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ルカク、ヴラホヴィッチ…トッテナムでケインの後釜になり得る11人の選手たち

もう何年も前からこうなると声高に言われていたことではあるが、土曜に初めてハリー・ケインがバイエルン・ミュンヘンのユニフォームを着たときでもまだ、それはまったく信じがたい事実であった。プレミアリーグで最もコンスタントにネットを揺らしてきた一人の男が、出ていってしまったのである。そして、スパーズは新しいヒーローを探さなければならなくなった。それも早急に。

夏の移籍市場が閉まるまで3週間を切った現在、スパーズは新しい背番号9を見つけられるまでシーズン中ずっと、リシャーリソン一人に前線を託す苦しい事態に直面している。

少なくともダニエル・レヴィ会長は、バイエルンがケイン獲得のために支払った当初の1億ユーロ(約158億円)プラスアルファを使って、チームをかなり大きく変更することになる。今後の数週間は大忙しになりそうだが、その前にケインの後釜探しという大変な任務を完了するため、トッテナムに何ができるのかを見てみよう。

  • Richarlison Tottenham 2023-24 hands on head croppedGetty Images

    リシャーリソン(トッテナム)

    すでにトッテナムは比較的最近、ケインの代わりになりそうな選手の獲得に5000万ポンド(約92億円)以上を使っている。しかしながら、エヴァートンからやってきたリシャーリソンの北部ロンドンでのデビューシーズンは、かなり厳しいものだった。このブラジル代表はプレミアリーグでたった1得点しかできなかったのである。

    かくも急激に調子を落とす前、リシャーリソンはゴール前でかなり信頼できる記録を誇っており、開幕戦のブレントフォード戦ではケインの穴を埋めると期待されていた。結果は、よく言って賛否両論である。何度もチャンスがありながら、またしても1点もとれず、ポステコグルー監督はリシャーリソンの後ろにいる選手たちに前へ行ってもっと攻撃しろと指示していた。

    「ダイレクトに彼にボールを出して、もう少し彼を探すことができたと思う」と、スパーズの監督は語った。

    「彼はよく走っていたし、ハードワークをしていた。何度かちょっとしたチャンスがあったが、もっと多くのチャンスを作れたと思う。リッシーとプレーするときに大切なのは、彼をサポートしつづけることだ。彼はディフェンスでも本当に献身的に仕事をするし、アタッキングサードに進入したとき、今日は彼に充分なサポートができなかった。彼とは長くやってきた。彼はストライカーで、素晴らしい才能をたくさん持っている。いつもチームのためにハードワークするし、私に言わせれば、よいスタートだった」

    監督はリシャーリソンが今後よくなると確信しているが、スパーズが別のセンターフォワードを起用できたことは明らかだ。リシャーリソンがケガで離脱するようなことになれば、ポステコグルー監督は背番号9を求めて苦悩し、ソン・フンミンかマノル・ソロモンに慣れないポジションでのプレーを強いることになるだろう。

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  • Romelu Lukaku BelgiumGetty Images

    ロメル・ルカク(チェルシー)

    ロメル・ルカクは悲惨な数カ月を耐え忍んでいる。チャンピオンズリーグ決勝でインテルのために「あの」絶好のチャンスを逃して以来、ルカクはこれまで無条件に彼を愛してくれていたファンですら遠ざけようとしており、今やサン・シーロに完全移籍するチャンスがほとんどなくなってしまっている。

    サポーターから大反発を受けた後、ユヴェントスも関心を失ったようであり、サウジアラビアとの関係も冷えてしまったようだ。その結果、ルカクはチェルシーで宙ぶらりんの状態となり、マウリシオ・ポチェッティーノ新監督のプランに居場所がないように見える。では、トッテナムはルカクに救いの手を差し伸べるだろうか。その可能性は大いにある。

    ルカクが最初にインテルを去って以来、事態はまったく好転していない。だが、そもそもルカクが多額のカネでスタンフォード・ブリッジに移籍した理由を思いだしてみる価値はある。2019年から2021年にかけて、この30歳の選手はゴールを量産し、彼の得点のおかげでインテルは2021年にセリエA優勝を果たしたのだ。

