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ノッティンガム・フォレストを襲う危機:いかにしてトップ4争いから降格争いへ落ち、ポステコグルーを解雇してダイシに火消しを頼まざるを得なくなったのか

そうして、フォレストは1996-97シーズン以来となるヨーロッパの大会への出場に向け、夏の移籍市場で13人の新戦力を獲得し、ボローニャからウイングのダン・エンドイェ、イプスウィッチ・タウンから若き天才オマリ・ハッチンソン、ブラジル代表ストライカーのイゴール・ジェズスらが加わった。外から見れば、イングランドサッカー界で落ちぶれていた偉大なる巨人がついに頂点への道を歩み始めたように見えた。

ところが、10月も中旬を過ぎた今、夢が見られると思っていたファンたちは最悪の悪夢が現実となるのを目の当たりにしている。フォレストは今シーズンのプレミアリーグの開幕からの8試合で1勝しか挙げられず、17位に転落。得点もわずか5点でリーグ最低タイを記録しているのだ。

さらにカラバオカップでは3回戦でチャンピオンシップ所属のスウォンジー・シティに敗れ、ヨーロッパリーグではレアル・ベティス戦に2-2の引き分け、FCミッティラン戦ではホームで2-3の痛恨の敗北を喫した。新シーズン開幕からわずか3試合で、ファンに愛されていたヌーノ監督が衝撃的に解任され、カオスを巻き起こすことで有名なアンジェ・ポステコグルーが即座に後任となったことで議論を呼んだ。ところが、ポステコグルーに与えられたのはわずか8試合だった。妥協を許さないオーナー、エヴァンジェロス・マリナキスが再び引き金を引いたのである。ポステコグルーが大いに困惑したことに、この知らせは0-3で負けたチェルシー戦の試合終了のホイッスルが鳴った数分後に伝えられた。

早急に何かが変わらなければ、屈辱的なチャンピオンシップへの降格は現実味を帯びている。疑問はただひとつ。なぜフォレストはこんなにも短期間で、正真正銘のチャンピオンズリーグ出場権争いから降格候補へと転落したのだろう…

  • Nottingham Forest v Chelsea FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    チャンピオンズリーグへの出場権を逃す

    4月1日、シティ・グラウンドで、赤い悪魔からやって来たウイングのアンソニー・エランガの試合開始早々の得点によりマンチェスター・ユナイテッドを1ー0で下したフォレストは、プレミアリーグで勝ち点57をあげ、3位につけていた。2位のアーセナルとの勝ち点差はわずか4、チャンピオンズリーグ出場圏外ぎりぎりの6位のニューカッスルとの勝ち点差は10あった。残り8試合という状況で、フォレストの運命は彼ら自身の手に委ねられていた。

    ところがフォレストはその後、完全に勢いを失った。ヌーノ監督のチームは続く7試合で2勝しか挙げられず、アストン・ヴィラ、エヴァートン、ブレントフォードに負けて7位に急落。それでもなお、最終節を迎えた時点で、4位のチェルシーをホームで下せばチャンピオンズリーグへの出場権を獲得できる状況にあった。

    残念ながら、彼らは最後のチャンスを逃した。質の高いプレーが切実に求められた一戦で、ブルーズに0-1で敗れたのである。フォレストは懸命に戦ったが、チェルシーの守備陣を突破する創造性に欠け、枠内シュートはわずか2本。レヴィ・コルウィルの至近距離からの得点が両チームの勝敗を分けた。

    2023-24シーズンには最終日に辛うじてプレミアリーグ残留を決めたことを思えば、フォレストにとって7位は大きな成果だった。シティ・グラウンドのサポーターは、ヌーノ監督と選手たちが場内を一周した際、彼らにふさわしい心のこもった拍手や歓声を送った。終盤の不振の根本的な原因が取りざたされることはほとんどなかった。

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  • FBL-ENG-PR-NOTTINGHAM FOREST-MAN CITYAFP

    成功はまったく持続不可能なものだった

    GOALの上席ライターであり、ノッティンガム・フォレストの熱狂的なサポーターであるクリス・バートンは、フォレストの衰退を予見していた数少ない人物のひとりだった。「昨シーズンの成功はまったく持続不可能なものだった。クリス・ウッドのxG(ゴール期待値)、無失点試合の数、カウンター攻撃を主体とするスタイルがその根拠だ」と、彼は語る。

