文=ショーン・ウォルシュ
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Getty Images Sportポステコグルーの時間はもう…
2023年夏、トッテナムの指揮を執ったアンジェ・ポステコグルーはプレミアリーグ初挑戦ながら最初の10試合を無敗で駆け抜け、瞬く間にイングランドのフットボールファンを魅了した。だが2025年夏、ノッティンガム・フォレストでは7試合勝利なし。早くも解任危機に立たされている。世界各国で結果を残してきた指揮官と、昨季躍進を見せたフォレスト、なぜこのような状況に陥ってしまったのだろうか?
『FBRef』で昨季のフォレストのスタッツを確認してみると、ゴール期待値と失点期待値の差(EBG)は「-3.4」。これはプレミアリーグ13位の数字だ。実際の順位よりも6つ低いことになる。これだけを見ると、過大評価だったのかもしれない。しかし、ヌーノ体制のすべてを数字で測ることは不可能だ。おそらく、昨季はリーグ全体で最も堅守かつタフなチームだった。そこにモーガン・ギブス=ホワイトのチャンスメイクとクリス・ウッドの決定力が加わって、どんなチームをも苦しめている。
今季は頼みの綱だったギブス=ホワイトとウッドも苦戦し、負傷者続出でDFラインは乱れている。だが、問題はさらに根深いところにありそうだ。
昨季のホーム最終戦でレスターと2-2で引き分けた後、オーナーであるエヴァンゲロス・マリナキスはピッチまで降りてヌーノに激怒し、物議を醸した。後に釈明したものの、ヌーノが8月にオーナーとの関係悪化を認めたことで、クラブはさらに混乱に陥った。そして結局、選手・ファンに支持されていたヌーノを解任。この決断は不可解な点が多い。
マリナキスはポステコグルーと良好な関係を築いており、夏には夕食をともにしている。もしこれが以前から計画されていたのであれば、移籍市場閉幕後に任命するのはまったく理にかなっていない。こうしたピッチ外の決断が悪影響を及ぼし、昨季抜群の結束力を誇ったチームは見る影もない。
そして報道によると、フォレストが18日のチェルシー戦に敗れた場合、ポステコグルーは解任されるという。後任最有力候補は、ショーン・ダイチ。またも180度の方向転換だ。誰か説明してほしい……。
AFPカイセドはプレミアリーグ最高のMF?
「モイセス・カイセドはプレミアリーグ最高のMFなのか?」、私の答えは「違う」だ。だがこの議論は、今季の彼のパフォーマンスのおかげで非常に興味深いものとなっている。
2023年夏にブライトンから1億1500万ポンドで移籍したエクアドル代表は、スタンフォード・ブリッジで立ち位置を確立するまで時間を要した。その理由は、彼に課せられた重圧にあり、クラブが推進した行き当たりばったりの補強計画にあり、彼の若さにあった。だが移籍から2年が経った今、カイセドを必要としないサポーターはいないはずだ。1億1500万ポンドという移籍金だって安く感じている人も多いかもしれない。すでに2つのタイトル獲得に導き、チャンピオンズリーグ復帰も彼なしではあり得なかった。
真のワールドクラスのMFは、自身の仕事を最高レベルでこなしたうえで、定期的にゴールやアシストという結果でチームに貢献する。ジュード・ベリンガムやペドリ、ロドリやデクラン・ライス、ヴィティーニャといった選手たちがそうだろう。
では、今季のカイセドは? プレミアリーグ7試合ですでに3ゴール。決して悪くない数字だ。特にリヴァプール戦の衝撃的なゴールは、彼が1つ上のレベルに到達することを予感させるものであった。このまま結果を残し続ければ、本当にプレミアリーグ最高のMFになれるかもしれない。
Getty Images Sport“ハーランド 2.0”
マンチェスター・シティは現在5位につけているが、首位とはわずか3ポイント差。今季の優勝を期待する声が高まり始めたのも当然だろう。なにせ彼らには、“ハーランド 2.0”がいるからだ。クラブと代表チーム合わせて、12試合で21ゴール。これまでも異次元だったが、もはや止めるすべはないのかもしれない。
今季の彼が好調な理由は、プレーの幅が広がったからだろう。今の彼は典型的なボックスストライカーではない。最前線から下がってボールに関与することや、ポストプレーなど攻撃の構築に積極的に関わり、その驚異的なスピードとフィジカルでボックス内へ突入していく。プレーパターンが増加したことにより、いよいよ対峙するセンターバックは何をしていいのかわからなくなっている。
このペースを維持すれば、ハーランドは今季プレミアリーグで48ゴールを奪うことになる。途方もない数字だが、彼ならやってのけても不思議はない。代表チームから早い段階で解放された彼は、万全の状態で18日のエヴァートン戦に挑むだろう。エヴァートンにとっては、長い午後になるかもしれない。
Getty Images Sportブラックキャッツの躍進
今季プレミアリーグに昇格した3チームの中で、サンダーランドは最も残留に近いクラブと思われていた。グラニト・ジャカをはじめとした賢明な補強を行い、クラブは役員会からスタンドに至るまで、あらゆる面で結束しているように見えたからだ。
そしてその予想は、今のところ「良い意味で」外れている。過去10年間の彼ら、1987年以来初めて3部リーグに降格した時の彼らとは、もはや別のチームだ。プレミアリーグに帰ってきたブラックキャッツは、未だホームゲームでは無敗を継続。清々しいほど恐れを知らぬ姿勢で、快進撃を続けている。
