Son Tottenham next move GFXGetty/GOAL

ソン・フンミンの将来:紛れもないレジェンドへ…トッテナムは自分の将来を自分で決めさせるべき

誰がなんと言おうと、ソン・フンミンはトッテナムのレジェンドだ。それは奪ってきた数々のゴール、アシスト、ファンを熱狂に包んだ数々の瞬間、世界的な影響力から語られてきたが、今年5月についに名実ともに伝説となったのだ。

昨季終盤、トッテナムはマンチェスター・ユナイテッドとの激闘を制し、ヨーロッパリーグ優勝を達成。2008年のリーグカップ以来、17年ぶりに主要タイトルを手にした。韓国代表FWは、記念すべき加入10シーズン目で初のトロフィーを獲得。何年間も待ち望んだトロフィーを手に、大粒の涙を流した。

それから数カ月、ソン・フンミンの将来はこれまで以上に不透明になっている。残り契約は1年間。おそらく、トッテナムにとって今夏が移籍金を獲得できる最後のチャンスとなる。

彼は21世紀のトッテナムにおいて、自身の運命を決める権利手にした最初のプレイヤーだろう。移籍を望めば誰もが送り出すであろうし、新体制となったチームでプレーしたいのであれば、重要な役割を果たすこともできるはずだ。

  • Tottenham Hotspur v Eintracht Frankfurt - UEFA Europa League 2024/25 Quarter Final First LegGetty Images Sport

    驚異的なワークレート

    プレミアリーグ8シーズン連続二桁得点を達成、4シーズン連続で二桁アシストも記録。2021-22シーズンには、アジア人選手として史上初めてプレミアリーグ得点王に輝いた。それもPKなしでである。

    しかし昨季は、加入以来初めてリーグ戦で10ゴールに届かなかった(30試合7ゴール)。アンジェ・ポステコグルー体制では適応に苦しみ、またスピードと爆発力の低下も相まってスタメンから外れることも増加している。

    それは間違いなく、韓国代表としての責務も影響している。昨季はケガと戦いながらも代表チームに参加し続け、その膨大な移動距離は確実に身体に負担をかけている。それでも昨季はクラブレベルだけで3000分以上に出場。これまでクラブと代表で753試合に出場し、その大半をトップコンディションで過ごしてきたという事実は、彼の運動能力と仕事倫理の証左である。

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    多彩な攻撃オプション

    トッテナムは昨季プレミアリーグを17位で終えた。だが、通算得点数ではリーグ7位、4位のチェルシーを上回っている。攻撃力で言えば、十分上位を争っていける結果だ。そこに今夏、ウェストハムから5500万ポンドでモハメド・クドゥスが加わった。フランクもチームの多彩さを満足気に語っている。

    「前線が3枚か4枚かは、3トップとNo.10を併用するかで決まる。ドミニク・ソランケが最前線で、リシャルリソンも良いストライカーだ。ブレナン(ジョンソン)や(デヤン)クルゼフスキは少しの間欠場しているが、彼らもいてくれる。(ジェームズ)マディソン、(ウィルソン)オドベール、マティス・テル、そしてクドゥス。みんな強力で創造性豊かなアタッカー陣だね。きっと多くのゴールを決められるだろう」

    しかしフランクは、この回答の中でソン・フンミンには言及しなかった。

  • Reading v Tottenham Hotspur - Pre-Season FriendlyGetty Images Sport

    ソン・フンミンの将来

    代わりにフランクは、ソン・フンミンと同じく移籍が噂されるクリスティアン・ロメロについて言及。近い未来へフォーカスしていることを強調した一方で、将来については明言を避けた。

    「2人はトッププレイヤーだ。ソンは10年も在籍し、ようやく手にすべきタイトルを掴んだ。チームとクラブにとって非常に重要である。ロメロはワールドカップとコパ・アメリカ優勝を経験し、ヨーロッパリーグも頂点に立っている。2人とも非常に重要な存在だ。練習でも高い基準を設けているし、満足しているよ。私が期待するのは、すべての選手がここでよくトレーニングすること。それに集中しており、彼らには感銘を受けている」

    また、フランクはキャプテンについても言及。ロッカールームの投票ではなく自身で決断するとしつつ、こう語っている。

    「まだ何も決めていない。長いリストの項目を順番に進めている。(ソン・フンミンは)昨季キャプテンだったし、レディングでの2試合ではソンとロメロがキャプテンを務めるが、最終決定はまだだ」

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    ケインと同じ?

