今、私たちは近年のフットボール界の中でも極めて重要な出来事を目にしている。レヴァークーゼンはバイエルンを差し置いてブンデスリーガの首位を快走し、なおかつDFBポカールとヨーロッパリーグのタイトルも狙っているのだ。シーズンの始めこそ物静かだったが、その時点からX・アロンソのフットボール的アイデアは際立っていた。現在のレヴァークーゼンはボール、ゲーム、時間を支配する力を持っている。
彼らがベースとするシステムは1-3-4-2-1(スペインのフォーメーションはGKから表記)。ピッチ上の全選手にダイナミズムを求め、中央、サイドのどちらも生かしたプレーを見せる。そのポジショナルな攻撃はまさに職人技で、相手チームを自陣ペナルティーエリアに押し込んでしまえる。
後方からパスを回して相手陣地に進行していくレヴァークーゼンは、エセキレル・パラシオス、グラニト・ジャカといった優れたパサーが相手チームのDF=MFのライン間にボールを入れることを狙う。そうしたパス能力を持つ選手は中盤だけにとどまらず、3人のセンターバック(ヨナタン・ター、エドモン・タプソバ、ピエロ・インカピエ)も、隙があれば積極的に縦にボールを通していく。
その次に存在するのが、縦に通したボールを受ける選手たちである。ウィングバックよりもウィングに近いジェレミー・フリンポン&アレハンドロ・グリマルドは、X・アロンソと出会ったことで本来定められていたキャリアの限界を突破した。そしてフロリアン・ヴィルツ(シーズン序盤はヨナス・ホフマンも)はその創造性、機動性、決断力によって、チーム内のルールに縛られないプレーを見せている。1トップの後方でボールを受け、相手選手たちを引き寄せてチームメートたちのプレースペースを生み、そこから決定的なパスを出す……彼は最たる違いを生み出せる、王者の風格を漂わせた選手だ。
もし相手チームが中央のヴィルツを止めようとした場合、その分だけスペースを享受するフリンポン&グリマルドがサイド深くまで侵入するか、ファーからペナルティーエリア内に侵入して決定的なプレーを見せる。レヴァークーゼンは落ち着き払ってサイドからサイドにボールを回していると思えば、相手のスペースと隙を逃すことなく縦にパスを通し、緩急つけた攻撃を実現している。そして1トップのヴィクトル・ボニフェイス(現在は負傷中)が抜群のポジショニングでもって、チームがそれまでに築いた攻撃の仕上げ、つまりはシュートを請け負う。
レヴァークーゼンはポゼッションだけでなく、トランジションからの攻撃も見事だ。その高いインテンシティーと組織力際立つプレッシングによって中央で数多くのボール奪取を実現し、パラシオス&ジャカの望遠鏡でのぞいたようなパスから、フリンポン、グリマルド、ヴィルツが果敢に飛び出していく。加えて、セットプレーも彼らの攻撃力を増幅させる装置となっており、グリマルドを主要なプレースキッカーとしてセットプレー、フリーキックからゴールを生み出している。