    「春先から歯車が狂い始め、フォレストはまったく回復できなかった」

    実際、ウッドは昨シーズンのプレミアリーグでフォレストが記録した58得点のうち20得点を挙げた(彼のキャリアで最高の得点数)が、枠内シュートはわずか32本だった。このニュージーランド代表選手の最終的なゴール期待値(xG)は6.6上回る「13.4」で、この数値を上回ったのは当時ブレントフォードに所属していたブライアン・エンベウモだけだった(得点数は同じで7.7の差)。

    フォレストはまた、マンチェスター・ユナイテッドに勝った際にリーグ最多の無失点試合(13試合)を記録していたが、残りの8試合でその数を上積みすることはできず、ウッドもこの期間は2得点のみに留まった。その主な原因は、対戦相手がヌーノ監督の単調な戦術を見抜いたことだった。

    相手チームはフォレストを深く押し込むのではなく、ボール支配率を譲るようになり始め、結果としてフォレストは速攻がやりにくくなっていった。このため、フォレストは少ない人数で広範囲をカバーせざるを得なくなり、ウッドが相手にとって危険な位置でボールに合わせられる機会が減少した。「ヌーノは自らの戦術を貫いたが、その弱点が露呈した」と、バートンは言う。

  • Nuno-EduGetty/GOAL

    エドゥとの「抗争」

    『テレグラフ』によると、ヌーノ監督は夏にフォレストのスタイルをエリートチームと競えるようなものに変えたいと考えていたが、クラブの補強チームはその緊急性に気づかなかった。フォレストは新戦力獲得のために1億9,600万ポンド(約400億円)を投資したが、重要な契約のいくつかが移籍期間の終了間際まで決まらず、監督はメディアの前で不満をあらわにした。

    「疑念をもってシーズンを迎えるのは、サッカーにおいて最悪のことだ」と、ヌーノは新シーズンの開幕戦となるブレントフォード戦の前に言った。「誰が(ここに)残るのか、新加入選手はいつ来るのか? こうした疑問がすべて疑念を生む。プレシーズンは非常に、非常に悪かった。1勝もできず、1得点しか挙げられなかった。選手たちはスーパーマンではない。ローテーションが必要だ。試合の厳しさや要求されるものについて考えると、これは重大な問題だ」。

    ヌーノが最優先で獲得すべきと考えていた候補のひとりが、ウルブス時代に共に働いたフラムのウイング、アダマ・トラオレだった。しかしこの移籍は、フォレストのグローバル・サッカーの新しい責任者となったエドゥによって阻止されたと報じられている。『ジ・アスレティック』誌によると、ヌーノは「会話のしょっぱなから」アーセナルでスポーツディレクターをしていたエドゥを嫌悪したという。本格的な内部「抗争」が勃発し、すぐに両者は完全に口を利かなくなった。

    しかしこれは、ヌーノが勝つことは不可能な戦いだった。エドゥはフォレストのギリシャ人オーナー、マリナキスが構築する長期プロジェクトの要だったからである。

  • Evangelos Marinakis Nuno Espirito Santo Nottingham ForestGetty

    「避けられない」ものだったヌーノ監督の解任

    エドゥとマリナキスは共にヌーノが公にした不満を「個人的に」受け止めた。ブレントフォードに3-1で勝ったことで裏方の雰囲気は和らいだものの、一時的なものに過ぎなかった。ヌーノは不満を抱き続け、クリスタル・パレス戦の前の記者会見で再び衝撃的な発言を爆発させて、マリナキスの怒りを買った。

    「オーナーとは常に良好な関係だった。昨シーズンは極めて密接で、ほぼ毎日交流があった。だが関係は変化した。以前ほどの親密さはない」と、ヌーノは認めた。「良くない状況だ。クラブ関係者は結束すべきだが、現実はそうではない」。

    ヌーノのこの発言は、5月にレスター・シティに2対2で引き分けた直後にマリナキスがピッチ上で監督に詰め寄った場面を即座に想起させた。クラブ側は後日、この行為は腹部に負傷を抱えながら出場し、後に手術が必要となったFWタイウォ・アウォニイへのオーナーの懸念が原因だと説明している。当時、より広範な不和の兆候は否定され、翌月ヌーノは新たな3年契約を結んだ。しかしマリナキスは、監督が露骨に不満を表明したのを見て、その契約の破棄を考え始めていた。フォレストはクリスタル・パレスに1-1で引き分けたが、その頃にはすでにヌーノの後任としてポステコグルーの名前があがっていると広く報じられていた。

