Mbappe Al-Khelaifi PSG GFXGetty/GOAL

エンバペ退団後のPSGは大型補強が必要。CL制覇のためには補強必須に

パリ・サンジェルマンが今季のリーグ・アンを制した。振り返ってみれば過去13年で10回目の優勝ということになり、大金持ちで国家を後ろ盾にしているカタール・スポーツ・インベストメントに買収されて以来、PSGは時代を席巻してきている。

これは驚くべきことではない。PSGはフランスのどのクラブよりも金持ちであり、他のクラブでは手も出せないようなスター選手を獲得し続けているのだ。

だが今年、いつものように優勝へ向けて突っ走りながら、いつもとは少し様子が違っている。シーズン半ばにキリアン・エンバペがクラブを去ることを公表したことで、PSGがリーグに向かう姿勢が変わったのだ。就任1年目のルイス・エンリケ監督は規律に厳しいことで有名で、国内リーグの試合でスター選手をベンチに置いておくことを躊躇しなかった。それでもPSGはいつも通りリーグ戦で勝ち続けた。

だが、ヨーロッパの大会では、そう簡単にはいかないようだ。監督のプランにおいて唯一大きなギャップがあるチャンピオンズリーグでの成功には、スター選手が必要に違いない。エンバペの退団は埋めようもない大きな穴を残すだろう。つまり、PSGは、大スターがいなくとも国内最大のタイトルを争えるチームであることは証明されていても、ヨーロッパ最大の試合を戦うのにカリスマが必要なのは間違いないのだ。

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    今季もまた優勝

    PSGが毎年リーグ・アンを優勝することは義務ではないにせよ、誰もが予想することである。実際、もし勝てないとなれば、評判高い監督たちのキャリアに大きな傷をつけることになる。2020年末のリーグ戦での不調は当時の監督トーマス・トゥヘルを解任に追いこみ、最後まで回復できなかった。ウナイ・エメリも、2位で終わったシーズンのわずか1年後に解任されそうになっている。

    だが、今シーズンはそうした災難は起きなかった。1つ2つ危ない試合はあった(ルイス・エンリケ監督がチームをうまく操る中で、順位表下位のクレルモン・フットとル・アーヴルとの引き分けは驚きだった)が、今シーズンはとりわけ困難な状況にあったことを考えれば、ここまでかなりスムーズなシーズンとなっている。

    リーグではこれまでたった1敗しかしておらず、リーグ・アン最多の得点を誇り、得失点差は2位に大差をつけた。さらに、チームには将来性豊かな若い才能が大勢いる。義務とも言える成功は成し遂げられてきた。

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  • Luis Enrique Kylian MbappeGetty

    エンバペだけではない

    このことはすべて、近年のサッカー史上最も騒がれた移籍話のひとつの影に隠れてしまっている。もう何年も前から、エンバペはレアル・マドリーに加入する道を進んできた。実際、エンバペがようやくスペインの首都のチームに移籍するのには、長い時間がかかった。何カ月にもわたってエンバペの不確かな将来についてのニュースが飛び交い、PSGを去ることが確定すると、むしろ狂気的な騒ぎは収まった。

    ルイス・エンリケ監督にとってはラッキーだった。もはや脱走を恐れてあのスター選手を起用しなければならないという足かせが外れ、好きなように実験することができるようになったのだ。エンバペは長くベンチに留め置かれ、ゴンサロ・ラモス、ウスマン・デンベレ、ブラッドリー・バルコラなどが活躍の機会を与えられた。ピッチの奥ではさらに自由に、監督は4-3-3、4-2-2-2、4-2-4といったフォーメーションを試してきた。

    ルイス・エンリケ監督自身がこのことを総括して、3月にこう言っている。

    「私のプロジェクトはクラブにとっていささか新しいものだ。今までの監督たちとは違う。若手を大勢起用するものだ。大切なのはサポーターたちが我々を支持してくれ、私たちがよいプレーをしていると思ってくれることだ。個人的には、監督として良い時間を過ごしている。こうして我々は、サッカーのプロジェクトを実行しなければならない」

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    ステップアップ

    さらに言えば、これにより他の選手たちが成長する余地が生まれた。フランス生まれの神童ウォーレン・ザイール・エメリは、先発メンバーとして最初の本格的なシーズンで素晴らしく成長した。バルコラは9月に期限ぎりぎりでリヨンから移籍したことを正当化する活躍を見せている。ラモスも、パリに来たばかりの頃は苦労していたが、調子を上げてきている。

    ごく最近でも、1月に新加入したルーカス・ベラウドは安定的に守備に名を連ね、ヴィティーニャは一度はクラブを離れたものの、中盤に必須の歯車となっている。

    PSGは完璧なチームではない。アクラフ・ハキミはこれから絶頂期を迎える選手だし、デンベレの決定力の低さは依然として懸念材料である。年を重ねケガがちなマルキーニョスも今後問題となるかもしれない。それでも、ここ数年のチームと比べれば、今のPSGははるかにバランスの取れたチームに見える。毎週、ひとりのスターに頼って助けてもらう必要はないのだ。

