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マルティン・ウーデゴール低調の原因:心配なスタッツと姿勢&アーセナル上層部の「怠慢」

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「自分たちを哀れむのではなく、前に進み続けないと。まだ多くの試合が残っているし、進み続けなければならない。重要なのは次の試合に勝ち、そこから立て直すことだ」

マルティン・ウーデゴールはウェストハム戦(0-1)後、こう語った。結局首位リヴァプールがマンチェスター・シティを破ったため、勝ち点差は「11」まで広がることに。優勝争いにおいて大きな後退を強いられた。

このウェストハム戦、アーセナルは20本のシュートをわずか2本しか枠内に飛ばせていない。最後の25分間を10人でプレーしたとしても、得点期待値はあまりにも低く、まったくゴールを予感させることができなかった。確かにケガ人続出の問題があるとはいえ、根本的な何かが欠けている。

そして、その問題の中心にいるのがアーセナルのキャプテンだ。彼の輝きは、昨季と比べて半分にも満たない。ウェストハム戦ではそれが顕著だった。

  • Arsenal FC v West Ham United FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    タイトルレースは終了?

    リヴァプールが直近のアストン・ヴィラ戦を2-2と引き分け、アーセナルにとっては大チャンスだった。ウェストハムに勝てば5ポイント差まで詰め寄ることができ、さらに敵地での直接対決を残している。そして前節レスター戦では、途中出場から急遽ストライカーを務めたミケル・メリーノが2ゴールを叩き込むなど、チームに希望の光が見えていたところだった。

    しかし、その興奮はすぐに消えた。メリーノはCFとして奮闘したものの、褒められるポイントはそれだけだ。他の攻撃陣はあまりに消極的で、一対一を仕掛ける場面も乏しく、相手守備陣が構えるボックス内へ遠くからクロスを送ることに終止している。目的が明確になっていたウェストハムが勝利するのは、90分間を見れば妥当と思う人が大半だろう。

    これで1試合未消化ではあるが、首位リヴァプールとは11ポイント差に。「タイトルレースは終わった」と多くの人が話しているが、現状を見れば納得せざるを得ない。

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  • Arsenal FC v West Ham United FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    ウーデゴールの姿勢

    だからこそ、ウーデゴールのイマジネーションとスキルが必要だった。試合後に「相手に大きなプレッシャーをかけることができたが、ファイナルサードでの効率性、ラストパスやクロスが足りなかった。ボックス周辺ではもっとシャープにならないと」と話したが、それは彼自身の評価でもある。

    100分近くピッチに立つも、ボックス内でのタッチ数はわずか「3」。4つチャンスを作ったが、そのどれもが相手を脅かすようなものではなかった。シュート3本も枠を外れ、ゴールに近づくような場面はなし。そして気になったのは、チャンスシーンの多くで右サイドバックのユリエン・ティンバーにパスを送っていたこと。DFラインの背後に送り込むボールは1度成功したものの、彼が得意なプレーを見せたのはその1回だけだ。

    これまでのフットボール史の中で、偉大なクリエイターは相手が守備を徹底的に固めた中でも90分間のうちに「穴」を見つけて攻略してきた。しかし、この日のウーデゴールはそのチャレンジすらしていないように思えるほど消極的だったのだ。

  • Leicester City FC v Arsenal FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    昨季との比較

    『FBRef』で、昨季と今季の90分辺りのスタッツを比較してみよう。

    2023-24シーズン

    2024-25シーズン

    ゴール

    0.23

    0.12

    ゴール期待値

    0.22

    0.20

    シュート(枠内)

    2.19

    1.66

    アシスト

    0.29

    0.18

    アシスト期待値

    0.28

    0.18

    キーパス

    2.97

    2.33

    シュートチャンス創出

    6.41

    4.66

    ゴールチャンス創出

    0.67

    0.55

    パス成功数(%)

    49.3 (84.3%)

    46.7 (82.8)

    ボックス内へのパス

    3.79

    3.44

    ファイナルサードでのパス

    4.66

    5.34

    そう、ファイナルサードへのパスを除いてすべてが低下している。ここから、彼はより深い位置でプレーしていることがわかるはずだ。だが、アーセナルが求めているのはファイナルサードで局面を変えられる選手である。それこそがウーデゴールであったはずだが、今季はゴールからより遠い位置でのプレーにとどまっている。

  • Martin Odegaard injuryGetty Images

    不調の要因は…

    では、なぜウーデゴールのパフォーマンスは大きく低下したのか? そして、それは一時的なものなのか? それとも選手としてのピークを過ぎてしまったのだろうか?

