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イングランド女子の守護神メアリー・アープスの去就の行方は? マンチェスター・U残留の可能性を探る

3月に入り、マンチェスター・ユナイテッド女子チームの試合は非常に少ない。ずいぶん前に女子スーパーリーグのタイトル争いから脱落し、チャンピオンズリーグの出場権を獲得することもほとんど不可能に思える。初出場したヨーロッパの大会は予選ラウンド止まりで、コンチネンタル・カップも敗退した。残っているのはFAカップのみだが、準決勝の相手は強豪のチェルシー。早くも来シーズンへの期待を口にするファンもいる。

2024-25シーズンが近づく中で最大の疑問のひとつが、誰がクラブに残るかというものだ。マーク・スキナー監督との契約はこの夏までで、選手の多くもそうである。最も重要な選手、イングランド代表の背番号1メアリー・アープスもそうだ。30歳のアープスは昨年の夏、契約の最終年に入ったことでアーセナルが興味を示していた。ガナーズの名は今シーズンもずっと取りざたされてきた。それよりは緩いがパリ・サンジェルマンやバルセロナの名も挙がっている。

しかしながら、報道によるとアープスはマンチェスター・Uに残ることに前向きらしい。だが、チームにとって残念なシーズンが終わろうとしている今、赤い悪魔は本当に彼女を引き留めることができるのだろうか。

  • Marc Skinner Ella Toone Man Utd Women 2023-24Getty

    失望

    今シーズンがマンチェスター・Uにとって残念なシーズンだったことを隠すことは難しい。昨シーズン、赤い悪魔はチェルシーと熾烈なタイトル争いを繰り広げ、初めて女子のFAカップ決勝に進出し、女子チャンピオンズリーグにも初出場した。それ以上に成功するというのは非常に困難なことではあったが、今シーズンはWSLの「ビッグ3」にも手が届かない状態にある。

    リーグ戦残り6試合という段階で、チャンピオンズリーグの出場権を獲得する順位までは勝ち点差が6あり、負けと引き分けの数が勝ち数を上回っている。ウェストハムやリヴァプール相手に勝ち点を落とし、一番痛かったのはオールド・トラッフォードでマンチェスター・シティに負けたことだ。だが、厳しいシーズンを引き起こした結果はこの他にもある。

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  • Lucia Garcia Man Utd Women 2023-24Getty

    変化の夏となるか

    契約満了が近いスキナー監督がクラブに残るかどうかは大いに疑問視されており、チームを出ていくのは監督だけではなさそうだ。キャプテンのケイティ・ゼレムやルシア・ガルシア、ニキータ・パリス、レイチェル・ウィリアムズも、アープスとともにフリーエージェントになりそうである。来シーズンの監督が誰になるかわからない中、選手たちが出ていくのは驚くべきことではないが、これではチームの戦力ダウンは免れないだろう。

    その後、大きな変化が起こる夏となるかもしれないが、それによって赤い悪魔が今シーズンの不調から復活し、自信をもって新しいシーズンを迎えるようになるのは簡単ではない。ヴォルフスブルクにいた時はNo.2だったアープスだけが、他クラブも魅了される唯一の選手だとするならば、チームが過渡期もしくは再編期であるかもしれないことも、絶頂期を迎える彼女が去就を考慮する理由になるだろう。

  • Mary Earps FIFA BestGetty Images

    最高のひとり

    つまるところ、アープスはここ数年、世界最高のGKのひとりであることを証明してきた選手なのである。事実、彼女はFIFAの年に一度の授賞式で最高殊勲選手に2度選ばれており、イングランドの年度最優秀選手やスポーツ・パーソナリティ・オブ・ザ・イヤー、ワールドカップの最優秀GK賞など、数多くの個人賞を受賞している。

    30歳のアープスにとって、最高の栄誉を競うことができ、チャンピオンズリーグでのプレーを約束してくれるクラブに移籍できるチャンスは今後そう多くないだろう。キャリアの絶頂期にいるにも関わらず、彼女はまだチャンピオンズリーグに出られていない。