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  • Luis Enrique PSG Ligue 1Getty

    ルイス・エンリケ監督効果

    PSGの改善の中心はルイス・エンリケ監督である。このスペイン出身監督は、クラブにとって第3の選択肢であった。クリストフ・ガルティエの解任が明らかになった時はトゥヘルのほうが有力な後任候補だったのだ。だが、監督に就任したルイス・エンリケは全力を尽くして仕事に取り組み、リーグ戦を見事に勝ち進んだ。

    クラブも12人の選手を新加入させて監督を大いにバックアップし、リオネル・メッシ、ネイマール、マルコ・ヴェッラッティは出ていった。ルイス・エンリケ監督は冷静にチーム改革に取り組み、きちんと機能するチームを作りあげた。

    監督は、間近に迫ったエンバペの離脱についても、うまく立ち回っている。PSGの周りを飛びまわるメディアを見事にコントロールしているのだ。これは簡単な仕事ではないが、バルセロナの元監督は苦しんでいるようには見せなかった。

    PSGのナーセル・アル=ケライフィ会長は、2週間、監督のことを次のように総括した。

    「わがチームには真に偉大な監督がいる。世界最高の監督だ」

  • Kylian Mbappe Barcelona PSG Champions LeagueGetty

    エンバペの後釜

    だが、すべてを改善し、PSGの組織全体に良い雰囲気が広がるためには、エンバペがいなくなればやはりチームに特別な穴があいてしまうという考えが蔓延していることを何とかしなければならない。ヨーロッパの大会で成功することはPSGの大事な使命であるが、これまでのところ簡単にはいっていない。PSGは均整の取れた良いチームであり、9カ月にわたる国内リーグを制することは可能なのだが、ヨーロッパの壁を乗り越えるにはスター選手が必要なのだ。

    直近で、スター選手がいなくともチャンピオンズリーグを制覇したチームと言えば、2020-2021シーズンのチェルシーだろう。だがそれとて、マンチェスター・シティとの決勝を1対0で勝てたのは、ケヴィン・デ・ブライネがケガで不在だったからと言えるかもしれない。

    CL準決勝の相手はボルシア・ドルトムントだ。何かと話題のエンバペも、故郷にヨーロッパの栄光をもたらすという約束を最後の最後に果たそうとしており、鋭いキレ味を発揮するに違いない。

    だが、PSGはまだ若いチームだ。カリスマなしにヨーロッパの栄光を手にするには、まだ準備不足かもしれない。となればこの夏、PSGは、ヨーロッパのエリートチームと戦い続けられるように、新しいリーダーを見つける必要があるだろう。

  • Lamine Yamal Barcelona 2023-24Getty Images

    選択肢

    実のところ、PSGには潤沢な資金がありそうだ。通常どおりカタールの重い財布を自由に活用できるだけでなく、エンバペが去ることで自由に使えるようになるカネもあるからだ。

    エンバペがレアル・マドリーに移籍する正確な条件はまだ明らかになっていないが、たとえ近々フリーエージェントになるエンバペの移籍金を受け取るのは無理にしても、PSGがかなりの金額を節約できるようになるのは確かだ。エンバペがPSGから受け取ってきた報酬は、段違いのヨーロッパ最高額である。PSGは毎年、ロイヤリティボーナスやその他のボーナスを支払うというとんでもない約束をしており、毎シーズン、エンバペに9桁の金額を支払ってきたのだ。

    だからといってスーパースターを獲得できるほどのカネではないかもしれないが、PSGが利用できそうな興味深い選択肢がいくつかあるのも確かだ。ラミン・ヤマルは珠玉の選手のようで、バルセロナはこのラ・マシア出身の天才を手放したくないと思っていたとしても、収支のバランスを保つために高額で選手を売りに出さなければならないという厳しい経済的現実に直面してもいる。PSGがヨーロッパの次なる大きな目標のために高額移籍をもくろうとしても、驚くべきことではない。

    同じくらい効果的で、ただし賢いとは言えそうにない投資は、モハメド・サラーの獲得である。このウィングはリヴァプールから出たがっていると言われており、とりわけ新監督のアルネ・スロットがチームをきれいにしたいと思うなら、しかるべき値段で手に入れられるだろう。他にも、ラファエル・レオン、マーカス・ラッシュフォード、ルイス・ディアスといった、大いに可能性のある選択肢がある。

    誰が加入するかはわからないが、PSGにはこの夏、大きな話題を提供できるカネも気概もある。今までのシーズンと違い、PSGは本気でスター選手を手に入れようとしているし、今こそ、ヨーロッパでの成功に手が届こうとしているチームを完成させるビッグネームが必要なのだ。

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