Arne Slot sore loser GFXGetty/GOAL

4連敗のリヴァプールが立ち直るために:スロットに必要なのは「言い訳」ではなく「勇気ある決断」だ

クリスタル・パレス、ガラタサライ、チェルシーと3連敗を喫してインターナショナルウィークに突入したリヴァプール。この2週間で何らかの改善が見られるはずだったが、19日にはアンフィールドで約9年ぶりにマンチェスター・ユナイテッドに敗れた。アルネ・スロットは、限界まで追い詰められているようにすら見える。

そして問題なのは、指揮官の試合後の振る舞いだった。もちろん、ビッグマッチで敗れることを好む監督はいない。だが、スロットは「責任を取る」よりも「言い訳を探している」ようにさえ映った。終了直後のインタビューでは、自チームの責任を認めるのではなく、代わりにユナイテッドやルベン・アモリムの戦術を皮肉を込めて批判している。

不運なことに、スロットは前任者との比較を避けられない。そして、ユルゲン・クロップは世界一の負けず嫌いだったが、時にはしっかりと自らの責任を認めて反省を促していた。スロットは彼の振る舞いを学ぶべきかもしれない。

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    「ロングボール」と「ローブロック」

    スロットはリヴァプール指揮官就任から一貫して冷静沈着な態度を保ってきた。ユナイテッド戦後のインタビューも、表向きは平静を装っている。しかし慎重に選んだ言葉の端々から動揺がにじみ出ていた。

    『スカイスポーツ』、『BBC』、そして試合後の会見では、ほぼ同じ言葉を用いている。それは「ロングボール」と「ローブロック」だ。これは1月の対戦で2-2のドローに終わったときと同じ。自分たちの問題点を分析するのではなく、ユナイテッドとアモリムの戦術への皮肉を吐露している。

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  • ロングボール・ローブロック戦術

    スロットは『BBC』の番組「マッチ・オブ・ザ・デイ」で次のように語った。

    「ローブロックで守備を固め、ロングボールを多用するチームとの対戦は常に難しい。しかも開始数分で、選手が1人ピッチで倒れている状況で失点してしまえば、さらに困難だ。試合前に『ローブロックとロングボールを多用する相手にあれだけのチャンスを作り出せる』と言われていたら、まさか負けるとは思わないだろう。だが、それが現実になったんだ」

    そして、記者会見でもこの主張を繰り返している。

    「数多くの優秀な選手を加えたユナイテッドと対戦する時、彼らが我々のホームでローブロックを敷いてロングボールを多用してくるならば、リードされることは絶対に避けたい。相手にさらなる自信を与えてしまうからね。もしユナイテッドがあのスタイルで戦い、我々が8~10回もの決定機を作る状況でリードを許すと言われたら、私は『あり得ない』と答えただろう。だが、現実はそうなったんだ」

    皮肉なことに、実際のスタッツは彼の発言とは異なる。リヴァプールが記録したロングボールの数は「27」であり、ユナイテッドは「18」。両チームがボールを保持した時間は大きく違えど、数字的にロングボールを多く使ったのはリヴァプールの方だった。ユナイテッドは、それを効率的に使ったことで、ホームチームを追い詰めただけである。

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    「負け惜しみ」

    リヴァプールが自分たちを見つめ直し、何が問題なのか、どうすればこの不振から脱却できるかを正確に把握すべきときに、スロットのコメントはメディアからの監視を強める結果になった。多くの識者やライバルクラブのファンは、彼の振る舞いを「負け惜しみ」と判断している。

    彼の問題は、実は試合前から始まっている。ユナイテッド戦直前、ベンヤミン・シェシュコの起用に関して「シェシュコは過去数試合で先発起用されていたのに、リヴァプール戦では変更になった。対戦相手が我々相手にそうすることは、今回が初めてじゃない」と語っている。

    この発言は、ライバルサポーターに火を付けた。試合開始前から言い訳を探し、ユナイテッドが守備を固めてきたと受け取られ、試合中に「クソみたいに情けない」とのチャントを浴びせられている。

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    責任

    スロットは敗因についてこうも語っている。

    「2つ目の問題は、得たチャンスに対して1点しか奪えなかったこと。セットプレーで得点を奪えず、さらにそれで失点してしまえば、ほぼ不可能だ」

    「今の我々がすべきことは、文句を言ったり責任転嫁することではない。マッカ(アレクシス・マクアリスター)が倒れた後、もっと良い対応もできたはず。だが選手の健康管理は重要で、4針縫う必要があれば、誰もが即座の処置が必要だと理解すべきだろう。だが、そうはならなかったね」

