PSG GFXGetty/ GOAL

今季のPSGが残念な10の理由:メッシは去りたがり、ネイマールはケガ…ドンナルンマは安定感を欠く

現地時間27日の試合を引き分けたパリ・サンジェルマン(PSG)は、2年連続リーグ優勝を果たして最低限のノルマを達成した。

公平に評すなら、リーグ・アンに関してここ数日は面目躍如以上のものはあった。確かにPSGは毎年リーグ優勝して「当たり前」なチームではあるが、そう簡単に勝てるリーグではない。最高のチームだからと言って、単純に他の19チームに圧勝する必要があるというわけではない。

PSGは名声に違わぬチームではあるが、今シーズンは安定していたとは言えない。今年に入ってから疲れ果てて迫力のないチームとなり、スピード感のないプレーぶりだった。優勝回数を2桁に乗せる快挙を達成したというのに、印象の薄いシーズンになってしまいそうなのだ。PSGは、今シーズン躍進して2位を確定したランスよりも負けた試合の数が多く、9位のニースよりも現在のところ失点が多い。

他のチームだったらこんなことは許容範囲かもしれない。だが、PSGは国家から資金援助を受け、巨大なマーケティングを有するチームであり、完全であることが求められる。それなのに今シーズンは不完全の宝庫だった。新しい監督は面白みに欠け、スター選手たちは期待はずれ。文字どおり失望させられることが度々あった。怒りを募らせるファンのフラストレーションは煮えたぎっている。

フランスの首都を本拠地とするチームが、成功を収めながらもこんなにも残念な理由を見てみよう。

  • Lionel-Messi(C)Getty Images

    退団したがるメッシ

    これが我々が目指したものだったのか? ワールドカップから戻ったリオネル・メッシは、すべてがどこか違っていた。アルゼンチン代表のメッシは現役生活の総括を果たし、最も完璧な状態でサッカーを完結させた。他のことなどどうでもいいように見えた。

    そして本当にそうだった。カタールから戻ったメッシは相変わらず輝かしい最高の光を放ちつづけていたが、どこから見ても、誰かに導かれたり、自分でモチベーションを上げたりすることのない選手のように見えた。1月以降のPSGの苦闘はメッシのせいではない。メッシの覇気のないプレーぶりはPSGが期待はずれとなった理由の一部ではあるが、34歳の選手に毎週カリスマ的なプレーをしろと期待するのは、フェアではないだろう。

    バルセロナをめぐる噂が流れ始めて以来、メッシの気持ちはすでにカタルーニャに飛んでいるようだった。古巣に戻れるという期待は事態を複雑にするばかりだ。フラストレーションを募らせるPSGのウルトラスにとって、メッシはもはやユニフォームを着るに値しない裏切り者である。ブーイングやバッシングが苛烈を極め、メッシはひどいプレーの連続でチームのお荷物にすらなりつつある。

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  • Neymar PSG injured Lille 2022-23Getty Images

    ネイマールの足首はまたしても動かない

    ネイマールが足首のケガを負って現時点で1年になる。今シーズン、ネイマールはついに決心して手術を受けることにした。おそらく、まだしばらくは時間がかかるだろうし、そこへ捻挫が加わった。

    だが、何年もPSGで最高のプレーをしてきたネイマールにとって、このケガは時期が悪かったともいえる。事実、ネイマールはリーグ・アンで20得点20アシストを挙げており、失速したリーグ戦の残りを実際よりずっと素晴らしいシーズンにすることができたはずだった。

    ところが、彼のごく最近の問題が事態を狂わせ、キャリアにも長く影響を与えそうだ。ネイマールは現在30歳で、手術は成功したと報道されているもののこの年齢ではそう簡単に復帰できそうにない。特にネイマールは何度もケガに見舞われてきた歴史がある。

    PSGは毎年、ネイマールをとどめておくか売りに出すかの決断に迫られてきており、そのたびに少々腹黒い感情を抱えてきた。だが、メッシの退団が決定的と言ってよく、キリアン・エンバペがうまく選手たちをまとめているうえに、怒れるファンたちが我慢しきれなくなっている今、歴代最高額で契約した選手をどうするかについては、今まで以上に真剣に考えなればならないことだろう。

  • Sergio Ramos PSG frustrated 2022-23Getty Images

    守備の問題

    PSGを批判する人々が口を揃えていうのは、PSGのスーパースターたちは走らないということだ。この批判は間違っていない。エンバペ、メッシ、ネイマールは、PSGがチャンピオンズリーグ(CL)で勝ち上がるために必要な守備をしなかった。現代サッカーは11対8でプレーできるものではない。

    しかも残りの8人も鉄壁だったとは言い難い。シーズン前、PSGは非常に強固なバックラインを敷けると思われていた。マルキーニョスとプレスネル・キンペンベに、セルヒオ・ラモスかノルディ・ミュキエレのどちらかを加え、両サイドにエキサイティングなウィングバックを配置した、強固な3バックを築けるはずだったのだ。