    今のソン・フンミンの状況は指揮官にとって、2023年夏のハリー・ケインと重なる部分が多い。ポステコグルーは就任最初の夏、ケインの不安定な将来について何度も説明を求められた。契約最終年のエースは公の場で退団を示唆、さらにはアジアツアー中にドイツ人記者にバイエルンのシャツもプレゼントされている。そして2023-24シーズン開幕の約48時間前、バイエルン移籍が決定。チームは開幕直前というタイミングで絶対的なエースを失い、プランの変更を余儀なくされた。

    フランクは、ソン・フンミンに関してケインと同じような質問を受ける可能性が非常に高い。それは移籍騒動が長引けば長引くほどだろう。その件について問われると、「まず第一に、彼は今ここにいる。それについてはあまり心配していないよ。5~6週間後にもその質問が来るだろうし、答えは練習しておくよ。今は、彼がここにいるということが重要なんだ」と答えるに留まっている。

  • Reading v Tottenham Hotspur - Pre-Season FriendlyGetty Images Sport

    トッテナムでの役割

    チームのことを思えば、決断は間違いなく早いほうがいい。だが、1シーズンで46試合に出場した選手がたった数カ月で構想外になることはありえない。特に昨季、トッテナムはケガ人続出によってギリギリの状態まで追い込まれている。冬の期間は常に10人以上が離脱し、ポステコグルーは選手のやりくりに頭を抱え続けた。

    フランクは「すべての大会で競争力を維持するには、競争力のある選手層、堅固な選手層が必要だ。それは間違いない。チームには競争力ある選手がいるし、クラブが移籍市場を探っているのも確かだ」とし、「チームの人数は常にバランスが重要だ。どのくらいの規模が適切か。一人一人と向き合い、毎日トレーニングし、彼らの状況を把握する必要がある。しかし競争力を維持するためには、チームを適切に活用しなければならない」とも続けた。

    新シーズンはチャンピオンズリーグに挑戦することもあり、いわゆる「Bチーム」を送り出す余裕はない。左ウイングのポジションは激戦だが、ソン・フンミンにも確実に出番はあるはずだ。またリシャルリソンがケガがちであることを考えると、センターFWでの役割を求められるかもしれない。ポステコグルー体制では完璧にフィットできたとは言えないかもしれないが、スタイルが変わればまた数年前の姿を取り戻すかもしれない。やや衰えが見えるとはいえ、その影響力やプレーは欧州トップレベルのままだ。本人が最高レベルでのプレーを続けたいと願うのであれば、残留が最善の選択肢になるだろう。

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    貴重な存在として

    トッテナムは昨季リーグ戦だけでクラブワーストの22敗を喫した。チームはもろく、覇気がなく、コーチングが機能していないにも関わらず、選手たち自ら行動を起こすこともできなかった。こうしたことから、リーダーシップの欠如は重大な問題として伝えられている。

    フランクがキャプテンの決定を保留しているのも、新たなリーダーを探しているということを示唆しているのかもしれない。ソン・フンミンをその重責から解き放つこと、はたまた彼に別れを告げるのも1つの手ではあるかもしれない。だが、彼は安定して結果を残していた数年前の時代と現在のチームをつなぐ数少ない存在であり、若手選手からも尊敬を集める存在だ。30歳オーバーで現チームの主力になれる唯一の選手でもある。

    ブレントフォートでの仕事が高く評価されるフランクだが、指揮官として最初の10試合は8敗と非常に苦しんだ。それでも経営陣のサポートと信頼を受け、最後にはクラブ史上最も成功した監督としてクラブを去っている。しかし、トッテナムではまったく状況は異なるはずだ。ビッグクラブでは常に勝利が求められ、指揮官への重圧もレベルが違うだろう。初陣となる来月のUEFAスーパーカップの結果次第で、彼への見方はどちらに転ぶかもわからない。

    だからこそ、ソン・フンミンという存在が重要になる。チームからもファンからも称賛を集めるこの韓国代表FWこそ、新任の指揮官にとって頼れる存在であるからだ。

  • TOPSHOT-FBL-ENG-PR-TOTTENHAM-BRIGHTONAFP

    決断の時期

    クラブとしては、この夏はソン・フンミンを残すべきであることは間違いない。しかし、彼自身が自由に将来を決める余地は残しておくべきだ。それほどの功労者である。難しい判断にはなるかもしれないが、レジェンドを正しく扱うのはクラブの品位を示す行為でもある。

    ソン・フンミンに対しては、MLSやサウジ・プロリーグ勢が関心を示しているという。具体的にロサンゼルスFCの名前も聞こえてきた。一方で本人は、たとえトッテナムを離れることになったとしても、ヨーロッパ最高レベルでのプレーを続けたいと考えているようだ。

    ソン・フンミンがどこに行くにせよ、それがいつになろうとも、彼自身の決断によって決まるべきだ。クラブはそれを最大限後押しするべきである。それほどの存在なのだ。そしてその時期が2026年夏になるのであれば、全関係者にとって最も良い結果になるかもしれない。