USWNT Spain power rankings gfxGetty Images/USA Today Sports/GOAL

パリ五輪2024女子サッカーパワーランキング:アメリカのメダルは有力だが勝つのはスペインか

長く待ち望まれていたエマ・ヘイズがアメリカ女子代表監督に就任したことは、この夏のオリンピックの女子サッカーにとって大きな話題となるかもしれないが、果たしてフランスで順調なスタートを切ることができるだろうか。

オリンピックに出場するのは12カ国のみで、原則23歳以下が出場する男子と違い年齢制限がない女子は、紛れもない世界のトップチームが名を連ねることとなる。その中には、ワールドカップ優勝のスペインや南米チャンピオンのブラジル、2021年の東京五輪で金メダルを獲ったカナダがいる。

開幕までもう間もなくとなった現在、興奮はピークに達しようとしている。パリで表彰台の一番高いところに立つ国はどこか。以下に金メダル候補たちをランキングしてみよう。

  • 12ニュージーランド ↔️

    ニュージーランドは昨年共同開催したワールドカップで初勝利を挙げ、歴史を作った。2人が射殺されるという悲劇が起きたわずか数時間後、オークランドに勇気をもたらした快挙であった。

    ニュージーランドは女子サッカーの主要大会の常連国ではあるが、その経験がようやく勝利に結びついたのだった。実際、ワールドカップでのこの勝利は、2023年にニュージーランドが記録したわずか2勝のうちの1勝であり、もう1勝は大会前の親善試合でベトナムに勝利したもので、同年に戦った12試合は7敗であった。

    オリンピックのオセアニア予選では、トンガ、サモア、バヌアツ、フィジー、ソロモン諸島に対し得点を重ね、わずか2失点で勝利を積みあげたが、オリンピック前には、賢明にも、より強い相手との親善試合を戦ってきた。しかしながら、日本に2敗、ザンビアに引き分けという結果を見ると、メダル争いに絡むのは難しいだろう。

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  • Barbra BandaGetty Images

    11ザンビア ↔️

    ザンビアは女子サッカー界で最も興味深いチームのひとつである。2021年のオリンピックで初めて国際大会出場を果たした「褐色の女王」は、その後、アフリカ女子ネイションズカップで過去最高の3位となり、ワールドカップ初出場も果たして、この夏再びオリンピックにやってきた。

    ザンビアにはスター選手もいる。まさに今年、ザンビアの2人の至宝は、女子サッカー史上最高額の選手2人となった。レーチェル・クンダナンジとバーバラ・バンダが、それぞれ68万5,000ポンド(約1億4,000万円)と58万2,000ポンド(約1億1,800万円)でアメリカ合衆国のナショナル・ウィメンズ・サッカーリーグに加入したのである。

    ザンビアは、ここ数年、多くの主要大会で経験を積んでおり、試合に勝つのみならず、いくつかの素晴らしい結果を出して大いに注目されている。昨年はドイツとの親善試合に勝ち、オリンピック予選のプレーオフでは延長戦でモロッコを下した。ただ、昨年のワールドカップでは、本当に重要な試合で強豪国に勝つのは難しいようだった。

  • Asisat Oshoala, Super FalconsGetty

    10ナイジェリア ↔️

    衝撃の大会であった昨年のワールドカップで、ナイジェリアはベスト16に勝ち残り、世界を驚かせた。「スーパー・ファルコン」は、強豪国に対して戦略的センス、守備における回復力、チャンスを作りだす力を見せつけ、大いに尊敬を集めた。実際、決勝トーナメントでは、結果的に決勝に進出したイングランドにあともう少しのところまで詰め寄った。

    オーストラリアでのグループステージでは本当に厳しく誰が勝ってもおかしくない組から勝ち上がったが、パリ五輪でも、スペイン、日本、ブラジルと同じ組に入り、苦戦を強いられそうである。オリンピック予選の4試合はすべて無失点で、ナイジェリアから得点をとるのはかなり厳しそうだ。ランディ・ウォルドラム監督は守備中心のゲームプランを立てることに優れている。しかしながら、オリンピック前3カ月の代表としての活動が不足しており、唯一の試合である、水曜の無観客でのカナダ戦でも敗れているため、充分な準備が出来ているとは言い難い。

  • 9コロンビア ↔️

    昨年のワールドカップで、コロンビアは多くの人の予想どおり、素晴らしいサプライズを巻き起こし、歴史的な準々決勝進出を果たして、イングランドを大いに追い詰めた。彼らの才能と可能性をパリ五輪でも発揮できるだろうか。

    2月の北中米ゴールド・カップでは、コロンビアは、チェルシーのスターであるマイラ・ラミレスを欠いていたとは言え、強豪国にやすやすと倒されてしまった。ラミレスは4月に復帰し攻撃を牽引したが、リンダ・カイセドとレイシー・サントスを欠いたメキシコ戦は1対0の辛勝で、グアテマラには3-0の大勝だった。全選手がそろった6月にはベネズエラとの2試合に予想どおり楽勝し、大きな手ごたえを感じたことだろう。