    ところがチームにケガ人が続出し、ミュキエレとキンペンベの2人は早々にシーズン終了となった。ただし、セルヒオ・ラモスとマルキーニョスはここ数カ月、極めて絶好調である。おそらく、最も心配なのは、PSGが単純にロングボールでトップにボールを送るばかりで、スピードのないセンターバックではPSGより体力のあるチームに対抗し切れないことだ。それは根本的な誤りであり、3バックが防ぐべきはまさにこうしたゴールだ。

    事実、強力な守備的ミッドフィルダーのダニーロ・ペレイラがセンターバックとしてコンスタントに出場するなら、対処すべき守備の問題は1つか2つであろう。

  • Donnarumma 2022-23Getty

    頼りないドンナルンマ

    PSGがジャンルイジ・ドンナルンマを放出することはない。おそらく、ベンチに座らせておくこともないだろう。しかしながら、この長身のイタリア代表ゴールキーパーをめぐっては少々懸念があるかもしれない。ドンナルンマは今でもチームを鼓舞するセーブをすることができるが、今シーズンはミスがちなシュートストッパーである。

    実際、2022年のCLベスト16でのミスは容易に思い出すことができる。レアル・マドリー相手に2つの大きなミスを犯し、ファーストレグでの勝利を帳消しにする逆転負けを喫することになってしまった。それ以降のドンナルンマはまったく違う選手になってしまった。今年2月のバイエルン・ミュンヘン戦ではドンナルンマのミスでキングスレイ・コマンのゴールを許してしまったし、ここ数週間では、リーグ・アンの下位チームに対しても1つか2つミスを犯している。

    選手の配置の問題もある。PSGはボールキープを特徴としている。これにはもともと、正確なスロー、パンチ、パスができるゴールキーパーが必要だ。だが、ドンナルンマは特に優れたパスの出し手ではなく、ボールを外に出してプレーを切ることが度々ある。また、早くクリアしたいときにミスが多いことも厄介だ。それでもドンナルンマはまだ24歳で、改善の余地はある。ただ、今年のドンナルンマのミスは、高くつくことが多かった。

  • PSG ultras 2022-23Getty

    怒れるファンたち

    PSGのウルトラスは、10年にわたってPSGを保有するQSIと常に問題を起こしてきた。QSIは大金持ちではあるが、クラブを巨大なマーケティングに作り上げ、しばしばパリとのつながりを切るようなことをしてきた。

    ウルトラスはここ数年、さまざまな点で不満を表明してきており、かの有名な2017年の「カンプ・ノウの奇跡」の時には選手たちを大声で罵ったり、その2年後にマンチェスター・ユナイテッドに敗れてCLから敗退した時には練習グラウンドで暴れたりした。

    だが、今年の彼らの怒りはクラブ内で論争を巻き起こす人物たちに集中するようになっている。3月、ファンが初めてメッシにブーイングをし始めたのは、2023年に入ってから酷いパフォーマンスの連続だったことに怒ったからだ。

    それ以降ファンの不満は激しくなり、特にメッシがサウジアラビアに無許可で渡航し、1週間謹慎になった時はひどかった。5月初旬に最悪の事態になると、ファンたちはクラブの本部前に集まり、経営陣の辞任を要求した。別の一団もネイマールの自宅の外に集まり、ケガで出場できないネイマールを大声でなじった。

    まったく目も当てられない事態だ。

  • Christophe Galtier PSG Ligue 1Getty

    試練の監督

    シーズン前、クリストフ・ガルティエ監督の就任は意義深いものだと思われていた。リールとニースで監督をしたことのあるガルティエ監督は、2021年にリールをリーグ・アン優勝に導き、守備的な体制を基本にした手堅い戦略で名をあげた。守備がPSGの弱点であることは明らかであり、PSGのバックラインは穴だらけで不安定だった。

    最初のうちはうまくいった。ガルティエ監督は堅固な3-4-3システムを敷き、ネイマール、メッシ、エンバペの力を存分に引き出し、PSGのバックは比較的強くなった。だがケガの選手が出てきてエゴがはびこると、監督はおかしくなった。フォーメーションをいじるようになり、強い個性でピッチ外のことに口を出すようになった。マスコミ対応が下手なことも火に油を注いだ。

    ガルティエ監督が今後本当に解雇されるかどうかはわからないが、2月には永久に職を失う寸前だった。PSGはCLでバイエルン・ミュンヘンに敗れ、内紛に耐えていたドイツチームとの戦いに奮い立つことができなかった。この時点でガルティエ監督は勝つためにチームをまとめることができず、記者会見では選手たちに敗因を押し付けていた。