    大半の選手は、フォームの低下の主な要因としてケガを挙げる。ウーデゴールも9月のノルウェー代表活動中に足首を痛め、アーセナルで12試合を欠場した。その後チームは彼の不在を痛感することとなったが、11月のチェルシー戦(1-1)で復活をアピールし、ノッティンガム・フォレスト戦(3-0)では昨季のようにチームを指揮。ケガの影響はあまり感じさせなかった。

    しかし、やはり肉体的な負荷は大きいのかもしれない。ケガから復帰後、プレミアリーグ16試合中14試合に先発し、さらにチャンピオンズリーグ、FAカップ、リーグカップで7試合に出場している。これはアーセナルの主力選手全体に言えることだが、明らかに身体的な負荷が高い状況が続いている。

    そして、戦術的な問題もある。ウーデゴールがアーセナルの要であることは明らかであり、だからこそ相手チームは徹底的に彼を試合から追い出すために戦略を練ってくる。そして、右足を巧みに使えるタイプの選手ではなく、フィジカル的な強度もない。また、ケヴィン・デ・ブライネやブルーノ・フェルナンデスのようなミドルもない。つまり、自陣ボックスから遠ざければ脅威は少ないということだ。彼のプレーエリアが下がっていることは、そういうことなのだろう。

    こうして、アーセナルの攻撃には脅威が消えた。90分あたりのシュート数は全体の8位(13.8)。昨季は3位(17.0)だったが、大きく低下している。プレミアリーグで2位につけるチームのスタッツとは思えないだろう。

  • Sporting Clube de Portugal v Arsenal FC - UEFA Champions League 2024/25 League Phase MD5Getty Images Sport

    ブカヨ・サカという存在

    もちろん、アーセナルにとって最大の問題はケガ人の続出だ。チーム強化担当だけでなく、うまくスカッド全体を使えていないミケル・アルテタ監督も責任を問われるべきだろう。

    特に、チームのエースだったブカヨ・サカの長期離脱は致命的な影響を与えている。右サイドでの彼の存在感は世界でも屈指であり、厳しい局面でもそのドリブルで常に突破口をこじ開けてきた。ウーデゴールが消極的になっているのも、近くにサカという最大の武器がいないことが原因の1つと言える。

    もしこの数カ月間でサカが離脱していなかったら、アーセナルは遥かに良い状態にあったはずだ。リヴァプールとのポイント差だって縮められていたのかもしれない。結局、今のアーセナルは主力選手への依存度が高すぎるという現実も明らかになっている。

  • Arsenal FC v Manchester City FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    5年連続の無冠

    すでに首位とは11ポイント差、国内カップ戦2つもすでに敗退、チャンピオンズリーグではPSVとのラウンド16を突破できたとしても、準々決勝ではレアル・マドリーvsアトレティコ・マドリーの勝者と激突することになる。

    アーセナルは、5年連続無冠に終わる可能性が非常に高い。過去8年間のタイトルはFAカップの1つのみと、過去数年間でプレミアリーグ屈指のパフォーマンスを見せてきたチームにとっては、あまりにも乏しい結果だ。

    サイクルの終わりはいつ来るのか、誰にも予想はできない。おそらく来季も優勝争いの有力候補だが、今季のようにケガ人続出に見舞われるかもしれないし、主力選手がタイトルを求めて移籍するかもしれない。苦しんだライバルチームが飛躍するかもしれない。そう、アーセナルに残された時間は多くない。

  • FBL-ENG-PR-ARSENAL-WEST HAMAFP

    無視できない現状

    チーム全体の改革が必要なわけではないだろうが、明らかに攻撃陣の刷新は必要だ。昨季の終盤が良かったため、クラブは夏にアタッカーを補強しないという誤った判断を下した。1月にも「長期的な貢献」を最優先にしたため、現チームの選手たちは過剰な負荷によって倒れてしまった。これ以上、そのエリアを無視することはできない。

    ファンが望むのはアレクサンデル・イサクだが、ニューカッスルの1億ユーロ以上の要求額の前では引き下がらざるを得ない可能性が高い。もう1人の候補はベンヤミン・シェシュコだが、「ワールドクラスのストライカー」という意味ではインパクトは薄い。この半年の間に、上層部とアルテタはより最適な候補に、より最適な金額を支払わなければならない。タイトル獲得が必須のチームに、それにふさわしいストライカーは必ず必要になる。

    アーセナルのここ数カ月の衰退は、今シーズンを棒に振ってしまいかねないものだ。そしてそれを改善するためのチャンスも逃した。アルテタはすでに自分を責めていたが、同時にピッチ内での責任を負うキャプテンも自分自身を見つめ直さなければならないだろう。