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チェルシーvsリヴァプールの「勝者」と「敗者」:18歳のヒーロー誕生!優勝争いの主導権はアーセナルに

プレミアリーグ第7節でも最も注目を集めたビッグマッチ、チェルシー対リヴァプール。スタンフォード・ブリッジで行われたクラブワールドカップ王者とプレミアリーグ王者による一戦だが、後半アディショナルタイムの劇的な決勝点でチェルシーに2-1で軍配が上がった。

そしてこの結果が両チーム、ひいてはプレミアリーグ全体に与える影響を分析する。

文=ショーン・ウォルシュ

  • Chelsea v Liverpool - Premier LeagueGetty Images Sport

    勝者:エステバン・ウィリアン

    まずは試合を決めた男を称えるべきだ。ブラジル代表にも名を連ねるエステバンは、決して18歳には見えないような成熟したプレーを披露し続けている。スタンフォード・ブリッジでレギュラーを確保するのは間近だろう。

    1-1の拮抗した中で75分に出場したエステバンは、スタジアム全体にエネルギーをもたらした。彼が触れる度にスタンドは沸き上がり、何かを起こしてくれると確信していたようだ。そしてエンソ・フェルナンデスのポスト直撃弾を導くだけでなく、見事なフィニッシュで自身の“リサイタル”を締めくくった。

    エステバンはスタンフォード・ブリッジの熱気を全身で感じ取り、称賛の声すべてを浴び続けた。プレミアリーグという世界最高峰の舞台で、途中出場からすべてをひっくり返す10代など、世界にほとんどいない。チェルシーに彼の時代が訪れる日もすぐそこかもしれない。

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    敗者:アルネ・スロット

    しかし、チェルシーが試合の流れを再び掴めたのは、ピッチ内外でリヴァプールのミスが続いたことが主な理由だ。4億ポンドを超える超大型補強は、チームが強みとしていた組織力とバランス感覚を失わせているのかもしれない。

    当然ながらアルネ・スロットには時間が必要だ。しかし、彼が就任初年度で早くから見せた安定感と現実的な采配は、今季ほとんど見られていない。スロット最大の強みは、現有戦力に応じて試合中に柔軟で賢明な判断を下せることにあった。だが、世界屈指のスカッドを手にしたことで、そのバランスを見いだせないでいる。試合終盤の4バック(ソボスライ、フラーフェンベルフ、ファン・ダイク、ロバートソン)は、明らかに歪だ。

    試合後、スロットは「試合を支配していたが、最後の10~15分は一進一退の展開だった。わずかな差が、現時点で我々に有利に働いていない。こうしたわずかな差に頼らないように、もっと努力しなければならない」と語っている。現在のチームはあまりにも緩く、自分たちの運命を掌握できていない。いち早くバランスを見つけなければ、この状況を抜け出すことはできないだろう。

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    勝者:エンツォ・マレスカ

    エンツォ・マレスカにとって、この勝利は今シーズンだけでなく、監督キャリアにとっても非常に重要な勝利だった。一部では最近の結果によって進退も騒がれていた。もちろん早期解任など起こり得ないだろうが、こうやってビッグマッチで自らを証明することは多くの意味で重要になる。

    コール・パーマーやレヴィ・コルウィルといった主力を欠き、試合中にも好プレーを見せていたセンターバックコンビも失った。若きチームが一気に崩れてもおかしくはない。しかし、選手たちは失点から怒涛の反撃を見せている。夏にタイトルを獲得したことで自信を深めていることもあるが、それを勢いづかせたのはマレスカの交代策だ。エステバンがその証明であり、歓喜をもたらしたのは彼の采配である。

    退席処分によって試合後のメディア対応には登場しなかったが、この劇的な勝利に満面の笑みを浮かべていることは間違いない。ジョゼ・モウリーニョを思わせるセレブレーションは、サポーターの心を改めて掴んだだろう。

  • Chelsea v Liverpool - Premier LeagueGetty Images Sport

    敗者:モハメド・サラー

    プレミアリーグ6試合連続でオープンプレーからのゴールなし。彼という選手の基準から考えれば、キャリア最大の不調と言えるかもしれない。昨季の輝きは失われ、予測不可能で大胆なプレーも消えてしまった。若きエステバンとの対比は、みているものに様々な感情を抱かせている。

    前半はほとんど試合に関与できず、後半もチームメイトのお膳立てをことごとくふいにしてしまった。ボールタッチやキックのフィーリングは悪く、スペースを得てもその判断の悪さからすぐに相手に囲まれている。残念ながら、このビッグマッチでの敗戦の責任の一部は彼にあるだろう。

    サラーの調子がシーズン序盤に上がらないことは、決して珍しいことではない。しかし33歳という年齢と、過去数年間の出場記録を見れば、以前のようなフォームを取り戻すのはこれまで以上に困難な挑戦になりそうだ。

  • Florian WirtzGetty Images

    敗者:フロリアン・ヴィルツ

    レヴァークーゼンでの過去2シーズン、二桁ゴールに二桁アシストと驚異的なパフォーマンスを披露していたヴィルツ。しかしリヴァプール加入後、9試合でゴールもアシストもなし。プレミアリーグという厳しい環境で、明らかに自身を失っている。ピッチのどのエリアに入ればいいか迷いが感じられ、その迷いから1つ1つのプレー精度も著しく低下している。

    確かに、46分に彼がお膳立てした決定機をサラーが決めていれば、話は全く変わっていただろう。だがその1プレーに留まるのではなく、ピッチの反対側でエステバンが見せたような、試合の流れを決定的に左右する存在でなければいけない。リヴァプールはそれを期待して大金を支払っている。現時点では、その移籍金を揶揄されても反論できない状況だ。

    ヴィルツが目に見える結果でその貢献度を示せない限り、彼への重圧は高まり続けるだろう。リヴァプールが3連敗を喫した今、彼へ疑問が投げかけられるのは当然である。

  • FBL-ENG-PR-ARSENAL-WEST HAMAFP

    勝者:アーセナル

    土曜日のランチタイムキックオフでウェストハムを危なげなく2-0で下し、順位表のトップに躍り出たアーセナル。8月末にリヴァプールとの直接対決を落として以降、厳しい相手が続いたにも関わらず、プレミアリーグで3勝1分け無敗と素晴らしい結果を掴んだ。

    現時点でプレミアリーグ優勝争いについて予想するのは時期尚早だ。だが、今のアーセナルが見せる組織力と成熟度、そしてスカッド全体を活用する能力は、リヴァプールを遥かに凌駕している。これまで欠けていた、タイトルを掴むチームの「自信」と「オーラ」も感じられる。この序盤戦の主導権を握っているのは、ノースロンドンのチームだ。

    一方のリヴァプールは、超大型補強の弊害が露呈している状況だ。彼らが連覇するためには、自らのアイデンティティを取り戻さなければならない。まだポイント差はたった「1」であり、1試合毎に順位が入れ替わることもあるだろう。だが、楽観視は決してできない状況だ。