    8月31日のシティ・グラウンドでのウェストハム戦での0-3での敗戦がヌーノにとって最後のとどめとなり、その後のインターナショナル・ブレイク中に解任された。バートンによれば、現代のフォレストで最も成功した監督という立場を考えれば衝撃的な決断ではあったが、ファンも理解する「避けられない」ものだったという。「ヌーノは欲しかった選手が獲得できなかったことで子どものように駄々をこね、その振る舞いでサポーターからの信頼を失った」と、バートンは言う。

  • Real Betis Balompie v Nottingham Forest FC - UEFA Europa League 2025/26 League Phase MD1Getty Images Sport

    視野の狭さに対する代償

    ヌーノの解任前、後任の監督候補として、2度のチャンピオンズリーグ優勝経験を持つジョゼ・モウリーニョやフラムのマルコ・シウヴァといった、数多くの指揮官の名前が浮上していた。2人とも短期的にはチームに安定をもたらす能力があっただろう。しかしマリナキスはポステコグルーに賭ける決断を下した。

    ヌーノは何よりも規律と組織を優先する現実主義の監督だった。その哲学と「アンジェ・ボール」は何百万キロも離れたものである。ポステコグルーは極端に高い守備ライン、積極的なプレス、ボール支配を要求し、素早いパス交換で相手のラインを突破することを目指す。

    この攻撃的志向の戦術は確かな成功を収めており、直近ではトッテナムで、ポステコグルーはクラブに17年ぶりの優勝をもたらし、ヨーロッパリーグ制覇という栄光へも導いた。しかし、この戦術には巨大なリスクも伴う。攻守の切り替え局面では極めて脆弱になるからだ。これが原因でスパーズは68失点を喫し、クラブ史上最多となる22敗を記録した。その結果、昨シーズンのプレミアリーグでは許しがたい17位に沈み、ポステコグルーはタイトルをもたらしたにもかかわらず解任を免れなかった。

    マリナキスは、60歳のポステコグルーが持つスコットランドや日本、オーストラリアでのリーグ優勝を含む経歴に目がくらみ、戦術面での明らかな欠陥を見落としていた。今やフォレストは、マリナキスの視野の狭さに対する代償を払っている。ポステコグルーの監督就任からわずか39日で、チームはさらに深刻な低迷状態に陥ってしまったのだ。

  • Swansea City v Nottingham Forest - Carabao Cup Third RoundGetty Images Sport

    スウォンジーの急襲

    ポステコグルーは指揮官として初戦を控えた新チームでの合同練習をわずか1回しか行えなかった。しかも、その初戦は、北部ロンドンに戻っての、スパーズの宿敵アーセナルとの対戦だった。したがって、アーセナルが3-0の楽勝だったことは驚くに値せず、ポステコグルーはすぐに「事態はすぐに好転する」と約束した。

    「数カ月も、数週間もかからない…水曜にはうまくいく」と、ポステコグルーはカラバオカップでのスウォンジーとの試合を見据えて語った。

    「時間を無駄にする余裕はない。水曜には我々の理念が浸透し始める。長くはかからないし、長くかかるようなことは私がさせない。必ず立て直す。我々には大きなインパクトを与えられる、信じられないほどのチャンスがあるのだから」

    フォレストは、Swansea.comスタジアムで試合開始からの60分間、ポステコグルー監督の誓いを体現した。前半見事なチームプレーからに2得点を挙げたが、いずれもジェズスが決めたもので、スウォンジーはフォレストの巧みなビルドアップに対抗できなかった。チームがボールを保持している間に、アーセナルからレンタル移籍中のオレクサンドル・ジンチェンコとニコロ・サヴォーナがサイドバックから中盤へとポジションを移し、もうひとりの夏に加わった新戦力、ドウグラス・ルイスに前線へ飛び出してチャンスを作る自由を与えた。この攻撃は後半開始直後も続いた。

    ところがフォレストのジャイール・クーニャが絶好機を逃すと、スウォンジーが素早いカウンターで反撃してCKを獲得。キャメロン・バージェスが最高点でヘディングを決めて流れを一変させた。92分にザン・ヴィポトニクが同点弾を叩き込み、終了間際にバージェスが2点目を奪って逆転勝利を収めたのである。

    これはポステコグルーが率いていた昨シーズンのトッテナムでよく見られた崩壊劇だった。スパーズはプレミアリーグで先制した22試合で11勝しかできず、7敗4引き分けだったのだ。ポステコグルーは流動的でエンターテイメント性の豊かなサッカーをもたらすが、試合をコントロールできない。彼のチームはいつ崩壊してもおかしくないのである。

