このページにはアフィリエイト リンクが含まれています。提供されたリンクを通じて購入すると、手数料が発生する場合があります。
Pep Guardiola Manchester City 2024Getty

マンチェスター・シティが“不振”から抜け出せない4つの理由:ロドリ不在?ハーランド?苦しむ王者の問題を西紙副編集長が分析

CL・EL2025-26配信!

WOWOWオンデマンド

WOWOWでCL・ELを独占生中継!

この熱狂に乗り遅れるな。 

オンデマンドなら今すぐ視聴可能

WOWOWオンデマンド

月額2,530円(税込)

今すぐチェック

マンチェスター・シティとジョゼップ・グアルディオラ監督にとって、2024-25シーズンはある意味で忘れられないものになっているだろう。

昨季プレミアリーグ史上初の4連覇を達成、王者として挑んだ今季も序盤は堂々たる戦いで公式戦13試合無敗(10勝3分け)と素晴らしいスタートを切った。しかし、10月末からはペップの指導者キャリア初の5連敗を経験すると、以降も深刻な不振は続き、13試合で9敗(1勝3分け)とかつてないほどの危機に立たされていた。昨年末からは結果がついてきているとはいえ、昨季までシティのような支配力は発揮できないでいる。

その不振はチャンピオンズリーグ(CL)にも及んでおり、リーグフェーズ6試合で2勝2分け2敗、前節終了時点で22位。なんとかプレーオフ圏内にはとどまっているものの、残り2試合の結果次第では敗退も十分に考えられる。そして22日に迎えるのは、25位と同じく敗退危機に瀕するフランスの強豪パリ・サンジェルマン(PSG)だ。両チームにとって、絶対に勝利が必要な大一番となる。

リーグフェーズ屈指のビッグマッチを前に、今回は改めてシティが抱える問題を分析。スペイン大手紙『as』の副編集長は「出口がまだ見つかっていない」と指摘する理由を紐解いていく。

文=ハビ・シジェス/スペイン紙『as』副編集長

翻訳=江間慎一郎


  • FBL-ENG-PR-IPSWICH-MAN CITYAFP

    前例のない不振

    ジョゼップ・グアルディオラのキャリアにおいて前例のないことだ。

    そもそも、ペップほどフットボール界の頂点に長く君臨してきた人物はいなかった。いや、彼はそれだけでなく、比類のない美しいフットボールを絶え間なく実践しながら、頂に立ち続けていたのである。

    しかし現在、私たちはこれまでとはまったく違うペップと、彼が率いるマンチェスター・シティを目にしている。シティがこのまま沈んでいくのか、それとも浮上するのかどうか……それはもちろん、ペップ次第にほかならない。

    そして、私たちは知っているのだ。このカタルーニャ人指揮官には、危機を脱するためだけの意思と能力が備わっていることを。彼がこれまで描いてきた軌跡は、どうしたってフロックになり得ないのだから。

  • 広告
  • Rodri Manchester City Arsenal Premier League 2024-25Getty

    「ロドリ」という存在

    どん底まで落ちた今季のペップ・シティが、まだ完全に上向いていないのは確かだ。彼らは今季ここまでに犯してきたミスを修正し切れていない。ミスの種類については、短期間では解決できないもののほか、単純に細部を直せばいいだけのものもある。とにかく、シティがここから立ち直るためには、自分たちに一体何が起きているのかを理解しなくてはならない。無論、グアルディオラはそのことを分かっている。何をしたってどうにもならないのが、長期離脱を強いられたロドリの穴埋めであることも……。

    ロドリの離脱は、シティのありとあらゆる面に深刻な影響を与えた。このスペイン人MFはピッチ上に移されたペップの脳のコピーであり、その類い稀な戦術理解力でシティの守りと攻めを同時に成り立たせていた。

    ロドリはボール保持時にビルドアップの中心となり、相手のプレスを引きつけながら的確な配球で攻撃の流れを生み出した。GK、DF、MF、FWの全ラインをつなぎ、ポゼッションにボールをつなぐだけではない確固たる意味を与えられたスペイン人MFは、ペップ・シティにとって失うことのできない唯一無二の選手だったと言って差し支えない。

    シティはロドリがいたからこそボールを持ちながら攻撃を仕掛け、ボールを持ちながら守ることができた。フットボールには「ボールを失うときには、どのように失うかに注意しなければならない」という基本原則がある。ボールを奪われたときにポジショニングが乱れていれば、そこを突かれて失点の危機を迎えてしまうためだが、シティはロドリが全体のポジショニングを把握することで構造的安定を担保していた。彼がいれば攻撃をしっかりとした形で終えられ、たとえボールを失っても、すぐさま奪い返せたのだ。

    ▶CL・ELリーグフェーズの注目試合と決勝トーナメント全試合をWOWOWで楽しもう!