    ルカクが成長するには少々の愛が必要であることは明らかで、ポステコグルー監督がケアしてくれれば、たっぷりの愛を得ることができるだろう。攻撃の際、スパーズの他のフォワードがルカクとうまくやることができれば、スタイル的にもルカクはぴったりフィットするはずだ。

    報酬の問題はある。だが、チェルシーはどうしても売りたいと思っており、ダニエル・レヴィ会長は有利な交渉をすることができる。今後数週間、注視すべき案件のひとつだ。

  • 20230805_Vlahovic(C)Getty images

    ドゥシャン・ヴラホヴィッチ(ユヴェントス)

    ルカクと同じく、ドゥシャン・ヴラホヴィッチも直近の移籍を後悔しているかもしれない。セルビア代表のヴラホヴィッチは、2021-22シーズンの途中でフィオレンティーナを去る決意をしたとき、複数のヨーロッパのトップクラブから選ぶことができたが、最終的にユヴェントスに加入してイタリアに残ることにした。しかしながら、トリノではたびたびピッチ外で騒動を起こし、ピッチの上でもマックス・アッレグリ監督の下で活躍することができなかった。前線の選手ながら、63試合でたったの23得点だったのである。

    彼の機能不全にはいくつかの理由がある。やっかいな鼠径部のケガで活躍の場が減ったうえに、結果重視のアッレグリ監督から彼にとっては深すぎる位置でプレーするよう求められ、思うように実力を発揮できなかった。その点では監督に非があるが、監督が近々トリノを去るということはありえず、ヴラホヴィッチの方が移籍しなければならない可能性が高い。

    チャンピオンズリーグで戦えるクラブへの移籍を望んでいるようだが、そうしたクラブでストライカーを探しているようなチームはひとつもない。トッテナムに入れば状況は好転するだろうし、ポステコグルー監督のもとでなら、おそらく数年前ヨーロッパに嵐をまきおこした、ペナルティーエリア内での嗅覚の鋭さを取り戻せるだろう。

    スパーズでなら必ずスターになるチャンスがあることもアピールポイントだ。ユヴェントスに加入してクリスティアーノ・ロナウドの背番号7をつけたヴラホヴィッチの才能は、まだまったく縮んではいない。

  • Folarin Balogun Arsenal 2023Getty

    フォラリン・バログン(アーセナル)

    フォラリン・バログンはこの夏、インテルに加入すると予想されていた。アメリカ代表のスターであるバログンは、サン・シーロで活躍していた時のロナウド・ナザーリオのハイライト動画を見ている自身の動画を投稿し、自分もこのセリエAのチームに入りたいとほのめかしていた。

    しかしながら、このストライカーの経歴はインテル加入に申し分ないことは明らかだったにもかかわらず、具体的なオファーが来なかったため、他のクラブとの契約交渉のドアを開いたのであった。ウェストハムとモナコが手をあげているが、トッテナムがこの争いに加わっても驚くことではないだろう。

    バログンは2022-23シーズンに大活躍し、リーグ・アン中位のスタッド・ランスで21得点という輝かしい記録を残した。これは昨シーズン、マーカス・ラッシュフォードやカリム・ベンゼマ、リオネル・メッシがリーグ戦で記録したゴール数よりも多い。

    バログンは決定力のあるフィニッシャーだが、素晴らしいドリブル技術の持ち主で、自分でチャンスを作りだすこともできる。アシスト数の少なさに目くじらを立てる人もいるかもしれないが、この夏ジェームズ・マディソンがスパーズにやってきたことで、ケインの代わりをする選手が全盛期のケインと同じくらい創造性を発揮する必要はなくなった。

    もちろん、北部ロンドンの境を越えることで、アーセナルのサポーターがバログンをほめたたえるはずはない。だが、本人は多少波風が立つくらいのことは気にしないだろう。

  • Elye Wahi 2023Getty Images

    エリェ・ワイ(モンペリエ)

    昨シーズン、リーグ・アンで頭角を現した若手フォワードはバログンだけではない。エリェ・ワイも同じくらいモンペリエで活躍し、2021-22シーズンには10得点だったのが、リーグ戦で19得点6アシストを記録した。