    オリンピック前の最終調整の期間に格上の相手との試合をすることができず、選手を入れ替えたエクアドルでは敗れている。実際にオリンピックでの試合が始まってみないと、コロンビアの本当の実力はわからないだろう。

  • Giulia Gwinn Germany Women 2023Getty

    8ドイツ ⬇️

    昨年のワールドカップでドイツがグループステージ敗退だったことは、大会史上最大の驚きのひとつであった。優勝候補の筆頭だったドイツは、グループステージ最終戦で韓国と引き分け、信じられないほど早く帰国することになったのだ。それにより監督交代を余儀なくされ、マルティナ・フォス=テクレンブルクは契約更新に同意してからわずか6カ月で解任となった。

    現在のドイツ代表はかなり奇妙な状態にある。昨年10月にホルスト・ルベッシュが暫定監督に就任し、オリンピック予選を指揮して本大会出場に導いたが、今年の8月には新たにクリスティアン・ヴュックが監督に就任することが決まっている。ルベッシュ監督は優勝のみを目標としているが、それを成し遂げる才能をもった選手たちが充分にいることは確かだ。

    しかしながら、このところの試合で監督が起用している4-4-2のフォーメーションには欠点があり、アイスランドに0-3というまさかの敗戦を喫したように、選手たちは必ずしも実力を発揮できていない。何よりも問題なのは、オリンピック前のドイツ代表の最後の試合でレナ・オーバードルフが膝に大けがを負って大会に出場できなくなったことで、これはドイツにとって大打撃である。

  • 7ブラジル ⬆️

    初めてグループステージ敗退となった惨憺たるワールドカップの後、ブラジルは9月に、監督をピア・スンドハーゲからアルトゥール・エリアスに代えた。それ以降、セレソンは15試合中10試合に勝利し、結果として3月に北中米ゴールド・カップの決勝に進出した。エリアス監督が素晴らしい才能にあふれたチームに実力を発揮させようとしている明るい兆しが見えているが、まだすべてにおいて完成したとは言えない。

    カナダ、日本、アメリカに3敗してしまい、攻撃陣にスター揃いのブラジルにも、依然として前線に課題がある。調子のよい時は南米チャンピオンとして非常に危険なチームであり、格下のチームには楽々と勝っていた。オリンピックでは強豪国を乗り越えていけるだろうか。

    4月のシービリーブス・カップでは、カナダと日本に1-1の引き分けで、ランキングが近いチームに弱点をさらしてしまった。このことはオリンピックに向けての懸念材料であり、日本やナイジェリアといった強豪と同じC組での2位争いは熾烈を極めそうだ。

  • 6カナダ ↔️

    カナダは昨夏のワールドカップでは悲惨な目に遭ったが、このランキングでは上位の国のひとつである。オリンピックで金メダルを獲ってからわずか2年後のワールドカップでまさかのグループステージ敗退となった後でも、連盟はベブ・プリーストマン監督を信頼し続け、9月のオリンピック予選でジャマイカを倒し、失望からの復活を遂げたのであった。

    実際、ワールドカップ以降の15試合でカナダが負けたのは、PK戦でアメリカに2度と、1ー0でブラジルに1度だけである。カナダの勝利の多くは予想されたものであるとは言え、チームとしての自信を取り戻したことは間違いない。7月のオーストラリア戦の勝利は一見素晴らしいが、通常無観客で行なわれる「B」級の国際試合に分類されていることに注意が必要だ。

    オリンピックが近づくにつれ、現在のカナダ代表には相変わらず山ほど問題があるように思われる。3年前日本で金メダルを獲った時にもそうした問題を乗り越えてきており、フランス、コロンビア、ニュージーランドと戦うグループステージを突破するのは当然だろう。だが、決勝トーナメントでも勝利をつかんでいける力はあるだろうか。

  • nadeshiko(C)Getty Images

    5日本 ↔️

    日本は、昨年のワールドカップのグループステージで、4-0という衝撃的なスコアでスペインに大勝し、大いに騒がれた。なでしこジャパンには常に才能ある選手がおり、見ていて楽しいサッカーをするため、スペインに勝つこと自体は驚きではなかったが、大会の優勝候補のひとつを完膚なきまでに叩きのめした戦いぶりは、まさに大きな注目を集めた。

    残念なことに、ワールドカップではそれが日本の絶頂だった。日本は準々決勝で敗退し、グループステージでのあの見事な試合は、最終的に優勝したスペインにとってちょっとした事件にすぎなくなってしまった。

    日本の実力を疑うものは少なく、最近の親善試合でもニュージーランドとガーナ相手に実力を見せつけている。だが、プレッシャーのかかる場面で一線を越えるための勝利のメンタルが日本にあるだろうか。シービリーブス・カップを優勝できなかったことは、日本には接戦を乗り切るコツがまだ身についていないことを示している。