  • Brentford FC v Manchester City FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    構造的な問題

    翻ってロドリのいないシティで、同じ現象は起こるはずがない。今のシティは相手チームに致死的なカウンターを許し続けてしまっている。ロドリが与える秩序は、マテオ・コバチッチがもたらす混乱と対をなしているかのようだ。

    クロアチア人MFが現状の全責任を背負う必要などまったくないが、彼にチームをオーガナイズする適正がないのは明白である。ゲームメーカーとしての物差しで言えば、コバチッチの視野は狭く、ドリブルを多用し過ぎるきらいがあり、ライン間にパスを通す能力も低い。そのためにシティは攻撃の厚みを失い、見え透いたプレーを繰り返すようになった。中盤の選手たちはライン間で適切なポジショニングを取れておらず、相手チームは中央のレーンを簡単に封じてしまえる。

    そして、ベルナルド・シウバ、ケヴィン・デ・ブライネ、イルカイ・ギュンドアン、フィル・フォーデンのプレーの質は全盛期からは程遠く、何人かに関してはもう復活は見込めないと思えるレベルだ。現在のシティの攻撃は縦への推進力がなく、深みを取れていないが、そもそもそうするための動きすら確認できない。

    加えて、サイドの使い方に関しても、じつに中途半端だ。サビーニョが成長してはいるものの、チームとしてドリブル突破やサイドバックのオーバーラップによってサイドで優位性をつくる気がなく、相手は横に広がることなく中央の守りだけ固めればいい状況となっている。かつてのシティはサイドを攻めることで中央を突き、中央を攻めることでサイドを突いていたのに……。この構造的な問題が、シティの攻撃を停滞させているわけだ。

  • Erling Haaland Champions LeagueGetty

    ハーランド問題

    そして、その次にあるのがアーリング・ハーランドの問題である。

    シティの得点力はノルウェー人FWに大きく依存しているが、彼がペップのプレーシステムにはまっているとは言い難い。ペップが率いるチームのストライカーは、相手DFを引きつけて、味方のためのスペースを生み出さなくてはいけないはず。しかし、ハーランドの動きはチーム全体と調和しておらず、ボールを扱う技術も十分ではない。彼は前線で明らかに孤立しており、その重要性はペナルティーエリア内だけに限定されている。

    ハーランドがチーム全体のプレーに関与しなければ、シティの攻撃が多様性や意外性を手にすることはないだろう。

    ▶CL・ELリーグフェーズの注目試合と決勝トーナメント全試合をWOWOWで楽しもう!

  • Newcastle United FC v Manchester City FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    メンタリティ

    グアルディオラはシティを再び浮き上がらせるため、可能な限りのアプローチを行なっている。ここ最近は、ボールを失うリスクを引き下げるため、ポゼッション時のフォーメーションを1-3-1-5-1から1-3-4-3に変更。コバチッチの横にリコ・ルイスを置いて補完関係を構築しようとしたが、しかしポジティブな手応えはまだ得られていない。

    加えて、現在のシティはDFラインのパフォーマンスが目も当てられない状況だ。ルベン・ディアスとジョン・ストーンズが負傷した影響は大きく、その堅牢だった守りに大きな亀裂が走った。ブレンフォード戦(プレミアリーグ第21節:2-2)でもそうだったように、ペナルティーエリア内での守備はあまりにお粗末である。そうした状況でポゼッションがうまく機能しなければ、失点の確率は大きく上昇してしまう。

    相手のカウンターを簡単に許し、ハイプレスで連動がうまくいかず、弱点となるエリアを突かれ、後退守備が後手に回る……。以上はチーム全体の問題となるが、サイドバック&センターバック間に空いたスペース、緩慢過ぎるマーク、デュエルでの脆弱さは4バックだけが抱えている問題だ。退団が近いとされるカイル・ウォーカーをはじめとして、シティのDFラインはあまりに頼りなく、加えてGK2人(エデルソン&シュテファン・オルテガ)も信頼に足る存在ではない。

    以上のピッチ上で表れている現象に加えて、精神的なことにも触れなくてはならないだろう。シティは敗戦を恐れるあまりパニック状態に陥り、身動きが取れなくなっている。フェイエノールト(CLリーグフェーズ第5節:3-3)&マンチェスター・ユナイテッド戦(プレミアリーグ第16節:1-2)で顕著だったが、ネガティブな流れがチームの精神状態に影響を与え、彼らのリアクションをひどく鈍らせているのだ。

  • Manchester City FC v Everton FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    PSGとの大一番へ…

    この大一番前、ペップは会見で敗退の可能性について問われ「どうなるかはこれからだが、インテル、ユヴェントス、PSGといった強豪と対戦すれば、最終的にはこういうことが起きる可能性はある」と前置きしつつ、勝てなかった3試合(スポルティング:1-4、フェイエノールト:3-3、ユヴェントス:0-2)の相手がいかに厳しかったかを強調。そしてリーグフェーズ制への移行に「誰にとっても新しいことだ。明日は両チームにとって本当に重要な試合だが、数日後にはホームでもう1試合ある」と答えた。この試合に集まりすぎる注目を避ける狙いがあったのかもしれないが、今の不安定なチーム状況を表しているかのような言葉とも捉えることができる。築き上げてきた偉大なキャリアで初めて経験するこの状況に、まだ光を見いだせていないのかもしれない。

    グアルディオラにとっては前代未聞の事態……しかし彼は立ち止まることなく、迷路からの出口を探し続けている。革新と完璧主義において、ペップの右に出る者はいない。だからこそ彼への信頼を失ってはいけないはずだ……とはいえ、出口がまだ見つかっていない中で迎えるPSGとの試合が、状況をさらに悪化させる可能性だって否定はできないが。

    ペップとシティは、とにかくあがき続けなければならない。試行錯誤を繰り返し、繰り返し、また繰り返し、彼らしい執念の果てに光は見出されるのだ。


0