Marc Bernal NXGN GFXGetty/GOAL

【NXGN】マルク・ベルナル:バルセロナ屈指の才能“NEXT ブスケツ”が大ケガから復活のシーズンへ

自クラブの育成組織から優秀な若手選手を輩出し、トップチームへスムーズに定着させるという能力において、バルセロナに適うクラブはない。振り返ればリオネル・メッシやアンドレス・イニエスタもそうだし、現チーム最大のスターであるラミン・ヤマルもその1人だ。財政的に難しい状況でも、ラ・マシア出身の選手たちが何度もチームを救っている。

そしてバルセロナのファンは、新たな若き才能の復帰が迫っていることにワクワクしているに違いない。昨季大ブレイクが期待されたものの、不運にも前十字靭帯断裂の重傷でシーズンを棒に振ったマルク・ベルナルの完全復活は間近に迫っている。

今回は、バルセロナの次世代を担う18歳MFを紹介する。

  • すべての始まり

    カタルーニャ州ベルガ(カンプ・ノウから数マイル)で生まれ育ち、6歳になる頃にはラ・マシアに所属したベルナル。『ムンド・デポルティーボ』によると、バルセロナのスタッフ陣は彼の左足の技術に魅了されたという。10歳以下のカテゴリーの大会に飛び級で参加すると、決勝戦ではエスパニョール相手にハットトリックを達成。大会最優秀選手に選出された。そしてそのまま育成組織を駆け上がり、ついにトップチームデビューを飾っている。

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  • Marc BernalGetty Images

    ブレイクのきっかけ

    16歳の誕生日を迎えた直後、ジョアン・ラポルタ会長は中盤の補強を模索する中で、当時の指揮官チャビ・エルナンデスにベルナルの招集を進めている。

    「チャビは中盤の強化を考えている。だが一部の選択肢は現実的ではなく、間違いを犯すかもしれない。ラ・マシアの成長を阻害することにもなるんだ。マルク・カサド、パウ・プリム、ジェラール・エルナンデス、そしてマルク・ベルナルがいる。まずは自チームの選手を見極める必要があるんだ」

    この発言自体は、単にラポルタが補強資金を渋っただけかもしれない。だが、この会長は常にラ・マシアを高く評価してきた。しかし、結局ベルナルはチャビの下ではトップチームで出場することができず。2024年夏のハンジ・フリックの就任を待たなければならなかった。彼のデビューは2024年8月17日、バレンシア戦(2-1)で先発に抜擢されている。

    いきなり輝きを放ったベルナルは、試合後「子供の頃から夢見てきた特別な瞬間だよ。ラミンやクバルシと一緒にプレーしてきたことがすべてを特別にしてくれた。彼らはピッチ上でも助けてくれるしね。(先発起用は)予想していなかったし、一生忘れない。みんなが助けてくれて、緊張しないようにも言ってくれた。17歳をデビューさせるのは簡単じゃないはずだし、監督には感謝したいよ」と振り返っている。

  • Rayo Vallecano v FC Barcelona  - La Liga EA SportsGetty Images Sport

    悲劇的なケガを超えて

    しかし、そんなベルナルを悲劇が襲う。素晴らしいデビュー戦の後、アトレティック・クルブ戦やラージョ・バジェカーノ戦でも印象的プレーを披露した。しかしこのラージョ戦の終盤、膝を抱えて倒れ込むと、前十字靭帯断裂と半月板損傷が判明。強制的にシーズンが終了してしまう。クラブはラ・リーガに加えてコパ・デル・レイ、スーペルコパ・デ・エスパーニャとスペイン国内のタイトルをすべて手にしたが、ベルナルは悔しい思いを抱えていたに違いない。

    そんな18歳だが、5月にクラブ公式チャンネルで「多くことを学んだよ。特に何かがうまくいかない時でも強くあり続け、過剰に考えすぎないことだね。正直、家にいて1日中寝ていたいと思った瞬間もあったんだ」と離脱期間を振り返っている。

    若手選手にとってはキャリアを棒に振りかねない大ケガだ。しかし彼は、この期間を肉体改造に使うことで選手としての成長に取り組んだ。昨年8月にプロデビューを飾った時は線の細い印象だったが、練習に復帰した時には遥かに体が大きくなっている。よりフィジカル面が求められる現代フットボールへ適応するため、必要な能力を着実に身に着けているようだ。

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    最大の強み

    ラ・マシア出身の守備的MFとして、彼はDFラインの前でボールを回収することはもちろんだが、やはりその優れたプレービジョンが最大の武器だ。メトロノームのような正確さとボールキープの技術はチームの中でも傑出している。また18歳にして身長は190cmを超え、懐の深さも大きな特徴だ。これにフィジカル面がついてくれば、将来的に世界最高レベルのアンカーに成長できるだろう。バルセロナはU-6からトップチームまで、男女すべてのカテゴリーで明確な哲学を貫いている。そこで育ったベルナルは、まさに“バルセロナ産のピボーテ”だ。

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    改善すべき点は?

    そんな才能あふれるベルナルだが、やはり最大の心配はこの大ケガからどう復帰するかだ。前十字靭帯断裂は選手のキャリアを左右するほどの重傷である。仮にこのまま復帰できたとしても、いきなりトップリーグでフル稼働は厳しいだろう。どのような環境でプレーするにせよ、プレッシャーの少ない試合・時間で出場を重ねていき、徐々に体を慣らしていくしかないはずだ。

    一方で技術的な面で見ると、彼は成長するにつれて得点感覚をやや失いつつあること。2023-24シーズン、スペイン3部のバルセロナ・アトレティコでも27試合でわずか2ゴールに終わった。強力なミドルシュートを打つことはできるが、この精度とタイミングを向上させること、よりファイナルフェーズに効率的に絡んでいくことが求められていくだろう。

  • RCD Espanyol v FC Barcelona - LaLiga SantanderGetty Images Sport

    “NEXT ブスケツ”へ

    スペイン生まれの守備的MFで、バルセロナでプレーする選手であれば、当然ながらセルヒオ・ブスケツとの比較は避けられない。だが彼には、そんなレジェンドを彷彿とさせる点がいくつもある。ゲーム理解力やボールキープ技術は、若きブスケツを上回るほどだ。『SPORT』のインタビューで、ベルナルはあこがれの選手としてそんなブスケツとポール・ポグバを挙げている。才能は彼らに十分匹敵するため、あとはトップレベルでの出場を重ねていくだけだろう。

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    新シーズンの目標は…

    そんな期待の18歳について、彼が4歳の時に初めて所属したCEベルガの元スポーツ顧問は「彼の名前はスペイン中で話題になっているが、一方で毎日のようにベルガで見かけるよ。そして、これまで通りのマルクのままだ」と語っている。周囲の期待にも惑わされず、地元を愛する素朴な少年のままであり、地に足をつけた状態のままであるようだ。これは、スター選手へと成長する上で非常に重要な要素である。

    バルセロナとしては、悲惨な大ケガを負ってから1年後の8月末までに復帰することを期待している。そしてあの大ケガが、彼の長く輝かしいキャリアにおける唯一の躓きであることを願っているはずだ。もちろん、復帰直後にいきなり大活躍するのが望ましい。だが、彼はまだ18歳。まったく焦る必要はない。本人も、今季の目標を「良い状態で、自信を持って復帰すること」と語っている。

    この才能あふれる18歳の復帰をバルセロナファンは待ち望んでいるだろう。まずは余計なプレッシャーをかけずに、長期的な目線で彼の成長を願って欲しいばかりである。