  • 4オーストラリア ⬇️

    オーストラリアはオリンピックをサム・カーなしで戦うことになるが、この夏、彼女がいなくても勝てそうな証拠は充分にある。昨年のワールドカップでも、このチェルシーのスターのプレー時間がケガのために限られていたにもかかわらず、オーストラリアは初めての準決勝進出を果たした。

    チームの主力なしで戦う経験をしたことは、戦術的観点からのみならず、精神的にも重要である。彼女の不在が、昨夏に快挙を達成したという事実を曇らせることはないだろう。それに、オーストラリアにはトップレベルの才能や勝利のメンタルを持つ選手が他にも大勢おり、昨年、同じ選手を使いすぎると批判されたトニー・グスタフソン監督が、適切に選手を起用できれば、メダルのチャンスは大きくなるだろう。

    だが、このところのケガ人続出は懸念材料である。ケイトリン・フォード、ステフ・キャトリー、ケイトリン・トーピー、タメカ・ヤロップが、7月のカナダとの親善試合に出場できず、MFカトリーナ・ゴリーも、足首の出術の後、45分間しかプレーできていない。ドイツとの初戦に向けて、どれだけの準備ができているのだろうか。

  • Marie-Antoinette Katoto France Women 2023Getty

    3フランス ⬆️

    フランスは昨年のワールドカップではオーストラリアにPK戦で敗れ、3大会連続の準々決勝敗退となったが、エルヴェ・ルナール監督の就任が大会のわずか4カ月前であったことを考えると、そこまで勝ち進んだだけでも素晴らしいことだったろう。

    その後事態は改善し、ネーションズリーグでは決勝に進出。最近ではイングランドやスウェーデンに勝っている。それでも、2月に決して絶好調ではなかったスペインに0-2で敗れたこともあり、世界のエリート国には一歩届かない印象である。

    ルナール監督のチームには才能ある選手が大勢いるが、最大限活用されているとは言い難く、素晴らしい結果を出す試合と最後の最後で決めきれない試合を行ったり来たりしていることが多い。5月末から6月にかけてのインターナショナルウィーク中に、アウェイではイングランドに勝ったのに、その4カ日にホームでは敗れているところを見ると、フランス代表の試合ぶりがどれほど不安定であるかがわかる。このような状態では金メダルを獲るのは難しいだろう。

  • Jaedyn Shaw USWNT 2024Getty Images

    2アメリカ ↔️

    昨年のワールドカップでは思わぬ敗退を喫したものの、アメリカは今回のオリンピックでも、金メダル候補である。それにはいくつかの理由がある。

    そのひとつが、あの最悪のワールドカップから、チームが見事に復活していることである。2月にはゴールド・カップで、4月にはシービリーブス・カップで優勝した。2つ目の理由は、USチームの選手層が素晴らしく厚いことにある。過去12カ月でジェディン・ショウのような若手選手が数多く台頭してきた一方、マロリー・スワンソンはケガから電撃的復帰を果たした。また、このチームにはトップレベルでの経験も豊富である。

    問題は攻撃陣にある。あまりにもしばしば不発に終わることが多く、オリンピックの壮行試合であるメキシコとコスタリカとの親善試合で1点しかあげられなかった。ソフィア・スミスやトリニティ・ロッドマンといった選手が前線にいることを考えると、このような不発が続くことに言い訳はできない。このため、アメリカが最後のところで最高の武器の不足のために敗れてしまう恐れは残っている。

  • 1スペイン ↔️

    サッカーは何が起こってもおかしくないスポーツだが、スペインが現時点で他の女子サッカー代表チームとは違う惑星のチームのように感じられるのは真実である。ワールドカップを制覇した後、2月のネーションズリーグでは、準決勝でオランダ、決勝でフランスという難敵を下して優勝を果たし、女子EUROの予選では楽々と自動出場権を獲得した。

    それでも、7月にチェコに1-2で負けたことは、今後の対戦相手たちにいくばくかの勇気を与え、スペインといえども無敵ではないことを思いださせただろう。昨年のワールドカップでは日本に0-4で大敗しており、6月の試合でも72分までデンマークに2点をリードされていたが、その後怒涛の攻撃で逆転勝ちを果たしている。基本的に、スペイン代表は完璧ではないのだ。

    とはいえ、こうした懸念材料はごくわずかで頻繁にあることではなく、注意できることが多い。グループステージで日本に負けたワールドカップでも結果的に優勝しており、デンマーク戦ではバルセロナのスター、アイタナ・ボンマティを欠いていた。チェコ戦ではレッドカードを受けたため10人で戦わざるをえず、逆転勝ちすることができなかった。そういうわけで、オリンピックでスペイン代表を止められるチームは現れそうにないように思われる。