後に走りこんだ。最初はヘディングしようかと思ったけど、考えないで瞬時にプレーしたんだ」

  • 3ウェイン・ルーニー(マンチェスター・U対マンチェスター・C、2011年)

    ウェイン・ルーニーはマンチェスター・ユナイテッド在籍中、クラブ記録となる253得点をあげた。その多くがワールドクラスのゴールである。この元イングランド代表は嵐を呼ぶ右足と恐るべき競争心をもった、唯一無二のテクニシャンであり、マンチェスター・シティとのダービーでは常に活躍した。

    2011年2月にオールド・トラッフォードで行なわれた試合もまさにそんな試合で、両チームは残りわずか12分の段階で1対1であった。ルーニーは、息をのむような技でマンチェスター・Uの宿命の隣人を沈めるべく、ゴール前に上がっていった。ナニが右サイドからカーブをかけたクロスをあげ、最初はわずかにルーニーの頭上を越えていくかに見えた。だが、ルーニーは見事な体重移動でボールをゴールへ叩きこみ、マンチェスター・CのGKジョー・ハートに反応する時間はほとんどなかった。

    それはまさに豪快なシュートであり、後にファーガソンは自身がオールド・トラッフォードで見た最高のゴールだったと述べている。それは後に、マンチェスター・Uは12回目のプレミアリーグ制覇に向かっていたシーズンの優勝争いにおいて、決定的な瞬間であったことが証明された。

  • 2ディオマンシ・カマラ(フラム対トッテナム、2007年)

    2007-08シーズンが始まって数週間の頃、フラムとトッテナムはクレイヴン・コテージで前代未聞のロンドン・ダービーを戦った。60分が過ぎたばかりの頃、ガレス・ベイルがスパーズの3点目を決めてホームのフラムは2点ビハインドとなり、スパーズの勝利は間違いないと思われていた。

    だが、90分にディオマンシ・カマラがファーサイドのペナルティ・エリアの端からとんでもないオーバーヘッドキックを決めた。スパーズの守備陣はボールをクリアしようとしていたが、セネガル代表のストライカーが何とかGKポール・ロビンソンに向かってカーブのかかったシュートを放つと、イングランド代表GKは触ることもできなかった。

    当時フラムの監督だったローリー・サンチェスは、試合後こう言った。「ジェームズ・ボンドの映画を見ているかのようだった。敵がとどめを刺しておかなかったがために、最後にボンドがやってきて敵を倒すのだ」。確かにカマラは、あの記憶に残るゴールでスパーズの息の根を止めるライセンスを持っていたのだった。

  • 1アレハンドロ・ガルナチョ(マンチェスター・U対エヴァートン、2023年)

    ここ数年マンチェスター・Uは成功から遠ざかっており、今やマンチェスターのパワーバランスは、エティハド・スタジアムに革命をもたらしたペップ・グアルディオラの方に完全に傾いている。マンチェスター・Uがその均衡を戻すにもしばらく時間がかかるかもしれないが、希望が持てる理由もある。それはアレハンドロ・ガルナチョの存在だ。

    19歳のガルナチョはすでにマンチェスター・Uで53試合に出場し、12得点をあげている。まだエリック・テン・ハーグ監督が選ぶ先発メンバーのレギュラーとして固定されているわけではないことを考えると、この数字には尊敬に値する以上のものがある。さらに、日曜のエヴァートン戦でのガルナチョの信じられないようなゴールを見た後、オランダ人監督はますますガルナチョを手放せなくなりつつあるだろう。

    グディソン・パークで行われた試合の口火を切ったのがガルナチョで、ペナルティ・エリアの左のファーサイドで、ディオゴ・ダロートのクロスをオーバーヘッドキックでゴールに沈めたのである。アルゼンチン代表のガルナチョは飛びあがって左足を振りかざしてバランスを取ると、右足でドル箱たるボールを蹴り、そのシュートはGKジョーダン・ピックフォードの渾身のダイブ及ばず、反対側の隅に吸いこまれたのだった。

    「ガルナチョも信じられないに違いない、私も信じられない」と、マンチェスター・Uのレジェンド、ギャリー・ネヴィルは、スカイ・スポーツでコメントした。「こんなに見事なオーバーヘッドキックをスタジアムで見たことがないと思う。ルーニーのマンチェスター・ダービーでのオーバーヘッドキック以来だ。信じられない。魔法、まさに魔法のゴールだ」

    マンチェスター・Uは3対0で勝利し、決定的な仕事をしたガルナチョはその試合の最優秀選手賞を受賞した。テン・ハーグ監督は試合後の記者会見で、この10代の選手は年間最優秀ゴール賞を獲得するだろうと述べたが、あのゴールを最も見事に評したのは対戦相手であるエヴァートンのショーン・ダイシ監督だった。「生涯最高のゴールだ」と。