そして18日に無敗のホームに迎えるのは、最下位ウォルヴァーハンプトン。開幕7試合で2分け5敗とまったく調子の上がらない彼らにとって、サンダーランドは厳しすぎる相手だ。
Getty Images Sportアーセナルが挑む“鬼門”
アーセナルは首位に立つごとに、次の試合が「優勝できるかできないか」を判断される試合となる。これがこの3年間で彼らが築いた実績であり、重圧でもある。クラブ・選手はミケル・アルテタに全幅の信頼を置いており、指揮官交代などまったく考えていないだろう。だがどうしても、今季主要タイトルを獲得できなければ、外部の重圧はこれまで以上に高まるはずだ。
18日のフラム戦は、2位リヴァプールとの差を暫定的に「4」まで広げるチャンスである。しかし近年、クレイヴン・コテージは“鬼門”となっている。2023-24シーズンの大晦日、ブカヨ・サカのゴールで先制したにも関わらず、1-2の逆転負け。クリスマス時点では首位だったものの、新年を迎えて4位に転落した。結局このシーズンは、シティに1ポイント届いていない。また昨季も、終盤のゴールがVARで取り消され、1-1のドロー決着。この時点で3位に転落し、リヴァプールの背中は遠のいていった。
そんな“鬼門”に首位で挑むアーセナル。過去2年間の悪夢を払拭し、今季こそ「俺たちが優勝する」と宣言することはできるのだろうか。
AFPトッテナムとホームゲーム
トーマス・フランクはトッテナムを再び成熟したチームへと変貌させた。昨季のような無秩序さは微塵もなく、ここ数シーズン欠けていた狡猾な知恵がスパーズに宿っている。強豪相手にも十分戦えると示した中で迎える19日のアストン・ヴィラ戦は、興味深いものとなりそうだ。
だが、やはり心配なのはホームでの戦績。10億ポンドを投じたスタジアムは、ある条件下では「12人目の選手」として猛威を振るう。直近では、昨季のヨーロッパリーグがそうだった。しかし、2025年のホームでのプレミアリーグ12試合で、勝利したのは3試合のみ(サウサンプトン、バーンリー、マンチェスター・ユナイテッド)。今のチームに重圧としてのしかかっている。フランクは、今のチームを競争力ある集団へと昇華させるためにこのホームの雰囲気を味方につけなければいけない。
試合チケットは決して安くなく、ダニエル・レヴィ体制に疲弊したファンたちは、忍耐力をすぐに失ってしまう。安定した好成績を味わった期間があまりにも離れているからだ。今季もわずかな危機のサインがあれば、再び緊張が高まるだろう。
フランクは7月の就任会見で、「ホームスタジアムを要塞にすることが極めて重要だ。それは、ファンと我々が一体となって初めて実現する。継続的な関係構築が必要だ。我々のホームを非常に、非常に攻めにくい場所にするため、共に築き上げなければならない」と訴えた。このアストン・ヴィラ戦で、それを証明したい。
Getty Images Sportリヴァプールの問題
リヴァプールの問題は深刻だ。フロリアン・ヴィルツは9試合で0ゴール0アシスト、未だゴールに直接関与できていない。そして夏の準備期間を棒に振ったアレクサンデル・イサクは、未だトップレベルで戦える状態にはなっていない。ヴィルツとイサク、合わせて2億4200万ポンドと夏の超大型補強の目玉だった2人は、今のところ期待を裏切り続けている。
ヴィルツには「まだプレミアリーグに適応中」や「ゴール以外の貢献を見るべき」と擁護する声も多い。それは一理ある。しかし、1億1700万ポンドの移籍金で試合に直接関与できない選手を、王者は必要としていない。一方のイサクはさらに深刻で、クラブと代表合わせた過去11試合でわずか1ゴール。それもリーグカップでのものだ。「プレシーズンを過ごせなかった」という言い訳は、彼自身がニューカッスルの練習を拒否したからであり、開幕から2カ月が経過した状況で言えることではないだろう。
多くのスター選手をチームに組み込む際、どのチームも最初は問題を抱えるものだ。だからこそ、別の選手を起用しながら徐々に慣れさせていくことが必要になる。しかし今のリヴァプールでは、モハメド・サラーも深刻な不振に陥っている。連覇への重圧が高まる中で、アルネ・スロットの手腕が問われている。
Getty Images Sportアモリムが連勝を狙う
ルーベン・アモリムがマンチェスター・ユナイテッドの監督として初のプレミアリーグ連勝を達成する前に立ちはだかるのはリヴァプールだけだ。クラブでの就任1周年(適切な表現が見つからないが)を祝う前に、この連勝記録を止める時間は残り少ない。
両古豪の現代における運命、プロセス、戦力の質には大きな隔たりがある。それでもアモリムの選手たちはアンフィールドを恐れない。過去2シーズンで2度の信頼に足る引き分けを勝ち取り、2022-23シーズンの7-0の大敗を過去のものとしている。次のステップは、あの地で予想外の勝利を収め、真に波乱を起こすことだ。
9月の国際試合期間明け、ユナイテッドはライバルであるシティ戦を控えていた。結局0-3で敗れ、アモリム監督への批判が初めて大規模に噴出した。レッドデビルズは常に1敗で国際的危機に陥るため、明らかな実力差があるにもかかわらずリヴァプールに敗れれば同様の抗議が予想される。とはいえ、スロット率いるリヴァプールと対戦するには絶好のタイミングだ。オランダ人監督就任後初の3連敗を喫し、シーズンこの時期にプレッシャーに押し潰されつつある。
日曜日のフランク・イレット(通称「ユナイテッド・ストランド」)に思いを馳せてほしい。5連勝への道は、まず2連勝から始まるのだ。