    堅物の監督は、管理不能な状況下で道を見失った。元々彼がコントロールできるチームではなかったのだ。

  • Vitinha PSG Lens 2022-23Getty Images

    選手獲得の失敗

    真面目な話、ユーゴ・エキティケの加入は良い考えだと誰が思ったのだろうか。ヴィティーニャは? レナト・サンチェスを自信をもって推した人はいるのか? ガルティエ監督には常に、やる気のないトップスリーを補完するためのハードワークが出来てフィジカルの強いミッドフィルダーが必要だが、質の高いプレーも必要だ。PSGは毎年CLに出場するチームであり、ほとんど底なしの財源を誇っている。ウルブスが契約を渋った選手と契約することはない。

    去年の夏、ケガがちなサンチェスや迫力にかけるヴィティーニャ、コンディション不良のファビアン・ルイスが加入してきた時、眉をひそめる向きもあった。ひとりひとりは素晴らしい選手たちだが、CLで戦うのに必要なレベルの選手ではない。

    他にも懐疑的な移籍はあった。エキティケとの契約は混乱を極めた。20歳のエキティケは10代の時はスタッド・ランスで奮闘し、先発した12試合で10ゴールを挙げてかなり将来有望だと思われている。だがPSGが必要としているのは得点が取れる背番号9の控えだ。エキティケはまだ若すぎるし、正直言ってまだそれほど良い選手ではない。

    そしてそれはまさにその通りだった。これらの契約はそれぞれ良い結果を出したときもあった。ファビアンは長期契約が正しいことを証明したと言ってもいいだろう。だが、昨年夏の契約は混乱していたし、今やさらに悪くなっているように見える。

  • PSG Luis Campos Kylian MbappéGetty Images

    誰もをひどく傷つけるカンポス

    ルイス・カンポスは面白い人物だ。ヨーロッパの才能ある選手を発掘し、移籍させることに長けている。ガルティエ監督とはリールで一緒に仕事をして成功した歴史もある。だから、ガルティエ監督がPSGの監督に就任した時、スポーツ・コンサルタントとして(スポーツディレクターではない)監督に合流したのは正しいことだった。

    だがカンポスとガルティエ監督は、より大きな舞台でともに仕事をする方法をまったくわかっていなかった。カンポスはマスコミの前でいつもガルティエ監督の悪口を言い、10月にはエンバペの移籍の噂は間違いだと言って、ガルティエ監督と大っぴらに対立した。つい最近も同じようなことがあり、記者会見でエンバペに「改心」を要求した。

    2人は更衣室で対立したとも報道されている。ガルティエ監督がこのチームを率いることは難しくなってきており、別のエゴが台頭しないようにすることは、問題を増やすだけである。

  • Mbappe-PSGGetty

    キリアンとPSG

    10月にレアル・マドリーへの移籍を要望したと報じられて以来、エンバペは公的にはそんなことは思っていないと否定し、ここ数カ月はお行儀良くしようとしてきた。エンバペはチームに残ると言ってファンたちの好感度を上げ、ピッチでのパフォーマンスも素晴らしく、PSGが最終的にリーグタイトルを獲得できた唯一の理由がエンバペのおかげだと言える。

    しかしながら、いくつか問題はある。マイルドな言い方をすれば、PSGは昨年の夏にエンバペとの契約交渉を特にうまくやったわけではない。前代未聞の選手の力に屈し、フランス代表のウィングを事実上のスポーツディレクターに起用し、ほとんどの決定を委ねた。その後、見事な交渉をしたかのように新しい契約を祝福した。

    予想通り、クラブがエンバペのいいようにされたのは明らかだ。同じことは4月、PSGがシーズンチケットの販売促進キャンペーンを展開した時にも起こった。映像の主役はエンバペで、メッシとネイマールはどこにもいなかった。エンバペはインスタグラムに怒りの投稿をしてすべてを台無しにした。これらは大きなことではないが、安定を求めるクラブにとって、ひとりの選手だけに光を当てるようなやり方は大惨事を招く。

  • Nasser Al-Khelaifi PSGGetty

    見えない未来

    ここに挙げる最後の問題は、次に何が起こるか誰にもわからないことだ。この点、メッシがチームを去るのは確かだ。クラブもファンもメッシには我慢の限界にきている。ネイマールも再び放出の可能性はあるが、彼の代わりを務められる選手を獲得できる保証はない。ガルティエ監督と言えばオーナーからの公的支援は曖昧で、監督の座が安泰かどうかの保証はまったくない。

    それでも、PSGはビッグ・サマーが来ると公言している。実際は尊重していないように見えるファイナンシャル・フェアプレー規則から解放され、何人かのビッグネームを獲得できそうなのだ。だが、正確なところPSGが何を欲しているのかがはっきりしない。

    ベルナルド・シウヴァには真剣に興味を示しており、シウヴァは攻撃的ミッドフィルダーとして賢い契約を交わすだろう。ランダル・コロ・ムアニにも関心があり、エンバペと組んで良い働きをする素晴らしい背番号9となれそうだ。だが、その他はすべてが未定だ。ガルティエ監督とカンポスは2人とも数週間後には解任されるかもしれないし、契約満了やレンタル移籍からの復帰も未解決である。

    明晰さは美徳である。ただ、PSGにはそれがない。