    そうしたゴールのうちPKを決めたのは1得点だけで、5月のリヨン戦では1試合で4点という快挙を成し遂げた。ただし、チームは試合に敗れている。

    そうしたプレーぶりを見れば、ワイのサッカーに対するかなり鋭い洞察力を知ることができる。彼の得点の多くは決定的なトランジションから生まれている。

    この夏、モンペリエはすでに、ワイに関して2800万ポンド(約51億円)プラスアルファの提示額を断っている。だが、契約は2年しか残っておらず、この額を大きく上回るオファーが来れば価値ある資産を手放そうという気になる可能性がある。

  • Aleksandar Mitrovic Fulham 2023-24Getty Images

    アレクサンダル・ミトロヴィッチ(フラム)

    フラム所属のアレクサンダル・ミトロヴィッチは、プレミアリーグ開幕戦のエヴァートン戦に出場したが、フラムのマルコ・シウヴァ監督はミトロヴィッチがこの夏以降西部ロンドンにいつづけると確信しているわけではない。

    「市場は開いているし、誰もがストライカーを探している。よいストライカーが欲しいのなら、(そういうクラブが)ミトロに目をつけるのは当然だと思う」と、エヴァートンの本拠地グディソン・パークへの遠征前に語っていた。

    長い間、このセルビア代表はサウジ・プロリーグに誘われる最後のプレミアリーグのスターとなるとみられていた。ずっと以前からアル・ヒラルと個人的な条項に関して同意していたのである。しかしながら、フラムはミトロヴィッチの価値を5000万ポンド(約92億円)と見積もって譲らない。アル・ヒラルはネイマールに多額のカネを使っており、フラムのスターを追い求めることはやめるかもしれない。

    フラムにとって悲しいことに、現在プレミアリーグで定評のあるストライカーを探しているチームが別にある。それはスパーズだ。昨シーズン、ミトロヴィッチはイングランドのトップリーグで充分戦えることを証明しており、サッカー選手としてのキャリアをステップアップさせたいと思えば、トッテナムを次のクラブに選ぶかもしれない。

  • Jonathan David CanadaGetty

    ジョナサン・デイヴィッド(リール)

    ジョナサン・デイヴィッドは、ポール・スタルテリ以来2人目のトッテナムのカナダ人選手になるだろうか。

    23歳のデイヴィッドは、少し前から自身の未来について熱く語るようになっているが、2022-23シーズンにリーグ・アンで24得点をあげてリールをリーグ5位に引き上げ、成長を見せつけた。この夏、リールの要求額が満たされ、代わりの選手を調達できればデイヴィッドを売ると公言していることは理解されている。交渉は簡単ではないが、この元ヘントの選手は苦労して手に入れる価値がある選手だ。

    その足取りから見ると、デイヴィッドはディフェンスを間延びさせ、ダイレクトパスの扱いに長けているが、ケインと同じようにゴール前へ忍びこむのも好きで、昨シーズンはリーグ・アンで6アシストを記録した。RMC Sportで、プレミアリーグに移籍したいという希望も公言している。

    「可能だと思っている、絶対に可能だ。プレミアリーグ以外のところで成功できるかどうか、わからない。プレミアリーグでならやれそうだ」

    若く、見るものをワクワクさせてくれ、ゴールを量産するデイヴィッドは、ポスト・ケイン時代のポステコグルー監督のチームを導く完璧な選手になれるかもしれない。

  • Gift Orban 2023Getty Images

    ギフト・オルバン(ヘント)

    ギフト・オルバンは、デイヴィッドと同じくヘントからヨーロッパのトップチームへ進む道を歩んでいるようだ。昨シーズン、ベルギーのチームで絶好調の活躍を見せ、わずか22試合で20得点をあげた。

    2022年5月、ノルウェー2部のスターベクと契約して、故郷のナイジェリアからヨーロッパに来たばかりのオルバンは赤丸急上昇の選手である。初めてフル代表に選ばれるのも、もうまもなくであるのは確実で、おそらくプレミアリーグへの移籍も近いだろう。

