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「マン・C移籍は1日でまとまった」G大阪、食野亮太郎が欧州での3年間を振り返る…7/22のセルティック戦へも撃破へ気を吐く/インタビュー

(インタビュー日:7月6日 聞き手:小津那/GOAL編集部)

―― まずは、今シーズンの前半戦を振り返って頂きたいです。19試合を終えて15位。最近では4連勝があるなど、立て直している状況です。

前半戦、総じて言うとやっぱり厳しい戦いだったなと。なかなかチームが勝てない中で、全員が試行錯誤する戦いだったと思います。

―― どのような部分での試行錯誤が多くなりましたか?

やっぱり新しいスタイルを確立していく中で、今まで自分たちが積み上げて来たものをどこかで改善していく、自分たちに染み付いたものを根本から変えていくっていう作業が必要でした。そこにちょっと時間はかかったかなっていう印象はありますね。やっぱり、ここ最近は各々がしっかりその試行錯誤を繰り返した上で、いい方にチームとして行っていると思うので。それが、最近のいい流れに繋がってるんじゃないかと思います。

―― 食野選手にとって、新指揮官であるダニエル・ポヤトス監督の印象は?

自分のスタイルを確立している。しっかり自分のスタイルを持っている監督だと思います。支配するためのポゼッションであったりとか、スペースを作る、使う動きとか、ボールと試合を常に支配するっていうところをずっと求めていますね。

―― 昨季と今季の前半戦を比較して、状態の違いはありますか?

ポジティブな要素が多いんじゃないですかね。やっぱりチームとしての形、こうやって攻める、こうやって守る、そして監督の色っていうのが徐々に出てきてると思います。今までガンバと言えばっていう形はあんまり無かったとは思いますけど、今年に入ってガンバと言えば、という形が少なからず見えてきてるとは思うので。そこは良かったと思っています。

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    ■ 「やっぱりサッカーはサッカー」

    ―― 2019年にマンチェスター・シティに加入。移籍はどのような経緯で決まりましたか?

    2019年は、シーズンが始まる時にトップチームに帯同できずにキャンプにも行けず…U-23の方で6人だけ大阪に残って練習をしていて、正直ちょっとメンタル的にキツイな、っていう感じからのスタートでした。森下仁志さんとの出会いもあって、なんとか自分を立て直すことができて、Jリーグで、J3で得点を重ねてJ1でもちょこちょこ点を取れるようになってきた時に、仲介人を通してマンチェスター・シティが興味を持ってるよっていう話を聞いて。そこから移籍がまとまるまでは、すごく自分の中で早かったというか。『興味がある。移籍金を払うから移籍しないか』から僕の決断までがすごく早かった。話がまとまったのは一日とかで。自分の中でも大きなチャレンジをしたいっていう思いで、すぐに決断させてもらいました。

    ―― 加入後にスコットランドのハーツに期限付きで移籍することになりました。初めてのヨーロッパ挑戦で、ピッチに立った時はどのような感情が一番最初に湧き上がってきましたか?

    やっぱり、サッカーはサッカーなんだよなっていうのは感じましたね。日本でやる、小学生の時から取り組んできたサッカーと、プロになってからパナソニック スタジアム 吹田でプレーしてたサッカーと、スコットランドに渡ってスコットランド人の前でするサッカーも、全部サッカーはサッカーだよなっていうのはやっぱり一番感じましたね。どこに行ってもサッカーっていう文化があって、ボールを11人対11人でプレーするっていう、その文化はどこに行っても変わらないっていうことを改めて感じました。

     ―― ピッチレベルでは、Jリーグとの違いを感じましたか?

     レベルが上がったとかは、本当にもう比較にならないですね。文化が違うので。やっぱりサッカーに対しての考え方はイギリス人と日本人では違い過ぎると思うので。プレミアリーグやスコットランドのサッカーは同じイギリス人なんで、サッカーに対する考え方は同じ。攻守にスピーディーで本当に展開が速い。すごくタフなリーグだなっていうのを感じましたね。

     ―― 適応する部分での難しさは?

     やっぱり最初はちょっと苦労した部分もありましたね。やっぱり言葉も違う。言葉の違いもあるし、文化も違うし、すべてがアジャストしていくためにはすごく大変でした。けど、やっぱりその中でも楽しさっていうのは感じられた。さっきも言いましたけど、サッカーはサッカー。自分のサッカーを、自分のフットボールを、そこでするっていうことだけにフォーカスしたので、そこまで苦労したっていう感じではなかったです。

     ―― 雰囲気や熱量でサッカー文化を感じる部分はありましたか?

     スタジアムの雰囲気ですかね。日本のように、サポーターの方が応援歌を歌ってくれてっていうのはあんまり無いんです。ただ、球際の激しいシーンで自分が勝ったり、一番分かりやすいのは点を取った時のサポーターの湧き上がりは日本では感じられないような熱でした。ビールがピッチに飛んでくるとかは日本であんまり無いですからね。ファンから『相手後ろから来てるよ』、『シュート!』とか、バックパスしたら『なんでやねん』みたいな声が飛び交うこともありました。サッカーに一喜一憂してくれてるサポーターや人種が多いんだなっていうのを感じましたね。

     ―― 欧州挑戦から二年目で、ポルトガルのリオ・アヴェに移籍することになりました。スコットランドとの違いは感じましたか?