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  • Mary Earps Manchester United 2023-24Getty

    飛び交う噂

    では、彼女にどんな選択肢があるのか。GKが現状を変えるにはドミノ倒しが必要な場合がある。あるGKが出ていくと、そのクラブには代わりのGKが必要となり、大移動が起こることがあるのだ。この夏、契約満了となるGKは大勢いる。マンチェスター・Cのエリー・ローバック、オーストラリア代表のスター、マッケンジー・アーノルド、バルセロナのベテラン、サンドラ・パノスなどだ。メリーゴーラウンドのような状態になる可能性があるかもしれない。

    アーセナルはずいぶん前からアープスを欲しがっているし、イングランドの背番号1を獲得できなければ、彼女以外のターゲットを探し続けるよりも、他の選択肢としてアストン・ヴィラのダフネ・ファン・ドムセラールを考えるかもしれない。バルサやPSGについての噂によれば、とりわけバルサはローバックと強いつながりがあり、フランスの巨人はチーム内の非EU枠が限られているため、比較してアープスをどの程度重要視しているかは不明である。

    世界最高のGKのひとりがフリーで獲得できるとなれば当然、誰もが興味を抱く。だが、これで決まりという動きがないのも確かであり、そうなればマンチェスター・Uが彼女を手放さないですむ可能性もある。

  • Mary Earps Man Utd Women 2023-24Getty

    改善

    アープスがマンチェスター・Uに来て5年、常に栄冠に手が届くチームに本当の意味でなるには、まだまだやらなければならないことが数多くあるだろう。報道によると契約交渉は長引いている。

    INEOSの参画は事態を変えるだろうか。新しいオーナーはマンチェスター・Uを正しい方向に導けるのか。アープスが赤い悪魔に残ることを選べば、輝かしい未来が来ることを保証できるのか。

    アープスはマンチェスター・Uのファンと、良い関係を築いていることも確かだ。これまでのキャリアにおける最高の状態をマンチェスター・Uで満喫しているし、加入してから取り返しのつかない状態にはなっていない。ここでの未来を約束されれば、チームに残ってもいいと思うかもしれない。

  • Mary Earps England 2023Getty

    イングランドの背番号1

    アープスはマンチェスターに来てから、イングランド代表で頭角を現してきた。最近はクラブでレギュラーとして試合に出られる時間が非常に大事になってきており、イングランド代表の同僚の中にはクラブでの出場時間が短いためにイングランド代表に選ばれない選手もいる。

    アープスはマンチェスター・Uの先発メンバーに真っ先に名前があがる選手のひとりであり、レギュラーとしてプレーし、良いパフォーマンスをしている。それらすべてのおかげで、サリナ・ヴィーフマン監督が就任して以降、イングランド代表の背番号1をたやすくキープ出来ている。

    そのおかげで、女子EUROの制覇や第1回フィナリッシマでの優勝、女子ワールドカップの決勝進出など、大きな国際大会で成功を収めてきたとなれば、今度はクラブでも栄冠をもとめるのは普通のことだ。

  • Mary Earps Manchester UnitedGetty

    決断の時

    アープスのようにモチベーションの高い選手が、クラブでも代表でもトロフィーを掲げたいと思うのは当然のことだ。彼女はワールドクラスのGKであり、チャンピオンズリーグの舞台に立てないでいることは、彼女だけでなくマンチェスター・Uの他の選手たちにとってもフラストレーションの種である。不満があるというのではなく、世界一になりたいと願っているのだ。

    ここ数カ月、彼女自身が抱いている大きな疑問は、望むようなクラブレベルでの高みを目指すことができるかどうかということだろう。残念な今シーズンについて、マンチェスター・Uはどう答えを出すのか。女子チームを本当に前進させために、INEOSには何ができるだろうか。

    アープスとその才能をキープできれば、赤い悪魔は簡単に解決策を示せるだろう。だが、残念なシーズンが終わりを迎えつつある中、もっといいチームになれることをアープスに示さなければならない。

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