    オルバンの才能は明らかで、素晴らしいゴール記録がその証拠だ。だが、イングランドでの最初のシーズンでケインの得点数に近い数のゴールを決められるとスパーズが期待するのは危険だろう。それでも、よい取引ができれば今シーズン中に再び株が上がってしまう前に確保しておくだけの価値のある選手かもしれない。

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    アミーヌ・グイリ(レンヌ)

    アミーヌ・グイリは10代でリヨンで躍進した後、大いなる成長が期待されていた。結局のところ、リヨンでは物事がうまく進まなかったが、それ以降、見事なプレーぶりでよい評判を築いている。

    数年間、ニースで静かに活躍した後、昨年の夏にレンヌに移籍した。その判断が正しかったことは、センターフォワードまたは左のウィングとしてリーグ戦で16ゴールをあげたことで証明された。

    彼はフロントスリーの間を衛星的に動ける選手で、ソンやクルセフスキのダイレクトな走りとのコンビで、ポステコグルー監督の攻撃陣のオプションに加わることが可能だ。

    グイリに関して唯一問題なのは、契約満了までまだ4年もあり、レンヌから加入させることが難しいかもしれないことである。北部ロンドンに来るとなればヨーロッパ・リーグをあきらめることにもなるが、イングランドからのオファーが経済的に報われるものであれば、この問題を大いに和らげるかもしれない。

  • Kyogo Furuhashi Celtic 2023Getty Images

    古橋亨梧(セルティック)

    もしポステコグルー監督が信頼に足る中堅どころが欲しいと思っているなら、セルティックから古橋亨梧を呼んでくるかもしれない。28歳の古橋は、2021年7月にパークヘッドに来て以来、大成功を収めており、わずか50試合の出場で34得点をあげている。

    昨シーズンはセルティックの監督だったポステコグルー監督のもとでキャリア最高のプレーをした古橋は、SFWA(スコットランド・フットボール記者協会)の年間最優秀選手賞を受賞。チャンスがあれば監督との再会への道は確実に開けることだろう。

    ただし、セルティックは是が非でも古橋の離脱を阻止するだろう。ブレンダン・ロジャーズ新監督は最近、古橋のことを「エリート選手」と呼んでいる。

    そうだとしても、スパーズのファンは亨梧ならプレミアリーグでも成功するだろうと、確信しきれないかもしれない。オドソンヌ・エドゥアールもセルティックから移籍してクリスタル・パレスで奮闘したが、イングランドに来た選手が才能をステップアップさせるのは困難を伴うかもしれない。この日本人選手もプレーする上でかなりのプレッシャーを受けるだろう。

    サッカー界で、ポステコグルー監督以上に亨梧を知っている人物は少なく、監督がこのストライカーがプレミアリーグに適応するのをバックアップするならば、スパーズは取引合意に向けて前進するかもしれない。

  • Evan Ferguson Republic of Ireland 2023Getty

    エヴァン・ファーガソン(ブライトン)

    エヴァン・ファーガソンがトップに向かってまっすぐ進んでいることは、非常に明らかである。まだ18歳のアイルランド出身選手は、すでにブライトンのトップチームで11得点をあげ、プレミアリーグでも開幕戦で得点した。

    ファーガソンは2023年、トップレベルのストライカーになるのに必要なものすべてをもっていることを証明している。シュートを打つ時の冷静さ、フィジカルの強さ、非常に破壊的な効果をもたらす連係プレーを兼ね備えているのだ。

    どんなクラブにとっても彼との契約は非常に賢い選択だろう。チームのスター選手であるストライカーが離脱した後、新しい中心的選手が是が非でも必要なクラブにとっては、とりわけそうである。トッテナムはファーガソンを加入させたがるだろうが、ブライトンが手放す可能性はきわめて低い。

    このスター選手はいずれイングランドの移籍記録を超えるとすでに信じられているが、その理由は簡単だ。ケインの涙目ものの移籍金を手に入れた後だとしても簡単ではないが、それでもスパーズはこの夏、ファーガソンを手に入れるために挑戦すべきかもしれない。結局のところ、彼に関する提示額はさらに高くなる可能性しかないのだから。