  • Newcastle United v Nottingham Forest - Premier LeagueGetty Images Sport

    自信が急落し始める

    フォレストは続く2試合でもリードを守れず、昇格したばかりのバーンリーとのターフ・ムーアでの試合は1-1、ベティス戦も引き分けに終わった。だが、ポステコグルーはこれらの試合から多くの手応えを得ており、特にスペインでのフォレストの1点目を生んだ流れるような攻撃に満足して、記者団にこう語った。

    「ある意味では私は時代遅れかもしれないが、あの攻撃には美しさがあった。私のチームにはそういうサッカーをしてほしい。あのように構築された瞬間こそがサッカーを美しくする要素であり、私はそれを愛している」

    新加入の選手たちへの戦術の伝達について、ポステコグルーはこうも言った。

    「我々のサッカーには傑出したところがある。新加入の選手たちは我々の試みを非常によく理解してくれている。今の課題は、勝てないからといって選手たちが決して落ち込まないようにすることだ」

    その後ポステコグルーがこの課題を完遂できなかったのは事実だ。ヨーロッパで戦った疲労が尾を引いたフォレストは、3日後にシティ・グラウンドでサンダーランドとの接戦を落とした。さらにミッティラン戦では先制しながら衝撃の敗戦を喫し、ニューカッスルには0-2で負けた。

    サンダーランド戦とミッティラン戦はおなじみの展開だった。守備のミスが多すぎ、ゴール前での決定力がない。一方、ニューカッスル戦では、相手のペースに巻き込まれ、チーム全体の集中力が著しく低下していた。自信が急落し始めた時に起こる現象だ。

    チェルシー戦の前からポステコグルー監督は深刻な危機に直面していた。実際、彼はフォレストで1925年以来初めて開幕7試合で未勝利の監督となったが、土曜の試合前も相変わらず強気の姿勢を崩さなかった。「苦しい戦いだが、戦わなければならない。それ自体に何ら問題はない」と、セント・ジェームズ・パークでの試合終了後に語った。

    「ソファーに座って選手たちの試合を観戦することもできるだろうが、私はここにいて、この渦中に身を置く方を選ぶ。私は選手たちに影響を与えることができるし、必ずそうする」

  • Sean DycheGetty Images Sport

    この仕事に最適な人物とは

    ところがポステコグルーは、今まさに自宅のソファーに座っている。『テレグラフ』によれば、マリナキスは前々から今シーズン2度目の監督解任を検討しており、チェルシーに0-3で惨敗した直後に容赦なく実行に移した。では次は誰か。答えはショーン・ダイシかもしれない。後任の最有力候補としてその名前が浮上している。

    シウヴァも有力候補として検討されているが、フラムから引き抜くには多額の補償金が必要だ。ダイシは1月にエヴァ―トンを解任されて無職のフリーエージェントとなっており、ブライアン・クラフが監督だった時代にユースに所属しており、フォレストとの強いつながりがある。

    ノッティンガム在住でホームゲームに定期的に足を運ぶダイシが監督となれば、イアン・ウォーンとスティーブ・ストーンという2人のフォレストのカルト的な英雄がついてくるだろう。2人とも、バーンリーやエヴァ―トンでダイシが監督をしていた時、長くコーチングスタッフを務めていた。また、ダイシには優れた人材管理能力があり、苦境にある選手から最高のパフォーマンスを引き出してきた実績がある。

    バーンリーはダイシの指揮の下、プレミアリーグ昇格を2度達成し、2017-18シーズンにはトップリーグで7位に入って、51年ぶりのヨーロッパリーグ出場権を獲得した。勝ち点剥奪やオーナー交代もあった激動の時期のエヴァートンの崩壊を踏みとどめた実績もある。

    ダイシのブランドはポステコグルーほど見栄えは良くないが、ヌーノの下で築いたのと同じ堅実な基盤をフォレストに与えるだろう。マリナキスは明らかに、ポステコグルーを留任させてもチームが危機から脱することはできないと考え、感情に流されることなく迅速に行動した。新しい監督の下でチーム状態が改善され、リーグでの順位が向上するだけでなく、エリオット・アンダーソン、モーガン・ギブス=ホワイト、ムリージョといった、ヨーロッパのビッグクラブから関心を寄せられている主力選手たちに、残留を納得させることができることを期待したい。

    チェルシーに敗れ、ポステコグルーが解任されたことで、フォレストは火の車だ。ダイシはこの火を消すのに最適な人物かもしれない。