    「繰り返すが、我々はもっと良いプレーができたはずだ。真の敗因は、勝利を掴むための決定的なチャンスをあまりにも多く逃したからだ」

    スロットの言葉とは裏腹に、残念ながら「文句」や「責任転嫁」と解釈されても仕方がないように見える。

    対照的に、クロップは厳しい敗戦の時こそ自らの責任を明言してきた。直近では2024年4月のエヴァートン戦、この試合に敗れて優勝のチャンスを失った後、彼は「見ての通りだ。最悪の試合だね。アーセナルとマンチェスター・シティは、積極的なスタイルで攻め続ける。だが、我々は今できていない。その責任は誰に負わせるんだ? 選手たちにその自覚をもたせるのが、最後の日まで私の仕事なんだ」と言い切っている。

    約10年ぶりの4連敗は、偶然では決してない。スロットは今一度、自チームをきちんと見つめ直す必要は間違いなくある。

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    勇気ある変化を

    ここ数試合のスロットは、チームの象徴であるモハメド・サラー、そして夏に大金を注ぎ込んで獲得したアレクサンダル・イサクとミロシュ・ケルケズに執着しているようにすら見える。この3選手がベストフォームから程遠いにもかかわらず、だ。その結果として、ユナイテッド戦でもウーゴ・エキティケやフロリアン・ヴィルツ、ジェレミー・フリンポン、アンドリュー・ロバートソン、フェデリコ・キエーザ、リオ・エングモア、ジョー・ゴメスといった選手たちは、ベンチから試合を見守っている。

    確かに、自身が信頼してレギュラーに据えていた選手を変更するのは、指揮官にとって勇気が必要だ。だが長い目で見れば、非常に有益でもある。ここまでの数試合でも、エキティケはリヴァプール最高のアタッカーであることを証明し、キエーザは“ゲームチェンジャー”であることを見せてきた(リーグ81分間で3ゴールに関与)。未来を考えるならばヴィルツは絶対的に信頼すべきであり、エングモアも停滞気味のチームに新たな風をもたらしてくれるはずだ。

    少なくとも、スロットはここからの数試合でチーム選考をもう一度考え直さなければならない。それは4連敗という結果が物語っている。そして、彼らには世界最高レベルのスカッドが備わっており、十分に可能だ。そうした変化こそが、フォームを失う選手たちへの刺激になり、チーム全体がもう一歩前に進むことに繋がるはずだ。

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    サラー問題

    そしてスロットが最も試されるのは、「チームの象徴を外せるか否か」だ。昨季の輝きは圧倒的だったが、今季は未だオープンプレーからネットを揺らしていない。2017年のリヴァプール加入後、7試合連続でオープンプレーからゴールを奪えていないのは初のことである。最後の得点は9月14日のバーンリー戦でのPKだ。ユナイテッド戦でも決定的なチャンスで冷静さを失うなど、自信の喪失は明らかである。

    そうした声は、外部からも届いている。リヴァプールのレジェンドであるジェイミー・キャラガーは、『ギャリー・ネヴィル・ポッドキャスト』でこう指摘した。

    「我々は、モハメド・サラーが毎週の先発を保証されるべきではない段階に来ていると思う。サラーは、ファン・ダイクのように『チームシート最初の名前』で扱われるべきではない。これから控えるフランクフルト、ブレントフォードのアウェイゲーム連戦は、サラーを先発させるべきではないよ」

    「アンフィールドでは常に先発すべきだよ。リヴァプールが優位に立てるからね。しかしアウェイゲームでは、サイドバックを助ける意味も込めて、現在の調子を考えるとサラーを全試合で先発させるべきではないんだ。本人が納得するか? おそらくそうはならない。だが一定の年齢に達したならば、特に調子が悪いときこそ理解が必要になる」

    一方でスロットは、サラーへの批判について「最初の5~6試合は新加入選手への質問しか受けなかったがね。今は別の個人に対しての質問を受けているが、今は個人のパフォーマンスについて話す時期ではない」と明言を避けている。

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    挑戦

    スロットの「言い訳」と「皮肉」は、チームをサポートする上で何の助けにもならない。現状を受け入れることこそ、再建への第一歩だ。本人もそれを受け入れている。

    「監督は常に挑戦に直面する。監督就任時、ビッグクラブへ移籍する時、ユルゲン・クロップの後任になる時、とね。今は4連敗中だが、これもまた挑戦だ。監督キャリアは、絶え間ない挑戦の連続なのだ」

    「だが、我々は自信を失ったのか? そうではない。敗れた試合でも、後半には信じられないほどのチャンスを創出できた。このプレーを継続し、いくつかの点で改善できれば、再び勝てる可能性は十分にある」

    シーズンの早い段階だからこそ、まだまだ手遅れになる時ではない。だが彼の言うように、新たな挑戦に立ち向かうためには、勇気が必要だ。それは言い訳することや相手への皮肉を吐露することではない。正面から自分たちを見つめ直し、必要な変更を加えて、さらに一歩進もうと努力することである。