     スコットランドよりポルトガルの方がテクニカルですね。少しスローで、どっちかっていうとJリーグに近いような雰囲気のサッカーでした。スコットランドは本当にフィジカルで縦に速い、攻守の入れ替わりが激しい"ザ・フットボール"プレミアリーグのようなフットボールでしたけど、ポルトガルはよりテクニカルで戦術的で。試合の展開で言うとそこまで早くないと思います。ポルトガルの方が、自分の中ではすんなり入れたかなっていうのはあります。

     ―― ポルトガルでのキャリアの中で一番印象に残っているモーメントはありますか?

     ポルトガルでは二年連続で開幕戦でゴールを決めたんですよ。それは結構自分の中で良かったなっていうのはあるし、ポルトガル一年目のリオ・アヴェでの日々っていうのは、すごく充実してました。試合も出られたし、得点も何点か取れたので。チームは降格してしまいましたが、その中でも、しっかり自分が戦えてるなっていうのは感じられた1年だったと思います。

     ―― 欧州での三年間をどのように振り返りますか?

     素直に結果を残せなかった悔しい部分が一番大きいです。もうちょっとその国に馴染んで、言葉ももっと話せるようになれば、選手として他の選手たちとうまくコミュニケーション取れるようになり、もっとピッチで輝けたんじゃないかなっていうのはあります。国の文化に適応するっていうところをもう少しうまくできればよかったかなっていうのはありますね。

     ―― また欧州に戻って挑戦したいという意欲はありますか?

    もちろん。サッカーをやってる以上、日本代表に入りたいですし、そのために海外でプレーした方が選ばれる可能性が高いかもしれないしっていうのは、今の代表を見てても思います。でも、僕としてはまず、去年の夏にガンバに戻らせてもらったので、ガンバで結果を残してっていうところが一番です。

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    ■ リーグに繋げていける試合を

    ―― ハーツでの経験を踏まえて、セルティックというチームをどのように捉えていますか?

    ハーツにいた時から見た、ハーツから見たセルティックっていうのは、スコットランドのリーグの中でもビッグクラブ。レンジャーズとセルティックは二強なので。サポーター、スタジアムの規模、クラブの規模、全然違いますね。 

    ―― 今のセルティックというチームはどのように見ていますか?

    日本でやっていた監督が就任されて、日本人選手が何人か行って。うまくスコットランドのサッカーと日本人のクイックな部分とか、賢さっていうのがマッチされてすごくいいチームになっている印象です。

    ―― 多くの日本人がセルティックで活躍できている要因はどこに感じますか?

    元々セルティックには中村俊輔選手がいましたよね。セルティックというクラブ自体、サポーターもそうですけど、やっぱり中村俊輔選手の印象が強かった、日本人に対する評価っていうのが元々高かったっていうのはあると思います。それが日本人の獲得や活躍にすごく繋がってるんじゃないかなっていうのは思いますね。

    ―― 22日にセルティックと対戦します。食野選手が注目している選手はいますか?

    僕は旗手怜央選手がすごいなっていうのは思いますね。U-24の代表活動で、オリンピックの前に何回か一緒にプレーさせてもらっていて。その当時から技術的な高さとか戦術眼が高い選手だなっていうのは思っていました。セルティックに行って、よりそれが研ぎ澄まされていますね。ゲームメイクであったり、質で相手を打ち負かすところが長けた選手だなっていうのは思いますね。スコットランドリーグの難しさを知っている分、旗手選手や古橋亨梧選手の活躍っていうのはすごいと思っています。

    ―― 逆に、G大阪でカギとなる選手を教えてください。

    やっぱり中盤の選手、旗手選手と対戦するとなったら山本悠樹選手やネタ・ラヴィ選手はすごく注目して見てもらいたいなと思います。中盤やウイングの選手からローテーションしてクロスが入ってくるっていうのが、セルティックの特長的なサッカー。中盤の戦いっていうのは一つカギになるんじゃないかね。

    ―― 食野選手が楽しみにしているところは?

    僕は中盤の選手ではないので、相手の屈強なDFに対してどうやって切り込んで行くのかというところですかね。自分に対してすごく楽しみなところはあります。

    ―― ずばり、ガンバが勝つにはどのような展開を狙いたいでしょうか。

    夏の暑さの中で、セルティックはプレシーズンでコンディションが100%ではないと思います。自分たちは運動量で負けたくないですね。

    ―― セルティック戦は、ガンバを普段見ていないファンの方も多く来ると思います。1番見てほしいポイントを教えてください。

    日本のチームがヨーロッパのチームと対戦するっていうことですごく楽しみにされているサポーターも多いと思います。ただ、やっぱり日本のクラブとしてのプライドをしっかり持って戦いたいです。

    ―― 最後に、この試合に対する意気込みを教えてください。

    どんな試合でも負けていい試合はないと思うので。ホームだし、ここは日本だし。ツアーをしている相手で負けてもいいという試合ではないと思っています。自分たちも、しっかりリーグに繋げられるいい試合をできるように頑張りたいです。

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    Profile

    ■ FW 8 食野 亮太郎

    1998年6月18日生まれ。25歳。171cm/68kg。大阪府出身。右利き。ガンバ大阪ジュニアユース-ガンバ大阪ユース-ガンバ大阪-マンチェスター・シティ/イングランド-ハート・オブ・ミドロシアンFC(期限付き)/スコットランド-リオ・アヴェFC/ポルトガル(期限付き)-エストリル/ポルトガル(期限付き)-マンチェスター シティ/イングランドを経て2022年7月にガンバ大阪に復帰。J1通算49試合出場5得点。※7/14時点