Pathetic Real Madrid GFXGetty/GOAL

「世界最高のクラブ」から「最も醜いクラブ」へ:レアル・マドリーの愚行が示す“限界”

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海外では、日本には古来から「人は3つの顔を持つ」という哲学が浸透していると言われている。1つ目は「世間に見せる顔」、2つ目は「友人や家族に見せる顔」、そして3つ目は「誰にも見せる事のない本当の自分を映した顔」という考え方だ。

26日に行われたコパ・デル・レイ決勝戦、レアル・マドリーはその3つ目の顔を誇らしげに高く掲げていた。それはあの名作『ライオン・キング』の冒頭、ラフィキに掲げられるシンバのように。宿敵バルセロナに敗れたあの決勝戦、そしてその前後のクラブの振る舞いは非常に残念なものだったと言わざるを得ない。この1週間で起きたことは、レアル・マドリーの黒歴史として永遠に刻まれる可能性すらある。

  • Rudiger Real MadridX

    リュディガーの愚行

    歴史上、何も起きずに終了したエル・クラシコは存在しない。感情と感情、意地と意地のぶつかり合いであり、だからこそ世界最大の試合として多くの人に愛される一戦なのだ。エスタディオ・オリンピコ・セビージャで行われた今季のコパ・デル・レイ決勝戦、試合の大半は非常に白熱した好ゲームが展開され、見るものを魅了したのは間違いない。

    しかし、結局最後は愚行によって台無しになった。1点ビハインドとなって延長後半終了間際、キリアン・エンバペの手がエリック・ガルシアの顔に入ってファールと判定されたこのシーン、マドリーベンチは一斉に猛抗議。特に感情的なセンターバックはその怒りを抑えられなかった。アントニオ・リュディガーは、主審リカルド・デ・ブルゴス・ベンゴエチェア氏に向かってドイツ語で「売春婦の息子」など罵声を浴びせ、さらに氷のようなものを投げつけている。この行為でレッドカードを提示されると、完全に制御を失い、スタッフに抑えられながらも何度も詰め寄ろうとしている。

    これは完全に反スポーツマンシップを象徴する瞬間だった。最大12試合の出場停止処分は、おそらく当然のものだろう。

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  • RCD Espanyol de Barcelona v Getafe CF - La Liga EA SportsGetty Images Sport

    異常な審判批判

    だがそもそも今回の決勝は、試合前から異様な雰囲気に包まれていた。もちろん、マドリーが公式メディア『レアル・マドリーTV』でベンゴエチェア氏が過去にバルセロナに有利な判定を下したと示唆したことが原因である。この批判に対し、ベンゴエチェア氏は前日会見で反発しつつ、自身や家族を含めて脅迫被害にあっていることを涙ながらに告白。しかしレアル・マドリーが取ったのは、あろうことかさらなる遺憾の意を表明し、審判団の交代を要求することだった。

    マドリーは、今も調査および裁判が行われているバルセロナの審判買収疑惑“ネグレイラ事件”を引き合いに出して審判批判の正当性を説明した。だがどんな持論があるとしても、クラブ全体で1人の審判を追い込んでいくのは異常である。重圧を受けるベンゴエチェア氏は立派に決勝戦を裁いていた。最終的な結果には、何の異論も挟めないほどに。

  • FBL-AWARD-BALLON D'OR-2024AFP

    バロンドール授賞式

    そして、マドリーが異常な行動に出たのは過去12カ月で初めてではない。2024年バロンドール授賞式での騒動がその最たる例だろう。

    昨季チャンピオンズリーグとラ・リーガのダブルを達成したことにより、バロンドールの最有力はヴィニシウス・ジュニオールと予想されていた。確かに、受賞に値するパフォーマンスだったのは間違いない。だがセレモニーまで48時間を切った中、その年のバロンドールはスペイン代表でEURO2024を制したロドリに決まったと噂が流れ始める。するとマドリーは即座に、授賞式のボイコットを決断した。

    マドリーのこの行動をフットボール界が冷ややかな目で見ていたのは納得だ。選考に納得できないからといって直前に不参加を決めるのは、あまりにも子供じみた振る舞いである。世界最大級のクラブがする行動ではない。

  • FC Barcelona v Real Madrid - Copa del Rey FinalGetty Images Sport

    因果応報

    現在のマドリーの状況は、因果応報とも言える。スーペルコパ・デ・エスパーニャとコパ・デル・レイ決勝で立て続けに宿敵に敗れると、ラ・リーガでも残り5試合で首位バルセロナと4ポイント差をつけられた。彼らが誇りとしていたチャンピオンズリーグの舞台でも、準々決勝でアーセナルに2試合合計1-5と大差で敗れ去っている。

    そして敗れる度、引き分ける度、思うようにいかなかった度に『レアル・マドリーTV』を使って審判批判を繰り返してきた。あまりにもしつこい審判批判は目に余る。彼らが望んだような結果を掴めていないのは結局、自チームの問題を一向に解決できないからだ。

    アーセナルに完敗後、ティボー・クルトワは「多くのクロスを上げたが、今季はホセルのような純粋なストライカーがいない。あの種のデュエルで力を発揮できる選手がね」と語っている。今のマドリーは、効果的なチームとしての形を成していない。それを審判に責任転嫁するのは無理がある。

  • Arsenal FC v Real Madrid C.F. - UEFA Champions League 2024/25 Quarter Final First LegGetty Images Sport

    “格”

    昨季終了時点で、マドリーは文字通り世界最高のクラブに君臨していた。自らの持つ欧州制覇記録を「15」まで伸ばすことに成功。チャンピオンズリーグの舞台で奇跡的な逆転劇を連発し、誰もがその戦いに目を奪われた。昨夏には世界最高峰の選手もフリーで獲得し、多少傲慢であるとしてもクラブとしての“格”を見せつけていたのだ。

    だが、フットボール界において時代はすぐに移り変わる。アーセナル戦で連発した「レモンターダ」は何の根拠もないことが証明されたし、ハンジ・フリックの下で高度なハイプレス&ハイラインスタイルを磨き上げてきたバルセロナに及ばないことが白日の下にさらされている。

    今のマドリーは「世界最高のクラブ」ではない。それは結果はもちろん、振る舞いを含めてだ。そうした事実から目を背け続ければ、どうなっていくは想像に容易いはずだ。

  • FC St. Pauli 1910 v Bayer 04 Leverkusen - BundesligaGetty Images Sport

    本当にすべきこと

    おそらく、カルロ・アンチェロッティはこの失望のシーズンの責任を取る形で、クラブ・ワールドカップ前に退任することになるだろう。彼はマドリー史上最高の指揮官の1人として去る。これまでの実績を否定するものはなにもない。だが一方で、彼の自由なマネジメントがコパ・デル・レイ決勝の愚行を引き起こしてしまった点も否定はできない。後任としてはシャビ・アロンソの名前も挙がっているが、新監督が真っ先にすべきはチーム内に秩序をもたらすこと。そしてバランスの悪いスカッドをいかに融合させるかになる。決して簡単な仕事ではない。

    だが、現実を直視する必要があるのは選手や監督だけではない。会長を務めるフロレンティーノ・ペレスは、その傲慢すぎる言動で火に油を注ぎつけるばかりか、煙のないところにすら火をつけてきた。彼そのものを変えるのは難しいだろう。つまり、彼の暴走を抑制する存在を探さなければならない。これが最も難しいタスクになるはずだ。

    世間はもう、マドリーが引き起こす騒ぎにうんざりしている。彼らは、彼らのフットボールでもってその存在を証明すべきなのだ。